●熊本の陥落
人のごった返す熊本市の繁華街は、その日地獄と化した。
突如空より飛来した無数の竜の牙は、瞬く間にその身を骸骨の兵士へと変貌させると、辺りの人々を虐殺し始めたのである。
それは、日頃見られるような、散発的な襲撃ではない。
無数の、大量の竜牙兵による、明らかな目的を持った虐殺。統率の取れた殺りく。
竜牙兵の群れの中に、ひときわ目立つ個体が存在した。竜牙の兵を率いる統率者だ。
統率者がゆっくりと腕を振るえば、竜牙兵達は歓声を上げ、虐殺を始める。
それは、この場所だけではない。その日、熊本市のあらゆる場所で、襲撃の煙は上がった。
人々が死んでいく――無残に。容赦なく。
竜牙の雨の降る熊本で、命が失われていく。
●熊本防衛戦
「き……緊急事態だ! 大侵略期のドラゴンを復活させていた黒幕が、遂に動き出したぞ!」
慌てた様子でやってきたのは、アーサー・カトール(ウェアライダーのヘリオライダー・en0240)だ。アーサーは一瞬、しまった、と言った様子を見せた後、咳払いし、
「……緊急事態だ。大侵略期のドラゴンを復活させていた黒幕が、動き出したようだ」
と、クールに言い直した。
さて、アーサーの言によれば、この事件の黒幕は、『アストライオス』と言うドラゴンであるという。その目的は、『ドラゴンオーブ』と呼ばれるモノの奪還であるというのだ。
「ドラゴンオーブは『魔竜王の遺産』とも呼ばれている。その力は未知数だが、場合によっては魔竜王の復活すら可能にするとも言われている……これを、ドラゴン達に渡すわけにはいかない」
現在、ドラゴンオーブの封印場所である『熊本市』に向け、竜十字島より出撃したドラゴンの軍勢『アストライオス軍団』が向かって来ている。
その前哨として、ドラゴン達は九つの配下軍団を送り込み、ドラゴンオーブの封印を解除するためのグラビティ・チェインを確保すべく、襲撃を行うと予知されたのだ。
配下の軍勢は、ドラグナー、竜牙兵、オーク、屍隷兵で構成されている。
この戦いで、多くのグラビティ・チェインを略奪されてしまえば、それだけドラゴンの軍勢によるドラゴンオーブ奪取作戦を阻止できる可能性が下がってしまうだろう。
敵は、九つの軍団に別れ、それぞれ熊本市街を攻撃している。
まず、ドラグナーとその配下の部隊。
熊本市中央区には『竜性破滅願望者・中村・裕美』とその配下である『ケイオス・ウロボロス』が出現。
熊本市東区(北側)には『竜闘姫ファイナ・レンブランド』。
熊本市東区(南側)では『竜闘姫リファイア・レンブランド』が、それぞれ『屍隷兵』を伴い出現する。
続いて、オーク達だ。
熊本市西区(南側)で、『嗜虐王エラガバルス』が。
熊本市南区(北側)に『餓王ゲブル』。
熊本市南区(南側)は『触手大王』が、それぞれ配下の『オーク』達と共に襲撃を仕掛けてくるという。
今回のオーク達はグラビティ・チェインの収奪を目的としており、リーダーがいる限りは、女性に暴行を働くという事はせず、殺害を目的として動くだろう。
竜牙兵の部隊は、次の通りだ。
熊本市北区(北側)に『黒牙卿・ヴォーダン』。
熊本市北区(南側)を『斬り込み隊長イスパトル』。
熊本市西区(北側)で『黒鎖竜牙兵団長』が、それぞれ自身と特徴の似た『竜牙兵』を配下とし、襲撃を行う。
「皆には、この九地点の中から一つを選び、敵を迎撃して欲しい。敵の指揮官を倒せれば、その指揮系統は崩壊し、兵隊を倒すことは容易になるだろう。だが、参加したチーム全員が指揮官を狙っていては、その間、敵兵隊による民間人の虐殺が続いてしまう。熊本市全体のチーム配置と、その作戦地区での行動配置……どちらも重要となるだろう。難しいだろうが……君達なら、最良の結果を導き出せると信じている」
そう言って、アーサーはヒゲを撫でると、
「アストライオス勢力本隊との戦いも待っている。その前哨戦となる作戦だ。のちの作戦を有利に運ぶため、何より多くの人々を守るため、作戦を成功させてほしい。作戦の成功と、君達の無事を、祈っている」
