スライムプールでぬるぬるはいかが?

作者:遠藤にんし


「お願いします、この子を……」
 スライム忍者・雷霧はオークへスライムを差し出し、ぺこっと頭を下げる。
 受け取るオークは品定めするように雷霧を眺め、ふいをつくように雷霧へとスライムを投げつける。
「きゃっ……!」
 スライムのぶつかったところの雷霧の服は、すっかり溶けてしまっていた。

 ――ところ変わって、陽光照りつけるプールにて。
 女性たちの水泳大会では歓声が飛び交い、リレー形式で泳ぐ彼女たちには応援の声が寄せられている。
 泳ぎ切ってプールに壁をつき、顔を上げれば――まさに目の前に、オークの触手は迫っていた。

 スライムを持つオークの出現を高田・冴は告げる。
「スライムそのものは服を溶かすだけだが、オークは女性を攫おうとする悪質な敵だ。被害が出る前に排除してしまおう」
 現れるオークは20体と多めだが、そう強力な個体がいるわけではない。
「つまり、ボス格がいないということは全てを撃破しないといけないということだね」
 豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077)の言葉に、冴はうなずいて現場の説明に入る。
 プールはとある女子大の施設内、学内のスポーツサークルの行事として水泳大会は催されている模様。
「正式な記録会というよりは、外部からの飛び込み参加もできる気軽なイベントのようなものらしい。参加者も15名程度と、そう多くはないようだね」
 彼女たちを無事に避難させるには、避難誘導に力を入れたり、こちら側からオークの気を惹く囮を用意した方がスムーズかもしれない。
「オークは服だけを溶かすスライムを持っている。プールの中に投げ込まれるとスライムは見えづらくなってしまうだろうね」
 もしも戦闘中にプールの中へ入るのであれば、そのあたりの覚悟も必要かもしれない、と冴。
 服が溶けると困るのであれば、プールサイドから攻撃した方が良いのかもしれない。
「卑劣な攻撃は耐えがたいものがあると思う。気を付けて行ってきてくれ」


参加者
マイ・カスタム(一般的な形状のロボ・e00399)
志穂崎・藍(蒼穹の巫女・e11953)
ルティア・ノート(ヴァルキュリアのブレイズキャリバー・e28501)
豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077)
アルーシャ・ファリクルス(ドワーフのガジェッティア・e32409)
巻島・菫(サキュバスの螺旋忍者・e35873)
根住・透子(炎熱の禍太刀の担い手・e44088)

■リプレイ


 照りつける太陽が眩い中、女性たちの歓声とプールの水音が響く。
 巻島・菫(サキュバスの螺旋忍者・e35873)は飛び込み参加で水泳大会に参加。スクール水着を纏う体を水中でしならせ、菫は平泳ぎで進む。
「皆さん泳ぐの早いですねぇ凄いですねぇ」
 プールサイドで観戦しつつ感心するのはルティア・ノート(ヴァルキュリアのブレイズキャリバー・e28501)。水から上がった志穂崎・藍(蒼穹の巫女・e11953)へと、豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077)は飲み物を差し出す。
「お疲れ様、冷やしておいたよ」
「ありがと、助かるにゃ」
 喉を鳴らして飲み物を飲む藍。マイ・カスタム(一般的な形状のロボ・e00399)も飲み物を受け取って、水辺ではしゃぐ女性たちを一瞥する。
「これから先、梅雨が明ければ海やらプールの案件が増えるんだろうな……」
 オークなのだから毎年だろうか――とはいえ、スライムもいる夏は今年が初めて。
 今後も増え続けるオーク事件。どのようなものであれ解決しなければ……と思うマイの隣、アルーシャ・ファリクルス(ドワーフのガジェッティア・e32409)も呟く。
「まさしく、混ぜるな危険ってやつなのかな?」
 女性ばかりを狙うオークに、服だけを溶かすスライム。
 凶悪としか言いようのない組み合わせには注意が必要だ、とアルーシャは更衣室の方にも目を向ける。
「オークの好きにさせるわけにはいきませんし頑張りましょう」
 泳ぐのは苦手、でもオークはもっと苦手な根住・透子(炎熱の禍太刀の担い手・e44088)も言って、隠密気流で身を潜める。
 クノーヴレット・メーベルナッハ(知の病・e01052)も参加者として泳いでいる――息継ぎのために顔を上げた瞬間、クノーヴレットの視界の端で何かが蠢いた。
「あれは……!」
 呟きは決して大きな声ではなかった――それでも、仲間のケルベロスにとっては十分。
 ケルベロスたちは即座に武装を展開、姿を見せたオークとの戦いを開始した。


