魔竜王の遺産~熊本襲撃! 竜の配下を迎え撃て!

作者:青葉桂都

●皆殺しの時間
 熊本の市内で、異形の軍団が歩を進めていた。
 ねじくれた角を生やした髑髏の頭部に、棘の生えた鎧を身に着けた兵士たち。
 そのうち何体かは、黒い鎖が巻き付いた剣をすでに血で染めている。
「アッチニ、大キナ道ガアル。行クゾ!」
 ほとんど同じ姿をした竜牙兵のうち1体が呼びかけ、他の仲間たちは頷いて走り出す。
 走りながら、彼らは的確に陣形を整えていた。
「団長ハ皆殺シヲ命ジラレタ」
「ソレダケぐらびてぃ・ちぇいんヲ必要トスル大作戦トイウコトダ」
「黒鎖竜牙兵団ノ力ヲ示ス時ダ!」
 口々に呼びかけ合いながら、彼らは前進する。
 道を歩いていた不運な青年が、彼らに反応する間もなく首を跳ねられた。
 角を曲がってきた車へと別の2体が黒鎖を飛ばす。
 フロントガラスを貫いた鎖は、運転席と助手席に乗っていた夫婦を貫き、後部座席に座る子供の命まで奪う。
「覇空竜様ノタメニ!」
 竜牙兵たちは表通りへと飛び出し、道を歩く人を、走る車の乗員を、容赦なく皆殺しにしていった。

●熊本SOS
「大変です。大侵略期のドラゴンを復活させていた敵の目的が判明しました」
 落ち着いた口調で、石田・芹架は集まったケルベロスたちに告げた。
 敵はどうやら『魔竜王の遺産ドラゴンオーブ』を探索していたようだ。そして、その在処を発見したらしい。
「オーブの力は不明ですが、魔竜王を再臨させるほどの力があると言われているようです」
 ドラゴンたちに渡れば大変なことになるのは間違いない。
 九州の熊本市へ向けて、竜十字島より『覇空竜アストライオス』の軍団が進攻中らしい。
 ただし、今日集まってもらったのは、ドラゴン軍団迎撃のためではない。
「どうやら、アストライオスは配下の勢力を魔空回廊で先行して送り込み、熊本市を襲わせてドラゴンオーブ復活に必要なグラビティ・チェインを集めようとしているようなのです」
 ドラグナー、オーク、竜牙兵からなる軍勢は9つの部隊に分かれて熊本市内の略奪を行おうとしている。
 彼らが多くのグラビティ・チェインを集めれば集めるだけ、ドラゴン軍団によりオーブ奪取の阻止が難しくなってしまうだろうと芹架は言った。
 それから、芹架は具体的な作戦についての説明を始めた。
「皆さんには、9つの部隊のうちいずれかを選んで迎撃を行っていただくことになります」
 芹架はまず3人のドラグナーが率いる3部隊について語り始める。彼女らが襲撃するのは中央から東部にかけてだ。
 熊本市中央区を襲撃しているのは、竜性破滅願望者・中村・裕美とその配下であるケイオス・ウロボロスだ。
 東区の襲撃はドラグナーの竜闘姫レンブランド姉妹。北側を武術家屍隷兵を率いた姉のファイナが、南側を武術家竜牙兵を率いた妹のリファイアが担当している。
 それから、オークの3部隊が市の南西側を襲っている。
 西区南側は残忍な暴君である嗜虐王エラガルバス。捕らえた女性に苛烈な扱いをするオークの部族長だ。
 南区北側は、『強い女』にこだわり常に飢餓状態にある餓王ガブルとその配下。
 そして南区南側は異常発達した触手を持つ触手大王と、3人の息子をはじめとする部下たちが襲っている。
「オークたちも、まずは作戦のため男女問わず皆殺しにするよう部隊長から厳命されているようです。女性だけを襲う普段の行動よりマシだとは言えませんが」
 残る北西部を襲撃する3部隊は竜牙兵だ。
 北区の北側を騎士型の黒牙卿・ヴォーダンとその部下が担当している。
 南側は四本腕の剣士、切り込み隊長イスバトル。配下は二本腕だが、やはり剣を好んで使うらしい。
 西区の北側を襲っているのは黒鎖竜牙兵団。団長を含めて、皆剣と黒鎖を操る。今回の黒幕である覇空竜アストライオス直属の軍団だ。
「いずれも団長の指示に従って、統率のとれた動きで市民を虐殺しようとするようです」
 団長を撃破すれば、統率を失って好き勝手に行動するようになり、各個撃破しやすくなるはずだ。
 ただし、捜索を行う間も敵の殺戮は行われる。団長を探すことに集中しすぎると、市民の犠牲が増えてしまうだろう。
 この戦いは、ドラゴン軍団との戦いの前哨戦でしかないと、最後に芹架は言った。
「しかし、人口百万人近い熊本市民を、この大規模な襲撃から事前に逃す方法はないでしょう。どれだけの人が救えるかは、ケルベロスの皆さんの力にかかっています。よろしくお願いします」
 へリオライダーは、静かに頭を下げた。