そう言って、アーサーはケルベロス達を送り出した。
参加者 | |
---|---|
シエル・アラモード(碧空に謳う・e00336) |
フェクト・シュローダー(レッツゴッド・e00357) |
パティ・パンプキン(ハロウィンの魔女っ娘・e00506) |
浅川・恭介(ジザニオン・e01367) |
エイン・メア(ライトメア・e01402) |
アジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470) |
リィ・ディドルディドル(悪の嚢・e03674) |
空国・モカ(街を吹き抜ける風・e07709) |
●熊本探索
熊本市北区南側。熊本の街を行く。
立ち上る煙、崩壊した建物……ありとあらゆるものが、この街が戦場と化してしまったのだという事を、ケルベロス達に伝えていた。
ケルベロス達は、そんな光景に心を痛めつつ、歩を進める。
探すのは、この地に降り立った部隊の指揮官である。指揮官を討てれば、配下は頭を失い撤退を、始めるだろう。他のケルベロス達が被害を抑えるために戦っているとはいえ、敵の数は膨大だ。できれば速やかに指揮官を討ち取りたい所だが――。
「あれはーぁ――」
エイン・メア(ライトメア・e01402)が声をあげた。
その視線は空へと向けられている。打ち上げられた、一筋の光。
信号弾である。
そして、それが打ち上げられることの意味を、エインは知っていた。
「んむんむーっ。見つけたみたいですーぅ♪」
エインの言葉に、ケルベロス達の間に緊張が走った。信号弾は、『通信手段が妨害されていた場合かつ、敵指揮官を発見した場合』に打ち上げられる予定の物だ。それが、打ちあがった。
「あの方角はーぁ、ふーぅむふむ、変電所があるあたりですねーぇ?」
手元の地図に視線を落としつつ、エインが言う。
「合流を急ごう」
ふむ、と唸りつつ、アジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470)が言った。
「予測の範囲ではあるが、信号弾に釣られた増援がやってくる可能性もあるしな……幸い、あまり離れてはいないようだ。空国、斥候を頼む」
アジサイの言葉に、空国・モカ(街を吹き抜ける風・e07709)が頷いた。
「了解。躓かないように……足元の小石は払って見せよう」
そう言って静かに笑みを見せたモカは、仲間達に先行し、移動を開始する。
リィ・ディドルディドル(悪の嚢・e03674)はそれに続き、空からの偵察を行う。急ぐことは必要だったが、ここで雑兵と遭遇し、時間をロスしてしまうのは避けたい。
急ぎつつ――しかし繊細に。ケルベロス達が行動を開始した。
●決戦・斬り込み隊長イスパトル
「見えてきたのだ!」
パティ・パンプキン(ハロウィンの魔女っ娘・e00506)が声をあげた。視線の先には、変電所の建物と、巨大な列車砲の様な物体――この列車砲は、本来なら存在しないもののはずだ。ならば、アレは何者かのグラビティによる幻像だろう。すでに戦闘は始まっているのか。
変電所へと到着したケルベロス達を出迎えたのは、10体ほどの竜牙兵の群れだ。だが、その注意は別の所へ向けられているらしく、まだこちらには気づいていない。
竜牙兵の群れは、両手に剣を手にしたタイプだ。今回の襲撃にて、この地点で活動する雑兵である。何かを包囲するような陣形をとりつつあるそいつらの中に、一際目立つ個体が存在した。四つの腕に、それぞれ四振りの刃を携えた竜牙兵。その者が放つ殺気は、雑兵のそれとは格が違う事が、ケルベロス達にも肌で感じ取れる。
間違いない。コイツこそが指揮官・イスパトル。
ケルベロス達は、そのイスパトルと対峙する、8名ほどの人影を確認した。別チームのケルベロス達だ。なるほど、この竜牙兵達の包囲陣形は、彼らを相手にしてのことだったか。
