アイスレイジドリーマー

作者:宮内ゆう

●巡る夏
 夏が来る。
 涼しさを人が求める夏が来る。
 だが、壊れて打ち捨てられた彼には無関係な話だった。
 ただただ朽ちるに任せて四季を巡るのみ。
 しかし、やはり未練があったのだろうか。いや、それは分からない。
 それでも小型ダモクレスは現れた。
 願いを叶えようとでも言わんばかりの様子で、彼に取り憑いた。
 箱形のボディに、マシンの腕が生え、足が生え、立ち上がる。
「アイィィィィィスクリィィィィィィィィィィムゥゥ!!!」
 新たに生まれたデウスエクス。
 それは、アイスクリームメーカーのダモクレスだった。

●アイスの日
 いろいろ言いたい。
 いろいろ言いたい。けど、口に出せない。そんな空気。
 これから仕事だというのに、人首・ツグミ(絶対正義・e37943)は水着だった。
「暑くなってきましたねーぇ」
 何故かと問うだけ無駄というもの。それが正しいとしか考えていない。
 これから梅雨だけど、夏を先取り、OK。
「こう暑いとアイスクリームが食べたいですねーぇ」
 暑いのでアイス食べたい、それはわかる。
「ダモクレス化したアイスメーカーで涼みましょーう♪」
 だが、アイスクリームメーカーはアイスクリームを作るものであって、涼むためのものではない。
 もちろん、コンプレッサー内蔵型であり冷気を出すタイプはある。ダモクレス化したのもそういうタイプだ。だがそれは作るアイスの材料を冷やすものであり、決して人が涼むためのものではない。
「まあ、そんな理由でこのダモクレスを予想したっていうあたりがいちばん突っ込みたいところなんですが」
 そしてホントに現れたのだから始末に負えない。
 ヘリオライダーの茶太はただただため息をついた。
 場所は山間部の森の中。そこそこ大型のアイスクリームメーカーで、所有者だった誰かはわざわざ人目につかぬよう山道から木々の合間に入り、森の中に不法投棄したようだ。
「そこまでがんばるなら普通に廃棄すればよかったの思うのですが」
 モノを棄てようという人の気持ちはわからない。
 何しろ結果として、それがダモクレスと化したのならば放ってはおけない。
 現在は元のアイスクリームメーカーをベースとしたロボットの姿となっており、山を下りて人里へ向かおうとしているようだ。
 棄てられていた場所は人が来る場所でないもののある程度開けており、すぐに現場へ行けば、問題なく戦闘は出来るだろう。
「あとはまあ、冷気をつかった攻撃が多そう、というくらいですかね」
 家電にも心があるとするならば、それがある種の矜恃に見えなくもない。
「打ち捨てられた家電製品、そう思うと不憫だとは思いますが放ってはおけません」
 木の間までは人間を襲い、被害が広がってしまうことだろう。
「何か起こる前に、ダモクレスの討伐、どうかお願いします」
 そういって茶太は頭を下げた。
 一方、ツグミは冷凍庫からアイスを取り出していた。便乗してセティも食べようとしてた。


参加者
深月・雨音(小熊猫・e00887)
エルトベーレ・スプリンガー(朽ちた鍵束・e01207)
リリウム・オルトレイン(星見る仔犬・e01775)
ユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365)
天喰・雨生(雨渡り・e36450)
人首・ツグミ(絶対正義・e37943)
鮫洲・紗羅沙(ふわふわ銀狐巫女さん・e40779)
クレア・ヴァルター(小銀鬼・e61591)