参加者
タクティ・ハーロット(重力喰尽晶龍・e06699)
風魔・遊鬼(風鎖・e08021)
志藤・巌(壊し屋・e10136)
アト・タウィル(静寂に響く音色・e12058)
ヒマラヤン・サイアミーゼス(カオスウィザード・e16046)
レイラ・クリスティ(蒼氷の魔導士・e21318)
エドワード・リュデル(黒ヒゲ・e42136)

■リプレイ

●たどり着いた救いの手
 路肩に停めた車の陰で、男はただ震えていることしかできなかった。
 熊本市の東区と中央区の境目あたり。国道の一角で、彼は息子を抱えて息を殺していた。
 車や物陰に隠れている者はたくさんいるだろうが、それを確かめる術はない。ただ、道路を走ってくる竜牙兵が彼と子供に気づかずに通り過ぎてくれることを祈るしかない。
 ドン、という音が車の上から聞こえた。思わず顔を上げた彼の目に映るのは、身にまとうオーラを腕にためている化け物の姿。
 だが、そのオーラが放たれることはなかった。
 鈍い音が響き、バンダナを巻いた筋肉質の男が両腕に装備した篭手で横合いから竜牙兵に連撃を叩き込む。
「よりにもよって皆殺し……か。ふざけやがって。お前らが奪っていい命なんて、ココには1つもねェんだよ。全力で護り切るぞ!」
 吹き飛ばした敵を見下ろして、志藤・巌(壊し屋・e10136)が叫ぶ。
 ケルベロスの到着に気づいた竜牙兵たちが、オーラをまとって攻撃を仕掛けてくる。
 そのうち1体の拳を、タクティ・ハーロット(重力喰尽晶龍・e06699)はハンマーガントレットで受け止めた。
「さーて……汚名返上と行きますか……」
 誰にも聞こえないように呟いて、彼は殴ってきた敵へガントレットをたたき込む。
「この道路には4体いるみたいなのです。一気に片付けるのですよ」
 ヒマラヤン・サイアミーゼス(カオスウィザード・e16046)が、覆面をした青年にエネルギー光球を飛ばした。
 幼い顔立ちをした猫のウェアライダーに一瞬視線を向けて、風魔・遊鬼(風鎖・e08021)は車の一台を狙おうとしている敵へと接近する。
 無言のままに背骨に突き刺した棒苦無が爆発を起こした。
「降りてきた場所にもう敵がいるなんて……急いで救助に向かいませんと大変なことになります! その人たちから離れなさい!」
 翼を広げたレイラ・クリスティ(蒼氷の魔導士・e21318)が、爆発で吹き飛んだ敵へと宙を滑るように接近し、花飾りのついたサンダルで蹴りを叩き込んで遠ざける。
「デュフフ……拙者らを無視して一般人を狙うとは、まるで素人ですなあ」
 素早く大型車で遮蔽を取りながら、エドワード・リュデル(黒ヒゲ・e42136)の手にした棍棒のような何かが火を吹いて追撃する。
 その間に、近くにいた別の1体の前にはタクティのミミックが立ちはだかっている。少し離れた場所にいた2体からは、気弾が飛んできた。
 どうにか起き上がった竜牙兵の周りに他の敵も近づいて、陣形を組む。
 だが、その間にケルベロスたちも支援の技で場を整えていた。
「魔竜王の遺産か、それは拝んでみたいものだ。だが今は役目を果たさねばな」
 ベリザリオ・ヴァルターハイム(愛執の炎・e15705)の周囲にドローンが浮かぶ。
「貴様等に好き勝手に暴れられるのは業腹だ。この手足と翼の届く限り逃げ遅れた者を救出する」
 黒い翼を広げた彼が手を一閃すると、前衛の仲間たちをドローンが囲んだ。
「はい、必ず守りましょう」
 ぼうっとした顔をしたまま呟いたアト・タウィル(静寂に響く音色・e12058)が、九尾扇でエドワードにちらつく幻影を付与する。
 敵はひるむことなく反撃してこようとするが、残念ながらケルベロスたちの1人も倒すことはできなかった。
 3体すべてを数分で倒しきる。
 襲われようとしていた人々が歓声を上げる。
「ありがとう、ケルベロス!」
 父親に支えられた少年が大き声で礼を言ってくれた。ヒマラヤンが彼に微笑みかけ、手を振って応える。
 ケルベロスたちは、まず周囲をヒールした。
「近くに、避難所に使えそうな大きな建物はないか? まずそこの安全を確保するから、隠れていてくれ」
 べリザリオに問いかけられて、近くにいた男がいくつかの施設をあげる。
 そのうち1つを選んで、避難所にすることを決めた。
「デウスエクスがいる可能性があるので後からついてきてください。自分たちが移動する場所はヒールしておくので、目印になるはずです」
「他に逃げてる奴を見かけたら伝えておいてくれ。警察や消防、自衛隊にもな」
 地球人である遊鬼や巌の言葉に、彼らは頷いた。
「到着地点は記録しましたぞ。避難所の場所も書いておいたほうがよさそうでござるな」
 スーパーGPSで現在位置を確認したエドワードが、地図上にその場所を記録した。
 そして、彼らは走り出す。

