魔竜王の遺産~九の軍勢

作者:沙羅衝

「おい! 逃げろ!」
「デウスエクスだ!!」
 此処は熊本市南区。熊本市民達が突如現れたデウスエクスの群れに逃げ惑っていた。
「きゃあ!!」
 その時、一人の女性がオークの群れに囲まれる。
「ぶ、ブェ……」
 だがその十数体のオークは舐るようにその女性を見た後、興味をなくして散り散りとなる。
「メ……メガ……」
 しかし、1体のオークだけは残っていた。
「ひ……!」
 そのオークは触手を伸ばし、その女性の顔をヒタヒタと確認する。触手は女性の首から頭にかけてゆっくりと這い回り、それに達した。
「メガネェェ……!!」
『それ』とは、女性のかけている眼鏡だ。
 女性の眼鏡を決して落とす事無く、丁寧に、そして慎重に触手で確認し……。
 それが、その女性の『終わり』だった。
 その様子を一際体の大きなオークが見つめている。どうやらそのオーク達の指揮官のようだった。手下のオーク達に、再び指示を出す。目的は一致しているのか、その声に狂乱の声を上げる。
 そして熊本市南区に居る女性は、オークの餌食となっていくのだった……。

「大変や皆!」
 宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)の緊急の声に、少しくつろいでいたケルベロス達が慌てて、どうした? と反応する。
「大侵略期のドラゴンを復活させてた黒幕が、遂に動き出したで!」
 ドラゴンを復活させているドラグナーが居るという情報は、ケルベロス達には伝わっていた。ごくりと唾を飲み込む音も聞こえる。
「今回の敵の目的は、どうやら『魔竜王の遺産ドラゴンオーブ』の探索やったみたいでな、そのありかを発見したみたいやねん!」
 ドラゴンオーブという物、それに魔竜王という言葉だけで、ただらなぬ事であるとケルベロス達には分かった。絹は頷きながら説明を続ける。
「その力はまだ詳細には分かってへんけど、魔竜王の再臨の可能性すらあるかもしれんちゅうことや。勿論、渡す訳にはいかへん。ドラゴンオーブは『熊本市』に封印されてるらしくてな、竜十字島からドラゴンの軍勢『アストライオス軍団』が向かって来とる。それに、敵はそれだけや無くて、その軍勢に先立って、魔空回廊を使って配下の軍勢を送り込んでくる作戦や。目的はドラゴンオーブの復活の為のグラビティ・チェインの確保と、市街の破壊と略奪や。
 配下の軍勢は、ドラグナー、竜牙兵、オーク、屍隷兵で、9つの部隊で、熊本市街の略奪をしようとしとる。『アストライオス軍団』の前に『ドラゴンオーブの封印解除に必要なグラビティ・チェインを略奪』する事が目的ちゃうかって言われてる。多くのグラビティ・チェインを略奪されればされるだけ、ドラゴンオーブ奪取を阻止することも難しくなるやろう」
 絹の必死の訴えに、力強く頷くケルベロス達。その力強さに礼を言いながら、絹は詳細を説明していった。
「さっきも言ったけど、今回はその9つの軍団の阻止や。そのどれかに行って貰う。今から敵の情報を言うから、何処に行くかは皆で決めてな。
 まずはドラグナーや。
 一体目が今回の元凶のドラグナーである、中村・裕美。彼女は熊本市中央区に現れるそうや。配下にケイオス・ウロボロスを連れとる。
 二体目が武術を得意とするレンブランド姉妹の妹、竜闘姫ファイナ・レンブランド。配下は武術家の死体を利用した屍隷兵や。
 三体目はその姉、竜闘姫リファイア・レンブランド。こっちは竜牙兵を連れとるな。
 で、次がオーク。
 一体目は残忍な暴君とも言われとる、嗜虐王エラガバルス。捕らえた女性はかなり酷い事になるやろう。配下は自らの血を引く部族、らしいわ。
 二体目は、餓王ゲブル。女性への拘りが強すぎて、常に飢餓状態のオークを率いとる。本人はどうやら『強い女』を求めてる、らしいわ。
 三体目が、元々気持ち悪い触手が更に増大して増幅した、触手大王。同じく触手が異常発達した配下達を、王子とよばれる3人の息子と共に率いている、らしいわ」
 タブレットで情報を正確に伝えつつも、絹のその『らしいわ』に少し、彼女の気持ちがこめられているのだろう。彼女からすれば、デウスエクス、特に女性の敵であるオークの、いわば趣味とも言える情報など、どうでも良いのかもしれない。
「最期は竜牙兵やな。
 一体目は黒鎧の騎士型竜牙兵である、黒牙卿・ヴォーダン。黒い甲冑と騎馬が特徴や。配下は馬には乗ってへんくて少し軽装みたいやな。
 二体目が四腕の剣士型竜牙兵の、斬り込み隊長イスパトル。腕が4本が特徴やな。配下は腕が2本になるみたいや。
 で、最後に黒鎖竜牙兵団長。こいつがどうも今回の大ボスである、覇空竜アストライオス直属の軍団長や。剣と黒鎖を武器に戦ってきて、配下も同じタイプみたいや」
 絹はそこで一つ息を吐き、また続ける。
「ちょっと敵が多いけど、他のケルベロスも動いてる。大事なんは、敵の軍勢はそれぞれの指揮官の指示に従って、市民の虐殺を行っているっちゅうことや。つまり、守るべき市民が優先。彼らの目的はグラビティ・チェインの略奪な訳やからな。市民を救出しつつ、敵ボスを素早く撃破する事が出来れば、戦いが有利になっていくで。今んとこ仕事で動いてるデウスエクスが、好き勝手に動き始めるわけやから、統率がとれんくなると、つまりはそういうこっちゃ」
 絹はそう言って、話を区切った。後はこの作戦の実行の阻止である。熊本市民、そしてドラゴンオーブの防衛はケルベロス達に託されたのだ。
「まずは前哨戦になるわけやけど、この後にドラゴンとの決戦もある。その時の戦いに影響が出るやろうから、確りな。頼んだで!」


