●鬼に金棒ならぬ豚にスライム
――ブヒッ、ブヒッ……。
――ブヒヒヒ……。
その空間には、背中から触手を生やした豚人間、オーク達が蠢いている。
やや汗臭さを感じ、不潔感漂うその薄暗い空間へ、一人の女性が近づいてきた。
「今から、襲撃に向かうのですね」
彼女は螺旋忍軍の一員であり、名前はスライム忍者・雷霧という。
「私のスライムも一緒に連れていって、活躍させてください!」
雷霧が自らのスライムを差し出すと、オークどもは受け取りはしたのだが……。
オークという生き物は、女性をさらって繁殖しようとするデウスエクスだ。
雷霧とてその対象に漏れず、汚らしく笑うオーク達の触手によって彼女は身体を絡めとられてしまう。
「ん……、はうぅっ……」
ふくよかな胸や太股の間に触手が這って行く感覚に雷霧が艶かしい声を上げる中、他のオークどもも我慢できなくなったのか、移動の為に魔空回廊へと飛び込んでいった。
長崎県雲仙氏小浜町のとある温泉宿。
昼間、そこの女性更衣室に突如として、転移したオーク達が床を突き破って姿を現す。
「「「ブヒイイイイイイイイイイイィィィッ!!」」」
なお、オーク達は先に渡されたスライムをばら撒くことも忘れず、瞬く間にその場の女性達の衣服を溶かしてしまう。
「「「きゃああああああああああああああぁぁっ!!」」」
その場にいたのは成人済みの女性ばかりではあったが、いきなり汚らしい豚人間の群れが現われて服を溶かされてしまえばさすがに叫ばずにはいられない。
オーク達はよだれを垂らし、こぞって叫ぶ女性達へと襲いかかるのである……。
オークの略奪事件が起こるということで、ヘリポートにケルベロスが集まる。
「全くもって、欲望に忠実な相手だと思うよ……」
敵の行動に呆れを見せるリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)だが、襲われる女性達のことを考えれば黙ってもいられないと説明を始める。
オークどもは魔空回廊を使って多くの女性の居る場所に現れ、女性を略奪しようとしている。
「ボクが今回見たのは、長崎県の小浜温泉で起こる事件だね」
とある温泉宿の女子更衣室に現れるオークどもは、温泉を利用する若い女性を狙って襲い掛かる。
先に避難させたいのは山々だが、そうするとオーク達は別の場所に出現してしまい、被害自体を防げなくなってしまう。
「心苦しいけれど、女性達の避難はオークが出現した後に行ってほしいんだ」
また、女性達の避難が完了していない場合は、戦闘中にオークに悪戯をされてしまう場合があるので、できるだけ避難させてあげたい。
「あと、どうやらオークは服だけ溶かすスライムを使うようだよ」
付け加えるように語ったリーゼリットの一言も、一応気に留めておきたい。
現れるオークの数は14体。ボス格はおらず、皆同じ程度の強さだ。
8体が力技での攻めを、6体が遠くからちくちくと攻める立ち回りを行う。
また、オーク達が使う服を溶かすスライムは、使用すると消えてしまう。このスライムと戦う必要はないが、回収も出来ないようだ。
「被害に遭う女性は、2~30代の女性20名ほどだね」
予知では、12、3名ほどの女性が逃れられず、オークの触手に捕まってしまう。
更衣室内は女性とオーク、ケルベロスと密集しまうので、オーク出現時に全ての女性を逃がすことはほぼ不可能に近い状況だ。
「人口密度が高すぎて、更衣室は缶詰状態となってしまうからね。効率よく、女性の避難とオークの討伐を進めなければならないよ」
説明を終え、リーゼリットがヘリオンの離陸準備を始めると、集まるケルベロス達が顔合わせを行う。
その中には、ユリア・フランチェスカ(慈愛の癒し手・en0009)の姿もある。
「折角だから、のんびりと温泉に浸かっていきたいのだけれど……」
ともあれ、襲い来るオークをどうにかせねば始まらない。ユリアもそれを理解した上で、ささやかながらも助力したいとメンバー達へと告げた。
他のメンバー達はオークに対する憤りやそいつらが使うスライムについて考えを語る。
また、ユリアと同じく、温泉に行くなら骨うずめしたいと話す者もいた。
離陸準備もその間に済み、ヘリオンのプロペラが回り始める。
