死神少女の家庭訪問

作者:木乃

●招かれざる訪問者
 例年より早い梅雨明けに、帰路に就く間も暑い西日が容赦なく照りつける。
「うぅぅ……暑い。なんすか、この熱気は。梅雨明け早すぎじゃないっすか?」
 少しよれた学生服姿の金剛・吹雪(シスコンスマホ少年・e26762)はビハインドのハルナに横目を向ける。
「ねぇ、姉ちゃんもそう思わない?」
 尋ねてみても、ハルナは口元に優しげな微笑を浮かべるだけ。まるで、駄々をこねる弟を見守るように。
 大きな溜め息を吐く吹雪が、慣れた手つきで施錠を外して家に入ると――。
「お帰りなさい、人間ってこんな時間までお出かけしてるのね」
 見知らぬ少女がリビングでくつろいでいた。
 ちょこんと座るゴシックドレス姿は愛らしいものだが、膝の上に置かれた禍々しい鎌が異様さを引き立てる。
「な、だ、だ、だだだ……!?」
「早速だけど死んでくれない? そうじゃないと、わたしの『モノ』にしてあげられないの」
 幼い少女は殺気立ち、可憐に微笑む。
 髪が揺れる仕草に合わせ家具がふわりと浮かび上がった。
「――ッ、ハルナぁ!!」
 明確な敵意を感じ取り、吹雪も急ぎ戦闘態勢に入る――。

「金剛・吹雪様が死神の襲撃を受けることが予知されましてよ・どうやら以前に倒した宿敵と間接的な縁が結ばれてしまった、と言うべきかしら」
 オリヴィア・シャゼル(貞淑なヘリオライダー・en0098)は思考を整えるように、こめかみをトントンと指先で小突く。
「事前に連絡しようと試みたのですが、どうやら校則の関係でマナーモードになさっていたようで……金剛様が事態に気付く余地がございませんわ」
 油断しきったところで襲撃されれば、一息に攻め落とされることが予想される。
 なんとしても吹雪の救援に向かわなければ。
「襲撃者の名は『テレス』という少女型の死神ですわね。どうも以前に金剛様を襲った死神と関係があったようですが、詳細な関係までは判明していません。唯一判明していることは『テレスは金剛様を欲している』ことでしょうか」
 『私物化する』と言っても、デウスエクスにケルベロスの力は無用。
 むしろ無用の長物。だからまずは殺してしまおう――という結論に至ったのだろう。オリヴィアはそう考えている。
「テレスは金剛様が帰宅した直後に姿を現しますわ。事前に待ち伏せしても、別の場所から襲撃する恐れがありましてよ。あくまで『金剛様の帰宅直後』に乗り込むようになさってくださいませ」
 他のケルベロスの家に上がり込むのは気が引けるだろうが、非常事態だ。最優先すべきは救援であることをオリヴィアは強調する。
「テレスの攻撃は大鎌と超常能力を駆使したものですわ。瞬時に死角へ入り込んだ鎌での攻撃、ポルターガイストのような念力による場を撹乱する攻撃。それと下級死神の幻を放出して生命力を奪う攻撃ですわね」
 特に鎌での攻撃はほぼ確実に命中させる。まさに『命を刈り取る一撃』になり得るだろう。
「若いケルベロスが多いだけに、学業を終えたばかりのタイミングは気が緩みやすいでしょう。皆様も油断されませぬように」


参加者
ファルケ・ファイアストン(黒妖犬・e02079)
西村・正夫(週刊中年凡夫・e05577)
多留戸・タタン(知恵の実食べた・e14518)
タキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)
金剛・吹雪(シスコンスマホ少年・e26762)
刻杜・境(融けた龍血結晶・e44790)
ゲンティアナ・オルギー(蒼天に咲くカンパーナ・e45166)
オニキス・ヴェルミリオン(疾鬼怒濤・e50949)