参加者
燈家・陽葉(光響射て・e02459)
神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)
ライゼル・ノアール(仮面ライダーチェイン・e04196)
黒住・舞彩(鶏竜拳士・e04871)
玄梛・ユウマ(燻る篝火・e09497)
四条・玲斗(町の小さな薬剤師さん・e19273)
那磁霧・摩琴(シャドウエルフのガンスリンガー・e42383)
オニキス・ヴェルミリオン(疾鬼怒濤・e50949)

■リプレイ

●繋がり
「あそこに!」
 黒住・舞彩(鶏竜拳士・e04871)が翼で低空飛行しながら指差す先には、1体のオークが一人の女性に対してにじり寄っていた。
「行こう!!」
 すぐさま燈家・陽葉(光響射て・e02459)が駆ける。
 オーク達の目的は、人々を襲い、殺し、グラビティ・チェインを得ることだ。
「カカカ……。カチューシャアアア!!」
 しかし、ロングヘアに紫のカチューシャを目の前にした女性は、どうやらそのオークのドストライクだったようで、興奮の余り触手を乱舞し、女性を弄ぼうとする。
 舞彩と陽葉は急ぎ接近するが、少し間に合わない。このままではその女性はオークの被害にあってしまう。
 ドゴン!!
 だがしかし、神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)が上空から打ち放ったドラゴニックハンマー『【溟】』によって、オークの頭は叩き潰される。
「グ……ペ!」
「今時カチューシャとは、なかなか……業が深いな……」
 晟がそう呟いた時、オニキス・ヴェルミリオン(疾鬼怒濤・e50949)が飛び込み、巨大なチェーンソー剣を作動させ、水平に薙ぐ。
 ドサ……。
 その力によって胴体を二つにされ、そのオークは消滅する。
「あ……、あ……」
 襲われかけた女性は、余りの事に腰が抜けて動けず、涙目でケルベロスを見上げた。
「変わったオーク達、ね。あなた、大丈夫かしら? でも、私達が来たから安心よ」
 四条・玲斗(町の小さな薬剤師さん・e19273)はそう言って、女性に手を差し伸べた。
「大丈夫! ボク達も頑張るから!」
 那磁霧・摩琴(シャドウエルフのガンスリンガー・e42383)はその女性をぎゅっと抱きしめ元気付けた。

