●熊本の悲劇
熊本県熊本市。
そこは、ドラゴン勢力の強襲に遭っていた。
ドラグナー、オーク、そして竜牙兵。
それぞれの勢力が団長に率いられ、市民達の命を次々に奪い去っていく。
東区の南側では、ドラグナーの女性が嬉々として人々に襲い掛かっていた。
金色のポニーテールを揺らして人々の命を奪い去るこのドラグナーの名前は、竜闘姫リファイア・レンブランド。同じ東区、北側を襲う竜闘姫ファイナ・レンブランドの姉に当たる。
リファイアの腹筋はくっきりと割れており、いかにも肉体派と言わんばかりの姿をしていた。
率いる竜牙兵に任せっきりにはせず、リファイア自身も率先して人々に襲い掛かり、その身体を粉砕していく。
返り血を浴び、グラビティ・チェインを得て恍惚とした表情を浮かべるリファイア。
だが、なおも満足できぬのか、彼女は周囲を見回す。
程なく新たな獲物を発見したリファイアは、大きく口元を吊り上げたのである。
ドラゴン勢力が動き出したことを受け、ヘリポートへとケルベロスが集まる。
「大侵略期のドラゴンを復活させていた黒幕が、遂に動き出したようだね」
その姿を認めたリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)は、冷静に努めてケルベロス達へと告げる。
敵の目的は『魔竜王の遺産ドラゴンオーブ』の探索であり、どうやら彼らはそのありかを発見したようなのだ。
ドラゴンオーブの力は不明だが、魔竜王の遺産ともいわれるその力は魔竜王の再臨の可能性すらあるらしい。
「ドラゴン達に、ドラゴンオーブを渡すわけにはいかないよ」
現在、ドラゴンオーブの封印場所である『熊本市』には、竜十字島より出撃したドラゴンの軍勢『アストライオス軍団』が向かって来ている。
「しかも、敵はそれだけではないんだ」
このドラゴンの軍勢に先立ち、敵は魔空回廊を最大限に利用して配下の軍勢を送り込んでいる。
ドラゴンオーブの復活の為のグラビティ・チェインを確保すべく、敵勢力は市街の破壊と略奪を行おうとしているのだ。
「配下の軍勢は、ドラグナー、竜牙兵、オーク、屍隷兵で、9つの部隊に分かれて熊本市街の略奪を行おうとしているよ」
竜十字島から出撃したアストライオス軍団が到着するまでに、『ドラゴンオーブの封印解除に必要なグラビティ・チェインを略奪』しようとしているようだ。
熊本市の戦いで、多くのグラビティ・チェインを略奪されればされるだけ、ドラゴンの軍勢によるドラゴンオーブ奪取を阻止できる可能性が下がってしまうだろう。
「続いて、敵の軍勢についてだね」
先に説明したとおり、敵は9つの軍団に分かれている。
まずは、ドラグナー。
ドラゴンの封印が解かれる事件を起こした元凶のドラグナー、竜性破滅願望者・中村・裕美率いるケイオス・ウロボロス。
武術を得意とするレンブランド姉妹の妹、竜闘姫ファイナ・レンブランド率いる武術家の死体を利用した屍隷兵の軍勢。
武術を得意とするレンブランド姉妹の姉。竜闘姫リファイア・レンブランドが率いるは、武術で戦う竜牙兵だ。
「続いて、オークだね」
自らの血を引く部族を総べる残忍な暴君、嗜虐王エラガバルス。捕らえた女性に対する扱いは苛烈を極めるという。
「強い女」を求めるオークの王、餓王ゲブル。女性への拘りが強く飢餓状態のオークばかりの集団を率いるという。
突然変異で触手が異常増殖&異常発達した巨大なオーク、触手大王。同じく触手が異常発達した配下を、王子と呼ばれる3人の息子と共に率いている。
「最後に竜牙兵だよ」
黒鎧の騎士型竜牙兵、黒牙卿・ヴォーダン。配下はヴォーダンを軽装にしたような歩兵達だ。
四腕の剣士型竜牙兵、斬り込み隊長イスパトル。配下はイスパトルを軽装にし、2本腕となった兵達。
今回の大ボスである覇空竜アストライオス直属の軍団長、黒鎖竜牙兵団長。剣と黒鎖を武器とし、配下も団長と同じ型の竜牙兵だ。