「さて……どうしますか?」
駆けながら、浅川・恭介(ジザニオン・e01367)が問うのへ、
「丁度いい、このまま突っ込む!」
アジサイが吠えた。
「了解しました……!」
ふふ、と恭介が笑い、ドラゴニックハンマーを手にした。それに呼応するように、仲間たちも次々と己が獲物を手にする。
真っ先に接敵したのは、アジサイである。バトルオーラにより包まれた手とうが貫くは、配下の竜牙兵。その背骨。べぎり、と音をたててへし折ったその背骨を掴み、竜牙兵を放り投げる。その竜牙兵へ、
「神の一撃っ! 天罰てきめんだよっ!」
ジャンプしてライトニングロッドをたたきつけるのは、フェクト・シュローダー(レッツゴッド・e00357)だ。頭部を強かに打ち付けられた竜牙兵は、そのまま地面に叩きつけられ沈黙。同時にフェクトが着地する。
「ヌゥ! 新手、カ!」
思わず声をあげるイスパトル。
「お察しの通り。さて、骨は燃えるごみですか?」
恭介が言いながら、イスパトルへドラゴニックハンマーを叩きつけた。超重の一撃を、イスパトルはその四本の腕と剣で用いてガード。さりとて勢いは殺せず。さらにテレビウム、『安田さん』が追撃の凶器攻撃をお見舞いする。イスパトルは全ての腕を一気に開放し、恭介のハンマーをはじいた。その勢いを利用して、恭介は距離をとる。
「さて、まずはご挨拶、といこう」
モカはマルチプルミサイルを射出し、竜牙兵へと発射。次々と着弾し、竜牙兵達がその動きを阻害される中を、『Scythe of sickle』が弧を描いて飛翔する。竜牙兵の身体を真っ二つに切裂き、主――パティの手元へと戻った『Scythe of sickle』の刃が輝く。
「ジャック、お願いなのだ!」
パティの言葉に、ボクスドラゴン『ジャック』は頷き、ブレスを吐きだした。ジャックのブレスが、身体を真っ二つにされながらもまだ動こうとしていた竜牙兵を包み、消滅させた。
「続きますわ、パティ様」
シエル・アラモード(碧空に謳う・e00336)がふわりと手をふれば、吹雪の形をした精霊が戦場に現れ出でる。荒れ狂う雪花の暴風! 精霊はその体の内に竜牙兵達を飲み込んだ。戦場を白に染め、シエルは優雅に笑みを浮かべる。
「今日は蒸し暑いですから――少し冷やして差し上げますわ」
「ようやく見つけた」
リィが呟く。同時に発生させた光の盾が浮遊し、その身を守るのを確認し、
「――さて、少しは楽しませて貰えるかしら」
薄く笑う。リィのボクスドラゴン、『イド』は、自身の属性をアジサイへとインストールする事で強化を図る。
エインは星座のオーラを、ゾディアックソードを振るって射出。オーラが竜牙兵達を撃ち貫いていくのを確認すると、エインは別チームのケルベロス達へ視線をやった。連絡担当のケルベロスへ向けて、ウインクを一つ。
「ノコノコト……無駄ニ屍ヲ増ヤシニ来タカ!」
イスパトルが笑う。
「あら、無残な屍になるのは、そっちよ」
リィが肩をすくめた。
「リィちゃんの言う通り! ……私、今日は特に容赦はしないからね!」
フェクトの言葉に、イスパトルはカタカタと顎を鳴らし、笑い声をあげた。
「ホザイタナ! ナラバ我ガ突撃部隊ノ戦法! 受ケキッテ見ルガヨイ!」
イスパトルが、手にした刃を一振り掲げ、ケルベロス達を差した。配下の竜牙兵達がキィキィと声をあげ、その獲物と体をガチガチと鳴らす。
「――蹂躙セヨ!」
イスパトルの号令一下、竜牙兵達がケルベロス達に襲い掛かった。
ガチリガチリとその身体を震わせ、ガチリガチリとその剣を震わせ、竜牙の兵達がケルベロス達になだれ込む。それはまさに怒涛の如く。
「行クゾ、犬ドモ!」
その終わりに訪れたのは、イスパトルと言う突風である。
イスパトルはその両手を広げて一足飛びにアジサイに迫ると、その四本の腕を一気に振り下ろした。X字形の軌跡。四方より迫る死の刃。アジサイはオーラを纏った腕でもって剣戟を受け止めると、