「それでは行こうか」
女性達の救出、オークの討伐。
合わせてよろしく頼んだよと、リーゼリットはケルベロス達を激励するのだった。
参加者 | |
---|---|
写譜麗春・在宅聖生救世主(誰が為に麗春の花は歌を唄う・e00309) |
ウォーグ・レイヘリオス(山吹の竜騎を継ぐもの・e01045) |
ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476) |
志穂崎・藍(蒼穹の巫女・e11953) |
暮葉・守人(墓守の銀妖犬・e12145) |
神宮・翼(聖翼光震・e15906) |
御門・美波(断罪の少女・e34803) |
オニキス・ヴェルミリオン(疾鬼怒濤・e50949) |
●ロマンなどいらない
長崎県雲仙市小浜町。
ケルベロス達は、この地に現れるオークを相手すべく、ヘリオンより降り立つ。
「せっかくの温泉なのに、オークの襲撃に遭うなんて災難だよな」
――さっさと片付けて温泉を楽しめる様に。
まだまだ子供っぽい印象を抱かせる少年、ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)が力を入れて意気込みを語った。
「床からとは、全く神出鬼没よな」
こちらも子供っぽい容姿だが、定命化したオウガということで見た目以上に長生きをしているオニキス・ヴェルミリオン(疾鬼怒濤・e50949)が端的に感想を口にする。
「筍でもあるまいし……。いや、そんな良い物ではないな」
「せっかくの温泉にオークが現れるなんて、本当にKYな連中だよね」
白猫のウェアライダー、志穂崎・藍(蒼穹の巫女・e11953)は、いつもながらに本能丸出しな相手に嘆息していた。
「しかも、いやらしいスライム付。そんなスライムやオークには絶対負けないよ」
このスライムについては、メンバー達も思うことがあったようで。
「服のみを溶かすスライムを用いるオークですか……。どうにも、はた迷惑な存在ですね」
清楚系の人派ドラゴニアン、ウォーグ・レイヘリオス(山吹の竜騎を継ぐもの・e01045)も、その敵に眉を顰める。
「思ったんだけどさー」
そこで、普段着の上からスタイルの良さを見せ付ける神宮・翼(聖翼光震・e15906)が思ったことを語る。
「更衣室に出なくても温泉に出現すれば、わざわざスライムで服を溶かす手間省けるんじゃない?」
「……、…………、そういうロマンあふれるスライムは二次元世界だからこそいいんでしょ!!」
ロマンなのかと疑問を口にした翼の話を聞いていた写譜麗春・在宅聖生救世主(誰が為に麗春の花は歌を唄う・e00309)が声を荒げて。
「リアルに出てきたら、ノーサンキューなんだよー!!」
そして、在宅聖生救世主は過去の依頼で自身がオークにやられた事を思い出し、普段の彼女からは想像もできないような真顔で一言。
「よし、オーク殺そう」
「早急に、退治しなければ」
ウォーグも在宅聖生救世主に同意し、オークの殲滅を誓うのである。
●スライムをぶちまけるオーク
さて、できる範囲内で下準備をと、ケルベロス達は行動を開始する。
白髪のシャドウエルフ、暮葉・守人(墓守の銀妖犬・e12145)は現場となる温泉宿の従業員にケルベロスカードを提示し、事情を説明する。
その際、一時的な避難所として、大部屋を準備してもらうよう守人は話をつけていた。
また、彼の意向もあり、御門・美波(断罪の少女・e34803)やユリア・フランチェスカ(慈愛の癒し手・en0009)がバスローブ、浴衣、シーツなどの準備をできる範囲で進め、あちらこちらへと動いていく。
同じく、宿内で浴衣の調達にと奔走していたオニキスはある程度その数が揃うと、更衣室の近くで待機し始めていた。
じっと待つケルベロス達。
程なくして、その時は訪れる。
床を突き破るような音の直後、豚の鳴き声がこだました。
「「「ブヒイイイイイイィィィッ!!」」」
「「「きゃあああああああああぁぁっ!!」」」
それに被さるように響く、女性達の悲鳴。
ケルベロス達は、即座に動き出す。
「乗り込むぞ!」
オニキスは更衣室の中へと入り、奥にいる女性達の救出へと向かう。
