熊本城ドラゴン決戦~大禍刻の血死行

作者:朱乃天

 稜線の西の彼方に沈んだ太陽が、溶けて滲んで、鮮やかな橙色が瞬く間に広がっていく。
 炎が天を焦がすが如く、夕日が真っ赤に映えるこの日の空は、どこか不気味で不吉な気配を感じさせられる。
 ――夕闇迫る熊本城。黄昏色に染まった空に猛り吼えるは、竜の声。
 斜陽の空を埋め尽くさんばかりの侵空竜エオスポロスの軍勢が、何かに狂ったように次から次へと熊本城を目指して特攻し、自らの身体を爆散させて散っていく。
 見るも無残に全身血に塗れ、翼破れて牙も折れ、それでもドラゴン達は己の命を顧みず。幾度となく熊本城への突撃を、止めることなく繰り返す。
 するとドラゴン達の捨て身の自爆突撃が、その執念が遂に実って、熊本城を覆っていた封印をも打ち砕き。ドラゴン達に破壊され、廃墟と化した城の内部から――怪しい光を帯びた異質な物体が、そこに姿を顕した。

 ヘリポートに慌ただしく緊急招集されたケルベロス達。
 緊迫した空気に包まれる中、玖堂・シュリ(紅鉄のヘリオライダー・en0079)が今回の事件に関する内容を伝え始める。
 熊本市全域で行われたドラゴン勢力との戦いは、最小限の被害で敵を撃退し、無事に勝利を収めることができたのだ。
「でもそうした喜ばしい話がある一方で、竜十字島から出撃したドラゴン達の軍団が、すぐそこまで迫ってきているようなんだ」
 敵の目的は、『熊本城』に封じられた『魔竜王を復活させる事すらできる魔竜王の遺産の奪取』に間違いないだろう。
 先の戦いにおけるケルベロスの活躍によって、グラビティ・チェインの略奪を阻止できた為、魔竜王の遺産の封印は未だ破られていない。
 しかし、この封印を無理やりこじ開けるべく、『侵空竜エオスポロス』の軍団は熊本城に特攻、自爆することでグラビティ・チェインを捧げ、封印を解除しようと企んでいる。
「そこでキミ達には、今すぐ熊本城に向かってもらい、熊本の戦いに参加したケルベロス達と合流し、熊本城の防衛に参加してほしいんだ」
 ドラゴン達のそうした目論見を阻止することが今回の任務だが、敵の目的は、自爆特攻による魔竜王の遺産の封印解除だけではない。
 もう一つの目的として、覇空竜アストライオスと配下の四竜――廻天竜ゼピュロス、喪亡竜エウロス、赫熱竜ノトス、貪食竜ボレアースの儀式によって、封印を解除された魔竜王の遺産を竜十字島に転移させることである。
 魔竜王の遺産が竜十字島に転移させられてしまえば、こちら側から手出しするのは至難となり、ドラゴン勢力の野望を食い止めることは不可能となってしまう。
 それを防ぐ為には、侵空竜エオスポロスを迎撃すると同時に、儀式を行う、覇空竜アストライオスと四竜への攻撃を敢行する必要がある。
 最強種族と謳われる、強大なドラゴンが相手となるが。それでも今後の命運を握るこの戦いに、決して敗北するわけにはいかない。
 ここでシュリは一旦間を置き、ケルベロス達の顔を見回すと、再び任務の説明へと移る。