●探索と連戦
 東区は熊本の中では栄えている地域のようだ。
 街には多くの建物が立ち並んでおり、本来ならばたくさんの人々が行きかっているのだろう。だが、今は怯える人々がいるだけの場所でしかない。
 担当する東区南側の北西部に降り立ったケルベロスたちは、避難所を確保するとそこから担当地区の中央部へ向けて行動を開始した。
 学校や商店といった目立つ建物に敵が集まるのではないかというケルベロスたちの予想は当たっており、目指したいくつかの場所で竜牙兵と遭遇した。
 全員、回復できないダメージは蓄積していたが、今のところ誰も倒れてはいない。
 なお今回も、携帯電話などの通信網は機能していない。
 大規模作戦ではいつもそうなので、デウスエクスがなんらかの妨害を行っていると考えて間違いはなさそうだ。
 敵は人間が行える通信妨害はすべてより高度に行うことができるだろうし、あるいはなんらかの人知を超えた妨害手段を有していてもおかしくはない。
 そのため自衛隊や警察への連絡もつかなかった。
 もっとも、彼らもゲームのコマではないので、ケルベロスがあえて連絡しなくともやるべきことはやっている。
 どこかで出会った際に頼めば、活動に支障のない範囲で協力はしてくれるはずだ。
 軍団長とは遭遇できていない。
 信号弾による発見や撃破の報告はなかったし、敵の動きに統制が取れている点からもレファイア・レンブランドの健在は間違いないだろう。
 もっとも、予定通りにいかなかったことがあっても、救出は順調に行えていた。
 救出した一般人たちや、あるいは襲われる前に発見できた人々には、予定通りヒールの痕跡を探してケルベロスたちが敵を倒した方向へ逃げるよう伝えてある。
 エドワードが地図にメモをしておいた行動開始地点を示すと、現地の人はだいたいどこに逃げればいいのかわかったようだった。
 いくつめかに目指した学校に向かっていた時のことだった。
 タクティやレイラが飛行して遠くから確認し、学校内に人が残っている気配が感じられた場所だ。
「……! 竜牙兵に追われている人がいるようです!」
 レイラが仲間たちに告げる。
 デウスエクスが、車で学校に逃げ込もうとしている誰かを追っているのだ。
「4体ですね。急ぎましょう」
 敵を追って移動しながら、遊鬼が冷静に敵の数を見極める。
 校門へ飛び込んだところで、建物内から悲鳴が聞こえた。
「要救助者確認でござる。校舎内に入られるのはまずいですぞ」
 声の源へと素早く視線を向けて、エドワードが仲間たちに告げた。
「後ろから別の竜牙兵も来ています。音を聞きつけて来たようですね」
「あっちは3体なのですよ!」
 アトの声に振り向いたヒマラヤンが後方を確認した。
「だが、まずは追われている者の救出が先だ。行くぞ!」
 炎の呼気を吐き出しながら、べリザリオが玄関へと急ぐ。
「待ちやがれ、骨野郎!」
 入り口を破壊した竜牙兵へと、巌が怒鳴りつけた。
 わずかな時間、ケルベロスたちを確認するために敵が動きを止めた隙に、タクティとミミックがべリザリオとともに敵中へ飛び込んだ。
「そうそう何度もやらせると思うなよ……! ここで全て尽き果てて貰う……!」
 いくつも並んでいる透明な戸口をなぎ倒しながら、ケルベロスたちと竜牙兵の戦いがはじまった。