■リプレイ

●合い言葉はチョコミント
 ちょっとだけ浮かれてたかもしれない。
「アイス~、アイスクリーム~」
 だが、すぐにそんな自分に気付いたクレア・ヴァルター(小銀鬼・e61591)は慌てて首を振り、気合いを入れ直すべく自分の両頬をぱんと叩いた。
「は、いけないいけない。ケルベロスとして初の仕事、ちゃんとやるぞ!」
「いえ、そんな気張らなくていいと思いますよ」
「え?」
 そんな言葉に振り向いてみると、セティ・フォルネウス(オラトリオの鹵獲術士・en0111)がなんとも思考の読めない笑顔で川の方を見つめていた。
「きょうはアイスクリーム食べほうだいなのです!」
 その視線の先にはやっぱリリウム・オルトレイン(星見る仔犬・e01775)がいた。
「ドリームイーターさんのときはどーなつ食べほうだいってだまされたですけど、ダモクレスさんはきっとうそをつかないのです……」
 思い起こされる、辛く苦しく悲しき戦い。一筋の涙がぽろり。
「わたしはクッキークリームがすきですよーーー!!」
 叫んだ。川に向かって。一体誰へのアピールなのか。
「ア・イ・ス! ア・イ・ス!」
 ついでにエルトベーレ・スプリンガー(朽ちた鍵束・e01207)まで騒ぎ始めた。
「でも私、食べ放題の時間までとても待てません! なので! 作ってきました! 持ち運びの為、伯父さんのお金で高性能クーラーボックスも買ったんですよ!」
 伯父さんのお金で。
「今日のために作ってきたドーナツパフェ! そう、ドーナツとアイスの相性も……」
 言いながらクーラーボックスを開けた。
 ファミリアの小鳥なリヒトさんがお腹抱えてげっぷしてた。
 そっと閉じた。
 でもリリウムには見られた。
「うそつきですー! ドーナツパフェっていったのにー!!」
「ち、ちがうんです、これは! その、えっと……セティちゃああああん!」
「何故そこで私に来るんです」
「アイスは何が好きですかああああ!」
 混乱してるのかも知れない。
 エルトベーレがめちゃくちゃセティの肩を掴んでめっちゃ揺らしてる。
「はいいいいいいわわわわ私ははははチョコミントとととととと」
「トレンディ!」
「聞こえましたよチョコミント、いいですねーぇ」
 ここぞとばかりに人首・ツグミ(絶対正義・e37943)が滑り込んできた。
「最近だとコンビニでもよく見かけますねーぇ、好みが分かれるところではありますが……」
 一度言葉を句切り、どこかに向かって鋭い視線を向ける。
「自分は好きですよーぅ!」
 一体どこへのアピールなのか。
「アイスなら全部好きですぅ、愛すですぅ!」
 言った瞬間に空気が凍り付いた。体感で2度くらい温度が下がったかも知れない。
 誰か突っ込んであげればいいのに。
「もぐもぐもぐまぐまぐ」
 仕方ないのでツグミは持参したアイスを食べ始めた。
「とりあえず、私達もアイスは持ってきてるから大丈夫よ」
 そう言うのはユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365)。見れば姉のルリィが同行し、バッテリー内蔵した小型の冷凍庫まで持参している。
「って、大丈夫か? 代わりに持つぞ?」
 まるで姉をパシリの如く扱う様子に見かねたクレアが声をかけた。そこは力自慢のオウガ、というか怪力王者。
「いいのよ」
「だが……」
「私、戦う気はないから」
「本当にただの荷物持ち!?」
「私達が仕事してる間、お姉様はゆっくり待っててね」
 頷き合うユーロとルリィの姉妹。息ぴったり。
「冷凍庫まで持ち込まれてる……」
 この本気ぶりにやや圧倒されがちの天喰・雨生(雨渡り・e36450)。
「確かにこうも暑いと涼みたい気持ちはあるし、アイスも美味しいだろうけど……」
「ふふ、みなさん楽しみみたいでとても可愛らしいです~」
「うん、言いたいことはそういうことじゃなくてね」
 鮫洲・紗羅沙(ふわふわ銀狐巫女さん・e40779)にさらりとツッコミを入れつつ、なんともいえない気分になってきた。
「なんだか遠足みたいですね~」
「言いたいのはそれだけど、違う。ニュアンスが」
 心底楽しそうににこにこ言う紗羅沙に、このままじゃペース崩されると思った雨生はとりあえず視線を外すことにした。
 そしたら、楽しそうに羽目を外す一行の中で、唯一今にも誰か殺しかねない殺気を放っている深月・雨音(小熊猫・e00887)と目が合った。
「……どうしたの?」
「……つぃ……にゃ」
「え?」
「暑いにゃあああああああああ!!」
 説明しよう。
 彼女はレッサーパンダである。そのことに、特に毛並みには誇りを持つが故に意地でも冬毛のままでいるのだ。意地で生え替わりを防げるかどうかは謎だが。
「にゃああああああ!!」
 そのまま川に飛びこむ雨音が目撃されたとかなんとか。