「皆さんは避難をしてください」
 クノーヴレットの声に従うようにミミックのシュピールは飛び出して武装を叩きつけ、クノーヴレット自身はプールの中に留まり、競泳水着越しの肢体をオークに見せつける。
 サキュバスの力を使って作り出した黒い球をオークへ、それでもオークは臆せずにケルベロスへ迫り、触手を広げ、そしてスライムを投げつける。
「女性に恥をかかした報いをたっぷり味わうニャ!」
 藍は迫ってきたスライムを屈んでかわしてオークに肉薄、鋭い蹴りを放ちながら、避難する女性たちへと目を向ける。
 プールサイドの一角、オークが固まっているところに落ちる雷はマイによるもの。突如の雷撃にオークの体からは力が抜け、その手に持っていたスライムはプールの中に滑り落ちる。
「滑りやすいからねー、気を付けて避難してねー」
 アルーシャは人々に声をかけつつ、彼女たちの体が冷えすぎないようにとバスタオルやバスローブを手渡し。戦場の方が気になって視線をやったが、戦況が傾く様子は見えない。
 ついでにそんなに肌色にもなっていない……が、多分それもいずれ……という予感を抱きつつ、アルーシャは避難誘導を続ける。
「皆さん、落ち着いてこちらから逃げてくださーい!」
 ルティアもバスタオル片手に声掛け。遠くからでも見えるよう大きく手を振れば、それを手がかりにして女性たちがこちらへと向かってくる。
 そんな風に避難活動をするアルーシャとルティアの耳にも届いた銃声は、姶玖亜の制圧射撃によるもの。
「その情熱を、もっと別のものに注げれば、もの凄い偉業をなせるかもしれないのに……まあ、そうしないからこそオークなんだろう」
 溜息をついた姶玖亜は、戸惑いの表情を浮かべる女性たちに逃げるよう声をかける。
 オークが現れるまでは女性たちにもドリンクを配っていたこともあった。だから彼女たちは安心して、姶玖亜の指示に従うことが出来たのだ。
 弾丸と触手飛び交う中、透子は魂うつしでヒールを与えながらも触手を避ける。
 ――しかし、逃げれば逃げるほど、サイズの合わない黒ビキニに秘められたおっぱいはゆさゆさ揺れてオークホイホイ。ぎらつく視線が向けられたことにびくっとなる透子だったが、菫の生み出す斬撃のおかげで何とかなった。
「まずは子豚ちゃん達料理しよう」
 水しぶきが飛ぶたびに溶けていく生地――とうとう胸元が溶けてしまう、だが。
 不思議と大事なところだけは溶け残っているから、特に問題はないのだった。