「キミ達は、まず熊本城に突撃してくる『侵空竜エオスポロス』1体と戦うことになる」
 エオスポロスは覇空竜アストライオス配下のドラゴンで、素早い機動と鋭い斬撃、電撃のブレスなどを得意技とする。
 そして熊本城突入の12分後に自爆し、コギトエルゴスムとなることで、封印解除の為のグラビティ・チェインを放出するようだ。これを完全に阻止する為には、12分が経過する前にエオスポロスを撃破する必要がある。
 もし仮に撃破できなかった場合でも、大きなダメージを与えることができれば、自爆の効果が弱まり、封印を解除するグラビティ・チェインも減少させられる。従って、可能な限りダメージを与え続けるようにしてほしいとシュリは言う。
 更には、儀式を行なう覇空竜アストライオスと四竜への対策も、この戦いと同時に必要になってくる。
 覇空竜アストライオスは、自爆による封印の解除に失敗した場合、儀式を終了させた配下の四竜を犠牲に捧げてでも、魔竜王の遺産を手に入れ竜十字島に送り届けようとする。
 この目論見を阻止する為には、儀式が完成する前に、覇空竜アストライオス或いは四竜の一体でも撃破する必要がある。
 だが、覇空竜アストライオスと四竜は、エオスポロスの軍団の背後にいる為、戦いを挑むにはそれらを突破しなければならない。
 そこで検証の結果、最も成功の可能性が高いのは、侵空竜エオスポロスと戦いながら、少数の飛行可能なケルベロスを突破させ、覇空竜アストライオスと四竜を奇襲する作戦のようである。
 但し覇空竜アストライオスと配下の四竜は、互いに連携して戦うことができる。その為、突破した全戦力を一体の目標に集中させたとしても、他の四竜が妨害してきて、奇襲を挑んだ者達はほぼ確実に撃退されてしまうだろう。
 それを阻止する為には、本命の攻撃の他、残りの4体にも少数での攻撃を仕掛け、連携を崩させることが重要になってくる。
 ちなみに四竜はアストライオスを守ることを最優先に動くので、ある程度の戦力でアストライオスを攻撃しつつ、本命への攻撃を集中させる作戦が最も有効的だと言えそうだ。
 ――ドラゴン相手に仕掛ける一大作戦は、嘗てないほど大きな危険を伴う戦いとなる。
 ケルベロス達にも相応の覚悟が求められ、彼等を戦地に送り届けるシュリはただ、無事の帰還を祈るのみである。
「非常に危険な作戦だけど……キミ達だったら、必ず成し遂げてくれると信じているから。どうかよろしく頼んだよ」


参加者
メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)
大義・秋櫻(スーパージャスティ・e00752)
ダレン・カーティス(自堕落系刀剣士・e01435)
毒島・漆(医猟咒師・e01815)
ミチェーリ・ノルシュテイン(青氷壁の盾・e02708)
鎧塚・纏(アンフィットエモーション・e03001)
リディ・ミスト(幸せ求める笑顔の少女・e03612)
フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)