■リプレイ

●青天の霹靂
 リビングは嵐が巻き起こったように家具が飛び交っていた。
 ビハインドのハルナは金剛・吹雪(シスコンスマホ少年・e26762)守護するように立ちはだかる。
 飛来する花瓶を弾き返し、テレスはさらに数冊の本を放つ。すでに室内は破片や小物で散乱していた。
「勝手に人の家に上がり込んで、不躾な奴っすね!?」
「きゃははっ! イイ顔ね。ほら、もっと怯えて。もっと苦痛に歪んでみせて!」
 幼い少女の姿を模す死神・テレス。無邪気に微笑む彼女に一切の容赦はない。
 ソファの影に潜む少年を追い詰めようと、浮遊する内装を囮に大鎌を振りかぶり――。
「ごーめーんーくーだーさーい! タタンでーす!」
 阻止しようと勢いよく突き破られた窓から二つの影。
 多留戸・タタン(知恵の実食べた・e14518)とミミックのジョナ・ゴールドだ。
 ジョナとタタンが飛びついた隙に、後続のケルベロスも荒れた屋内へ追随する。
「緊急事態と聞いてダイナミック家庭訪問させてもらったよ」
「吹雪くん。お家の被害が増えないうちに外へ」
 ファルケ・ファイアストン(黒妖犬・e02079)が牽制しつつ、その隙に西村・正夫(週刊中年凡夫・e05577)が吹雪の手を引く。
(「これは、随分やられましたね……」)
 文字通り、足の踏み場もない状態にタキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)が眉を顰めた。
 突き飛ばされたジョナがタキオンの足下に転げてくると、軽くホコリを払うテレスと視線がかち合う。
「邪魔しないでくれる?」
「テレスさん、吹雪さんに手出しはさせませんよ。それと他人の家に無断で上がってはいけません」
 『物知らずな死神だ』と挑発めいた言葉を投げかけると、テレスの表情は冷ややかなものに。
「そんなに構って欲しいの? じゃあ、ゴミみたいに刻んで魚の餌にするわね」
 夕闇に紛れて仕掛けた凶刃を、刻杜・境(融けた龍血結晶・e44790)が受け止める。
 鋭利な刃は両腕に食い込み、血染めの包帯をいっそう赤くさせた。
「外へ出るぞ、急げ!」
 好機だとオニキス・ヴェルミリオン(疾鬼怒濤・e50949)が先導し、急ぎ玄関口から飛び出す。

