天は人に力を与え給うた

作者:宮内ゆう

●選択する力
 考える知恵を得たということは、未来を考察するようになった。
 それはすなわち、選択肢。何かを選ぶ力を手に入れたということ。
 ただただ運命に身をゆだねるのではなく、数多ある選択肢の中から自分の力で選び出すのだ。
「とゆーわけで、スイーツバイキングに行きたいです、私!」
 仰々しいこといっといてつまりはそういうわけらしい。
 いつものセティ・フォルネウス(オラトリオの鹵獲術士・en0111)のようで一安心。なお、彼女がみせてきたスイーツバイキングをやってるお店のチラシには、こう書かれている。
『期間限定! ドーナツパラダイス開催!』
 たぶんこれが目的、これ以上ない目的。
「実はこういうお店行ったことないんです。いえ、興味はもちろんあるんですけど、こういうのケーキがメインで、好きですけど一度にたくさん食べる感じではないというか……」
 でもドーナツならいいらしい。
 この辺のこだわりは個人の問題になるので、そーいうもんだと解釈するしかない。
「まぁとにかくです、一緒に行きませんか?」
 あれこれ前置きが長かった気もするけど、要はスイーツバイキングに一緒に行きたいというおさそいだったのである。
 改めて、何をするつもりなのかというと、スイーツバイキングでパーティーしよう。というもの。いっそ貸し切ってしまうつもりなので、多少騒いだところで迷惑にはならない。
 故に持ち込みもOKだが、せっかくの食べ放題なのでほどほどがいいかも。
 メニューとしては、各種ケーキをメインに、ゼリーやババロア、ティラミス、プリン等々。
 わらび餅、お団子、ミニまんじゅうのような和スイーツも取りそろえてある。
 さらに、あんみつやソフトクリーム、クレープにポップコーンを自作できるようだ。
 また先ほど話にでたように、ドーナツを出している。いくつかの種類のプレーンドーナツがおかれ、チョコやらホイップやらアラザンなんかでデコるスタイルらしい。
 サブとして、ドリンクバーが付属しているのは当然だが、ジュースだけでなく何故かコーヒーや紅茶、ハーブティーが充実してる。
「あと、スイーツバイキングって主食も充実してるんですね……」
 すなわちカレーとパスタ。パスタも自分で皿に盛ってソースをかけるだけだが、ソースの種類がやたら充実してる。
「だんだん採算が取れるのか怪しい気がしてきましたけど、でも気になります、特にカレー!」
 先ほどのチラシの隅っこに、寿司とか書かれてる気もするけど見なかったことにした。
「こういうところで食べるカレー、どんなモノなんでしょうね」
 普通のカレーである。
 とはいえ、スイーツにカレーを合わせるかどうかとなると、それもまた人次第。
 自由に選択できることがバイキングの醍醐味ともいえるだろう。
「そういう意味では、ねぇ?」
 くすっとセティが笑った。
 なんか意味深に見えるけど、きっと単純に楽しみなのだろう。
 一通り説明がおわったところで、セティはもう一度言った。
「一緒にドーナ……スイーツバイキングに行きませんか?」
 目的がだだ漏れしてた。


■リプレイ

●よりどりみどり
 所狭しと立ち並ぶスイーツを目の前に、蓮は自信を持って頷いた。
「……どうやら正解だったな」
「わ、わ、いっぱい! いっぱいあるね! これどれでも食べていいの!?」
 先日以来を手伝ってくれたお礼に連れてきたフリューゲルがとにかく目を輝かせているから。
「ああ、食事もある。好きに食べるといい」
「やったあ! カレーでしょ、パスタでしょ、ケーキにお団子に、それからそれから……」
 ここまでいくといっそ清々しい。相変わらずの食欲だが、もう止める気はなかった。
 目の輝かせ具合ではこちらも負けてはいない。
 コンスタンツァがそびえるマカロンタワーに宣戦布告!