 ケルベロス達は、人々を助け、勇気付けながら走った。目的は熊本市南区の北部。オークがわらわらと進軍してくる先だ。
 その数は尋常ではなかった。自分達だけでは全ての人々を助ける事は叶わない。
 ただ、彼等の他に3つのチームがこの地域に向かっていた。
 そして、自分達が請け負った仕事は、そのボスである餓王ゲブルを倒すことだった。
 絹の話から、指揮官であるゲブルを倒す事は、その後のオークの殲滅を有利にする事は分かっていた。
 だから、彼らは他のチームに人々の救出を任せ、突き進んだ。
 全ての人々を救うことは理想だが、指揮官を殺す事が第一優先。他のチームがきっと対応してくれると信じて。
「ノアールさん!」
 そのオークはすぐに分かった。玄梛・ユウマ(燻る篝火・e09497)が叫ぶと、ライゼル・ノアール(仮面ライダーチェイン・e04196)その走る速度を速めた。
「どれ……。オマエはどうじゃな……」
 ゲブルは自分の半分程の身長の女性を眺めながら、ゆっくりと近づく。
「オークなんかに、負けるかよ!」
 なんとその女性は、事もあろうか、ゲブルに立ち向かっていたのだ。腰に拳を構え、両足でしっかりと立つ。武道の心得がある物の姿だ。
 だが、彼女はケルベロスではなかった。ゲブルの力を受け止める事ができる訳が無い。
「待て!」
 ライゼルは叫び、威圧する。
「儂は、忙しいんじゃ。後にせい……」
 ブン!!
 そう答えるゲブルに、ルーンアックス『シャルム・ソー』を叩き付けた。
 ガツッ!!
 鈍い音がして、右腕に持ったラウンドシールドで、その攻撃をいなすゲブル。
「そこまでだ……ゲブル!」
 少し距離を取り、対峙するライゼル。その隙を付き、ユウマが女性を抱えて、避難させる。すると、他のケルベロスも集結した。
「……お兄様。この敵を知っているのですか?」
 ライゼルの様子を不思議に思った陽葉が、問う。するとライゼルは、昔……、と口を開いた。
「貴様は覚えていないだろうが、貴様に弄ばれ、殺された婦人が居た。
 貴様は、その必死に抵抗する彼女を嬲り、そして殺しながら、こう言った。
『外れじゃ』
 とね」
 その言葉を聞き、明らかな嫌悪を表情に出すケルベロス。
「……!」
 ギリっと奥歯噛み締める舞彩は、遠慮なく敵意をむき出しにする。
「その彼に、頼まれたんだ。あのオークを殺してくれ、と。そう、貴様の事だ。餓王ゲブル。
 今こそ、その男の無念を晴らす。平和な未来を鎖で繋ぐ……。変、身っ!」

●救う者
「お前たち儂を守れ、こっちに来るんじゃ!」
 ゲブルが配下のオークに叫ぶ。だが、オーク達は目の前の獲物にしか目が言っていないようで、ゲブルの命令が聞こえていない。
「舞い上がりおって……。まあ、それも仕方のない事かもしれぬなあ」
 ゲブルはその部下たちに様子に、怒るどころかにやりと嗤った。
「キャー!」
「こ、こっちに来るなあ!!」
 ケルベロスはゲブルと対峙するが、そこに人々の悲鳴の声が交錯する。ゲブルの配下のオーク達が、市民を虐殺しようと追い回しているのだ。
「人が、多すぎる、な。
 だが、ゲブルだかケバブだか知らんが、魔竜王の遺産を渡すわけにはいかんからな。……どうするか」
 晟はそう言い、一般人に一瞥しながらも、武器を構えてゲブルの前に立つ。
「良く見ればただのオークだ。二手に分かれるのが得策であるか?」
「そうね。この豚は後。私と……オニキス。それに摩琴。他の敵を片付けてしまいましょうか」
 舞彩が素早く戦闘のバランスを考え、一番近いオークに飛び込み、『竜殺しの大剣』を振るった。
「こっちを、向けえええ!!」
 そして、頷いたオニキスも続く。
「定命化したこの体を慣らすには丁度良い。存分に暴れさせてもらおうか!」
「よし、じゃあ皆、ボク達に任せて!!」
 摩琴はプリンセスな姿に変身し、人々の心に勇気を与えていった。
「黒住さん! 頼みます!!」
 ユウマはオークを次々と駆逐していく仲間を見て、信頼を覚えた。そして自らは巨大な鉄塊剣『エリミネーター』を軽々と構えた。
「そっちは任せたわよ! 選ばれし十三の弾丸!」