●アイスレイジ
 かくして、ダモクレスが出現した。
「アイスクリィィィィムゥゥゥゥ!!」
「アイスクリーム! アイスクリーム!!」
 一部のケルベロスたちもテンションが最高潮。ほんとになにしに来たのやら。
 しかし、テンション高かったはずのエルトベーレは急速にやる気をなくしていた。
「ハイルさんは私を労わってくださいー。ここまで歩くの疲れましたーもう動くのやーですー」
 敵を前に何か言い始めてるこのキャバリア。
 主人のために働くのがファミリア。ゆえにウサギのハイルさんは後ろ蹴りをかました。スネに。
「いやああああああ!!」
 エルトベーレはその場でもんどりうって転がり始めた。痛そう。
「だ、だいじょう、ぶ……ま、まだ私にはカイさんが……」
 姿の見えないリスのファミリア、カイさんの姿を探し始めたところ、ひらりと1枚のメモがおちてきた。
『あそびにいってきます』
「カイさああああああん!!」
 ああ、ここ森だから。
「こうなればもはや私の出番ですね……」
 せっかく敵が出てきたのに話が進まない。セティはエルトベーレにそっと毛布を掛けた。
「スヤァ」
 ドゴスッ。
 毛布にくるまったそれは、ダモクレスに蹴られてどこぞに飛んでいった。
「さあ、戦闘開始ですよ!」
「なんていうか、いいの、それ?」
 思わずツッコミを入れた雨生だったが、ダモクレスも戦うべく動き出したので、それ以上は追求できなかった。
「アイスクリィィィィィム」
 扉が開いてピカーッと光ったかと思うと光線のようなものが縦横無尽に走り、そのあとには霜が立っていた。こんな冷気をくらっては回復もままならなくなってしまうだろう。
「冷気の光線、皆、気をつけ……」
「ふわあああああ~涼しいにゃ~」
「……」
 注意した瞬間に、雨音が直撃しにいってた。如何にディフェンダーの雨生いえど、自分から攻撃にあたりに行く人まではフォローしきれない。
「あああ涼し~……あれ、なんか寒い~って冷たいにゃああああああ!!!」
 そりゃそーだ。
「冷気で攻撃なのね。どうせならアイスで攻撃してくれば、美味しい上に涼しくてよかったのに」
 とはユーロの言葉。でもダモクレスからアイスが飛び出したら食べるのかという疑問が残る。
「とはいえ、そんな場合じゃないわね。フォローしてあげて」
「それはもうばっちりですよ~護摩符の加護はすでに授けてあります」
 間延びした声で言いつつ、紗羅沙がサムズアップ。
 式神のようにゴマフアザラシ的な何かが守ってくれてる。雨生を。
 今フォローしたかったのはそっちじゃない気もするけど。
「まあいいわ」
 でもそっちの強化も大事。
「ところで、アイスクリームメーカーだなんて、私もお家に一台欲しいですね~。あ、でも普通にアイスを買う方がいいのかしら~?」
「甲乙つけがたいわね。作るものも買うもののそれぞれの良さがあるわ」
「なるほど~」
 戦闘中にする話じゃない。
「さて、アイスも一つ食べ終えたことですし、ひと働きしましょーう」
 どうもさっきからずっと大人しいと思ってたら、ツグミはひとりアイスを食べていたようである。リリウムが抗議の声を上げたがもっともなことだ。
「たべてたですか!? ずるいですー!」
「機械の右腕のせいで燃費が悪いんですよーぅ」
「うー」
「ほら、あのダモクレスさえ倒せばみんなアイス食べ放題ですよーぅ」
「はっ、そうでした! アイスクリームをご馳走してくれるまでここは通しませんです! わたしはチョコアイスもすきです! 豪華に二段重ねだと尚いいです!」
 なんかダモクレスにアイス要求し始めた。そういうことじゃない。
「アイスをくれない以上、人類の敵ですよーぅ! アイスクリームパーティのためにここで散って下さいねーぇ!」
 たかだかと宣言するツグミだけど、実はまだ一歩も動いてない。
「おおおおいいいい! なんでもいいから手伝ってくれえええ!」
 皆が自由すぎる中、クレアがなんとか凍結しそうな弾をかいくぐっていた。サポートするようにオルトロスのルシエドが遠距離から射撃。
「うう、ちゃんと手伝ってくれるわんこの親切が痛み入る……!」
 そうして弾幕の薄くなったところから飛び込み一気に距離を詰めるクレア。
「この小銀鬼の一撃、受けてみるのだー!」
 身を半回転させつつ飛び上がり、渾身のきーっく!
 ぺちこん。
「なに、効いてないだと! ならばバットだー!」
 ぽかぽか。
 どこからバットを出したのか。なんでこんな気の抜けた音がするのか。
 謎は深まるばかりだった。