「決めた! このマカロンタワー、それとチョコレートケーキを征服するっす!」
「ぬぬ! そちら二品をロックオンとはさっすがはスタン姉、って!」
 そこでバンリは気付いた。コンスタンツァのファッション。雪の妖精みたいな白ワンピにショートウエスタンブーツ。
「あ、気付いたっすか。えへへーどっすか?」
「誕生日にプレゼントしたブーツ……感激でありますよー……」
 あわや泣きそうになったバンリの顔だが、口に押しつけられたマカロンで一瞬のうちに笑顔に変わるのだった。
「ドーナツといいつつなんでもあるな?」
「スイーツバイキングやからな」
 白陽の疑念に千舞輝が答える。
「せやけどウチはドーナツで攻めるッ! イベント期間はノってこそゲーマー!」
「とりあえずコーヒー飲むか。千舞輝は?」
「ミルクティー!」
 怒濤の勢いでドーナツに向かいつついい返事だった。
 ドーナツの方は今回の目玉でもあるのでやはり人気だ。
「わたくし達のお目当てはドーナツ!」
「ドーナツ! たくさんのドーナツ!」
 明子とエルス、仲良く手をつないでいく。気分はとあるドーナツ好き仔犬らしいが、だれのことかわかんない。
「すごい量だわ……!」
「ええと、チョコ、抹茶、いちご、オレンジ……お猫さん!」
「猫さんデコ可愛い! ああ、ラズベリーやピスタチオもいいですね」
「どうしよう、どれもこれも食べたいの」
「好きなだけ取ってもいいのよ。一緒に半分こしましょうね」
 後に知る。幸せの中にも地獄は存在しうると。
 とはいえ、ここが天国であることには変わらない。
「熾月さん! たいへん! 天国だよここ!!」
「そっか、紀美には天国に見えるんだね。実はね、俺も……!」
 思わず抱き合うほどの勢い。
 当然、といわんばかりにファミリアのぴよさんとロティさんも目を輝かせる。
「ケーキとープリンとー、ケーキとムースとー」
「ゼリーやプリン、わらび餅……」
 気付いたときにはもう遅い。トレイはスイーツの山盛りである。
 こうなったら互いに笑い合うしかない。
「あっ、デコるドーナツ発見! うう、でも……!」
「物理的に手が空いてない! ここは一度食べるしか……!」
 ふたりとにひき、一時撤退。だが、これだけの甘味を前に遠慮などするはずもないのだ。
 そう、楽しめるのはなにも食べるだけではない。作るのもここでの楽しみのひとつだ。
 抹茶系のやや甘さ控えめの甘味を堪能した紫音と葛餅や餡蜜など一通りの和菓子を味わってきた遊鬼は、ちょうどクレープコーナーの前にいる結城を見つけた。
「それは?」
「クレープを自作できるようですね」
「へぇ、面白いことしてるな」
『ほぉ、甘味の自作か……ちと作ってみるか』
 とはいえ、遊鬼は料理が下手と自覚している。特訓の意味合いもかねているのだろう。手は出さないものの、そこは紫音がレクチャーしてくれる。
『……これは両面を焼けば良いのか?』
「そう、焦げないように注意しつつ、丁寧にめくってひっくり返して……」
『む、破けおった。なかなか難しいな』
 そこが難しい。そんなやりとを横目に身守りつつ、結城もクレープを焼き始めるのだった。
「セティにプレゼントあげてきたっスよ。快く受け取ってくれたっス」
「それはよかった」
 ハチからはドーナツ型ポーチ、シグリットからは香り付きドーナツ消しゴム。
「でも、あんみつカレーは受け取ってくれなかったっス」
「なんだその怖ろしいシロモノは」
「ぜひあなたの天使様にあげてください、っていわれたっス」
「余計なことをッ!!」
 シグリットのドーナツ食べる手が止まった。
 絶望が、やってくる。

●すいーつどうぶつぱらだいす
 ひっそり隅っこに席をとったセティを見つけたディアナは声をかけることにした。
「セティさん、一緒に食べませんか」
「ええ、ぜひ」
 スイーツバイキングは初めてで少し緊張していたけど、この笑顔に安心した……のも束の間、セティはいきなり遠い目をした。
「……カオスに耐えうるのであれば」
「は?」
「お誕生日おめでとうー!」
「おめでとうです~」
 ドゴォ!
