オークとスポーツジム

作者:あかつき


「私のスライムも一緒につれていって活躍させてください!」
 スライム忍者・雷霧が、オークにスライムを手渡す。それを受け取り、オーク達は互いに顔を見合わせ、それから。
「有リ難クイタダクゼ」
 下卑た笑顔を浮かべ、魔空回廊を開きオーク達は目的地へと転移していく。彼らが転移した先は。
「え……きゃ、きゃあっ!!!!」
 女性限定の会員制スポーツジムのど真ん中。スポーツウェアに身を包んだ女性達、因みに平日昼間なので、学生は一人もいない。
「サア、行ケッ!」
 オークがそう声をかけると、スライムが女性に向かって飛んでいく。みるみるうちに溶けていくスポーツウェア。
「や、やだっ!!!」
 あわてふためく女性達を見て、オークは酷く楽しそうに笑い声を上げた。


「魔空回廊からオークが現れ、女性達を略奪していく事件が発生するらしい」
 頗る不機嫌そうな顔で、雪村・葵はそう言った。
「オークはあまり好きじゃないんだ」
 そう溢す葵だったが、こほんとひとつ咳払いをして、説明を再開する。
「現れる場所は女性限定のスポーツジム。まず先に言っておく事としては、彼女達を先に避難させてしまうとオーク達が別の場所に現れてしまうので、女性達の避難はオーク達が現れてからにしてほしい……ということだ。また、女性達の避難が終わっていなければオーク達に悪戯をされてしまうので、避難は迅速に。あと……」
 非常に良い辛そうに、葵は続ける。
「今回、オーク達は服だけを溶かすスライムを連れている。えー……装備を溶かす力は無いが、服は溶ける。気を付けてくれ」
 女性の人数は15名、オークの数は10体。スポーツジムはトレーニングマシンなども置いているため、面積はそこそこあるが人口密度はなかなかのものだ。オークにリーダーらしき個体はおらず、統率はあまりとれていない。あまり強くはないが、数が多いのが問題だ。なお、スポーツジムの出入り口は2つ、対角線上にある。扉は人が三人並んで通れる程度の幅しかない。
「服を解かすスライムは、服を溶かすと消えてしまうので持ち帰る事もできないが、戦う必要も無い。そこらへんを考慮に入れて、なるべく被害を少なくして解決して欲しい」


参加者
マキナ・アルカディア(蒼銀の鋼乙女・e00701)
アルメイア・ナイトウィンド(星空の奏者・e01610)
ラプチャー・デナイザ(真実の愛を求道する者・e04713)
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)
除・神月(猛拳・e16846)
天司・桜子(桜花絢爛・e20368)
フィー・リズリット(ドアブレイカー・e24735)
黒江・神流(独立傭兵・e32569)

■リプレイ


 昼間のスポーツジムの女性達は、ルームランナーで走っていたり、エアロバイクを漕いでいたり。そんな中、オークの来襲まで客達に紛れて運動に汗を流すケルベロス四人。勿論、全員女性である。
「ふぅ……こういう運動もたまには良いものね」
 一人で使うにしては多く、そしてやたら大きいタオルを横に置き、エアロバイクを漕いでいたのはマキナ・アルカディア(蒼銀の鋼乙女・e00701)。タンクトップにレギンスというスポーツウェアに身を包む彼女は、エアロバイクから降りて一息吐く。その向こう側では、フィー・リズリット(ドアブレイカー・e24735)が楽しそうにルームランナーの上を全速力に近い速度で走っていた。先程までは普通にアップ程度に軽く走っていたのだが、いつの間にか本気になってしまったらしい。
「はしるのたーのしー!!!」
 純粋な地球人以外も勿論訪れるスポーツジムのため、ルームランナーの限界も高めに設定されてはいるものの、ケルベロスの速度と体力にどれくらいついてこれるだろうか。
「ちょっと疲れちゃった」
 そう言って、天司・桜子(桜花絢爛・e20368)は壁際に置かれているベンチに腰掛ける。
「このぐらい楽勝だゼ!」
 筋力トレーニングマシンの並ぶ一角では、除・神月(猛拳・e16846)がベンチプレスでトレーニングを行っていた。そこへ歩いてきたのはアルメイア・ナイトウィンド(星空の奏者・e01610)。チューブトップにホットパンツ、頭にはスポーツキャップ、肩には青い上着を引っ掻けている。左右に目を向け、受付で貰ってきたパンフレットに視線を落とし。
「ルームランナー、エアロバイク……ねぇ」
 なるほど、と頷くアルメイアは、どこからどう見てもスポーツジムの見学に来た一般人だった。