狭い室内で、すでに数人の女性がオークの触手に捕えられてしまっていた。
「うわー、オーク無駄に多い……」
混雑を避けるように、在宅聖生救世主は部屋の上部を飛ぶ。
彼女は避難する女性にバスタオルを渡そうとしていたが、フリーになるオークの的になってしまい、思ったように動けずにいた。
人々を逃がすべく、翼も自ら女性客に扮してオークの注意を引く。
「やだ、来ないで! あたし好きな人いるのに……!」
嫌がる彼女の態度に、数体のオークが鼻息荒く近づいてくる。
「どう? この迫真の演技♪」
翼はドヤ顔で、大きな胸をぷるんと張ってみせた。
ウォーグはオーク数体を引きつけつつ、オーラの弾丸を発して前に出てくるオークを叩く。
避難が完了するまでは、なんとかこの場を持たせたいところ。
「落ち着いて、わたし達はケルベロスだよ! みんなを助けに来たよ!!」
美波は声を出し、女性達の誘導を始める。
「オレ達ケルベロスが来たから、もう大丈夫だ! 落ち着いて順番に避難するんだ!」
ロディも割り込みヴォイスを活かし、ごった返す更衣室内で迅速に女性達が避難できるようにと呼びかけた。
「こいつら片付けてまた温泉楽しめるようにするから、それまでの辛抱だぜ?」
そう告げたロディは用意していた浴衣を女性達へと渡し、外へと出るよう促す。
オーク出現と共に、現場へと飛び込んだ守人はできる限り壁になりつつ、ややパニックになっている女性達を気遣って剣気を解放していく。
この手の温泉宿でのオーク依頼は2度目とあって、被害者女性に対する守人の応対も慣れたもの。
「怖かったね。俺たちが来たからもうダイジョブだよ」
落ち着かせる為にと、守人は優しく抱きかかえる。
すると、女性は頬を染めながらも小さく頷き、彼に連れられて外へと出て行く。
藍もまた、ユリアと共に女性達にバスローブを渡しつつ避難誘導へと当たっていた。
しかし、徐々にオークに捕えられる女性は増えている。
オニキスはチェーンソー剣に霊体を憑依させ、そのオークの体を切り裂いていく。
オークが女性を狙うとはいえ、オニキスの肉体は幼いまま。
弄ぶ対象とはならぬ彼女を、オークは触手ではたいてきていた。
入り口付近では、避難する女性を追うオークを目にし、誘導を切り上げた藍が囮として前に出る。
「ここはボクが相手だニャ。このエロオーク」
中指を立てて、相手を牽制する藍。
オークどもはそこでにやけ、託されたスライムを一斉に更衣室内へとぶちまける。
「「きゃああああああっ!!」」
着替え途中の服や、ケルベロス達から託されたバスタオルなどを溶かされ、女性達が一斉に肌を隠す。
「にゃ! スライムの癖に生意気だニャ! は、恥ずかしいにゃ」
大きな態度で相手に言い放っていた藍だったが、これにはさすがに顔を真っ赤にしてしまう。
同じく、オークを相手にしていた翼にもそのスライムは全身にかかっていて。
「どうしよう、ロディくん。あたし、汚されちゃった……」
スライム塗れの翼は嘘泣きをして避難に当たるロディへと訴えかける。
「誤解を招く発言は止めろ!」
彼は真っ赤になりつつツッコミを入れ、避難誘導を続けていく。
それに翼はくすりと笑い、オークの注意を引き続けるのだった。
●上機嫌なオークどもに制裁を
「ブッヒヒヒィィ!!」
スライムを撒き散らしたオークは、素肌を垂らす女性達の熟れた素肌に嬉々として触手を這わせていく。
オークは数で押し寄せ、女性とケルベロスを見境なく襲う。
箱竜メルゥガにブレスを吐き出させてオークに牽制させる間、主であるウォーグは花びらのオーラを周囲に舞わせ、回復に当たることとなる。
なにせ、敵の数が多すぎることもあり、この場は手数を回復に割くメンバーも多い。
在宅聖生救世主もメイン回復手として白い翼を広げてオーロラの光を発し、仲間達を苛む触手の拘束や毒を振り払う。
仲間達のそうした回復支援で、触手に絡まれたオニキスは幾分か恥ずかしい気持ちも和らいだものの。
「ええい、吾がこの程度で……っ!」
彼女はやけになりつつチェーンソー剣を振り回し、触手ごとオークの体を切り払う。
それで、1人の女性が拘束から逃れたが、まだ数人がオークの餌食となってしまっている。
「……あんっ、そこ……だめ……!」