「ごは!」
「セティさん!?」
 脇腹に蓮華がタックルしてきた。親愛100、悪意0。となりで紗羅沙がにっこにこ。ぽかちゃん先生だけが心配してる。なんかやべー音したって顔で。
「ううん、今年はなにがいいかな。でもみんなでわいわい食べながら過ごすのもいいかも!」
「あ。あちらでドーナツトッピング出来るみたいですよ~」
「え、ホント? 行く行く!」
「いきましょう~」
 怒濤の嵐のようにやってきては過ぎゆく姉妹。
 その次に来たのは小悪魔姉妹だった。
「ドーナツパラダイスなあたりがセティらしいわよね」
「じゃあ次はメロンパンパラダイスですね」
「思考を読んだ……!?」
 このあたりとてもマイペースなルリィ。マイペースぶりで言えば妹のユーロもいい勝負だ。
「バイキングなんだから、ケーキにゼリーにババロアにプリン、アイス……少しずつたくさんの種類を取ればいいのよ」
「ふふふ、堪能しきるという意味では負けませんよ!」
 なんでかセティが対抗心燃やしてる。
 と、ここで見慣れない顔に気付いた。カレンである。
「初めまして。いつも妹たちがお世話になってるわね」
「お姉さんでしたか、こちらこそ初めまして」
 ぺこりぺこり。
「お世話……姉妹……もしかしてお姉さん、無数のナイフ投げたり時間を止めたり」
「しないよ」
「……」
「しないよ」
 二度言った。
 このあたりでディアナが一度首をかしげた。
「勢いはあるけど、カオスと言うほどでは」
「ここからが本当のカオスです」
「え――」
 問い詰める間もなく、ひょこりとナユタが顔を出した。
「本日は、おたんじょーびとおうかがいしまして、おめでとうございます。ほらリリウムも……っていない?」
 いた、むこうに。わんこなルシエドに乗ってる。
「あ、すいません、おしとやかにしなさいって言ったのにー!」
 ナユタは駆けていった。一方リリウムさん。
「とりあえずどーなつでおいわいです! はらがへってはなんとかー!」
 ルシエドが、犬にドーナツはどうなの? って顔した。
「ドッグフードがないて聞いたさかい」
「ひゃあ!?」
 なんかいきなり光流が出てきた。
「犬用ドーナツ作って来たで。我ながら利く男やな」
 しかしこれにはルシエドご満悦。
「小さいアホ毛の先輩は食べ過ぎに気を付けるんやで。アホ毛に糖分回ったら夏場にカブトムシ寄ってくるで」
「そーなんですか!?」
「えぇ……」
 リリウムだけじゃなく、セティもそっとあほ毛隠した。
 隠したあほ毛のわきからそそっとカルナがきた。
「カレーはともかくから揚げはないんですかね?」
「言うことがまずそれなんですか」
「おめでとうドーナツ、略しておめドーは鋭意制作中です」
「サイズがヤバイことになってません」
「それはさておき、これからも依頼ではよろしくお願いします」
「いえいえこちらこそ」
「ところで誤字多くないです?」
「それが誤字だと、いつから錯覚していた?」
「な……に……」
 何の話やら。
 そこにエルトベーレが突っ込んできたからだ。物理的に、セティの横腹に。めきょお。
「セティちゃ~~~ん!」
「ぐぶふぅ!」
「またドーナツ食べられちゃいましたあああ」
 様々なスイーツが盛られたトレイから、見事にドーナツだけが姿を消していた。
 その隣ではリヒトさん、カイさん、ハイルさんがげっぷしてたりする。
「小鳥、リス、うさぎ?」
「べ、ベーレさんのファミリアですね」
「私は動物園に来てしまったのでしょうか」
 ディアナが頭を抱えだした。否定できない。
「セティちゃあああああ!」
「はい、一緒にケーキとアイス食べましょうね」
「わぁい!」
 元気になった。いっしょにもぐもぐ。
 そんな喧噪の中、ひとり静かに席に腰掛けている男がいた。
 晟はじっと窺っているようである。
「ドーナツと聞いて黙っているわけにはいかないな……他のスイーツはもちろん、軽食もコンプリートするぞ。まずはコーヒーか」
 まるで戦場へ行くかのように、ゆらりと一歩を歩み出した。

●創造と絆
 山のように盛られたフレンチクルーラー。好きなものを好きなだけ、憧れではあるが物には限度がある。
「食うのか、それを。ゲームしながら」
「すんません、ぶっちゃけやってみたかっただけです」
 勢い落ち着いて冷静になったのか、千舞輝は妙に素直になった。
「そっちはドーナツボールってヤツ?」
 一方の白陽は手頃な数でそろえていたりする。
「ははぁん、読めたで工藤。ゲームしながら食べやすいやつ選んだな!」
「そう。そう思ったけど、シュガーまぶすとそう言い難い有様だったわ」
 手がベトー。
「どれ、おっきな猫に餌をやろう」
「ごまかしたな!」
 でもたべた。あーんで。
 山のようといえば、いい具合に明子が我に返っていた。
「二人で好き勝手に取ったんじゃ結局、量が二倍で半分こしても……」
「もぐもぐもぐもぐもぐ」
 そんな考えを知ってか知らずかエルスは満足そうにドーナツをもぐもぐ、そしてぶるるん。でも、明子の暗い表情に気付いたのか気を利かせた。
 手元のドーナツを割って差しだしたのである。
(「そうじゃない! でも……あらがえない」)
 ふたりでもぐもぐ、ぶるるん。結局ただただ幸せである。
 さて、ドーナツに先ほどよりもテンションが上がった状態で紀美が突撃してきた。
「来たよドーナツー!! ドーナツの穴ってなんのためにあるのかな?」
「中まで火を通す為とか……」
「違うよ、中に入れるためだよ!」
 熾月のもっともな意見はさておき、紀美はデコり始める。
 いちごとチョコ半々のドーナツにアラザンでコーディネート、穴にホイップたっぷり詰め込んで、アイスをどどんと乗っけてドーナツパフェ!
