ベリー・スイート・ハーベスト

作者:六堂ぱるな

●ストロベリー・アロガンス
 イチゴ農園のおじさんは顔を引き攣らせて棒立ちになっていた。
 なんだか遠くから歌声が近付いてきていると思ったら、ロリータファッションの少女が三度に一度ダンスのステップを失敗しながらハウスへやってきたのだ。
 ぴこぴこ動くウサギ耳、たっぷりのフリルに彩られ、スイーツで出来たような可愛い少女。しかし彼女の後ろにはマッチョな人型の植物が3体ついてきていた。頭部はイチゴの形をしているが、茎や蔓、葉でできた緑色の体には人の骨が垣間見える。
「わあ、イチゴのあまぁい香りがするのですー」
 声も出ないほど恐怖したおじさんの前を軽やかに通り、少女が手近なイチゴをつまむと小さな唇へ運んだ。ふ、と小さな眉が寄る。
「うー。私にふさわしくないイチゴは必要ないのですぅ。だからぁ、めっちゃくちゃにしちゃっていいですよぉ」
「え」
 おじさんがかすれた声をこぼした時には、少女の後ろにいたマッチョ植物たちがイチゴの栽培器に両腕を振りあげていた。
「ちょちょちょ待てぇ、何しよる?!」
 おじさんの悲鳴を気にもかけず、甘菓子兎・フレジエはステップの練習をしながら農園を後にした。歌も練習しなくちゃー。なんて呟きをこぼして。

●ストロベリー・パーティタイム
 ケルベロスを迎えたセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は、困った顔で説明を始めた。
「爆殖核爆砕戦の結果、大阪城周辺に抑え込まれていた攻性植物達が動き出し増した。大阪市内への攻撃が重点目標のようです」
 恐らくは大阪市内で事件を多発させて一般人を避難させ、その間に大阪市内を中心とした拠点を拡大しようとしているのだろう。大規模侵攻ではないが、この事態を放っておけばゲート破壊成功率がじわじわと下がっていってしまう。
 それを防ぐ為には侵攻を完全に防いだ上で、反攻に転じる必要がある。
「今回も甘菓子兎・フレジエはすぐ撤退してしまいますが、ストロングベリーが農家の方を襲うところには間に合うでしょう」
 セリカは状況と敵戦力の説明を始めた。

 場所は大阪近郊のとあるイチゴ農園。5棟ある大型ビニールハウスの真ん中の棟にフレジエが入って立ち去る為、ストロングベリーはそこから破壊活動を始める。予知から状況が逸脱しないよう、おじさんにはビニールハウスで待機して貰うが、別のハウスにいる家族は騒ぎと同時に避難するよう伝達済みだ。
「避難誘導は必要ありませんから戦闘に集中して下さい。イチゴ農家の方にも、戦闘が始まったらすぐ避難するようお願いしてあります」
 フレジエの配下のストロングベリーは3体。攻撃グラビティは体の一部を蔓状にして絡みつく、毒を注入する、光花形態に変化してビームを撃つ、の三種類に限られる。
「甘菓子兎・フレジエの目的は謎ですが、農家の方の安全が第一ですね……それはそうとこの農園ではイチゴ狩りが出来るので、事件を解決したら楽しまれるのもいいですね」
 食べ放題だけでなく摘んだイチゴでジャムも作れる。イチゴのクレープやタルトを作って食べるコースもあるので、イチゴを色々と美味しく食べられそうだ。
「皆さんの作戦成功を祈っていますよ」
 にこりと笑って、セリカはケルベロスたちを送り出した。


参加者
鈴代・瞳李(司獅子・e01586)
板餅・えにか(萌え群れの頭目・e07179)
遠野・葛葉(鋼狐・e15429)
朝霞・結(紡ぎ結び続く縁・e25547)
レイラ・ゴルィニシチェ(双宵謡・e37747)
ルナ・ゴルィニシチェ(双弓謡・e37748)
神子柴・甚九郎(ヒーロー候補生・e44126)

