●攻性植物デスマッチ
「ウィル、やれ。切り刻んでこい」
グループのリーダー格の少年が、不敵にそう言った。『ウィル』と呼ばれたのは巨大な蕪の攻性植物だった。大きさは、ヒグマほど。
「負けたら丸焼きだからなタンク、食われたくなきゃ食ってこい」
対する『タンク』はどうやらサツマイモがデウスエクス化したものだ。その大きさと威圧感は確かにタンクローリーにも似る。体格で言えばウィルの倍くらいはある。
深夜の、雑木林。対立するグループの少年らが見守る中、ウィルのひげ根はみるみる捕食形態へ変わり、目の前の敵へと襲い掛かる。タンクもまた、蔓を伸ばして応戦の態勢に入る。
「いいか、負けた方は手下だ、子分だからな! これまでみてぇにでけえツラすんじゃねえぞ」
「こっちのセリフだ、泣くんじゃねえぞ!」
少年たちの舌戦を脇目に、二体の攻性植物『デウスエクス・ユグドラシル』は互いに襲い掛かるのだった。
●力の象徴
「ハロウィン終わったけど、お化け蕪とかいないかなって思ってたら、本当にいたみたい」
ブラッドリー・クロス(鏡花水月・e02855)が、しらりと言い放った。頷いて、ヘリオライダー、セリカ・リュミエールがブラッドリーの調査と、予知に基づく状況報告を始めた。
「事件は茨城県かすみがうら市で起きてます。若者の多いところでグループ同士の対立が発生するのは普遍的なことですし、単なる少年同士の小ぜりあいなら、ケルベロスが出る幕ではないんですけど。問題は、その方法なんです」
ここ最近、かすみがうらの不良少年グループ同士のなわばり争いを、直接対決ではなく『攻性植物同士のデスマッチ』で決着させることが流行しだした。
人を超えた存在。彼らはどうやら攻性植物を力の象徴として、自分たちのシンボルのように扱い始めたらしかった。
「チームの代表として攻性植物を戦わせ、勝った方の傘下に負けたほうが入る、というルールが出来ているみたいです。この状況の危険なところは、このままにしておくとかすみがうらの攻性植物がひとつの集団に統一されて強力な組織になりかねない、という部分です。組織化された敵の戦力は、一気に跳ね上がります」
現場はかすみがうら市のとある雑木林。半径50メートル四方にまばらな木々が茂る、うら寂しい場所だ。
「今回の決闘は、南軍、と名乗る少年たちが蕪型攻性植物『ウィル』を、対して東軍、と名乗る少年たちがサツマイモ型攻性植物『タンク』をけしかけて行われます。皆さんには、この決闘の現場に乗り込んで頂くことになるのですが」
セリカが雑木林の全容をモニターに示しながら、最大の問題点を口にする。
「もしこの2体、ウィルとタンクが一時休戦して、足並みを揃えて皆さんに戦闘を挑んでくるようなことになれば、恐らく勝利するのは難しいかと思われます。これこそ組織化の第一歩、と言えるかもしれませんね。上手に立ち回って撃破して下さい」
1体だけに狙いを定めて、確実に撃破出来る工夫と作戦が、必要となる。
「それと、南軍東軍の少年たちですが、彼らは皆さんの脅威になる存在ではありません。単なる一般人ですから。皆さんが戦闘に入れば、驚いて逃げて行くでしょうね」
そう説明するセリカの横で、ブラッドリーが頷いた。
「危ないオモチャで遊んでたってことに、気づくといいんだけど、ね」
ブラッドリーの言葉を引き取って、セリカが付け足した。
「デウスエクス同士の争いは、負けてもコギトエルゴスム化するだけです。つまり、グラビティ・チェインさえ吸収すればすぐに戦力として復活出来るということなんです。繰り返せば間違いなく、組織化された戦力になってしまいます。今のうちに叩きましょう」
参加者 | |
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大弓・言葉(ナチュラル擬態少女・e00431) |
クロコ・ダイナスト(ドラゴニアンのブレイズキャリバー・e00651) |
シエナ・ジャルディニエ(小さな庭師人形・e00858) |
御影・雪乃(セルフアイデンティティ・e02665) |
ブラッドリー・クロス(鏡花水月・e02855) |
ヴァーツラフ・ブルブリス(バンディートマールス・e03019) |
井伊・異紡(地球人のウィッチドクター・e04091) |
エリン・コルヴィ(堕天ドル・e13526) |
●少年たちの夜
真夜中の雑木林。合わせて十数人くらいの少年たちの集団がふたつ、向き合っていた。どちらのグループメンバーも似たような姿の、似たような年頃である。
皆、自分たちの力を大きく見せ、誇示したがっている顔をしていた。だからこそ、より大きな力を手に入れたがる。それがどんなに危険なものであるか、知りもしないで。
「Question……どうやって攻性植物を飼い慣らしたんでしょうか?」
シエナ・ジャルディニエ(小さな庭師人形・e00858)が呟いた。彼女の発案で、今から始まるだろう攻性の対決は、サツマイモ型の攻性植物『ウィル』に加勢する作戦になっている。今は全員で木陰に潜み、タイミングを待っている。