 熾月のは見た目はちょっと控えめ。でもいちごクリームにたっぷりのチョコがトッピングされて、もうそれだけで美味しそうなのが分かる。
「スイーツ全種類制覇、出来るかなぁ……」
「紀美、俺たちの戦力は4だよ」
 勝ち確定。勝利のVサインをみせてまだまだこれから戦い続けるつもりだ。
「ねえねえ、見て見て!! 空木できたー!」
 フリューゲルが差し出してきたのは、ごまドーナツにアーモンドの耳をつけてチョコで顔を描いた空木さんドーナツ。すると蓮は代わりにマンゴードーナツを差し出した。
「じゃあ、これはリューだな」
「わ、トラだ!」
 チョコがけが縞模様みたい。
「えへへ、ごはんいっぱいだし蓮も一緒だし、ボク楽しいし嬉しいよ!」
「そうか、それは良かった」
 そういう彼の表情からも自然と笑みが零れていた。
 ……。
 胸いっぱい蕩けそうに甘く。時にきりりとビターに薫る。貴女様はまるで、このチョコレートみたいだね。
「うんうん、甘いモノは心の栄養っすねー」
 バックに文字が浮かぶような感じで語ったバンリにコンスタンツァは軽く返した。
 いまいち伝わったのかどーなのか。でもきっと思いは同じ、互いに守り守られたい。そしてもうひとつ。
「そばにいたいの。指切りげんまんまん」
「これからもすっとともだちっすよ」
 小指を絡めて指切りげんまん。それから、チョコケーキの食べさせ合い。
『うぅむ』
 簡単に上手く行くものではない。
 それでも何度かの失敗の末に、遊鬼はようやくいい具合にクレープを完成させた。
『と思ったのだが、巻いた途端記事が破けて具がはみ出たのだ』
「生地が均一じゃなかったか……いや、詰めすぎじゃ」
 そう言う紫音はいちごをメインとしているがクリームが控えめ。ややこじんまりとしているが可愛らしいクレープだ。
「ならばこうしても良かったかも知れませんね」
 結城が大皿を差しだしてきた。そこに敷かれたクレープ生地に各種ベリーがトッピングされ、カスタードがメインにホイップもトッピングされ、仕上げにブルーベリーソースがかけられていた。
『ほぉ、洒落ているな。こういうのもあるのか、奥が深い』
 まじまじ見つめる遊鬼。新たな発見もある、それになにより。
『教えてもらいながら作るのも楽しいな』
 みんなで作って楽しいから、さらに美味しくなるのだ。
 でもそれでもあんみつカレーは勘弁。
「天使様~! どうして食べないっスか!?」
「当たり前だ!」
 逃げるシグリットを追いかけるハチ。だが体力差は歴然。すぐに追い詰められる。
「あー、なんだ。ほら、一口食べるか? あ、いや食べかけはないよな」
 苦し紛れにシグリットがドーナツを差しだしたがすぐに引っ込めた。が、ここでハチがシグリットの口元のドーナツを指で掬ってぺろり。
「なっ、ハチ!? お前!?」
「へへー、自分は気にしないっスよ!」
「少しは気にしろ!」
 べしんべしんべしん!