■リプレイ

●ストロベリー・インヴェイジョン
 ハウスの中に栽培器で並んでいたのは、輝くように実ったイチゴたちだった。どれも瑞々しくて鈴代・瞳李(司獅子・e01586)は思わず首を傾げる。
「こんなに綺麗で美味しそうな農家の方々の努力の結晶のイチゴで、何が不服なのだろうな?」
 それはどうもって感じでストロングベリーがサイドチェストやモスト・マキュラーをキメながら振り返ったから、瞳李は叩きつけるように感想を告げた。
「ああいや、ストロングは違う、呼んでない。寧ろ帰ってくれ」
「何あのイチゴ。ダサいってか、キモい」
「うっわーホントだ、めっちゃキモい。さわりたくないなー」
 顔を見合わせて率直な感想を交換したのはレイラ・ゴルィニシチェ(双宵謡・e37747)とルナ・ゴルィニシチェ(双弓謡・e37748)の双子だ。ボクスドラゴンのチェニャとヴィズもこわごわ彼女たちの陰から眺める。
「でもコレ終わったらイチゴ食べられんだもんね。オッケー、リラ。キアイいれてこ」
「まーね、見た目は悪いけど。ユダンせずいこ、ルナルナ」
 息ぴったりに頷き合う二人の横で、朝霞・結(紡ぎ結び続く縁・e25547)が農家のおじさんを庇って立つと避難を促した。
「味覚なんて、ホントに色々なのに……自分の味覚絶対なんて、ビルシャナみたい」
 呟きには相棒のハコがこくこくと首肯して同意する。
「おじさんのイチゴ達は絶対守るからな!」
 ハウスを飛び出すおじさんに声をかけ、神子柴・甚九郎(ヒーロー候補生・e44126)は毛皮を逆立てて敵と相対した。
「食べ物を粗末にする奴に食べ物を語る資格はないって、うちの爺ちゃんが言ってたぞ! よってお前らに食わせるイチゴはない! 覚悟しろよ!」
 彼にとって失伝救出依頼を除けば、大先輩たちと行く初仕事。ここからが本番! ってぐらい意気込んで来たが、ポージングマッチョを見た感想は一言でいえば絶望だった。
(「あっ駄目だこれ美味しくない奴だ……! 焼いても凍らせてもダメな奴だ……!」)
 生はともかく加工したらワンチャンあるかもと思っていた彼である。一方、ノーイチゴノーライフでも生はノーの板餅・えにか(萌え群れの頭目・e07179)がドライに言った。
「助けを呼ぶ声があれば駆けつけてしまうのがケルベロスって奴でさー。苺の旦那も毎度お疲れ様でサー。ここから先はウチらの管轄ですのでお引き取りくだせー」
「殴り甲斐のありそうな奴だな! 我の手で貴様をイチゴジャムにしてやろう!」
 ストロングベリーを見てドン引かない遠野・葛葉(鋼狐・e15429)の度量、流石。戦闘に巻き込まれないよう、イチゴの栽培器を隅へ押しやる。
 褒められていないと気づいたらしいストロングベリーが向き直るのへ、フリューゲル・ロスチャイルド(猛虎添翼・e14892)がぷんすこしながら宣言した。
「食べれないイチゴなんてイチゴじゃないよー! イチゴじゃないのにイチゴをダメにしようなんて絶対ダメなんだからね! ……焼いたら匂いぐらいはおいしいかな?」
 ふと首を傾げる。それは倒して確かめるしかない。

