熊本城ドラゴン決戦~侵空からのテイクオフ

作者:のずみりん

 熊本城が崩れていく。
 日本三名城に数えられる頑強な戦城も、最強のデウスエクスと名高いドラゴンの、命自身を武器にした特攻には無力だった。
 主の名を受け、侵空竜エオスポロスの軍団は次々と城砦に突入し、命と引き換えに守りを砕いていく。
 不落の大天守が崩れ、御殿の元へ沈んでいく。清正流の強固な石垣が足場ごとに吹き飛んだ。
 やがて完全に廃墟と化した城砦跡……その奥底に何かが蠢いた。
 恐ろしい。あまりにも禍々しい。
 熊本城に封じられた『何か』は、いま解き放たれようとしていた。

「ありがとう。皆のおかげで熊本市は最小限の被害で守られた……だが、ドラゴンとの戦いは更に続くようだ」
 十字島から出撃したドラゴンの軍団を地図に示し、リリエ・グレッツェンド(シャドウエルフのヘリオライダー・en0127)はケルベロスたちに告げる。
「『覇空竜アストライオス』率いるドラゴンの目的は二つ! 一つ、熊本城に封じられた魔竜王の遺産の封印を解放すること。二つ、解放された魔竜王の遺産を竜十字島に転移させることだ」
 封印の解放を為すのは『侵空竜エオスポロス』の軍団による特攻。そして解放された魔竜王の遺産はアストライオス配下の四竜……廻天竜ゼピュロス、喪亡竜エウロス、赫熱竜ノトス、貪食竜ボレアースの行う儀式により竜十字島へと転移させられる。
「魔竜王の遺産が竜十字島に転移させられてしまえば、こちらから手出しする事は至難……ドラゴンたちの野望を食い止めることは不可能になるだろう。それを防ぐには侵空竜エオスポロスを迎撃しつつ、四竜による儀式を阻止するしかない」
 敗北すれば、終わりだ。
 リリエの声は一段と低くなっていた。

「……作戦を説明する。まずするべきことは熊本城に突撃してくる『侵空竜エオスポロス』の迎撃だ。この迎撃は各チームで侵空竜一体ずつを担当する事となる」
 侵空竜エオスポロスは素早い機動と爪、尻尾による破壊、斬撃。電撃のブレスを操る空の竜だ。なにより危険なのは突入後……戦闘開始から十二分の経過でエオスポロスは自爆、コギトエルゴスムとなる事で封印解除の為のグラビティ・チェインを放出する。
 つまり敵の目論見を阻止するには十二分以内でエオスポロスを倒しきる必要がある。
「エオスポロスの自爆阻止は作戦の第一歩だ。撃破しきれなくても大ダメージを与えることでグラビティ・チェインを減らし、自爆の効果を弱められる。最後まで諦めず戦ってくれ」
 そしてエオスポロスを倒すことができたら、次は四竜と覇空竜アストライオスとの戦いだ。
「こちらでも様々な作戦を検討したが……侵空竜エオスポロスと戦いつつ、少数の飛行可能なケルベロスを突破させて覇空竜アストライオスと四竜を奇襲……という作戦が最も可能性がありそうだ」
 ただしこれを為すには侵空竜エオスポロスとの戦いに、更なる負担をかける必要がある。
 戦闘が始まってから離陸することは不可能……つまり突破をかけるケルベロスは、侵空竜エオスポロスとの戦いを飛行状態のまま切り抜けなければならない。
「……最悪、覇空竜アストライオスは侵空竜の特攻による封印解除が失敗した場合、儀式を終了させた配下の四竜を犠牲に捧げてでも魔竜王の遺産を奪おうとするだろう」
 阻止するには儀式を行う四竜とアストライオス、一体を最低でも撃破しなければならない。非常に危険な作戦であり、全てはケルベロスたちの知恵と勇気にかかっている。
 けしてまともに全ての竜と戦おうとするな、とリリエは忠告する。覇空竜アストライオスと四竜は相互に連携して戦えるため、単純な一点集中攻撃は難しいだろう。
「参考になるかはわからないが……四竜は覇空竜アストライオスを守る事を最優先としているようだ。アストライオスを攻撃して陽動しつつ、本命に攻撃を集中させるといった作戦で、敵の連携を崩せるかもしれない」