「うぅ……デウスエクスさんを従えるなんて……な、何かあった時どうするつもりなんでしょうか……。わたしだったら怖くてとてもできなさそうです……」
ケルベロスらしからぬ発言をしているのは、クロコ・ダイナスト(ドラゴニアンのブレイズキャリバー・e00651)。正確には、彼女の人格のうちの臆病な人派、の方である。
そのクロコとは対照的な意見を口にするのは、エリン・コルヴィ(堕天ドル・e13526)。
「攻性植物でデスマッチなんて、面白いこと考えるね。でも、事故が起きてから後悔しても遅いんだよ」
本当に面白い、と思っているらしく、エリンが少年っぽく笑う。もちろん放ってはおけないが、彼らの発想ごと折ってしまうよりは話をしてみたい、そんな風に彼女は考える。
「カブトムシで戦わせる系のあれを思い出すの。そんな可愛いものではないけど……」
大弓・言葉(ナチュラル擬態少女・e00431)が、そう応じた。言葉の言うとおり、カブトムシとデウスエクスの区別が、少年たちにはついていないのかも知れない。後者は紛れもなく、人を襲うものだというのに。
「そこらの人間殺すよりマシっちゃマシだが、ガキが扱うに危ねぇことには変わりねーな」
長身、黒スーツに帽子。完璧なマフィアスタイルで潜伏している、ヴァーツラフ・ブルブリス(バンディートマールス・e03019)が、火のついていない細葉巻を咥えて呟く。30代という若さでロシアンマフィアのボスを張るヴァーツラフから見れば、この少年たちの小競り合いなどはまさしく子どものお遊び、である。
「こういうの、とっとと叩いといた方がいいよねぇ」
少年たちの狂乱を冷めた目で眺めながら、ブラッドリー・クロス(鏡花水月・e02855)が気だるげに言った。自ら血を浴び戦うことこそに悦びを感じる彼としては、自分たちの力の象徴を他に、それもデウスエクスに委ねるなど、興醒めもいいところなのだ。
「賛成です。こういうのは、潰せるうちに潰さないとあとがめんどいのです」
御影・雪乃(セルフアイデンティティ・e02665)が、ジトリと少年たちをねめつける。雪乃はもともとそういう目つき、抑揚のすくないしゃべり方をするのだが、この局面だと心底少年たちに呆れている風にも見える。
黙って様子を伺っていた井伊・異紡(地球人のウィッチドクター・e04091)が、ぽつりと呟いた。
「攻性植物同士が戦うのは何故だろう。互いに食みあってキメラのような存在になるのかな」
複数の遺伝子が、同一個体で混ざり合う。デウスエクスの中でも謎めいた存在である攻性植物なら、あるいは……。
その時突然、リーダー格の少年がピィッと不快に高い音をたてて指笛を吹いた。それを合図に、他の少年たちも雑木林の一方に向かって大声を出したり、足を踏み鳴らしたりし始める。
「……?」
一体何を始めたのかと、エリンが怪訝そうに眉を顰める。
「オラ出てこい、バケモノ!」
「来たぞ、ウィルだ」
わあっと『南軍』の少年たちが沸き立つ。騒ぎに応じるようにボコボコッと地面が盛り上がり、蕪の攻性植物『ウィル』が姿を現したのだ。
「グズグズすんなデカブツ、とっととテメェも出てこい!」
リーダーを筆頭に『東軍』のメンバーもわめき立てた。足下の枯れ葉をガサガサ言わせ、石を投げる。すると。
ウィルの倍ほどもあろうという、巨大なサツマイモの攻性植物『タンク』が、土の中からのっそりと出てきた。
2体の攻性植物植物は、すぐに互いの存在を認識し、けん制しだした。不穏な気配に、ケルベロスたちもいつでも動ける態勢を素早く整える。もはや潜伏の必要もなくなってきた、とヴァーツラフが葉巻に火を入れた。
東軍南軍、双方のリーダーである少年たちが、無防備に近づいていく。ああっと不安げな声をクロコがあげた。
「攻性植物って人間のいうことを聞いたり、人間になついたりするものなんでしょうか……」
「少なくとも」
凛とした声で、シエナが答える。
「わたしとノワドゥココの間には、信頼関係がありますの」
それは仲間たちも理解していた。だからこそ、彼女の作戦に乗ったのだ。
その意思を尊重はしたいが、相手がデウスエクスである危険性を忘れたわけではない。
「ウィル、やれ。切り刻んでこい」
「負けたら丸焼きだからなタンク、食われたくなきゃ食ってこい」
しかし目の前の少年たちには、そうした意思もなにもない。
彼らにとって攻性植物は、ただの道具。自分たちを大きく見せるための飾りに過ぎない。
「なんて扱いを……」
シエナが哀しげに声を溢す。結局彼らは攻性植物を飼い慣らしたわけでもなんでもない。単に『巨大な力を持つカブトムシ』として、けしかけているだけだった。
強いて言うなら、少年たちの方こそが、攻性植物の力に寄生している。そんな風に見えて、言葉がため息をつく。
「火遊びはよろしくないの。命ごと全焼しても誰も代わってくれないんだしね?」
勿論呟きは届かない。2体の攻性植物の獣のような低い唸り声と、少年たちの怒号。
「いいか、負けた方は手下だ、子分だからな! これまでみてぇにでけえツラすんじゃねえぞ」
「こっちのセリフだ、泣くんじゃねえぞ!」
●介入
先手を取ったのは、ウィルだった。スルスルっと伸ばしたひげ根の先が捕食形態に変化し、タンクに食らいつく!