「熊本の方言で、頑固者のことを『もっこす』と言うんだそうだ」
その腕を振るい、剣を振り払うと、そのまま大きく前へと踏み込んだ。密着状態から拳を突きあて、
「今回の俺は、頑固だぞ」
そう言って、ふっ、と息を深くはいた。吐き切ると同時に、その拳を突き出す。密着状態より放たれた衝撃は、その勢いを殺す手段を相手に与えず。『猛熊ノ掌(モウユウノテノヒラ)』と呼ばれる業である。
イスパトルはそのまま後方へとはじき出された。その隙を逃すまいと、フェクトはすでに動いている。
「神様に喧嘩を売ったんだ」
イスパトルへと向けて、二本のライトニングロッドを振り下ろす。直撃。
「ただで済むとは思わないことだね!」
同時にありったけの雷をイスパトルへと流し込む。イスパトルが腕を振るうのを躱すように、フェクトは跳躍。距離をとる。
一方、恭介は、その手のひらに光る小鳥を生み出した。それは竜牙兵目がけて飛んでいき、接触する瞬間に無数の光の球へと姿を変える。いや、それは光の球ではなく、さらに小さく姿を変えた小鳥である。竜牙兵はその小鳥に、光に包まれ、その翼により切り刻まれていく。光が消えた後には、切り割かれた竜牙兵の身体が残るのみ。安田さんは戦場を駆けまわり、傷ついたケルベロスへ向けて応援動画で活力を与える。
「イスパトルへと集中したいが……!」
モカのパイルバンカーが竜牙兵を貫く。衝撃が竜牙兵の身体を破壊した。モカはパイルバンカーを引き抜き、
「配下を放置しておくこともできないか」
ふぅ、と笑う。
「ジャック・オー・ランタンたち、皆を守るのだ! さぁ、がんばるのだ!」
戦場にはパティが散布したジャック・オー・ランタン型の紙兵が舞い、ジャックは竜牙兵へとタックルをお見舞いする。
シエルが『青碧の龍戦槌』から竜砲弾を発射。直撃した竜牙兵は爆発四散。
「これで配下の数も――」
残り少ないはず、と続くはずだったシエルの言葉は、キィキィと言う叫び声で中断させられた。戦いの気配を感じ取ったのか、新たに数体の竜牙兵が現れ、敵の戦列に加わった。まぁ、とシエルは頬に手を当て、
「ままならないものですのね……」
少々しゅん、とした様子で言った。
「そうね。でも――」
リィが言った。静かに手をかざす。途端、その先にいた一体の竜牙兵が、突如現れた黒いものに飲まれた。圧し潰すように、溶かすように、咀嚼する様に、黒いそれは、竜牙兵の肉体を、魂を飲み込み、消える。
「ねじ伏せてしまえば、それで終わりよ」
と、事も無げに言うリィ。
「んむんむ、賛成ですねーぇ♪」
エインはそう言いながら、竜牙兵を『掴んだ』。いや、その手は人間のそれではない。翼と一体化し、かつ巨大化した異形の腕。べぎべぎと音をたてて、竜牙兵が押し潰されていく。
「んむんむ、やっぱり直接いただくと気持ちいいですねーぇ♪ 魔法の精度がぐんぐん上がっているのを感じますよーぉ♪」
エインは楽しげに笑いながら、竜牙兵を握り潰した。
今度はこちらの番、と言わんばかりに、竜牙兵達は雄たけびを上げてケルベロス達になだれ込んでくる。
イスパトルは四本の剣を一斉に突き出した。鋭いその一撃を、シエルは『青碧の龍戦槌』で受け流した。
「ふふ、間一髪、ですわね」
どこか軽やかな口調とは裏腹に、その瞳は油断なくイスパトルを見つめる。
一方で、アジサイはその拳で、フェクトはロッドと雷でもって竜牙兵を粉砕。
「どんなに急いでも、すべてに救いの手は差し伸べられない……わかってる、これは、ただの憂さ晴らし――付き合ってもらいますよ」
恭介は再び光の小鳥を生み出し、放った。竜牙兵は光に包まれ、その身体をみじんに切り刻まれる。
「そろそろ限界じゃないかな?」
モカはそう言いながら、イスパトルへと攻撃を仕掛ける。放たれたパイルバンカーの杭が、イスパトルの身体に撃ち込まれ、衝撃により吹き飛ばされる。
「ヌウッ……!」
イスパトルが呻く。