「スポーツジム……運動……うっ、筋肉痛……」
 裏手の道路でガードレールに凭れかかり、スポーツジムの方を見ているのはラプチャー・デナイザ(真実の愛を求道する者・e04713)。
「しかし、真っ昼間からスポーツジムとは……人妻の方達なのでござろうか。それならば尚更、助けなければならないでござる」
 先程とは打って変わってやる気に満ちたラプチャーは、拳をぐっと握りしめる。
「装備がなければ私も少し汗をかきたいところなんだがな……」
 その横では、黒江・神流(独立傭兵・e32569)が少し寂しそうに呟く。かっちりと装備を着こんだ神流は確かにスポーツジムでは目立つだろう。正直裏通りとはいえ道路でも目立つ格好ではあるが、隠密気流の効果で全く通行人は神流の存在や格好の違和感に気が付く様子はない。
「移動しようか」
 神流は時間を確認し、ラプチャーに目を向け、二人でスポーツジムの出入口の方へと歩いていく。その出入口から少し離れた所には、ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)が用意したタオルが置かれている。
「いざとなったらこのタオルを使ってもらうでござるな」
 ラプチャーは確認しながら、扉の方へと向かっていった。


「これで準備はおっけー、ですね」
 タオルをラプチャーや神流の待機する出入口に置いた後、ミリム本人はもう一つの扉の方へと向かっていた。そして、武器を持ち、一つ息を吐く。時間を確認すれば、そろそろオーク達が現れる時間だ。気を引き締めないと、とミリムが気合いを入れ直した、その時。
「きゃあぁっ!!!!」
 スポーツジムの扉の向こうから聞こえた女性の悲鳴。
「女ダラケダ」
 下卑た声は、オークに間違いない。ミリムはドアノブを捻り、扉を開け放った。それとほぼ同じタイミングで、もう一つの扉も開く。ジムの中にいたオークは予知通り十体。その手には、ねとーんとしたスライムが。
「グフフ……コイツラノ泣キ叫ブ様ガ……ゴフッ!!」
 開いた扉を気にせず、いやらしく笑うオークの横っ面に、神月の強烈な蹴りが入った。
「来ナ。思いっきり可愛がってやんヨ♪」
 にやりと楽しそうに口角を上げ、神月は目を細める。
「貴様カラ餌食ニシテクレル……コノ、すらいむノナ!!」
 言うや否や、オークはスライムを神月に向け、アンダースローで投げつけた。嫌がるだろうと楽しみにしていたオークであるが、神月の反応は予想と違った。
「おい、まさか溶かすだけで満足しちゃいねーだろーナ?」
 スライムのかかった服が溶けていくが、神月の構えは解かれない。服に関しては、とりあえず奇跡的にまだ大事なところは見えていない。
「グッ……何カ思ッタノト違ウガ、マァ良シ!」
 開き直ったオークは、その身体から触手を伸ばした。

「えっ、何? 何なの?」
 慌てる女性達を安心させるように、桜子は声を発する。
「大丈夫、桜子達はケルベロスだよ。皆の安全は保障するから、どうか慌てずに」
 近くの女性の背をそっと支え、左右の出入口に均等になるよう避難誘導していく。
「はーいはいはいはい、扉の近くに誘導してくれてる子がいるからね、慌てず騒がず迅速に逃げてねー」
 光の翼を広げ、ぱたぱたと両手を上下させて避難誘導に当たっているのはフィー。その翼の裏側にはオーク。庇っているのは避難する女性達。
「邪魔スンナ! オラッ!」
 オークがぺいっ、と投げたスライムは、フィーの背中に命中。どろりと溶けていくスポーツウェア、しかしフィーは全く気にする様子もなく。
「アレッ……?」
 こっちのオークも、キャー! エッチー! な展開を望んでいたのだが、肩透かしを食らい首を傾げる。
「スライムなんかに負けないよっ!」
 ばっちこーん、とウインクしてみせるフィーは、なんだかやたらと頼もしく見えた。
「早く逃げるでござるよー」
 片方の出入口付近で避難誘導に当たるラプチャーは、のんびり構えている。というのも、さっきオークがちらりとラプチャーに視線を向けた後、なんだ男かと呟き溜め息を吐いたから。いざバトルともなれば別だろうが、今現在まだ女性達の避難は終わっていないのだ。オーク的には、興味のない男よりも女性、といった所だろう。
「大丈夫でござるか?」
 顔を真っ青にした女性に、服は溶けていないが安心させる為、とりあえずタオルを手渡した。その際に、ラブフェロモンを撒く事も忘れない。
「は、はい……ありがとう、ございます……」
 ラプチャーの顔を見つめた後、女性は顔をタオルで押さえつつ、駆け足で逃げていく。ラプチャーはそんな彼女の背を、笑顔で見送ったのだった。