■リプレイ

●空を統べるモノ
 鮮やかな夕陽に染まった斜陽の空を、覆い尽くさんばかりの巨大な竜の大群が押し寄せてくる。
 熊本市に侵攻してきたドラゴン配下の軍勢を、撃退したのも束の間でしかなくて。
 この熊本城の地下に眠る魔竜王の遺産――『ドラゴンオーブ』の封印を解き放つべく、覇空竜アストライオス率いる侵空竜達が、突撃を仕掛けようと攻め込んできた。
 しかしそうした敵の動きをヘリオライダー達が察知して、ヘリオンに搭乗して駆け付けたケルベロス達が、無事に現地の仲間達との合流を果たす。そして侵空竜が突撃するより先に彼等は戦闘準備を完了し、八人のケルベロス達が一丸となって一体の竜を迎え撃つ。
 待ち受ける番犬達を眼下に見据える侵空竜。開戦を告げる咆哮が響き渡り、加速を上げて急降下、地上のケルベロス達に迫り来る。
「来ます……っ! 皆さん、気を付けて下さい!!」
 声を張り上げ、仲間に注意を促すフローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)。だが竜の機敏な動きにケルベロス達は間に合わず、鋭利な爪の斬撃が、前衛陣を薙ぎ払う。
「……流石はドラゴン、心して掛からなければいけませんね」
 竜の脅威を肌で感じつつ、ミチェーリ・ノルシュテイン(青氷壁の盾・e02708)が気を引き締めるようにヒールドローンを周囲に展開。守りを固めながら仲間の傷を治療する。
「ええ。強敵相手だからこそ、全身全霊を以て皆さんを守りましょう」
 大義・秋櫻(スーパージャスティ・e00752)が手甲から蛇腹剣を伸ばして魔法陣を描き出し、加護の力を前衛陣に付与させる。
「力押しで勝てるような相手じゃなさそうね。先ずはしっかり守っていくのが大切よ」
 侵空竜の雷のブレスを警戒し、メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015) が攻性植物に魔力を注入。宿した黄金色の果実が熟し、聖なる光を発して破邪の力を後衛陣に纏わせる。
 敵は機動力に秀でた個体であるが為、彼等は対策を十全に練ってこの戦いに臨んでいた。
 フローネのオウガメタルが拡散した光の粒子によって、狙撃手達の集中力が研ぎ澄まされていく。リディ・ミスト(幸せ求める笑顔の少女・e03612)が失われたオラトリオの力を、一時的に復元させて解き放つ。
「――これ以上、誰の幸せも奪わせないっ!」
 リディの放った能力は、相手の周囲の空間を支配して、液体状に変質化させるという力。空に創り出された粘液空間が、侵空竜の四肢に絡み付き、拘束するかのように抑え込む。
「俺達に向かってくるのなら、ドラゴンだろうと討つだけですからね」
 そこへ続けて毒島・漆(医猟咒師・e01815)が、霊を寄せ集めて圧縮し、眼鏡の奥の瞳で敵を捉え、生成した霊気の弾を撃ち込み敵の動きを鈍らせる。
「ま、敵がなんであれ、俺達はやるべきことをするだけさ」
 ダレン・カーティス(自堕落系刀剣士・e01435)が青く輝く目を眇め。侵空竜の僅かな隙も見逃すまいと、注視しながら狙いを定めて身構える。
 そして彼の視線の先には、翼を広げて地上に浮かぶ鎧塚・纏(アンフィットエモーション・e03001)がそこにいて。彼女の存在が、この戦いの命運を握る鍵となる。
(「敵にわたし達の目的を気付かれないように……慎重に事を進めていかないとね」)
 紅く煌めく喰霊刀を強く握り締め、刃が喰らった御魂を仲間に分け与えて糧とさせ。強化を施しながら、後は来るべき時を待つのみだ。
 纏が見つめているモノは、目の前にいる侵空竜の更に上。空の頂にいる覇空竜と、配下の四竜達の儀式を阻止すべく、先ずはこの戦場からの突破を目指すのだった――。