「敵部隊は、指揮官の指示に従って、市民の虐殺を行っているようだね」
市民を救出しつつ、敵ボスを素早く撃破する事が出来れば、戦いが有利になるはずだ。
一通り説明を終え、リーゼリットは一呼吸置いてから続ける。
「この後、ドラゴンとの決戦を控えているからね。無理は禁物だよ」
とはいえ、熊本の地を救い出したくもある。できるならば確実な勝利を目指して作戦を練り、勝利を目指したい。
戦地に赴くケルベロス達へ、最後にリーゼリットはこう告げた。
「皆の……ケルベロスの勝利を、ボクは願っているよ」
参加者 | |
---|---|
ラトゥーニ・ベルフロー(至福の夢・e00214) |
蛇荷・カイリ(暗夜切り裂く雷光となりて・e00608) |
シェイ・ルゥ(虚空を彷徨う拳・e01447) |
志穂崎・藍(蒼穹の巫女・e11953) |
フィーラ・ヘドルンド(四番目・e32471) |
雑賀・真也(不滅の守護者・e36613) |
草津・翠華(碧眼の継承者・e36712) |
水貝・雁之助(ウェアライダーの零式忍者・e44098) |
●人々の避難を
熊本県熊本市南区。
この場所へと突入したケルベロスは、4チーム。
こちらのチームは、東側の嘉島町から市内へと入っていく。
予め、水貝・雁之助(ウェアライダーの零式忍者・e44098)らが地図やネットの周辺画像などを元に確認しており、そこからの突入を決めていた。
「このルートは確保して、避難民を市外に逃がさないとな」
クールな態度の青年、雑賀・真也(不滅の守護者・e36613)は前方の要救助者に目を向ける。
この近辺にはすでに、オークどもが蔓延っているはずなのだ。
「殲滅するのにゃ」
藍色の髪をポニーテールにした白猫のウェアライダー、志穂崎・藍(蒼穹の巫女・e11953)はそれらを敵視し、拳に力を入れる。
できるだけ、散開した他チームと連絡を。
飄々とした態度の人型ドラゴニアン、シェイ・ルゥ(虚空を彷徨う拳・e01447)は予め、連絡先を交換していたが……。
「繋がらないね」
「こっちもダメだね」
無表情のまま小さく首を振り、天然パーマのピンクの髪を揺らすフィーラ・ヘドルンド(四番目・e32471)も携帯電話が通じないことを示す。
「ラジオはなんとか使えそうだけれど……」
電波状況を確認する、中性的な外見の女性、草津・翠華(碧眼の継承者・e36712)。
それも途切れ途切れなのは、おそらくは今回の事件の首謀者であるドラグナー、中村・裕美が電波をジャミングしているからだろう。
「給金目当てとはいえ、依頼内容をよく確認するべきだったわ」
思った以上に、難易度の高そうな依頼。
出来れば引き返したいと考えつつも、1人引き返すわけにも行かぬと翠華は首を振る。
(「急ぎだったりは面倒。早めに終わらせる、方向で考ぇてゆっくりしよぅ」)
この状況においても、マイペースさを発揮するゴスロリ衣装のラトゥーニ・ベルフロー(至福の夢・e00214)は、自身のミミックに運んでもらいながら仲間の後についていく。
チームメンバーは本格的に人々の避難に当たりながら、この地域を侵略せんとするオークの姿を探す。
「危機を脱出するには、皆さんの協力が必要です」
翠華はいざ動き出せば、率先して隣人力を働かせて避難民を説得し、市外へと誘導を行う。
「慌てずにね。キミらは私たちが守るからさ」
シェイも声をかけたり、直接触れてから接触テレパスを使ったりして、地元民に避難経路を伝える。
逃げてくる人々に対しては雁之助が声を出し、市外へと逃がそうと誘導していた。
そのシェイの飲み仲間である、スタイル抜群のシャドウエルフの女性、蛇荷・カイリ(暗夜切り裂く雷光となりて・e00608)の薄着姿に、避難男性達が一斉に腰を屈めていたのはさておき。
「皆さん、焦らず避難してください!」
真也は地元の関係者を装いながら、なるべく力の弱い女性や子供、高齢者へと1人1人手を差し伸べて呼びかけを続ける。