「急いで!! 此処にも!!」
 もう片方の出入口付近では、ミリムがぶんぶんと手を振っていた。
「や、やだ……っ!!」
 オークの触手が、数メートル先の女性に伸びる。触手を伸ばすオークの手にはでろでろしたスライム。ミリムはそれを見て、慌てて駆け出しショルダータックルをかます。
「グボッ!」
「今の内に!」
 オークがよろめいた隙に、ミリムは女性を逃がす。そんなミリムに、オークは報復のつもりかスライムを振りかぶる。
「食ラエッ!!」
 べちゃ、とスライムがミリムに当たるが、ミリムは慌てない。
「服は溶かすけど装備は溶かさない……なら防具は安心!」
 ふん、と胸を張るミリムだが、直後に違和感に気付き、目を見開く。防具には勿論隙間があり、その下には、防具でないものもある。つまり。
「下着が、下着がぁあ!?」
 途端に慌て始めるミリムを見て、オークはげへげへと笑いながらその触手をミリムへと伸ばす。
「ちょ……まっ、ひうっ! 何処触ってるんですか?! 変態ー!」
 胸の辺りへと伸びた触手に動揺したミリム。彼女は触手を涙目で叩き落とした。
「きゃ……やめてっ!!」
「しまった……!!」
 オークはミリムが僅かに動揺した隙を狙い、別の女性へも触手を伸ばす。ミリムが咄嗟に武器を構えた瞬間、鳴り響いたのはギターの音。奏でられるのは、光の意志と希望の歌。
「ここは私達が引き受けた! さあ、とっとと逃げな!」
 二本のバイオレンスギターを合体させ、弦を激しく掻き鳴らすアルメイアが女性に向けて頷いた。彼女はアルメイアが予め発動させていたフェスティバルオーラによりテンションが高いが、アルメイアのその声には頷き、逃げていく。
「ッチ……獲物ニ逃ゲラレタジャネェカ!!」
 アルメイアの攻撃にふらつくオークだが、舌打ちするやいなや執念で手の中のスライムを投げつける。
「くそっ、テメエ、今回布の余裕があんまりねーんだぞ!?」
 チューブトップにへばりついたスライムは、徐々に布を溶かしていく。慌てたアルメイアはスライムを剥がすのに躍起になる。その隙にオークの触手は背後から迫り、そして。
「うわっ、ちょ……!? 離せ!? うおあ!?」
 にょろにょろ動く触手が身体の表面を舐めるように撫でていく。そして触手は足を掴み、持ち上げる。
「やめ、この豚野郎、調子に乗んな、おらぁ!?」
 アルメイアは色々と弄られながらも、意識を集中し、拳をぐっと握った。