 命を大事に……とは軽々しく言えない相手だが、と一つ置いてリリエは言う。
「死ぬなよ、ケルベロス。信じているぞ」


参加者
伏見・万(万獣の檻・e02075)
ピコ・ピコ(ナノマシン特化型疑似螺旋忍者・e05564)
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)
嘉神・陽治(武闘派ドクター・e06574)
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)
櫂・叔牙(鋼翼朧牙・e25222)
シトラス・エイルノート(碧空の裁定者・e25869)
鹿島・信志(亢竜有悔・e44413)

■リプレイ

●空を侵すもの
 空を侵す影は地平線よりやってきた。
「目標、白川方面! スキミング機動で突っ込んでくる!」
「まるで……いや、ミサイルそのものなんだったな……SYSTEM COMBAT MODE」
 ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)の『R.F.NVゴーグル』が捕らえた敵影に、マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)は戦闘システムを起動。『R/D-1』AIと管制系『エクスガンナーシステムVer.β』が連結、立ち上がる電子参謀本部が唸りをあげて敵軌道を解析する。
 侵空竜エオスポロス。空を侵すものの名は伊達ではない。
 十メートルを超える巨体が物理法則を超越した機動性で旋回、飛翔。レプリカントたちの情報伝達あってさえ、動体視力が追い付かないめまぐるしさだ。
「敵影、更に旋回。『9』の字状に回り込んで……きます」
 ナノマシンの結合を強めて食らいつくピコ・ピコ(ナノマシン特化型疑似螺旋忍者・e05564)が言うが同時、先手を取ったエオスポロスの電撃は石垣ごとにケルベロスを薙ぎ払う。
「そこまでして突っ込みてぇかね、このハタ迷惑な野郎が!」
 暴風にはためく『紫幹翠葉』を抑え嘉神・陽治(武闘派ドクター・e06574)は叫んだ。怒りは半分、必然が半分。この暴風と雷撃の前では、落ち着いた小声の会話など文字通り吹き飛ばされてしまう。
 ただ例外がいるとすれば、伏見・万(万獣の檻・e02075)
「意見があうじゃねぇか、ドクター。そうまでされちゃ、意地でも通せねぇよなぁ!」
 数多の獣より『神造』された万の肉体からの声はまさに咆哮。闘志の叫びに、その身より沁み出た流体金属の盟友が銀色の粒子を閃かせた。
「シャァッ!」
「頼むぜ、櫂の!」
 万の声を遮り、竜爪が走る。
 崩れる砦を間一髪でかわし、櫂・叔牙(鋼翼朧牙・e25222)はエネルギー放出フィンを大きく開いた。
「了解、 出力リミット、ミリタリー……オウガ粒子確認! ブースト……開始!」
 叔牙の背に伸びる四対八翼のそれは翼のようで翼ではない、高出力動力炉の出力機関である。
 溢れ出るエネルギーは風に舞い、空に立つ者たちへと『Link Burst』を与えていく。彼やピコのような高熱量のレプリカントにとっては、敵の暴風も有難い空冷だ。
「しかと受け取った。エイルノート殿!」
「えぇ……僕では敵わないかもしれませんが、せめて一太刀いれさせていただきましょう。貴方達の積もり積もった恨みを! 地の底で淀み続けた嘆きを!」
 呼びかけたシトラス・エイルノート(碧空の裁定者・e25869)が空に描く黒光の魔法陣を背負うように、鹿島・信志(亢竜有悔・e44413)は翼を羽ばたかせて弧を描く。エオスポロスは強敵、定石通り、まずは当てて動きを封じなければ。
「何処まで食らいつけるかはわからん。ただ、最善を尽くさせてもらう」
「補足した、砲撃する!」
「L-40 ON FIRE!」
 エオスポロスの機動がミサイルのそれなら、こちらは対地攻撃機の砲撃戦だ。
 信志の『獄鎚【瑞喰】』に続き、ティーシャの『カアス・シャアガ』砲撃槌、マークの『L-40』重用途アームが轟竜砲の三重奏を放つ。
 かわせずとみたエオスポロスは電撃で焼き払おうとするが、その矢先。
「さぁ、行きなさい!」
 シトラスの『深い闇の底に集いし怨嗟の呼び声』は完成した。魔法陣より溢れる無数の黒い手の群れが開いた口へと殺到する。
 吐かれた直後のブレスと激突し暴発、爆発。
 絶叫を貫き、竜砲弾が更に大きな爆発を空に描いた。