 晟がヒールドローンをボクスドラゴンの『ラグナル』とユウマ、それにライゼルに展開する。
「はあっ!!」
 ユウマが臆せず飛び込み、『エリミネーター』を大きな動きで上段からゲブルに振り下ろした。
 ガンッ!!
 金属と何かがぶつかる音が響く。
「それは甘いのぅ……。うらぁ!!」
 ゲブルは右手にあるシールドで、ユウマの剣を受け止め、そのまま押し返す。
 シュル!!
 そこに、喉元を目掛けたライゼルの混沌を纏わせたチェインがゲブルを切り裂こうと伸びる。
 ドシュウ!!
 だが、左手に持った剣を使い、そのチェインをバチバチと雷のような音と共に切り裂くゲブル。
「威勢が良いだけじゃな……」
 ゲブルはそう言い、背中の触手を玲斗に向かって伸ばし、捕らえる。
「う……」
 触手に体を締め上げられ、声を上げる玲斗。その万力のような力が、軽々しくドワーフの彼女を持ち上げる。
「玲斗!!」
 陽葉が叫ぶ。見る見るうちに顔色が悪くなっていく彼女は、それでもグラビティの力を集中する。
『光以て、現れよ。』
 玲斗の直感が、陽葉に知覚を呼び起こす光の術を陽葉に施す事が第一と告げた。その光は陽葉のグラビティの力を研ぎ澄まさせる。
 人数が少ないぶん、後手を踏む事は致命的だ。その意図を理解した陽葉が、鎖を生やした剣を無数に浮かび上がらせる。
『舞い裂け!』
 するとその刃が、ゲブルの足元に幾つも突き刺さった。

●決意
「うぬぅん!!」
 ゲブルの刃から、バチバチと音を立てながらカマイタチのような斬撃が前を行く晟とラグナル、そしてライゼルとユウマを襲う。
 ズバアという切り裂き音が、目に見える刃となる。
「ぬぉ……!」
 それを晟とラグナルがそれぞれに肩代わりする。膝を付く晟。ラグナルは当たり所が悪かったのか、完全に動けなくなってしまった。
 すぐさま玲斗が薬液の雨を晟に降らせるが、右腕に残る痺れ。それを感じながらも、晟はまた立ち上がり日本刀『濛』を構える。
「神崎さん。行けますか!?」
 護りの要である晟がここで倒れてしまっては、状況は一変する。その不安がユウマの言葉に現れていた。
「玄梛君。まあ、いつもの事だ。気にするな」
 そして、『濛』の切っ先をゲブルに向ける。
「斬撃には、斬撃」
 晟はそう言うと、力任せに叩き付ける。
「はい、続きます!」
 ユウマもその意気を感じ、同時に『エリミネーター』を叩き付ける。
 ズバア!!
 その刃たちが、見事にゲブルの胴体を薙いだ。
「今だよ、舞葉!」
 陽葉がその攻撃にのせ、にわとりファミリアの『舞葉』でその傷口を切り裂かせた。
 するとその時、歓声が上がる。
「ほらね。あの蒼いドラゴニアン。全世界同時放送でみたことあるでしょ? だから大丈夫。なんてね」
 そこには、明るい声の舞彩。そしてその後ろには助け出した人々。そして自らは、ケルベロスチェイン『ドラゴニックチェーン』でゲブルの足元を縛っていった。
「いや、流石にそれは、少々照れる」
 そう言いながらも、その蒼いドラゴニアンは胸を張っている。
「そう言えば黒住さん、さっきしれっと……」
「あら? 何かしら? えっと確か、選ばれし……」
「わー! それは良いんですよ! というか、皆さんを有難う御座います!」
 ユウマのほうは本当に照れているようだが、見ればオークの姿は何処にも見えなかった事に、礼を言う。
『アキレアの花言葉って知ってる?治療、勇敢、そして君の微笑み!』
 摩琴がガンベルトに備え付けられている薬瓶を割り、粉塵と共に前衛へとその力を纏わせる。摩琴はまだプリンセスモードだ。
「吾達にかかれば、オークなぞ瞬殺である。とは言え、待たせたな」
 オニキスがその勢いを以って、チェーンソー剣をゲブルに叩き付けた。
 ガィィィィン!!
「良いぞ! それで良い! ブハハハぁ!!」
 その回転する刃の剣を手で受け止め、傷を作りながらも高らかに笑うゲブル。その背後に背負う触手が、嬉しそうに気持ち悪く揺れる。
「ずいぶんご満悦のようだな……」
「強い女がふいふうみい……。これこそ、僥倖!」
 ライゼルの押し殺した声に、そのまま返すゲブル。そして再び自らの剣を構える。
「……!?」
 しかし、その瞬間触手の揺れがぴたりと止まり、目の前のライゼルから目が離せない。
「貴様に言葉が通じるとは思っていない。それは、貴様が唯の豚だからだ……」
 それはライゼルの殺気だった。
「女性を女性と思わぬその存在。最早これ以上生きれると思うな。……ここで死ね」