●ワイルド・ハーベスト
 離したとはいえイチゴの栽培器から距離をとりつつ結は精霊を召喚した。猛烈な吹雪がマッチョ植物を襲う。真ん中のマッチョめがけ箱に入ったハコが体当たりをかけたが、隣のマッチョがそれを庇った。縛霊手の祭壇を展開した甚九郎の紙兵たちが、前衛たちを守るように舞う。
「ヨクは危ないから、変身しといてね」
 頭に留まっていた黒い文鳥が杖に戻ると、フリューゲルは辺りが震撼する咆哮を轟かせた。たたらを踏むストロングベリーたちを前に、瞳李のまとうオウガメタルが黒い太陽光を放つ。
 もがくように踏み出したストロングベリーから蔓がのび、結を絡め取ろうと地を疾った。攻撃線上に割り込んだルナが攻撃を引き受けて微笑む。
「ヴィズ、いっしょにがんばろね」
 応えるようにヴィズも瞳李を狙う攻撃に割り込んで毒を引き受けた。ハコのタックルを食ったストロングベリーが、前へ出たルナへ破壊光線を浴びせる。
「久々のディフェンダー。しっかり守んよ」
 レイラがぽちりとボタンを押し、カラフルな爆発がルナとヴィズを癒した。同時に前衛の士気がぐんと上がる。意外にダメージの深いルナにはチェニャからも回復がとんだ。
「とりまゲンキだしていこ」
 呟いたルナが携えた攻性植物が実らせた黄金の果実で仲間に光を投げかけ、心配げなヴィズはルナに寄り添って傷を癒した。ぴんと狼耳を立てたえにかがグラビティを操る。
「慌てふためくがいいのです――」
 現れ出るは不可解な幻影。古の神獣の英知がストロングベリーたちの頭をかき乱す。戦陣が乱れた一瞬を突き、身体を覆うオウガメタルを硬化させ葛葉が突進した。狙うべき敵の攻撃手は恐らく庇われた中央の個体だ。
「我はタノシイー!」
 捻じこまれた超硬度の拳撃で、マッチョ植物もくの字に曲がって吹き飛ぶ。追い討ちは瞳李が編み上げた弾の集中砲火。
「鈴は警鐘。その代わりの私は、私の役割を果たすだけだ」
 着弾から遅れてくる音の雨が反撃を遅らせ、息もつかせず葛葉の回し蹴りがマッチョの胸板に叩きこまれた。その彼女に二体のストロングベリーが挟撃を仕掛ける。
「おっとお」
 立ちはだかったレイラは大きく開いた葉に挟まれ、ヴィズは蔓に絞めあげられながらも葛葉をなんとか庇いきる。ハコに牽制を兼ねたブレスを放たせた結の詠唱が始まった。
「――穢れ祓う翅、風となって、そこに」
 舞うは翡翠の風。傷ついた仲間を包み、絡みつく蔓や這いまわる炎を消し飛ばす。葛葉に蹴られたストロングベリーがお返しとばかり彼女に光線を命中させれば、ヨクの変じた杖を掲げてフリューゲルも三体とも巻き込む火の玉を撃ちこんだ。
「前の士気は十分っぽいな」
 甚九郎が満月を想わせる光弾をハコに放って士気を鼓舞する。
 ラウレックの神槍に炎をまとわせたえにかが突撃し、大暴れすると同時にレイラとルナは寄り添い踊るようにステップを合わせた。狙いは庇い手の一体、赤い靴のような炎は勢いを増して敵を焼く。
 チェニャがレイラの傷を癒す一方、兄弟のように良く似たヴィズは箱におさまり燃え上がる敵に体当たりした。