「シエル、こっちの準備はOKなのだ!」
薬液の甘いあめを降らせながら、パティが声をあげる。
「敵の弱点は、どこなのだ?」
その言葉に、シエルが頷いた。
「お待ちくださいませパティ様。今、妖精さんに聞いてみましょう」
魔導書を開き、綴られた詩を読み上げる。澄んだ声にて呼び出されるは、小さな知識の妖精。『妖精の囁き(フェアリー・ウィッシュ)』は、主の迷いを打ち砕く――。
「そこ、ですのね?」
シエルの呟き。同時に、『蒼穹の絶命弓』を引き絞り、矢を放つ。イスパトルの身体に突き刺さった矢が、答えだった。
この機を逃さんと、リィとエインが動いた。
「飲み尽くせ、『黒蛆(ディドルディドル)』――」
「マッドプライズ「ザ・ドラゴン」~ぅ♪」
黒い魂の塊が、異形の剛腕が、イスパトルへと襲い掛かる。
飲み、砕き、溶かし、潰す。二つのグラビティの連撃を受けてなお、イスパトルは倒れない。
「マダ、マダァ……ッ!」
イスパトルが突撃の命令を下す。だが、その声に応じるはずの兵達は、既にわずかに二体を残すのみであった。それでもなお攻撃をやめぬ竜牙兵達ではあったが、その攻撃では、もはやケルベロス達を止めることなどできない。
アジサイがその奥義でもって竜牙兵に一撃を加えた。衝撃により竜牙兵がバラバラに吹き飛ばされ、動かなくなる。
「これで、ラストっ!」
フェクトがロッドで最後の竜牙兵を殴り倒した。
配下はすべて消えた。無敵の切り込み部隊は、もはやない。
「ドラゴンオーブの封印は解かせませんよ」
恭介がハンマーで、イスパトルを殴りつける。剣でそれを受け止めたようだが、かろうじて、という様子だ。敵も相当体力を消耗しているに違いない。そして、そこへ、追撃の氷結の螺旋が放たれた。イスパトルの胴へと突き刺さる氷結の螺旋。イスパトルが苦悶の声をあげた。
「デウスエクスの好きにはさせない。決して」
それは、モカの一撃であった。
「お菓子をくれぬなら……お主の魂、悪戯するのだ!」
パティがそう言うと同時に、辺りが暗くなった。変電所の建物は、飾り付けられたハロウィンキャッスルになり、辺りにカボチャやコウモリ達が舞う。
『Halloween Party(トリック・オア・トリート)』によるハロウィンの幻影――巨大なジャック・オー・ランタンの幻影を背に、パティは巨大な『Scythe of sickle』を振るう。
パティの痛烈な一撃が、イスパトルの胴を薙いだ。肉があれば鮮血がほとばしったであろう、深い斬撃。
「ガアアアッ!! 貴様ラ……!」
イスパトルの怒号が響き渡る。今が好機だ! ケルベロス達による、最後の猛攻が始まった。二つのチームのケルベロス達による連続攻撃がイスパトルへ次々とダメージを与えていく中、トドメの一撃となったのは、別チームのケルベロスの攻撃だった。その一撃を受けたイスパトルは爆発四散。
16名ものケルベロス達による討伐劇は、ケルベロス達の勝利で幕を閉じたのだった。
●次の戦いへ
敵の指揮官は倒れた。
街に展開している敵配下達も、撤退を始めるだろう。
ケルベロス達は安堵の息をつき――。
「皆様――」
シエルが、声をあげた。
東の空を、指さしていた。
遠い遠い東の空に、複数の何かが飛んでいるのが見えた。
「……本隊のご到着、ね」
リィが言った。
ドラゴン。その軍勢が、東の空より来る。
「大丈夫。私達は、絶対に、負けないよ」
フェクトが言った。
仲間達の誰もが、想いを同じくしていた。
次なる激闘の予感を感じつつ、ケルベロス達は、ひとまずの帰路へとつく。
作者:洗井落雲 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年6月23日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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