●氷砕
 ゆらゆらと。
 水面に映る光のように、赤黒く梵字が光る。
 揺れて見えるのは、雨生が避けた光線越しに、その半身が見えるからだろう。
「血に応えよ――天を喰らえ、雨を喚べ。我が名は――」
 まるで歌うような詠唱。ダモクレスの注意を引き、攻撃を受け流し。
 ドスン。
 そして、ダモクレスの足が沈んだ。まるで足を掬われたかのように。
「ふう」
「おつかれさま~、今癒やしますね~」
「ありがとう。あとは、任せた」
 紗羅沙に傷ついた身体を癒やしてもらい、雨生はダモクレスに背を向けた。
「任されたにゃああああ!!!」
 ここで雨音復活。
「さっきはよくもやってくれたにゃ! けどこの毛並みをみるにゃ。レッサーパンダの毛皮はただきれいなだけじゃないにゃ。吹雪だって平気にゃ!!」
 渾身のドヤ顔。
 豆知識・レッサーパンダは冬眠しない。しない理由はよくわかってない。
「壊れた家電は――」
 わざわざ木を駆け上って助走をつけて飛び上がり、落下しながら腕を振りかぶる。
「叩けば直るにゃー!!」
 長く伸びた爪が、ダモクレスを引き裂き、無数の爪傷を生み出していく。叩いてない。
「よいしょー」
 ツグミがさっき燃費がどうとかいってた右腕をつけた。今つけた。
「おなかがすきました! よーぅ!!」
 つけた瞬間そんなこと言い出してる。ホントに燃費が悪いのかも知れない。
 アームがきしむような音を立てて腕が激しく回転し、それを爪傷の中心に無遠慮にぶち込んでいく。
「刃向かうアイスクリームメーカーは解体しちゃいますーぅ!!」
 ガリガリガリガリとかき氷でも作るかのようにダモクレスの表面を削っていくと、その時留め具にでも触れたのか、蓋がはじけとび、中の冷気が外へ漏れた。
「おあつらえ向きね。アイスの弱点といえばやっぱり熱じゃない?」
 翼から噴き出すように火柱が立ち上る。そのユーロの両手に握られしは炎の剣。力任せに剣を振り上げ、炎の勢いで僅かにダモクレスを浮かばせる。
「全て焼き尽くす! この真紅の炎を中にしまってあげるわ!!」
「アイスクリイイィィィ……オーブンンンンン」
 箱の中に剣を叩き込んだ。もはやこれはアイスクリームメーカーではなくオーブンである。
「はっ、これはめずらしくチャンスなのでは!」
 煙を上げてふらつくダモクレス目掛けてリリウムが行く。
 珍しくとどめさせるところだここ。
「いくです、ひっさつのーぎゃわー!」
 しかし滑った。足下におちて溶けてたアイスに足を滑らせた。
「てへぺろ」
 犯人はツグミ。
 さて、きっと今日はさんすうがあったにちがいない。
 転んだ拍子にリリウムのランドセルから、三角定規やら、分度器やら、コンパスやら、やや危なげな物がダモクレス目掛けて飛びだした。
「うわああああ!?」
 折り悪くダモクレスに接近していたクレアも巻き込まれる形になった。慌ててバールを振ってガードしようと試みる。
 だが、上手く弾けなかった。
 それどころか、振ったバールがたまたまコンパスの頭にぶつかり、飛んでいく勢いを加速させてダモクレスに突き刺さった。さらに勢いは収まらず、コンパスは楔となって、ダモクレスの身体を穿ち、貫き、ついにはそのボディを粉々に砕いたのだった。
「はぁ、はぁ……あ」
 バラバラになったダモクレスをみて、クレアがようやく我に返る。
「ふ、ふん。わ、私にかかればこんなもんだなっ!」
 かくして、ダモクレスは討伐された。