●防衛戦
 ケルベロスやデウスエクスにとって、立ち並ぶ靴箱などさしたる障害物にはならない。
 べリザリオは先手を取って放たれた正拳から、巌をかばった。
「助かるぜ、ヴァルターハイム。だが、やりすぎるんじゃねえぞ」
 巌の言葉は気づかいというより、単純に蓄積したダメージの大きさを指摘しているのだろう。ディフェンダーである彼やタクティ、ミミックの傷は浅くない。
「ああ。私は倒れる気はないし、皆も倒させる気はない。奴らの死体をこの目でしっかりと見るつもりだからな」
 答えた言葉とともに、紫色をした炎がべリザリオの口から漏れた。
 ヒマラヤンがシールドを張って防御力を高めてくれた。
 タイミングを合わせて、べリザリオ自身もドローンを展開する。
 これまでの連戦でそうしていたように、時間がかかってもまず全員の守りを固めるために彼は行動する。アトの歌もそれを後押ししてくれていた。
「敵を氷漬けにします! 一気に片づけましょう!」
 レイラは傷ついている1体の足元に、魔法陣を展開する。
「無慈悲なりし氷の精霊よ。その力で彼の者に手向けの抱擁と終焉を」
 敵は魔法陣の上から逃れようとするが、陣は追尾して移動する。噴き出した水柱に飲み込まれて氷漬けになった。
 仲間たちも攻撃を集中して、1体を撃破する。
 そこに、後方から3体の竜牙兵が戦闘に加わってきた。
 エドワードはあらかじめ、増援の敵を狙える場所に陣取っていた。
 バスターライフルを構えて、ドローンを展開する。
 天井を貫いて、無数の剣が戦場に降り注ぐ。遊鬼が仕掛けた範囲攻撃が、4体に増えた敵の前衛へと突き刺さる。
「絶えることのない銃声、砲弾の着弾音、爆破による崩落、敵味方の悲鳴……これぞ戦場の華、我らがよく知る戦場音楽ですなァ」
 火砲とドローンによる統制射撃で、エドワードも同じ敵を狙った。
 小学校の靴箱など、本来デウスエクスにとっては障害物にはならない――が、ものは使いようだ。倒れた大きな棚を利用して、彼は確実に敵の動きを制限した。
 もっとも、竜牙兵たちにしてもただやられるばかりではない。
 強烈な飛び蹴りが、うなりを上げる拳が、ケルベロスたちへと反撃してくる。
 タクティは遊鬼を狙った1体の飛び蹴りを体で受け止めた。ヒマラヤンのウイングキャット、ヴィーくんが猫の輪でその威力を弱めてくれている。
 だが、傷ついた彼へと、他の敵も攻撃を集中してくる。
 飛んできた気弾をミミックが代わりにくらった――その次の瞬間、うなる拳がタクティのみぞおちにヒットする。
 さらに別の敵から飛んできた気弾の衝撃がタクティを捉える。
 一瞬、飛びそうになる意識。
「ダメ……なんだぜ! 俺は倒れるわけにはいかないんだぜ!」
 けれど、気力で……魂で意識をつなぎとめる。今回は、倒れるわけにいかない理由がタクティにはあるのだ。
「我らの前に道は無く。我らの後に道は有る…それじゃあ行こうかミミック。この道の続きに……!」
 結晶にエクトプラズムを混ぜ合わせ、突き出した拳にドラゴンの頭を具現化させる。
 傷ついていた敵の1体を、その顎が噛み砕いていた。
 アトが溜めた気を飛ばしてタクティを治すが、それだけでは十分ではない。
 ヒマラヤンは巨大な注射器を具現化させた。
「はーい、痛くしないので、逃げちゃ駄目なのですよ~?」
 振り向いたタクティが、巨大すぎる注射器を見て顔色を変えた。