「服を溶かすスライムなんていうご都合的なスライム、存在するのね……」
 ぼろぼろになったタンクトップをおさえつつ、マキナは呟く。その頬は真っ赤に染まり、恥ずかしさを堪えているのは明らかだ。それでも伸びてくる触手をエクスカリバールで薙ぎ払い、オークの気が削がれない程度に応戦していく。しかし。
「っ!!」
 遂にオークの触手がマキナの足を捉える。這うように蠢く触手に、マキナは顔をしかめ。
「オークと戦うたび、何かが目覚めそうな感覚になるのは気のせいかしら?」
 呟きながらも、自由になる両手でウイルスカプセルを構え、オーク達に向けて投射した。
「グゥッ!!」
 ぐらりと姿勢を崩すオーク達に、神流がガトリング連射を食らわせていく。残った一般女性は、あと二人。僅かに服の端が溶けているが、大した被害は無さそうだ。このまま逃げ切ってくれれば、と神流が思った瞬間、オークの触手が女性へ向け伸ばされる。
「危ない!」
 咄嗟に女性を庇うために身を投げ出した神流。果たして、オークの触手は女性では無く、神流を捉えた。
「逃げろ!」
 頷き、足を縺れさせつつも走って逃げていく女性に、神流がほっと息を吐いたその時。
「っ……何を……!!」
 装甲があるからスライムは効かないと高を括っていた神流だが、どこをどう入ってきたのか素肌に当たる触手の感触に目を見開く。いつの間にか両手は触手に絡め取られ、動きが取れなくなっていた。
「あっ……、やめ……っ!!」
 オークの顔に似合わず、繊細な触手の動きに僅かな快感を感じ始めた神流は、顔をしかめて唇を噛む。
「グヒッ……気持チ良インダロウ?」
 にやにや笑うオークを、神流が顔を真っ赤にして睨み付けたその時。
「人が創り出した文化の結晶、それをその身で体感出来るなんて幸せな事でござるよ? ……なーんて、な」
 ラプチャーが放った魔術は、神流を拘束していたオークを吹き飛ばし、大爆発を起こした。
「避難完了でござるよ~」
 木っ端微塵になったオークを前に、ラプチャーは報告する。囮役の女性ケルベロス達がはっと顔を上げた。ラプチャーはその時初めて、落ち着いて彼女達の状況を視認する事が出来たのだが。
「ふっ、これでござる。スライムで溶ける服、恥ずかしがる女性。良いでござる! スキルむはー」
 これがなかなかに美味しい景色だった。
「ラプチャーさん……どこ見てるんでしょうか?」
 呟きながら、ミリムはさっとオークから距離を取り、グナロクブレイドを構える。
「何はともあれ、10倍返しは覚悟してくださいね!!」
 そして、ミリムは紋章を描き出す。
「狂王顕現!!!」
「ヒィ!!」
 狂気恐怖を呼び出す王の出現に、オーク達は右往左往したり、その場に倒れて遂に動かなかったり。
「さっきのお返しに……私からの贈り物だ、とっておきの『死』をくれてやる」
 そう言うや否や、神流は加速し、漆黒の風となる。そして、恥ずかしい記憶を焼き払うかのように、オークの身体目掛けて弾丸を叩き込む。
「グハッ……」
 弾丸をこれでもかと言うほどに撃ち込まれたオークは、膝から崩れ落ち、俯せに倒れた。
「オラァ!!」
 残ったオークがその触手をケルベロス達に伸ばしたその時。
「ドアさん、あの子守ってね!」
 フィーのドアームドフォートに装備された緋色蜂師団のドアが触手を阻む。
「邪魔ダ!!」
 しかしオークの女性に対する執念は、生半可なものではなく……程なくして、ドアを破る。
「覚悟シロ!!」
「覚悟するのは、あなた達の方なんだから」
 笑うオークがドアの隙間から見たのは、桜子の周りに舞う桜の花弁。
「桜の花々よ、紅き炎となりて、かの者を焼き尽くせ」
 桜の花弁は紅蓮の炎となり、オーク達を焼いていく。炎が消えた後、残ったオークはあと三体。
「グヌゥ!!」
 唸りつつ、触手を伸ばす一体のオークに、マキナの胸部の銃口が向けられる。
「ヤ、ヤメ……!!」
「女性の敵の排除行動に移るわ。怒りの一撃、受けるといいわ」
 放たれたエネルギー光線は、オークを跡形もなく吹き飛ばす。
「コノォ!」
 それを見て拳を振りかぶったオークに、神月はにやりと笑う。右の拳を左の掌に叩きつけ、そして。
「知らねーんなら教えてやるヨ、あたしってばサイキョーなんだゼ!」
 全身全霊の力を込めた右の拳は、オークの腹部にめり込んで、吹き飛ばす。
「ゴハッ!」
 壁にぶつかったオークは、ぴくりとも動かなくなった。
「ヒッ」
 最後の一体がそれを見て飛び上がった瞬間。
「唸る原動機響く破砕の音よ、割れた白い欠片散って辺りに舞う。紅き死化粧更に悩ましくなる。飛び散る真紅浴び……今宵、地獄へ堕ちる!」
 アルメイアの手に、ギターが変形した芝刈機が。唸りを上げる芝刈機は、オークを容赦なく切り裂いた。


 ヒールを終えたケルベロス達は、ほっと一息吐く。
「薄着でもいい季節になったけど、薄着とかそういうレベルじゃねー……」
 腐った目でぽつりと呟くアルメイアに、ミリムが残っていたタオルを被せる。
「そろそろラプチャーさん、帰ってくるんじゃないですか?」
 怪しい目で怪しい所を見ていたラプチャーは、罰としてスポーツジムの職員にシャワーを貸して貰えるよう交渉に向かっていた。ややあって、出入口が開く。
「オッケーでござるよー」
 その報告に、マキナがふっと顔を綻ばせ。
「さっぱりゆっくりしましょう」
「私も汗を流してから帰りたいと思っていたんだ。助かったよ」
 神流もほっと息を吐く。
「後でみんなにちゃんと安全になったよって報告にいかないとね」
 そう言う桜子に、フィーも頷き。
「怖い思いさせちゃったから、ごめんなさいしないとね」
 倒した事には倒したけれど、恐怖は残るから。そう言うフィーにケルベロス達は同意をしつつ、シャワーの方へと向かう。
 こうして、怒りに燃える女性ケルベロス達によりオーク達はぶちのめされ、女性達の平和は守られたのだった。

作者:あかつき 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年6月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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