●対空対地戦
「ARMOR DAMAGED……ON FIRE」
 崩れた石垣を『XMAF-17A/9』アームドフォートの『大型榴弾』で吹き飛ばし、マークたちは地上へと這いずり出た。
「無事か、マーク!」
「NO PROBREM」
 背中越しの万に機械的に答えるマーク、見上げた空からは侵空竜の尻尾がくる。叩きつけられる質量が、石垣を念入りに瓦礫へと変えていく。
 ここまでわずか二分。城も、ケルベロスたちも見る影もない。
「ドローン展開します、三秒もたせてください」
「わりぃな。生きてかえれたら治してやっから、よっ!」
 ピコがヒールドローンを展開するなか、陽治は文字通り身体で尾撃を受ける。今日の彼は戦う盾だ、そうならなければこの作戦は回らない。
「さすがにきついぜ、これ以上はっ」
 アバラがきしみ、跳ね飛ばされる。引き抜いた『白亜之塔』からライトニングボルトを零距離で当て、即座に離脱。
「かわります、離脱を!」
 ピコのヒールドローンが展開する治療用ナノマシンバリアをくぐり、降下してくるシトラスが攻め手を交代するも、すかさず天へと雷が飛ぶ。
「医療ナノマシン被害、60%……!」
「く、まだ一矢は!」
 シトラスの翼が弾ける。ぐらつきながらもファミリアを叩き込み、地面をかすめて離脱する。
 ピコたち仲間の支援があってなお、攻撃の届く距離での対空対地は対空側が不利だ。遮蔽はなく、攻撃コースは読みやすい。だが迫るタイムリミットと続く戦いには、この状況を勝ち抜けなければ進めない。
「逃すかよ! 狩られるのはテメェだっ!」
「HAWKEYE STAND BY!」
 空から、地からケルベロスは果敢に攻める。万が己より呼び出す『百の獣影』がドラゴンに喰らいつき、動きを地へと封じ込め、すかさずの砲撃。
「まだ耐えられる、攻めろ!」
 耐衝撃姿勢をとったマークのライフルの『MN16-HAWKEYE』に『R.F.NVゴーグル』をリンクさせ、ティーシャが更に重ねて轟竜砲を連射する。
 だがまだ足りない。フロストレーザーと何発目か竜砲弾はエオスポロスをたじろがせるが、かの竜は巧みに態勢を立て直してくる。
「四分経過……信志さんッ!」
「まだ食らいついてくるか……っ」
 放たれる雷撃。咄嗟の、叔牙渾身の螺旋掌が巨体を押して間一髪。翼に火傷を負いながら、信志は足をふるい体制を立て直しつつ反撃。
 放たれたフォーチュンスターの流星に撃たれ、エオスポロスはなお血気盛んな咆哮をあげた。