●決死行
 6分以内に纏を空へ向かわせようと、侵空竜と相対するケルベロス達。
 機動力の高い個体には、攻撃が当たりづらくて体力を削ることも儘ならない。そこで彼等は相手の動きを抑えることを優先し、そうして一気に大ダメージを与える作戦を選ぶことにした。
 とは言え敵は最強種族であるドラゴン。しかも己の命を顧みず、自爆突撃までもしてくるような相手を討ち倒すのは、容易なことではない。
 侵空竜の口から火花が弾け、電撃のブレスが後衛陣を狙って放たれる。
 空から降り注がれる雷霆を、盾役の秋櫻とミチェーリがカバーに回って受け止めて、ここは被害を最小限に食い止める。
「大丈夫、わたしがすぐに治すから」
 それでも防ぎ切れずに受けたダメージは、回復役のメリルディがすかさず癒しの光で包んで回復させていく。
「どれだけ攻撃してこようとも、このスーパージャスティが全て受けてみせます」
 秋櫻も裂帛の気合と共に力を漲らせ、瞬時に傷を塞いで侵空竜を眼光鋭く睨め付ける。
「盾役を任された以上、この程度で倒れるわけにはいきませんからね」
 またミチェーリも、すぐに態勢を立て直して反撃に出る。しなやかに身体を捻り、妖精のオーラを纏ったブーツから、刃の如く鋭い蹴りを炸裂させる。
「こちらも怯まず攻めましょう。そこです!」
 フローネがアメジストの盾の発生装置を連結させたライフル銃を突き付けて、高出力の冷気を帯びた紫色のビームを発射する。
「今はこのまま攻め続けるのみですね」
 漆は務めて冷静に、敵の行動封じに力を注ぐ。砲撃形態へと変形させた巨槌を取り回し、魔力を充填。撃ち放たれた砲弾が侵空竜に命中し、竜が咆えるが如き爆発音を響かせる。
「相手がすばしっこいなら、こっちは捕まえるだけっ!」
 漆の砲撃によって土煙が立ち上る。それを突き破るようにリディが鎖を投擲し、侵空竜の巨体に巻き付けながら締め上げる。
「こっちの準備も完了だ。いっちょ食らわせてやる」
 ダレンが意識を集中させて精神力を高めると、念じた力は不可視の衝撃波となって、侵空竜の肩が突然爆ぜて肉片が飛ぶ。
 ――ケルベロス達が選んだ作戦は、計算通りに機能を十分果たし、侵空竜の機動を徐々に削いでいく。捨て身の覚悟で迫る竜の猛威にも、メリルディを中心として各自が回復手段を使い分け、ここまで一人も倒れることなく踏み止まって切り抜けてきた。
 そうして戦闘開始から、いよいよ目安である6分後に差し掛かろうとする――。

「そろそろ時間が来たようね。皆で火力を集中させて、一気に仕掛けるよ」
 作戦の第一段階のタイムリミットである6分。これまで回復役に従事してきたメリルディも、侵空竜に打撃を与える為に攻め手に回って攻勢を掛ける。
 魔力を込めて翳した掌が、大気を歪めて竜の形をそこに成す。幻影竜が吐き出す魔法の炎が燃え盛り、紅蓮の紗幕が侵空竜の巨体を灼き焦がす。
「合わせますよ、ミチェーリ。――“翠晶剣“と“雪風”の剣舞、貴方に受け切れますか」
 普段は盾役を担うフローネだったが、今回はその役目を信頼している二人に譲り、自らは道を切り拓く為の剣として、使命を全うしようと翠石色の剣を振るう。
「了解しました――この一突きで穿ち抜く! 露式強攻鎧兵術、“氷柱”!」
 合図を受けたミチェーリも、息を合わせて同時に動く。冷気のオーラを圧縮させた氷の杭が高速射出され、正確無比の一撃が、竜の身体を刳り貫くように突き刺さる。
 その攻撃に重ねるようにフローネが、『姉』の形見である動力剣を振り下ろす。翠と白の軌跡を描く二人の舞いが侵空竜を翻弄し、そこへヒロインスーツを纏った秋櫻が、二人と入れ替わってチャージを掛ける。
「――近接高速格闘モード起動。ブースター出力最大値。腕部及び脚部のリミッター解除。対象補足……貴方は私から逃れられません」
 マントを靡かせ戦場を駆ける秋櫻の、目にも止まらぬ速度で繰り出す拳と蹴りの乱舞技。あらゆるモノを砕く最大威力の攻撃が、侵空竜に更なる打撃を打ち付ける。
「ガアアアァァッッ!!」
 ケルベロス達の猛攻に、侵空竜が目障りだと言わんばかりに吼え猛る。そして彼等を排除すべく、狂ったように雷の雨を降り落とす。しかし護り手達がこの攻撃を後ろに逸らさないよう防御して、その隙をリディと漆が掻い潜り、手を緩めることなく切り込んでいく。
「纏ちゃんを、絶対空に送り届けるよっ!」
 白い翼で滑空するように、リディが侵空竜の背後に回り込む。身に纏ったオウガメタルが彼女の想いに同調し、硬度を増した鋼の拳を竜の脾腹に捻じ込んだ。
「この絶好機、逃すわけにはいきませんからね」
 漆が凍気を帯びた槌を大きく振り被り、命を砕かん程の超重力の打撃を叩き込む。
 侵空竜の骨が軋んだような鈍い音が鳴る。ケルベロス達の息もつかせぬ波状攻撃は、侵空竜に一定以上の負傷を与え、敵に大きな苦痛を齎していく。
「さーて……そんじゃ、俺もキメてやりますかね……!」
 飛び発つ準備をしている纏に言葉で合図するように、ダレンが一歩前に出て、竜の注意を自身に引き付けようと歩み寄る。
 抜いた刃は雷宿し、紫電の如く奔る超高速の一閃は――大気を断って侵空竜の巨体までもを真一文字に斬り裂いた。
「さあ、行ってくるわね、みんな」
 突破役の纏が翼を羽搏かせ、間隙を縫うかのように侵空竜の脇を摺り抜け高く飛翔する。
 右に2枚、左に1枚と、左右非対称の不揃いな翅を翻して空を往く。その間際、ダレンと瞳を合わせ、刹那の逢瀬に愉悦して。不敵に口元歪めて微笑み交わし、彼女は自身の戦場に向かうのだった。
「――わたしの途に、あなたはいらない」
 鈍色の瞳に捉えしは、赤闇色の空に蠢く廻天竜。決意を込めて飛び行く彼女に、ダレンは目配せしながらその背中を頼もしそうに見送った――。