皆、オークの触手に塗れて大変な状況になる中、翼も艶かしい声を上げる。
ただ、お芝居でオークの気を引いていた彼女は、一つ溜息をついて。
相手がオークでは、虚しいだけと感じていたのだ。
(「そもそも囮なんだから、お芝居しないと始まらないのよねー」)
しかし、オークの触手は彼女のふくよかな胸はもちろんのこと、すらりとしたくびれやおへそを舐め回す。
さらに、別の触手がむっちりとした太股の感触を確かめるように、肌を這っていく。
翼も催眠魔眼を活かしてオークの同士討ちを誘うが、さすがに限界があり、焦りを感じてしまう。
「ううっ、そろそろお芝居じゃなく本気でまずいかも?」
「にゃ~。そこ、は、弱いニャ~……」
藍もまた、目立つ位置でオークの注目を浴びており、複数のオークの触手に絡まれていた。
彼女の柔らかい胸をむんずとつかみ、その尖端を絡めていじくり始める。
「んぅぅ、が、がま、ん……できないにゃ~、はぅ~」
オークの触手攻撃に、藍も陥落寸前。
敵もそんな彼女の姿に、一層興奮してしまう。
「ブヒヒヒヒイイイィィィ!!」
さらに、オークがその身を寄せようとすると、丁度避難を済ませたメンバーが駆けつける。他の女性達も皆、更衣室外へと脱出していたようだ。
「待たせたな、翼。避難完了だぜ!」
大声で呼びかけるロディは早速、更衣室の棚や壁を足場に飛び回り、仲間を捕えるオークに向けて手にする愛銃「ファイヤーボルト」より銃弾を発射する。
腹や触手を撃ち抜かれ、オークどもが怯んだ隙に翼は態勢を立て直して。
「避難終わった? よーし、アルティメットモードで反撃開始よ!」
輝かしくその身を包み、フィルムスーツ姿となった彼女は華麗に舞いながら歌う。
「あたしのビートで、ハートもカラダもシビレさせてあげる!」
魔性のリズムによって、オーク達はその心を震わせ、文字通り痺れ始めていた。
「調子に乗るな~、オークの分際で!」
近場に寄るオークに藍も憤慨し、構えた縛霊手から巨大光弾を発射する。
それにより、頭が消し飛んだオークは仰け反るようにして鈍重な胴体を倒し、動かなくなってしまう。
「俺の仲間に何してやがるんだ?」
女性メンバーを気遣い、駆けつけた守人は邪魔なオークの体や触手を素手で引き裂いていく。
仲間の為にと彼がバスタオルを投げつけると、それをウォーグや藍が受け取っていたようだ。
「おぃ、駄賃は安くねぇぞ……」
周囲に殺気を放ち、守人は仲間達のあられもない姿に声をすごませる。
「皆さん、大丈夫ですか?」
ユリアもまた仲間達に羽織るものを渡しつつ、広げた翼より放つ清らかな光で仲間達を触手による汚れから振り払う。
「ふふっ♪ お痛は駄目よ?」
悠然と更衣室内を駆け回る美波がさらに、背に展開した愛用の阿頼耶識で構成した右翼より光弾を発し、オークの体を射抜いていく。
年齢的にオークは美波の容姿はまだお気に召さぬようで、伸ばす触手で貫き、あるいは叩きつけようとしてくる。
ただ、美波もそこは対策を練っていたらしく。
「ふふっ♪ 動くと危ないよ?」
足元にばらまいた不発弾を爆発させ、オークを爆炎と爆風で包みこんだ。
「足下に注意だよ?」
小悪魔っぽく笑みを浮かべた彼女はさらに、片翼から光弾を浴びせかけていくのである。
●断罪のおしおきタイム
守るべき者を全て避難させたなら、後はケルベロス達の独壇場だ。
「ここから先は、お仕置きタイムの時間にゃ」
好き勝手やってくれた相手へ、藍は肉弾戦を仕掛けていく。
「女性に恥をかかした報いをたっぷり味わうニャ!」
まさに、鎧袖一触。
次の瞬間、彼女の蹴りによって腹を切り裂かれ、オークは臓物を撒き散らして倒れていく。
ペットの姿に戻した杖に翼は魔力を込めて射出し、弱ったオークの胸部を貫く。
翼へと触手を伸ばしたオークには、ロディが「ファイヤーボルト」の銃口を突きつけて。
「持ってけ、ありったけ!」
ロディはたった一度のファニングで数発の銃弾を叩き込み、オークの頭を粉砕した。
「ふふっ♪ 悪い子にはお仕置きしないとね?」
美波が白蛇の右翼より発した光弾は、素早く相手の胸部を射抜く。
だが、美波の攻撃はそれだけに留まらない。
「ふふっ♪ 踏まれたいのかな?」
彼女はそのオークへと魔眼の力を解放し、超重力を発生させて触手ごと地面へと叩き潰す。