●六十秒経過
「くそ、押し込めねぇ!」
「火力が足りません……このままでは」
 雷撃のブレスが万の身体をを跳ね飛ばすなか、ピコはナノマシンを攻撃へと集中させる。
 尽かけているのは癒しではない、時間だ。ナノマシンが描く氷結の螺旋がエオスポロスに食らいつくが、決定打にはあまりに非力。
 限界を超えた稼働は烈風でさえ冷まし切れず、レプリカント少女の豪奢な縦ロール髪のみならず、『飛行ユニットだった物』をも白熱させていく。
 突破猶予残り五十秒。傷ついても今は一手が欲しい。
「一人くらい攻めに回るべきだったかね……後悔先に立たずだけどよ!」
 これほどクラッシャーの一打が欲しい戦いもそうない。だが、その未練を振り切るように陽治は拳を暴れまわるドラゴンへと突き付けた。
「医療も戦もベストなんてそうねぇんだ。俺も最善を健闘させてもらうぜ――その魂を、穿つ」
 弦楽器のオーバードライブのようにうねる鋭い息音と共に、『緑之息吹』が彼の拳に渦をまく。
「とっておきで勝負だ、続け!」
 循環する声明エネルギーは荒れ狂う風の刃となり、集束して槍と化す。気合の声で放たれる『天神螺穿槍』は雷のブレスさえも切り刻み、侵空竜の魂を貫く。
 猶予、残り三十秒。開かれた勝機の一穴をこじ開けるのは、重なり続く絶空の刃。
「こっちも命懸けでな……乗らせてもらうぜ、ドクター!」
 ジャマーのポジションから左の翼へ、万の惨殺ナイフは完璧な角度で突き立てられた。悲鳴のような竜の叫びに、力で応じればブツリと腱の切れる音。
「目標の機動力低下を確認しました。十時方向に火力の集中を」
「SYTEM『β』LOCK……OPEN FIRE」
 満を持してのピコの合図にマークのあらゆる砲が『FULL FIRE』を叫ぶ。それは総攻撃の開始であり、大いなる欺瞞でもある。
「亢竜有悔、推して参る!」
「及ばずながら、御供します」
 シトラスが展開してくれたマインドシールドをまとい、信志は竜の翼を広げ飛んだ。

「グゥッ」
 二人の翼が大きく円を描く意図をエオスポロスはかく乱と捉えた。
 派手な動きで空に誘い、本命は地上から照準するレプリカントたちの砲撃。あるいは手痛い一撃を突き立ててくれたウェアライダーか?
 どの道、空で自分に勝てる者など存在しないと。
「今です!」
「ゴァ……ッ!?」
 その傲慢さが、シトラスたちの真意に気づく致命的な数秒をエオスポロスに費やさせた。
 この六分間にケルベロスたちが撃ち込んだ打撃は突破に必要な紙一重だったが、念入りに与えた足止めと麻痺、そして作戦の欺瞞はそれを補って余りある。
「お互い無事なようだな、エイルノート殿」
「えぇ……皆さんのおかげです」
 シトラス地上を見ればマークが激しい砲撃戦の最中、センサーの明滅でサインを送っている。なおも追いすがらんとするエオスポロスに叔牙が組み付き、零距離の螺旋掌で釘打ち止める。
『GOOD LUCK』
 苦し紛れの電撃が、信志を守るシールドに弾けて消えた。もはや長居は無用。
「……責任重大ですね」
「うむ。いざ往かん、使命へ!」
 突破は成功したが、結果として地上の戦力は二人減った。一杯食わされた屈辱にエオスポロスは怒りを滾らせ、尾を、爪を振るい暴れまくる。
 免れぬ苦戦へ立ち向かう仲間たちに短く礼を向け、二人は決戦の空へと駆け抜けた。

「残り四分……ちぃとタイミングを逃しちまったか」
 万は火花散る竜の口腔に、苦々しく呟く。突破を優先せず、あるいはより早く暴走を決断できれば状況はかわったかもしれない。
「スマン……間に合わねぇ!」
 庇う陽治の足がもつれ、倒れる。放たれる電撃のブレスが後衛を焼く。
 突破支援に全力を費やした結果、ケルベロスたちの傷と麻痺も二分の間に大きく増えた。状況は互いに、大きく変わりつつある。
 熾烈な削り合いが、始まった。