●激闘の果て
 目的の一つを無事に果たしたケルベロス達。後は7人で、残りの6分間を戦い抜いて、侵空竜を討ち取るのみである。
 対照的に突破を許してしまったドラゴンは、もはや形振り構ってなどいられない。ならば手近な者から倒そうと、獰猛な竜の顎門が開かれて、ダレンを狙って喰い掛かろうとする。
 ――ところがその時、一つの影が彼を遮るように躍り出る。
「例えドラゴン相手でも、正義は絶対――負けません!」
 秋櫻が咄嗟に間に割り込んで、壁となって身を挺してダレンを庇う。しかし牙の破壊力は暴力的なまでに凄まじく、彼女の鋼の肉体を物ともせずに噛み砕き、深々と四肢を抉られ致命傷を負ってしまう。
 これまで蓄積された傷も相俟って、秋櫻は力無く蹌踉めきながら膝を突く。
 正義を掲げる少女の、意識はノイズがかかったように薄らいで。奮い立たせる気力も尽きていく、その前に、彼女は残った仲間に想いを託し――暗転していく世界の中に倒れ墜つ。
「……こっちの戦いは、これからが本番ね。さあ――抱えてるもの、教えて?」
 メリルディの顔付きが一瞬険しく強張るが。気を取り直し、これ以上仲間を傷付けさせるわけにはいかないと、ミチェーリに癒しの力を行使する。
 ケルスに咲いたアルメリアの金平糖を口に含ませて、甘い香りが互いの意思を共有させることにより、治癒を高める効果を発揮する。
「全ては想定内、するべきことは変わりませんから。“重刃争術”……瘴刀【叫獄】」
 漆が落ち着き払った態度で状況分析し、眠れる力を呼び起こす。
 地獄の瘴気を武器に宿して太刀に変え、侵空竜が負った傷口狙って斬り付ける。すると纏った瘴気が厄を増幅し、呪いを掛けるが如く竜の体躯を蝕んでいく。
「こんなところで負けてなんかいられないからねっ! みんなで一緒に帰るんだからっ!」
 翼をはためかせながらリディが接近。飛び跳ねるように竜の身体を駆け上がり、くるりと回転しながら華麗な蹴りを竜の首根に見舞わせる。
 一人を欠いてしまっても、彼等の闘志は少しも衰えない。むしろ互いの絆を強めることになり、竜の脅威も臆することなく、得意の連携力を活かして乗り越える。
 一撃の威力に勝るドラゴンに、手数を重ねて攻めるケルベロス達。前半戦に敵の力を削ぎ落とすという作戦が、功を奏して徐々に侵空竜を追い詰めていく。