「この場には『英雄』と呼ばれるケルベロス、雑賀・真也さんも駆けつけてくれています」
自身の素性はできるだけ隠しつつ、真也は己の知名度を活かして呼びかけ、熊本の人々を励ましていた。
●襲い来る豚は殲滅を
避難途中、ケルベロス達はそいつらの強襲に遭うこととなる。
「…………」
フィーラがそれにいち早く気付き、そちらへと視線を投げかけると。
「ブヒブヒブヒブヒブヒ」
「ブウウゥゥゥ、アアアアアアアァァァ!!」
建物を破壊しながら襲い来る飢餓状態のオーク。
モヒカン頭の豚人間どもは、背中の触手で破壊活動を行いながらこちらへとやってくる。
すぐさま、シェイはその抑えを優先すべく飛び出す。
「覚悟しなさい。ここが、貴方達の墓場にゃ」
藍もまたしなやかな身体を躍らせ、攻め来るオークの前へと立ち塞がった。
「強い女であることを証明して餓王ゲブルを惹き付けて、首級を挙げてやるんだ!」
縛霊手を嵌めた手を突き出し、藍は前に出てくるオークどもへと巨大光弾を発射していく。
「はっ、来なさいよ。……私らがここでぶっ潰してやるのだわ」
この地の人々を守るべく、カイリは木刀を手に防御を固め、オークの触手に備える。
並び立つシェイもまた身構えていたが、やや攻撃寄りの立ち回りを行う。
彼はバトルオーラ「九龍」を纏い、手近なオークへと殴りかかっていく。
ただ、群れて現れるオークは1体だけを叩いても、横から別の相手が触手を叩きつけてくる。
「ふっ、眠気覚ましにもならないね」
触手の殴打を受けてなお、シェイは小さく笑って反撃を繰り出す。
「市民たちには手出しさせない。英雄の名を名乗るこの俺、雑賀・真也が相手だ!」
戦いに入ると、真也は先ほどとは打って変わって名乗りを上げ、 双剣【干将】と【莫耶】を手に衝撃波を放つ。
霊体のみを切り裂く連撃にオークは苦しみ悶えるが、それで真也が攻撃を止めるはずもない。
「ブオオオオォォォ!!」
オークは男性相手であれ構うことなく、グラビティ・チェインをもぎ取ろうと触手を滅茶苦茶に振り回す。
「少し黙ってけ、……な?」
そいつらの動きを少しでも止めようと、雁之助は自らの感情を押し殺しながらも眼光鋭く睨みつけ、相手の頭上から重力の一蹴を叩き込む。
そんな中、ラトゥーニはミミックのリリをオークの群れへと投げつけた。
「がんばれリリ」
リリはけなげに主の要望に応えて大きく口を開いてオークに噛み付き、うまく動きを止めてくれる。
ラトゥーニ自身はできる限りオークの触手を逃れるよう立ち回りつつ、人々の救援を続けていた。
「ブヒイイイイイィィ!!」
だが、飢餓に狂うオークは誰彼構わず触手を突き出し、命を奪おうとしている。
殺意に満ちた敵の姿に、足音も立てずに動くフィーラは頭を振った。
(「これは、よくない。こんな殺しは、だめ」)
相手にも事情はあるのだろうが……、フィーラはそれを是とはできない。
「殺すのであれば、殺させないために、殺す」
ゆったりしたように見えて、フィーラは無駄のない動きで相手の背後に回る。
小声で呟いた彼女は御業を使い、その腕でオークの体を握り潰してしまう。
相手は飢餓に狂うとはいえ、オークだ。
歴戦の猛者集まるケルベロス達にとっては、丁寧に対処さえしていけば烏合の衆にも思える相手でしかない。
「ブヒイイイイイ!!」
そんな中でも、女性を襲う本能のままに薄着で女性らしさを主張するカイリへと駆け出す個体もいた。
普段は、縦横無尽に戦場を駆け巡るスピードタイプの剣士であるカイリ。
今回はそのスピードを活かしつつ仲間を庇い、自身や仲間の回復に当たる。
「私たちは……戦えるんだッ!」
諦める事のない闘志を、カイリは激励の言葉として発した。
その言葉には癒しの霊力が込められ、仲間達に立ち向かう勇気を与える。
しかしながら、オークの数は多い。
ケルベロス達はオークの触手に打たれ、縛られ、瞬く間に消耗していく。