 夕飯の買い出しに出ている者が多いのか、表通りに人通りはない。好都合な状況だ。
 正夫に連れられた吹雪も外に出て、陽動する前衛陣と共にテレスが西日に晒される。
「卑怯者の死神が! なんで襲ったか知らないけど、キツいのお見舞いしてあげる!!」
 ゲンティアナ・オルギー(蒼天に咲くカンパーナ・e45166)のブラックスライムが針のように細く伸びるが、テレスは幻霊を放ってゲンティアナの攻撃を逸らしてみせた。
(「……死神? まさかあいつ……?」)
「レムとどういう関係っすか!!」
「レム? ……ああ、まだあんな奴を覚えてたの」
 電波を飛ばす吹雪の問いにテレスはしらけ顔。
 『レム』という名にも好意的な物言いではない。むしろ大鎌をバトンのように回す手は鋭さを増す。
「あなたはテレスの『モノ』になるの。さっさと忘れちゃって」
 言い捨てたテレスの背後を霊魂が埋めていく。
 降り注ぐ冷たい紫焔を受け止めようとタタンと境が遮り、肌を撫でる焔は体温を奪うように生気を吸い上げた。
「西村のおじさま、西村のおじさま。この人、ストーカーですね? しかもサイコ入ってるですよー」
「多感な年頃でこういう経験をすると、悪影響が残りかねないんですがねぇ」
 わざとらしく怖がるタタンに、正夫も心配そうにゾディアックソードをアスファルトに突き立てる。
 守護星座の加護を受け、タキオンはヘルレーザーの銃身を構える。
 冷凍光線から畳みかけようと、ファルケの獄炎を纏うグリップの殴打が頭上から降り、
「……クスクス」
 少女は陽炎のようにフラリと身を揺らす。そんな挙動で地面を穿つ一撃を軽くいなした。
(「こいつは、見た目で判断したら危険だな」)
 飛び退くファルケの頬に、帽子の陰から冷や汗が垂れる。
 念力で飛ばされた鉢植えや屋根瓦をハルナが受け止め、回転鋸の騒音を響かすオニキスが躍り出た。
 着地と同時に踏み込むオニキスは鍔迫り合いに持ち込んでいく。
「勝手に上がり込むとは無礼な輩め……汝、どこから侵入した!?」
「あら、『普通に』入っただけよ?」
 火花を散らす剣戟。
 オニキスの豪快な一撃が着実に削っていくが、同時にテレスもオニキスの身にいくつも傷を増やす。
 数合の打ち合った末、押しきったテレスは返答と同時に錆びた自転車を叩き落とす。
 デウスエクスが痕跡を残さず、目立つことなく特定の場所へ潜入する――その手段は『ひとつ』しかない。
(「…………もしかして、魔空回廊で?」)
 どこへでも通り道を創造できる『魔空回廊を経由した』なら、境も合点がいく。
 影から影をすり抜けるテレス。追い回すゲンティアナは忌々しそうに舌打ちする。
「そういう独占欲強いのは嫌われるのよ。それに、どういう目的でケルベロスを狙ってるの?」
「あなたこそプリプリ怒ってて怖いヒトね、そんな怖いヒトには教えてあーげない」
 大口を開くブラックスライムをテレスは軽々と飛び越えた。
 飛び越えざま、ゲンティアナの右腕に傷を残し、すかさず間合いをとる。
「ゲンティアナ、隙を作る。タイミングは合わせる」
 境が真正面に飛び込み、至近距離から脚を振り上げた。眼力で見抜く命中率から避けられる可能性は否めない。
 だが、重要なことは注意が逸れたこと――――!
「キツいのお見舞いするって……言ったでしょッ!!」
 大きく踏み込んだゲンティアナが脇腹めがけてソバットを叩きこむ。
 小さな身体がくの字に曲がった直後、境の健脚がテレスの右肩に大斧の如く振り下ろされた。

 地滑りしながら踏ん張るテレスは僅かに顔を顰める。
 吹雪もオウガメタルを纏った拳で追随するや、飛び交う魂魄に狙いを逸らす。
 飛び回る偽りの魂から庇護しようとハルナは吹雪を抱き留め、ひしゃげた自転車を飛ばし返す。
「幽霊モドキのくせして……テレスのモノに触らないでよ!」
「ハルナ避けてっ!」
 気安く触れるサマが癪に障ったらしく、テレスは幼い相貌を歪めて殴るように斬りつける。
 吹雪も尖らせた金剛石を瞬時に生成し、崩れだしたハルナを追い回すテレスに乱れ撃つ。
(「これは、長期戦を覚悟したほうが良さそうですね……」)
 ケルベロスは眼力によって命中率を判断出来る、支援する正夫も例外ではない。
 変動し続ける目測の数値。この乱戦でほぼ確実に命中させているのはオニキスのみ。
 経験豊富なケルベロスに属するタキオンやタタン、ファルケですら空を切る場面があった――事前に力量を計りきれない以上、備えるべき部分は一考の余地があった。
「……もう少し支援する方針を吟味すべきでしたか」
 いや、今さら思案しても詮無きこと。
 齢を重ね、低くなった声に正夫は希望の歌をのせる。
 年季のこもった歌声が癒やしの力を広げていく。
 ……吸魂の嵐。念力による不意打ちからの大鎌にタタンと境も対応に走る。
 身代わりに受け止めることで、二人は体温と生気が奪われていく感覚に目眩を覚えていた。
「うー……お手伝いするです、西村のおじさま! ――甘いは美味い。美味いは甘い」
 差し出す両手に黄金林檎。たっぷり詰まった甘美な甘蜜。
 心も身体も癒やしてくれる、魔法の林檎を召し上がれ☆
「境さんにナイショの一口、あげましょね!」
 砕けたブロック塀の破片に頭を打たれ、よろめく境にタタンは輝く実を放つ。
 しかし、時間がかかったこと自体に全くメリットがなかった訳ではない。
 ――テレスの苦手とする戦法を見いだそうと、ファルケは観察し続けていたのだ。
(「肉弾戦にも、魔法にも対応できるようだ……けど、」)
「搦め手には弱いみたいだね! こんな攻撃ならどうかな!?」
 銃弾の軌道を前後左右に迫るよう微調整し、テレスのドレスごと風穴を開ける。
 赤色の滲むレースをはためかせ、テレスがファルケの側面に飛び込むが、そこには既にタキオンの銃口が向いていた。
「では、この一撃で戦術を制限してあげましょう」
 超重力を圧縮した弾丸は大きなリボンを穿ち、テレスの髪が地べたを撫でる。
「もうもうもう!ジャマ、ジャマジャマジャマジャマジャマ、みぃーんなジャマよっ!」
 差し向ける霊魂に「早く追い払って!!」と死神少女は喚き散らす。
 無念無想の幻霊はファルケ達を飲み込もうと津波のように押し寄せ、周囲の設置物が渦巻くように浮かびだす。