 ほんの数分。手練れの揃ったケルベロスは一気に敵を追い詰める。
 攻撃手を庇った庇い手のストロングベリーが弱ってくると、そちらへ攻撃を集中させた。炎にまかれ、上皮は氷に侵されよろけるマッチョ植物が、それでも光線を放ってえにかを焼きつくそうとする。
「回復役の矜持舐めないで!」
 凛とした声と共に結のオーラがえにかを包んだ。勢いを増すかに見た炎も消し飛ばす。と同時に箱に収まったハコの体当たりがストロングベリーを直撃。足をもつれさせるところへ瞳李がナイフを掲げた。植物であってもトラウマはあるものらしく、苦しげな仕草でたたらを踏む。
「相棒に惨殺ナイフの扱いを習ったのだが……悔しいが、アイツの腕にはまだまだみたいだな」
 瞳李の呟きは届くことなく、再びルナとレイラが軽やかにステップを踏む。
「祭壇座の一幕、踊ってみない?」
「祭壇座の一幕、感想は?」
『Алтарь*』――祭壇座の物語は炎を生んで渦をまき、ストロングベリーを呑みこんだ。枯れ朽ちた骸を炎が舐める。残されたうちの攻撃手をチェニャの闇のブレスとヴィズのタックルが襲った。大きな葉を開いてレイラを挟もうとした動きが、麻痺で止まる。
「おらー!」
 オウガメタルを手甲のように変形させた葛葉が殴りかかる。人間ならば意識が飛んだに違いない殴打で横ざまに倒れた周囲を、目を灼く光が踊りまわる。
「光れ、奔れ、降り注げ。言葉なき声を、響かせ歌え!」
 フリューゲルの歌声は空気をひりつかせ、幾つもの雷を喚び落とした。直撃でひくつくストロングベリーが立ちあがったところへ、阿頼耶識を解放した甚九郎のショルダータックルがまともに入る。その向こうで、えにかが待ち受けていた。
「滅びろイチゴやろー!」
 えにかの闘気を受けてラウレックの神槍は百節棍と化した。変幻自在の棍が防ぎようのない乱打をストロングベリーに叩きこんでいく。それは致命的な打撃と化して人の姿を模したものを打ち据え、折れ砕けて攻撃手のマッチョが倒れ伏した。
 結の咆哮は衝撃となってマッチョ植物の足を止め、ハコのブレスが茎を凍りつかせて壊死させる。ぐらり傾いたところへ甚九郎が飛びかかった。
「おおおっ!」
 まとうは光輪、彗星のような光の尾をひいて激突され、よろけたストロングベリーは体を構成する蔦を解いて手近な者へ襲いかかる。居あわせたのは葛葉だった、が。
「これで終いだ、ジャムとなるがよい!」
 伸びてくる蔓を軽々とかわした葛葉が力強く踏み切った。上段からの踵落としは敵の頭を捉え、拉げさせながら蹴り下ろす。
 衝撃で地面にめり込んだストロングベリーは、それきり動かなくなったのだった。

●ストロベリー・スイートタイム
 葛葉と瞳李で破損したイチゴの栽培器を集め、結と甚九郎、えにかが手分けしてヒールで修繕。レイラとルナが端に寄せた栽培器を元通りに戻していると、戻ってきた農家のおじさんは泣かんばかりに喜んだ。
「助かったわあ。お礼にイチゴとことん楽しんでってな!」
 ビニールハウスの貼り替えに取り掛かろうとすると、えにかが仲間を制した。
「おねーさんに任せておきなさい。ここは私に任せてみんな先にいくんダ」
 彼女の顔に『決してイチゴが食べられないからって時間稼ぎしてるわけではない』とか書いてあるのが見えて、後を任せることにした一行はイチゴ狩りへ向かった。全員が持ち帰る分とジャムやお菓子用のイチゴをもりもり採る。
「運動の後は甘味だな! そうだ、さっき潰したイチゴはいるか?」
 葛葉の問いに全員首を横に振った。だってアレたぶん食用じゃない。
「……不味そう?」
 えにかがビニールを貼っている最中のハウスに戻って行った葛葉は、すぐ戻ってくると拳を突き上げて盛り上げにきた。
「ようし、誰がたくさん摘めるか競争なのだ!」
「受けて立つぜ!」
 すぐさまノリつつも、美味しくなかった確信をしたのは甚九郎だけではあるまい。彼女の耳と尻尾の毛が思いっきり逆立ってるし。
「クレープもタルトも気になるけど……ジャム作り体験させて貰おうと思ってるの!」
「家で留守番している相棒とその娘にジャムをお土産にしなければな。娘にリューと出掛けたと知られたら拗ねられてしまう」
 イチゴを選びながらの結に、首を傾げていた瞳李が提案した。
「では私たちはクレープやタルトを作って差し入れしよう。食べている間は私達が手伝えば、滞りなくできるだろうしな?」
「うん、お手伝いするよ!」
 瞳李にフリューゲルが元気よく頷く。
「ジャムはお土産にほしーな。ユイたちが作ってくれたのもらってこ」
「うちらはクレープ作ろかな。ほしーひといたら作ったげるね」
「俺も土産にジャム分けてもらえるかな?」
 レイラとルナが受けあい甚九郎も手をあげたので、結も拳ぎゅーで気合が入った。
「じゃあお土産にしたい人の分も纏めて作るよ!」