メンバー達が万全に戦えるようにと、翠華は癒しに専念していた。
翠華は腕に巻きつける攻性植物から収穫した黄金の果実を煌かせ、さらにヒールドローンを発して前線メンバーの傷を癒す。
そうして、傷を癒してもらった藍。
(「無様な姿は見せられないにゃ」)
自分達を信じて送り出してくれた、銀髪シャドウエルフのヘリオライダーの為にも。
「格の違いを見せ付けてやるニャ」
仲間達がうまく、オークを抑えてくれている。
その内の1体目掛け、藍は正面から飛び込んで。
「ボクの名前を刻んで、地獄に落ちるがいいニャ!」
鮮烈な一蹴で、彼女は相手の腹を粉砕した。
「ブヒイイィィッ!!」
耳をつんざく様な叫びを上げ、そいつは赤い物をぶちまけて完全に事切れたのである。
●立てこもる人々の救援を……!
その後もオークとの交戦は続き、2戦をこなしたケルベロス達。
残念ながら指揮官、餓王ゲブルの姿は確認できなかった。
「とはいえ、連絡を取ることはできないけれどね」
シェイは念の為とスマートフォンを手にするが、相変わらず不通のままだ。
「…………」
フィーラもまた、携帯電話を手にして考える。
これだけ見つからなければ、別チームがゲブルと交戦していてもおかしくはないだろう。
ならば、こちらは1人でも多くの人を救出するのみ。
雁之助は木造の建物や店舗などを1つずつ念入りに調べ、川が入り組む場所とあって橋が落ちた場合に使うロープも手にするなど、細かなチェックを怠ることなく人々の救援に当たる。
その中でもとりわけ雁之助が気にかけていたのは、すでに瓦礫が積もっている場所。
要救助対象がいたならば、すぐさまその手当てへと当たる。
「オンコロコロセンダリマトウギソワカ! 薬師如来よ、御身の加護を我等に与え給え!」
結界を張る為のグラビティではあるが、その加護は人々の傷を癒す。
助け出したのが子供であれば、雁之助もしゃがんでその子に視線を合わせ、安心させられるようにと努めていたようだ。
「車の移動は止めて下さい。事故になります」
予め仲間内で決めたルートへと、翠華は避難民を誘導する。
フィーラはこの近場に一般人が接近しないようにと殺界を展開していく。
とはいえ、殺界形成の効果は半径300m程度。
これだけ広域での戦いの中では自分達が巡る領域をカバーできない。
まして、取り残された人を発見せれば、フィーラも殺界を解かざるをえない。混乱を誘う恐れすらありえると仲間から指摘を受けたからだ。
「オークに狙われているようだな」
雁之助が示す先の建物には、触手で壁を破壊しようとするオークの一団。
「いや、オークに襲わるっとは嫌ばい……」
「ケルベロスんきちょっとよ、もう少しの辛抱ばい!」
建物の中に立てこもる数名の女性の声が聞こえてくるが、襲われるのは時間の問題と言えた。
真也やラトゥーニがすぐさまそちらの避難に当たる中、オークの抑えへとカイリが飛び出す。
「ほら、こっちだわ」
そこに姿を現した薄着姿のカイリは、オークを引きつけるに十分。
彼女はできる限り仲間や人々を庇うようにして、全身防御の態勢をとる。
触手を振り上げる相手には、フィーラが相手の死角から仕掛けていく。
「……不思議なかんじ」
これまで、言われるがまま命を摘み取ってきた自分が、守る為の戦いに身を投じている。
フィーラはそんな感情を抱きつつ、2冊の魔導書を広げて素早く詠唱した。
生死の境界線から呼び起こされたのは、命の鼓動を止めるおぞましき触手。
それはオークの触手などたやすく蹂躙し、敵の命を摘み取っていく。
別方向には、ミミックのリリが奮闘している。
ラトゥーニはまたもどうせ復活はするのだからと、自身のサーヴァントを抑えへと投げ飛ばしていたのだ。
ただ、ラトゥーニがリリをディフェンダーとしなかったのは、チームの布陣を考えてのこと。救援で働かせるのに、プラスに働くと彼女は判断したのだ。