「ジョナ! 一緒にいくです!」
 身を投げ出す勢いでタタンは小さな身体で霊魂の波間を突き進む。
 凍える感覚にもめげず、気合で一気に跳ね上がってみせた。
 主人を援護しようとジョナも林檎飴風の棍棒を飛ばし、ガツン!と額にヒットさせる。
「好きすぎて殺しちゃうとか自分勝手でござます!てんちゅーですっ!!」
 垂直に蹴り落とし、着地体勢からそのままアッパー気味のジャンピング頭突きでカチ上げていく。
「いい加減、舐められてるのもムカつくのよね……そのすばしっこい脚、絶対止めてやるから」
 痺れを切らしたゲンティアナもブラックスライムを展開し、片足に食らいついたところから横蹴りで鳩尾にカカトを突き込む。
 衝突した電柱ごとテレスは押し潰されるが、デウスエクスはこの程度で『死』には至らない。
 確実に仕留めようと境とオニキスが土煙へ潜りこむ。
「子供を口にする趣味はないんだけど……盗られた分は返してもらわないとね?」
 瓦礫を強引に押し退けるテレスに境の真っ赤な包帯が絡みつく。
 グラビティでしなやかさと硬さを維持する細布は容易く引き寄せ、境は細い肩口を食い千切る。
 どす黒い赤で頬を塗らすテレスにオニキスの一撃が迫っていた。
「汝の熱意と執念は認めよう、そして力量も然り。……しかし、吾は水鬼!」
 冥府の海に誘う死神達を良しとせぬ、混沌を纏いし激流の鬼人也!
「――龍王沙羯羅、大海嘯!!」
 右腕から溢れるワイルドのチカラが龍と成り、瀑布の如き水龍は砕けた電柱ごとテレスに衝突する。
 ずぶ濡れになりながらよろめくテレスは、
「……おかげで目が覚めたわ、目的さえ果たせればテレスはいい……!」
「っ!?」
 ルビーのような瞳の奥で燃ゆる炎で焼きつくそうと吹雪を注視する。
 吹雪の放つ火柱とタキオンの砲撃に被弾しながら、一息に詰める彼女にファルケは眼力に全神経を集中させ、
「死神にしとくには勿体ないほどのタフさだよ、全く――3つ同時に火を吹くぜ!」
 瞬く間に放たれた三つの弾丸はテレスの脇腹や大腿を貫き、体勢を崩しかける――――だがそれでも食い下がる執念を見せた。
「あなたはテレスのモノなんだから、大人しく殺されなさいよ!!」
「吹雪くん!」
 シールドを展開させる正夫の叫びに吹雪も反応するが、瞬発力はテレスが勝っていた。
 血走った眼に映る自分と視線がかちあう。
 吹雪の足が止まりかけたとき――遮る影がひとつ。
『――――……』
 振り下ろされた鎌は、無情にも固定化を維持しきれなかったハルナを斬り裂いた。
「……ね、姉ちゃん……っ」
「なによ、最後までジャマしてくれちゃって」
 霧散するサーヴァントに憤慨するテレスは再度斬りかかろうとするが、正夫の正拳突きによって阻止される。
「……六道輪廻に絶えなき慈悲を…」
 容赦なく弾き飛ばしたのはただの拳。
 されど、愛する家族を守る男の決意が込められた、一意専心の秘拳。
「難儀な相手とは思いましたが、『家族』を軽んじる姿勢は感心なりませんね」
 穏やかな物言いがかえって威圧感を与えたのか、片膝を付くテレスは頬を引き攣らせた。
 しかし、その生じた一瞬が少年に冷静さをとり戻させる。
「……テレスッッ!!」
 咆吼に呼応して幾多の火柱が、死神の周囲を焼きつくさんと燃え上がった。
 火の手から逃れようとするテレスだが、片脚に受けた負傷が祟って転倒するように体勢を崩す。
「ぜ、絶対、テレスのモノに、するんだから……!」
「僕はお前の物になんてならない。ケルベロスになった今、僕は僕のような子供達を増やさないために戦う!」
 かつて全てを奪われ、自身も見失いかけた少年は自らの意志で『否定』する。
 自分の人生は自分のモノだと『拒絶』した。
「お前たちのような奴とも戦い続けてやる…………誰のモノでもない、自分の意志で!!」
 夕焼けが白むほど強烈な冷気が凝縮される。
 其は断罪の鉄杭であり、ダイヤモンドの如き光輝をまとう少年の決意を象った氷槍。
 飛来する氷塊は火中のテレスごと貫き……氷柱に変質して砕けると、真っ黒な残滓は夕陽に昇華されていくのだった。