「痛! なんでデコピンなんスかあ!?」
 ただの八つ当たり。

●真なるおめドー
 ふわふわ焼きドーナツ、さくさくフローズンドーナツ。
 そんな変わり種を抱えながらも紗羅沙はご満悦な様子。
「そういえば、表面カリッと中とろ~りなプリンみたいなドーナツ……」
「クイニーアマンならここに!」
「いただきます~」
「もしかしてそれが今日のセティさんオススメドーナツ!」
「ベーレさんもどうぞ」
「やったあ、いただきまーす!!」
 ついにドーナツを口にすることの出来たエルトベーレ。
「あ、でもクイニーアマンってパンですよね」
 出来てなかった。
「きゃー! セティさんたいへんですー!」
「何事!?」
 せっかくいい具合にドーナツ談義してたのに、リリウムの声が遮ってきた。
「ソフトクリームが崩れそうですー!」
「機械止めて下さい、いますぐ」
「100段ソフトクリームがー!」
 これにはナユタもあきれ顔。
「ちょっとムリないですか? つゆ冷えとかつゆダルと言われてるよーにこのじきに体を冷やすとないぞーのはたらきがおとろえ……」
「ぎゃー、うわきゃー!」
「まったく聞いておりませんね? ああそまつにしてはいけません!」
 最終的にソフトクリームは2段になった。ただしめちゃくちゃでかい。
 みんなでいただきました。最終的にわんこたちは悟った。どーなつがいちばん。
 そのころルリィとユーロの間に一触即発の空気が流れていた。
 ユーロがルリィのどら焼きをうばい、お返しにルリィがユーロのカステラを奪った。あとは負の連鎖、不毛な奪い合いが続く……というのにカレンは遠巻きに眺めつつ、コーヒー片手にティラミスで一服。
「そろそろかな」
 落ち着いたところで、カレンが妹ふたりの口にそれぞれドーナツを押し込んだ。
「はいはい、仲いいのはわかったから、一緒にね」
 ふたりして大人しくなった。これが長女力。
 まあ、ふたりが仲いいのは分かってるから問題ない。とりあえずミルフィーユを三人で分けるとこから始めよう。
「できたよー!」
「まってましたー、って大きすぎません!?」
 ついに完成したおめドー。ちなみに、おめーどーしてこんなでっかくなったのこのドーナツケーキタワー、の略である。
 ざっと、ぽかちゃん先生さん5人分の高さ、7人分の厚さといったとこ。
 運んできた一人、蓮華がタワーの横から顔を出した。
「セティちゃんが食べたいドーナツだから気合い入れちゃった。それにアザラシでトッピングして……て、アザラシ?」
「アザランですよ」
 ひょこりと反対側からディアナが顔を出した。
「ちょっと憧れて小さなドーナツタワーを作ろうと思ったのですが……ノリと勢いと仲間の力でいつの間にかこんなことに」
 よくみれば、ドーナツ一つ一つがクリームコーティングされて、間にホイップを詰めながら順に重ねて、と手間がかかっている。短時間でこのサイズ作るのやばい。
「さすがにこれを一人では」
「なら答えは簡単です」
 意を得たりとディアナは頷いた。
「みんなで張り切って食べちゃいましょう!」
 ケルベロスたちのドーナツパラダイスはまだ始まったばかりである。
 その様子を見て、製作に貢献した光流とカルナも満足そうに頷いた。
「これで一仕事終えたなー」
「では僕も自由に……ドーナツとプリンや団子の相性を調べようかと」
「ほな、ドーナツ入りのクレープやあんみつもあるさかい、試したってや」
「それはいいですね」
 早速手を伸ばす。
「せや。作ってきた犬用ドーナツが見当たらんのや。紛れたのかもしれへん。まあ、食べても即浄土行きとはならへんしええやろ」
「え」
 もちろん、カルナがひとつ目から犬用に直撃した。
 一方、晟もまた静かに戦いを続けていた。
「くっ、ドーナツだけでもなかなか重かったな。だがまだスイーツはある……もしかしてこれは先に軽食を食べた方が……いや、これは時間との勝負だ。同時に行くぞ!」
 晟が時間制限ないことに気付くのは数時間後のことであったという。

作者:宮内ゆう 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年6月28日
難度:易しい
参加:27人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 6
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