●一つ物語の終わり
「ふぬぅぅん!!」
 ゲブルは目の前のライゼルに、渾身の力を振り絞った拳を振り下ろした。
「……それがどうした」
 しかし、その拳はライゼルの目の前で停止する。これまで数々与えたゲブルを縛る鎖と傷が、既にゲブルの動きを止める所まで到達していた為だ。
 序盤からギリギリを見極めた玲斗が、仲間に纏わせた光の力。その力は、ゲブルの動きを加速度的に止める事に成功していたのだ。
「役に立って、良かったわね」
 玲斗がライトニングロッド『雷錐』に雷を溜め、そして放つ。
 バチバチバチバチ!!
 それが、総攻撃の合図となった。
 陽葉がエクスカリバール『鎖突杭剣』を叩き込み、摩琴の放った素早い礫が拳に突き刺さっていく。
「童と思うて油断したか? その隙が命取りよ!」
 オニキスが混沌の水を憑代にした水龍『龍王・沙羯羅』を召喚する。
『吾は水鬼、この程度は朝飯前よ! 滾れ! 漲れ! 迸れ! 龍王沙羯羅、大海嘯!!』
 その混沌を波とし、召喚した龍に飛び乗ったオニキスが、突撃した。
『生焼けでは済みませんよ…!』
『魔人降臨、ドラゴンスレイヤー。ウェポン、オーバーロード。我、竜牙連斬!』
 そしてユウマが片腕から巨大な火柱を発生させ、その炎の中に舞彩が地獄の炎で生成したビームを放つ。
『砕き刻むは我が雷刃。雷鳴と共にその肉叢を穿たん!』
「ぐぶぁ……」
 晟が放った超高速の突きがゲブルに刻まれた時、ゲブルの体は完全に動かなくなった。
 だが、それでも爛々と女子を眺めるその光だけは、失われなかった。それは、なんと言う執念なのだろうか、とも感じる。
「……このまま、弄んでみるか?」
 ゆっくりとライゼルが手を翳すと、無数の鎖の先端が、ゲブルの喉をいつでも突き刺せる距離で停止する。
「だが、その価値もない」
 手を振り下ろし、鎖に命令する。
 その鎖は、躊躇う事無くゲブルの首を突き刺した。

 ゲブルの首が落ち、その消滅を見届けた後、ライゼルは天を見上げて目を瞑った。
「悲しみの鎖は、断ち切ったよ……」
 それは、遠い何処かに届きますようにと、祈った言葉だった。

作者:沙羅衝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年6月23日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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