●アイスクリームパーティー
 どこからともなく叫び声が聞こえる。
「ア・イ・ス! クリ~ム~!!」
 毛布が全力疾走でこっち向かってきた。
 言わずと知れたエルトベーレである。
「ふう、運動したら喉が渇きますね! 今こそアイスを堪能する時……! ロボットさん! 早く! アイス!」
 さてどこから突っ込んだものか。
 とりあえず、今回の敵はアイスクリームメーカーのダモクレスであって、アイスを作るロボではない。そもそも敵なので、アイスを作ってくれるわけない。それ以前にアイスを作る能力そのものがない。
「って、バラバラになっちゃってるじゃないですか! みなさんなんてコトしてくれたんですかー!!」
「別にいいじゃないですか。どーせベーレさんもアイス持ってきてるんでしょう?」
「ふ、ふ、ふ。さすがはセティちゃん。じゃーん! キャラメル&クッキーとミント&ブラウニーです! どっちもオススメ、何味」
「ミント」
「早いです! じゃあ、ルシエドさんにはキャラメル&クッキーあげます! もふもふ!」
 犬お椀に山盛りアイス。ルシエドはため息をついた。そしてついでにもふられる。
 気付いたらリリウムももふもふにきてた。
「なんということでしょう。ちょこどーなつとちょこあいすでちょこが被ってしまいました……これはルシエドさんの分と交換するのがお互いにうぃんうぃんなのではないでしょうか!!」
 犬とアイス交換するあほ毛。果たしてそれで良いのか。
 暑くて項垂れてたあほ毛が、アイス食べるたびにツンツンしてくるのでいいかもしれない。
 ルシエドとしては、好きに食べてくれって感じのもよう。
「アイスばかりでもアレなので、ドーナツも用意しましたーぁ」
「ドーナツ!」
「フルーツ味いっぱいにゃ」
「フルーツ!」
「メロンパンもあるわよ」
「メロン……パン?」
 ツグミ、雨音、ユーロと出してくるたび声を上げるセティだが、最後だけ疑問符がついた。ここでルリィが実演。
「こうメロンパンを割って、中にアイスを入れて……」
「これはまた、新しい味わい! おいしいですよーぅ!」
「中に挟むアイスは希望をいってね。バニラ、チョコ、キャラメル、ソーダ、苺、メロン、グレープ、クッキークリーム、カスタード……」
「多すぎィ!」
「美味しければ何でもありにゃ! ただしドリアン、お前はダメだ」
 なんでかここだけ真顔の雨音。
「そうだにゃ、ツグミちゃん」
「なんですかーぁ?」
「ドーナツみんなチョコかかっててどれがどれだかわからないにゃ」
「……私もわからないですぅ! まあまあ、どちらでも美味しいのでご安心を!」
「雑だにゃ、でもおいしいにゃ!」
 いい具合に食べ合いっこが始まってきたところで、ユーロがメロンパン持って雨生に声をかけた。
「あなたもひとつどう?」
「それじゃ、もらおうかな」
「味は?」
「任せるよ」
 でもドリアンが出てきそうになったので、そこはそっと手でストップを示した。バニラが出てきた。
「あなたは何か用意したのかしら?」
「これだけあれば必要ないかも知れないけどね。フルーツのシャーベットを少し」
「フルーツの……!」
「シャーベット……!」
 なんか周囲から一気に視線が集まってきた。
 確かに、これだけいろいろ用意しておきながら、シャーベットはなかった。ドーナツとかパフェとかメロンパンとか、それ以前に必要なものがそこにはあった。
「えぇ……」
 ものすごい勢いで用意していたシャーベットが蹂躙されていく様を眺めていた雨生の前に、ジュースが差し出された。メロンソーダのフロートである。
「おつかれさま~」
「ああ、ありがとう。いただくよ」
 持参したメロンソーダから紗羅沙が作ってくれたらしい。
「こんなこともあろうかと、しっかりサクランボも用意してました~」
 えへんと胸を胸を張る。
「用意がいいね。なんだか、ここまで賑やかだと涼んでから帰ろうと思ったのに、余計暑くなりそうだよ」
 なんて笑ってたらクレアが割り込んできた。
「え、なにそれおいしそう! ちょっと私のアイスと交換しない!?」
「メロンソーダですよ、どうぞ~」
「きゃんっ、つめた、甘くて美味し~!!」
「最中やウェハースのアイスもありますよ~」
「それ大好き! あれ、こっちのはなに?」
「シャカシャカです~。しゃかしゃかするだけで自分でアイス作れるんですよ~」
「え、なにそれやってみたい! きゃ~、すごーい!!」
 ここまで来て、クレア、我に返る。
「は……いや、戦士にも休息だな! うむ」
 今日は涼しげ、でもアツイ一日になりそうだった。

作者:宮内ゆう 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年6月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 0
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