 お菓子づくりは母屋のウッドデッキで。
 ジャムは結とハウスの修繕を終えたえにかで手分けして、イチゴのヘタをとって洗うと鍋に入れて砂糖と水少々を加え、焦げないように火にかける。
 クレープは焼き上がった生地にイチゴを並べてクリームを絞って、ストロベリーソースをたっぷりかけて。柔らかな生地に包むのに苦戦するレイラとルナの横で、彼女らの相棒がイチゴをもぐもぐしていた。
「あ、チェニャ!」
「ヴィズもつまみ食いしちゃってるね」
「うちらもちょっとだけ、ね」
 微笑みあって一緒に一粒。葛葉はクレープからこぼれたイチゴをぱくぱくと。
 タルトはクッキー生地の台にカスタードクリームを詰める。自分以外の口にも入るとあって気合十分、瞳李は綺麗にイチゴを飾りつけた。甚九郎もあたふたしながら手伝う。
「ヨクもイチゴ食べていいよー。って、持ったまま頭の上はダメだよ!?」
 フリューゲルの頭の上でヨクが嬉しげにイチゴをついばんでいた。
「タルトに乗せるのは出来るだけおんなじ大きさだときれいだよね! ……そうだ! あの、パフェも作ってもいい? 器ある?」
「パフェかあ! うん、ガラスのあるでぇ」
 フリューゲルの提案に農園主のおじさんが頷いた。

「結ー、お菓子できたよ!」
 フリューゲルがジャムのテーブルにとんできた。グラスにイチゴとクリームを詰めてストロベリーソースをかけたパフェ、イチゴが綺麗に並んだタルト、ちょっぴり生クリームのはみでたクレープに結が表情を輝かせる。
「わぁ! 素敵! ありがとうございます、なんだよ♪」
「ジャムはどう? 手伝えることある?」
 興味津々のフリューゲル、美味しそうな匂いの綺麗なジャムに目がきらきらだ。
「あとはレモン汁で味を調整して煮詰めるだけだゾ」
 ジャムを詰めるビンを用意しながらえにかが答える。生のイチゴが入っているデザートを差し出されると、彼女の尻尾がぶわっと逆立った。
「いや食べないゾ」
 あくまでも煮込んでジャムならワンチャン、生はない。瞳李とバトンタッチした結は、まずはタルトを一口頬張った。甘酸っぱいイチゴと甘いカスタードに悶絶。
「んんん~! 美味しい! ハコ、半分こ……」
 言い終えるより早く、優雅に首をのべたハコが残りをぱくりと平らげた。
「もー! また全部食べちゃう!」
 怒ったのは口調だけ、結は笑顔で。イチゴとクリームたっぷり、お互い手製のクレープをルナとレイラもシェアしあって味わった。
「ん、美味しくできたね」
「明日からダイエットしなきゃね」
「クレープもおいしそう……交換っこしない?」
 期待の眼差しを向けるフリューゲルに、二人が微笑んでクレープを差し出す。
 イチゴのクレープを頬張る葛葉と、タルトをもぐもぐしていた甚九郎はふと目が合った。めっちゃ幸せそうだ。つまりあれは美味しいに違いない。半分ずつ交換。
 ビンに詰めたジャムが冷めるのを待ちながら、一行はゆっくりイチゴを堪能した。

 かくして災禍は払われた。フレジエを捉えることはできなかったが、いずれ相対することになるだろう。
 今はイチゴの甘い香りの中で、ケルベロスもしばしの休息を。

作者:六堂ぱるな 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年6月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。