「ブビビイイイ!!」
汚らしい声を上げ、オークは身体をペシャンコに潰してしまった。
前線のウォーグはなおも、触手に絡まれている。
敵が徐々に減ってきていること、そして何より仲間達が戻ってきていることもあり、彼女は箱竜メルゥガと攻撃の構えを崩さない。
メルゥガがタックルでオークへと衝撃を与えたところに、ウォーグが竜騎の御旗・聖棍形態で素早く喉元を突き、そいつを卒倒させていく。
在宅聖生救世主が気力を撃ち込んでウォーグに絡む触手を解き、ユリアもまた緊急手術を使い、触手から分泌される溶解液で溶かされた藍やオニキスの衣服を元に戻す。
仲間の女性メンバーを辱めたオークへ、守人は怒りを露わにしながら「月華零式」の刃に剣気を纏わせて。
「伊達や酔狂じゃ無いんだ。斬るよ」
威圧と共に、彼は眼前のオークの体を真っ二つに切り裂いていく。
返す刀に雷を纏わせた守人は触手で応戦しようとした敵へと、鋭い突きを見舞っていた。
敵が減っていけば、在宅聖生救世主も攻勢に打って出る。
高々と舞い上がった彼女はルーンアックスを振り上げ、力のままにオークの頭をかち割っていく。
「滾れ! 漲れ! 迸れ! ……温泉地ゆえ、今日の混沌の水も煮え滾っておるわ!」
ぐつぐつと煮え立つ混沌の水から呼び出されたのは、水龍『龍王・沙羯羅』だ。
「龍王沙羯羅、大海嘯!!」
水龍の形をした大波に乗るオニキスが叫ぶと、見定めたオークへと突撃し、その身体を破壊してしまう。
劣勢を悟って背を向けて逃げ出そうとするオークに、美波は「ふふっ♪」と笑いかけて。
「必殺の一撃、見せてあげるよ!」
美波は光を放ちながら突撃し、そいつの体を粉砕する。
「逝っちゃえッ!」
「ぶ、ひいぃ……」
嗚咽を漏らして崩れ去るオーク。
その全ての討伐を完了し、美波は一言。
「主よ、永遠の安息を――せめて、これからは安らかに」
欲望のままに暴れた敵ではあったが、彼女は十字架のペンダントを手にして小さく祈りを捧げたのだった。
●温泉でほっこり
ケルベロス達は更衣室を元通りに使えるようにと、修復作業を始める。
更衣室内でステップを踏んでウォーグが花びらのオーラを舞わせると、在宅聖生救世主も翼を広げて極光の光で破壊された場所を幻想で埋めていく。
オニキスも広範囲に混沌の水を浴びせかけ、作業を進める。
その間、守人は大部屋に避難していた女性達を気遣う。
「待たせたな、もう温泉に入れるぜ」
程なく、ロディが作業の終了を伝えると、彼女達は感謝の言葉を口にしていた。
修復作業が終わると、ケルベロス達は宿の経営者より温泉に浸かっていくよう勧められる。
そこで、翼はロディへと目を輝かせて。
「と・こ・ろ・で、この温泉って混浴かなー?」
「……言っておくけど、男女別浴だからな? 翼」
先ほど、男女別浴だと確認したロディは含み笑いをする翼に一言告げてから男湯へと向かう。
守人も浴衣に着替え、同じくそちらへと向かっていたようだ。
かぽーん。
「戦いの疲れを癒すべく! 温泉! だー!」
営業を再開した女湯にて、在宅聖生救世主は両腕を上げて開放感を露わにする。
スタッフからは混浴の誘いもあったが、メンバー達は結局、男女別で温泉を楽しむ。
藍はユリア、美波の傍でのんびりと戦いの疲れを癒す。
「我慢比べ対決でもするか? 吾は勝つ自信があるぞ!」
ただ1人、オニキスは浴場内で力自慢をと呼びかけを行っていたが、オウガの挑戦に応じられる女性はこの場にいなかったようだ。
ほっこりしつつ、体の芯まで温まったメンバー達。
一足早く温泉から上がったウォーグはあぶないみずぎを下着代わりにして、シャツとジーンズに着替える。
他のメンバー達はまだ浴場でのんびりしている。
湯船に浸かるメンバー達は皆、これ以上なくほっこりとした一時を過ごすのだった。
作者:なちゅい |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年6月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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