 ――熾烈を極めた戦いも、残す時間は後3分。
 ケルベロス達は撃破を狙い、ここが勝負所と総攻撃で一気に畳み掛けようとする。
「……ったく、いい加減にくたばりやがれ!」
 ダレンも満身創痍の状態ではあるが、気力を振り絞り、傷だらけの身体を引き摺りながら竜を討ち倒そうと立ち向かっていく。
 侵空竜が鎌首もたげて喰らい付こうと牙を剥く。だがそれより先にライフル銃を構えて照準合わせ、大きく開いた竜の口内目掛けてトリガーを引く。
 一直線に発射された光線は、慌てて躱す竜の喉へと直撃――深手を負わせはしたものの、倒れるまでにはまだ至らない。
 手負いの竜にはもう後がなく、死に物狂いでダレンに襲い掛かって牙を突き立てる。
 この攻撃を回避しようとするダレンだが、身体は動かず抗うこともできなくて。そして無情にも、彼も牙の餌食となって力尽きてしまう――。
 また一人、大事な仲間が倒れていくが、ケルベロス達は侵空竜に止めを刺す為、火力を集めて怒濤の猛攻撃で一心不乱に攻め立てる。
 後ひと押しまで追い込む番犬達だが、敵もしぶとく食い下がり、遂に時間は11分を経過してしまい――侵空竜は熊本城への突撃を敢行すべく、強引に包囲網を突き破ろうとする。
 この窮地の事態にミチェーリは、身体を張って突撃を受け止めようと、躊躇うことなく侵空竜の前に立ちはだかった。
「青氷壁の盾として、これ以上はやらせません!」
 ――激突し合う、力と力。
 全身が砕かれそうな烈しい衝撃も、必死に気迫を滾らせながら耐え凌ぎ――力を使い果たしたミチェーリは、気を失ってその場に崩れ落ちてしまう。
 だが彼女の我が身を厭わぬ行動が、竜の自爆を塞き止める。そんな彼女が示した覚悟と『ココロ』を受け継いで、翠晶剣を手にしたフローネが、この戦いに決着を付けるべく――剣に全ての力を注ぎ込む。
「貴方達の野望もこれまでです。最後はこの一太刀で――全てを終わらせます!」
 渾身の力を込めて振り抜かれた斬撃は――侵空竜の首を斬り落とし、敵の息の根を止め、その生を断つ。
 斯くして彼等は、ドラゴン撃破の結果を以て、この戦いに終止符を打ったのだ。

 ――その直後、どこからともなく激しい爆発音が、戦場一帯に轟き響く。
 何事かと振り返って見てみれば、他の侵空竜の自爆によって、熊本城が崩壊していく様子が目に入る。
 巻き上がる砂煙が城を覆い隠して、数分後――漸く砂煙が晴れたと思ったら、熊本城のあった場所には、怪しく輝くドラゴンオーブがその姿を顕した。
 周囲の空間は、オーブの光に共鳴するかのように振動し、発する禍々しい気は近付く者を撥ね退ける。ドラゴン達の目論見は阻止したものの、このオーブについては未だ謎のまま。
「……ひとまずオーブのことは後にして、ここは一旦引き返しましょう」
 とにかくこのまま留まるわけにはいかないと。彼等は新たな謎を抱えつつ、急いでこの地を離脱した。

作者:朱乃天 重傷:大義・秋櫻(スーパージャスティ・e00752) ダレン・カーティス(自堕落系刀剣士・e01435) ミチェーリ・ノルシュテイン(青氷壁の盾・e02708) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年7月7日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。