 オークとの戦いそのものは大きな問題はなかった。
 各個撃破でオークは倒せているし、個体数が多いとはいえそう強い敵ではないからケルベロス側の負傷は深くはない。
 被害はただひとつ、スライムによるものだけが拡大し続けている。
「オークだしー、分ってはいるけどー」
 避難誘導を終えてプールへと戻ってきたアルーシャは、その惨状に思わずそう呟く。
「はぅぅ、そ、そこは、弱い……んぅぅ、が、がま、ん……」
 触手によってプールの中へ叩き込まれてしまった藍は、弱点の胸に集中攻撃を食らって体を跳ねつかせる。
 もちろん着ていたものはあらかた溶けてしまっていて、ニタニタと笑ったオークは触手を上に持ち上げて、その身体を吊り下げて晒す。
「こ、こんな、あう、恥ずかしいニャ」
 どこも隠せないままのポーズを取らされてしまい、頬を赤らめる藍……姶玖亜は弾丸をいくつもいくつも撃ち込んでその触手をちぎるが、その拍子に足元が滑ってプールの中へ。
「きゃあっ!」
 溶け始める姶玖亜の服――制服だけは死守しないと、と逃げ惑う姶玖亜。
「許せませんね! やってやりましょう!」
 ルティアは手にした紅壱式-H.STear M.P-へと、権能を宿す。
「コード申請。使用許可受諾。……不滅の刃、受けてみなさい!」
 大上段の構えから振り下ろされる斬撃――足取りの鈍ったオークへと、アルーシャはL.L.R-00Eを構えて凍てつく光線を放つ。
「頭……というか、全身冷やしちゃおうねー」
 この陽気の中ならいいよねー、というのんびりした口調に似合わず、その攻撃は苛烈そのもの。
 Fadeリキッドスーツは今回のスライムでは溶けにくく、やっきになってスライムを投げるオークの反撃は何の意味もなさなかった。
 斬撃の名残に生まれた風に髪を揺らすルティアへと背後から迫るオーク……そのオークへと声を張り上げるのは菫。
「さあ、お掃除の時間です!」
 その手には、どこからともなく現れた濡れ雑巾。
「雑巾拭きたて足元注意ですよ!」
 思いっきりぶん投げる動きに従って、水着なんてなかったことになってるおっぱいがぶるんと揺れる――でも、不思議なことに水滴がいい感じになったので、誰にも肝心の部分は見えないのだった。
 色々とまずいことになっている仲間たちへ視線を向けてから、次いで透子はオークへ視線を移す。
 このままでは全年齢では済まない出来事が起こってしまうかもしれない……そんな危機感が、火焔野太刀 劫火に魂喰いの劫火を与える。
「私がやらないと……。お願い劫火、力を貸して……!」
 プールサイドに灯る凶暴なまでの輝きが、オークの目に映った瞬間。
「灰燼焔薙!」
 その輝きが一閃され、その魂ごとオークは焼き尽くされてしまう。
 全身全霊の一撃――息をついた一瞬の脱力を狙われて、透子までもがプールへと引きずり込まれる。
「えっ!? そ、そんな……いやっ!」
 びっくりして首を振れば、辺りの水が揺らされて水中のスライムが服を溶かす。
「ああ、そんな……」
 悪乗りした友人たちに押されて買った黒ビキニは露出が高かったとはいえ、大事なところを隠すという意味では大いに役立っていた。
 だというのに、それすら溶けてしまっては――もう、透子は自身の腕でその豊満な肉体を隠すほかないのだった。
 マイはかろうじてプールサイドに立ち続けてはいたが、飛沫とそれに紛れた触手のせいで、バトルスーツ『Kaleido』はところどころに穴が開いていた。
「くっ、このような……!」
 こういったことには耐性があるとはいえ、それでも恥ずかしいことに変わりはない。
 頬を赤らめながらも、マイはプールサイドにいるオークの一体を引き倒し。
「存分に味わえ」
 その忌まわしき下腹部へと、何度も何度も打撃を叩き込む。
 マイによる殺神的攻撃にオークはついに動かなくなるのだった。
「地獄の底でたっぷり反省するにゃ」
 体勢を整え直した藍は縛霊手で攻撃、そしてケルベロスたちは猛然と反撃に打って出る。
 服を溶かされたことへの怒りもあってか、その攻撃は苛烈としか言えないほどの勢いがあった。
 たっぷりと触手と交歓したクノーヴレットは己の唇から触手を名残り惜しげに引き抜く。
 深い胸の谷間にも、足と足の間にも、クノーヴレットは全身で触手を楽しんでいた……己の唾液で濡れそぼった滾りへと、今度は十本の指を這わせる。
「残念ですけど……そろそろ、おしまいの時間です……♪」
 魔力の籠る指先から伝わる官能が、一体取り残されたオークを虜にする。
 正常な判断も出来なくなったオークの目がとろんとなって、蕩けるように体が弛緩して――遂には全身が溶けて、消滅を迎えるのだった。


 そんなわけで、オークによる残忍な事件は無事解決。
 服は溶けてしまったが、着替えもバスタオル・バスローブもあるので、何とかはなるだろう。
「ひ、ひどい目に遭いました……」
 不思議な全年齢パワーがあったとはいえ、大変な目に遭ったというのは事実。
 ふらつきながらぼやく菫に、ルティアはうなずいて。
「……オークとスライムの関係性は結局よくわかりませんでしたね!」
 それでも、奴らが手を組むのであればまた戦いに挑むほかないのだ――そんな思いを胸に抱いて、ケルベロスたちはプールを立ち去るのだった。

作者:遠藤にんし 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年7月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 1
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