●恐ろしい、あまりにも禍々しい
「TACTICS PLAN……NOT……!」
『自爆までの撃破は困難、極めて危険な状況』
 ディフェンダーの守りを抜けた何度目かの電撃が、マークの肩部防盾を引き千切る。撤退を推奨する『R/D-1』戦術システムを却下し、半壊した脚部で石垣跡に食いしばる。
「まだ手も砲も動く! 諦めるか!」
 ティーシャの『アームドフォートMARK9』の連装砲も、既に残りは一門。ダメージと過熱でいつ破裂してもおかしくない砲身で、それでも彼女は砲撃を止めない。
「無駄じゃない。減らせるだけ減らす」
 なおも抵抗するケルベロスを五月蠅そうに凪ぐエオスポロスの尻尾を交わし、叔牙はフォーチュンスターを蹴り込んだ。
 星めいたオーラ竜鱗を、グラビティチェインをドラゴンの身体から引き千切る。
 エオスポロスの自爆の根源はグラビティチェインであり、ドラゴンオーブにそれを捧げるためのもの。十二分での撃破が困難でも、ダメージを重ねればドラゴンたちの作戦は少なからず防げる……その一点にケルベロスたちは賭けた。
「被ダメージ、治癒限界を超えました……これが最後です」
「なに、予想以上に持ち堪えられたぜ。ありがとよ」
『ナノマシン治療』された右足をがしがしと踏みしめ、陽治は迫るエオスポロスの竜爪に拳を叩きつける。巻きつけたケルベロスチェインを絡みつかせ、『白亜之塔』を差し込んだ……大切な『―Arabesque―』は既に外してある。
「さぁて、もう一発……痺れてみっかぁ!?」
 拳から竜へ、ライトニングボルトがさかのぼる。思わぬ反撃に陽治をほおり、仰け反るエオスポロスの口をティーシャの『全て破砕する剛腕』がつかみ、地面めがけて叩きつける。
「グガッ! ァガァァァーッ!」
「終わって……しまえ!」
 残り五十秒、掴まれた顎を吹き飛ばしながらの電撃がティーシャを跳ね飛ばし、壮絶に相打つ。そのまま浮上、旋回。
 最後の一撃と共に特攻、自爆しようという構え化。
「時間がない、後ろに!」
「あいにくと柄じゃねぇし、間に合わねぇ!」
 倒れるティーシャを庇い、螺旋を籠めた掌で叔牙はドラゴンを抑え込む。半壊した頭部に万が惨殺ナイフを突き立て、切り刻む。
 それでも止まらない。
「残り十秒、対衝撃防御……!」
「ATAAAAACK!」
 オウガメタルを纏ったピコの拳が、マークの全火器が、自らを破壊しながらもエオスポロスへと浴びせかけられる。
 バランスを崩し、ドラゴンの巨体が転がりながら突っ込んだ。
「伏せろ!」
 誰かの声が聞こえた瞬間、グラビティチェインの爆発がケルベロスたちを飲み込んだ。

 それから、どれくらい時間が過ぎただろうか。
「なんだあれは……」
 瓦礫の山から這い出し、万は言葉を失った。
 防ぎきれなかったエオスポロスたちの自爆により、熊本城は完全に崩壊していた。失われた歴史的建造物の一部は彼の足の下、残りは舞い上がり砂塵と化して視界を遮っている。
 だが何より目を奪うのは天守閣の合った場所だ。晴れつつある砂煙の向こう……3mほどのサイズのそれは、この距離でも異様な存在感を放っている。
「ドラゴン、オーブ」
 万より少し遅れ、立ち上がったピコは呟く。非論理的だが、そうとしか言いようがない。
 恐ろしく、あまりにも禍々しいもの。
 その脅威は彼女の一部を通してやってきた。
「……ナノマシンが拒絶されています」
「結界、ってヤツか?」
 周囲のケルベロスたち誰もが近づかないのではない。近づけないのだ。
 万はその意味を反芻し、正しく飲み込んだ。
「このまま喰われるわけにはいかねぇ……退くぜ」
「同感です」
 動けぬ仲間たちを背負い、肩を貸し、二人は歩き出す。
 死力を尽くし、なおも続く次の戦いのために。

作者:のずみりん 重傷:ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827) 嘉神・陽治(武闘派ドクター・e06574) マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176) 櫂・叔牙(鋼翼朧牙・e25222) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年7月7日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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