実際に、リリはエクトプラズムで作った武器で斬りつけた相手を徐々に石と化し、さらに偽物の財宝をばら撒いて相手を惑わすなどして、存分にオークの動きを止めてくれている。
「ここか、ら外ぇ出て」
その間にラトゥーニは裏手側の壁を破壊し、中の女性達を逃がす。
救出できた人がいれば、真也が手を差し伸べて。
「ありがとう。ほんなこつ助かったばい」
「皆を守る、それが俺の役目だ」
礼を言われ、彼は励ましの言葉を人々へとかけ、避難を促す。
雁之助はこの場を離れる女性達へと流れ弾が飛ばぬよう警戒し、「零の境地」を零式鉄爪へとのせ、オークの体を殴りつけていく。
「いつかドラゴンをもきっと倒すのを目標にしているんだから、オークごときに負けられない」
この場もまた、派手に暴れようと考える藍。
限界状態に近いオークへと彼女はバトルガントレットを嵌めた指を突き出し、その動きを止めようとしていた。
真也もオークが相手に向かわぬようにと精神を集中させ、相手の触手を中心に爆発を起こして牽制する。
「ブフゥ……」
オーク達もケルベロスの勢いに押され、じりじりと後退を余儀なくされていた。
人々さえ助けられたなら、後はケルベロス達が勢いで討伐を進めるのみ。
オークどもも飢餓の苦しみに耐えながら戦っていたが、途中で生存本能が上回り出したのだろう。
「ブ、ブヒイイッ!!」
「ブブゥ、ブブヒィィ!!」
1体、また1体と悲鳴を上げて背を向ける。
メンバー達も深追いはしない作戦だが、この場に残っているオークがいるとなれば話は別。
これまで抑えに回っていたシェイが相手へと相手の首元へと電光石火の蹴りを叩き込むと、そいつは身体に痺れを覚えて動きを止める。
そいつ目掛け、カイリが燃え上がる一蹴を相手の頬へと浴びせかけ、完全に卒倒させてしまった。
回復に当たっていた翠華もまた、ラストの1体へと稲妻に包むゲシュタルトグレイブの切っ先を突きつける。
「ブ、ブヒィィ……」
彼女の槍は、相手の胸部を完全に貫いていた。
弱々しい声を出したオークは目から光を失い、重たい音を立てて地面へと崩れ落ちたのである。
●さらなる人々を救う為に
逃がしたオークは少なくはないが、ケルベロス達もかなりの数のオークを撃破したはず。
通信の類がほとんど通じない為、状況の把握は難しいが、オークを敗走させている状況から、ケルベロスが優勢だと考えたいところ。
ただ、明らかに分かること。それは、ケルベロス達の目に見える範囲内では大きな人的被害はなかったということだ。
「我々はケルベロスです! 助けが必要な方は返事をしてください!」
さらなる救助をと考える真也は市内での活動を考え、周囲に呼びかける。
雁之助も救助し損ねた人がいないか気になっていたようで、それに続いていた。
「一仕事終わったら一杯……と行きたいけど、まだ早いか」
「みんなが行くなら、ボクも行くにゃ」
シェイ、藍も仲間に同行し、更なる避難を目指す様子だ。
そんな仲間達に、翠華は嘆息しつつ。
「分かってるわよ。救助行くのよね、分かってるわよ」
救助に向かうなら、専門家に案内を。
翠華はそう考え、救急車が近くを通っていないかと探す。
「誰か、コンビニで食べ物買ってきて」
「……おなかすいたなぁ」
そこで彼女は空腹を覚えたのか、仲間へと声をかける。
ラトゥーニもそれに同意し、何か食べ物をと仲間に訴えかけていた。
「コンビニ、空いてない」
フィーラが近場の店を指し示して素っ気無く告げたのに、翠華は嘆息しながら仲間についていくのだった。
作者:なちゅい |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年6月23日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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