●少年よ
「やれ、吾らが注意しても奴らはお構いなしだな。困ったものだ」
「地球の文明に大して興味がなさそうですからね、致し方ないでしょう」
 オニキスが崩れた塀をワイルドのチカラで補強していると、タキオンもグラビティの縫合糸で瞬時につなぎ合わせていく。
 表通りで戦ったとはいえ、周囲の被害を気遣いながら無遠慮に暴れる相手を仕留めるのはやはり難しいことだろう。
 グラビティで即座に修復できることが幸いだ。
「あ、おうちの中もお掃除するですー! タタン達、どかーんって入っちゃったでござます」
「さすがに窓ガラスがないと雨が入って大変だもんね」
 屋内の惨状もどうにかしないと。タタンと境の言葉に吹雪の顔面がサァーっと青くなり始める。
「あ、いえ、それは、助かるんっすけど、困るっていうか……?」
「なんで襲ったのかは解らなかったけど大惨事でしょ、大変だろうし手伝うわよ」
 ゲンティアナの申し出に、あわわと慌てふためく少年の両肩をポンと叩く手がふたつ。
「『貴重品』とか大事なモノとか、先にチェックしておきたいんだろ? 外から出来ることは僕達でやって中は任せよう。ね?」
 なんとなく察したファルケが助け船を出す。
 多感なお年頃だからね、仕方ないね。
 正夫のほうは別の意味を含んでいるのか、なにも言わずウンウンと頷くのみ。
「…………まぁ、外から出来なくもないものね。手が足りなかったら呼んでよ」
「す、すまねぇっす……! 終わったらお茶とかお菓子とか用意するっすよ!」
 吹雪はふと訪問者など久しいことに気がついた。
 傍迷惑な闖入者のおかげで、あわや命を落としかけたが……無事に自身の日常を守ることが出来た。
(「お菓子はいっぱいあったと思うっすけど、コップが足りるか……って、あああああああ!!! それよりアレ!アレを早く隠さないとっすー!?」)
 未来ある少年のアレもコレも成長の証。
 慌ただしく上がりこむ少年の姿を、うっすらと姿を取り戻していくハルナはじっと見守っていた。

作者:木乃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年7月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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