「そ、それ……本当に治るんだぜ?」
「もちろんなのです。はい、チクッとしますからね~」
 容赦なく頭に突き刺した注射器から、紫色の液体がタクティに注がれていく。中身は治療用のグラビティ・チェインなので、治るのは本当だ。
「作戦はいつまで続くかわからないのです、あまり無茶をしないようにするのですよ」
 すべて注ぎ終えて、ヒマラヤンはそう告げた。
 敵も気を用いて回復する技を使っており、戦闘はかなりの長期戦となった。ただ、2体を倒したことで戦況はケルベロスたちの有利に傾いていく。
 巌は靴箱を踏み越えながら、もっとも傷ついた1体へと接近した。
「次はてめえの番だぜ、トンコツ野郎。地獄の底まで落ちていけ」
 2つの篭手と、そして筋肉に覆われた拳がヒビの入っていた骨をまず砕いた。
 さらに、息をつく暇もない連続攻撃が、敵の体を折り、あるいは破壊する。
 よろめく竜牙兵の頭を両手でつかみ、巌は倒れた靴箱へと叩きつけた。木製の棚が吹き飛び、床に大きなヒビを入れ、竜牙兵の頭骨を完全に粉砕していた。
 竜牙兵が激しい回し蹴りを2体続けて放ってきて、前衛たちを薙ぎ払う。
 巌をかばってミミックが倒れたが、アトやべリザリオが最初に守りを固めていたこともあって他の者たちはまだ健在だ。
「皆さんが動きを止めぬよう、私から送る曲です。どうぞ……」
 アトは愛用のハーモニカを吹き始めた。低音から高音へ、テンポよく続く行進曲。
 その音は機械に電気を入れるように、仲間たちに活力を与えていく。
 もっとも傷ついていたタクティにヒマラヤンがシールドも重ねる。
「私の炎に浸り侵され悶えるがいい」
 べリザリオが力任せに毒の炎を敵へと叩きつける。
 遊鬼は毒で弱った敵へ、無言で棒苦無を放った。
 火薬で形成されたそれは骨でできた体を確実に貫き、爆発して4体目を粉砕していた。
 残り3体となった竜牙兵たちが、一斉に戸口へと向かっていく。
「逃げるつもりですかな?」
「そうはさせません!」
 エドワードがビームで追撃した。レイラが翼を広げて接近し、オウガメタルの拳で1体を撃破する。
 他の者たちも敵を追うが、残る2体はそのまま撤退してしまった。

●襲来ドラゴン軍団
 竜牙兵たちが逃げる動きは決して混乱したものではなかった。
 指揮官が倒されたことによる動きではない。かなり長いこと戦っていたが、竜闘姫はまだ撃破できていないらしい。
 考えたくはなかったが、あるいは撃破に失敗したのかもしれない。
 救出に手を割きすぎたのか……しかし、4チームが分担して救助活動を行ったことで、非常に多くの市民を救えたことは間違いない。
 逃げた敵の追跡を続けるために、ケルベロスたちは建物から出る。
 そして、彼らは竜牙兵たちが撤退した理由を知った。
 東の空から、熊本市へと次なる敵――ドラゴンが近づいてきている。まだはっきりとは姿が見えないけれど、ケルベロスたちは強いプレッシャーを感じた気がした。
 熊本市の戦いは、まだ終わらない。

作者:青葉桂都 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年6月23日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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