「いいぞウィル! そのままブッ殺せ!」
タンクの呻きに、南軍の少年たちが歓声をあげる。しかしタンクも負けてはいない。即座に体に巻きついている蔓を触手のように伸ばして、ウィルを締め上げた。今度は東軍がはしゃぎだす。
「やれ、引きちぎれ!」
タンクが攻撃を受けたのを皮切りに、介入作戦が始まった。
「Decouverte! 漸くツガイを見つけたの! ノワドゥココ、お手伝いするの!」
まずはシエナとサーヴァント、ラジンシーガンだけが飛び出し、タンクの傍らに駆け寄った。彼女の今回の最大の目的はこのタンクを穏便に回収し、彼女の攻性植物『ノワドゥココ・パタトゥ』のツガイとして連れ帰ることにある。味方であることのアピールを、と、ノワドゥココを収穫形態へと変化させ、進化の光でタンクの傷を癒す。
「おい、なんだお前!」
南軍、ウィル側のリーダーがわめく。
「なんだぁ、助っ人かよ、反則だぞ!」
「知るか、俺らが頼んだわけじゃねえ!」
周りの少年たちがますます興奮し、大騒ぎし始める。
「うるさいよねぇ、あいつら」
と、ブラッドリーが呆れかえる。
「ザワついてきやがったな。行くか」
ヴァーツラフが促し、ケルベロスたちが動いた。少年たちの横を悠然と歩く黒い姿の威圧感は凄まじい。やべぇ本職のひとだ……と囁きあいあっという間に萎縮する少年たちに、雪乃が淡々とした口調で告げる。
「巻き込まれたくなければ、避難がおすすめですよ」
一方戦場近くでは、南軍リーダーがシエナに向かって偉そうな口を叩いていた。
「おいお前、ウィルにもなんか魔法みたいのかけろよ。フェアじゃねえだろ」
「いいかげんになさいますの。そもそもあなた方は……」
冷ややかにシエナが言い返そうとした時。
ウィルの凶暴なハエトリグサ型の触手が、布陣し始めたケルベロスに向けられた。攻性植物で応じようとするエリンだったが間に合わず、逆にダメージを食らってしまう。
「こいつ! ッつぅ……!」
注ぎこまれる毒に、エリンが顔を歪めた。
「うっ、うわぁああああ?!」
その様子を目の当たりにし、パニックを起こしたのは東南軍のリーダーのふたりだった。
「な、なんだよコイツら、植物同士でしか戦わねえんじゃねえのか?!」
「逃げろ、あぶねえ!」
さっきまでの不遜な態度は露と消え、一目散に逃げ出すふたり。さっきまで大騒ぎをしていた少年たちも、既に逃げ出した後だった。
「あーあ、やっぱりその程度の認識か。まぁ、そんなもんだね」
異紡がその野次馬の様子を一瞥し、さっさとキュアの準備を始める。
タンクは目の前の敵に夢中で、ケルベロスたちに気づいているのかいないのか。その攻撃はウィルに向けられる。戦場に根を広げて侵食し、ウィルを沈めようと大地を揺らした。
「ウィル集中狙いで、いきますっ」
そのタンクに加勢する形、という方針は変わらない。クロコが右腕に竜王の闘気を纏わせ、強烈な一撃をウィルに叩き込むと、ポケットに手をつっこんで葉巻をくゆらせていたヴァーツラフの眼光が一瞬で尖り、咆哮が放たれる。一瞬怯んでみえたウィルに、すかさず言葉の時空凍結弾が追い討ちをかけた。そこへシエナのストラグルヴァインが、ウィルの動きを一瞬封じ、その間に異紡がエリンにウィッチオペレーションを施す。雪乃も前衛を守護すべく、サークリットチェインで魔方陣を描きだした。
「おろしてあげるよ!」
戦闘に入りようやくテンションのあがってきたブラッドリーのチェーンソー剣が、ウィルに容赦のない斬撃を与えていく。
このまま順調にタンクと結託してウィルを撃破、その後タンクが説得を受け入れてくれれば理想だった。だが。
●攻性植物
ウィルも大人しくなすがままにはならない。無数の根を地面に這わせて辺り一面を激しく揺るがした。
「く……っ!」
振動に目眩を覚えて、クロコが頭を振った。そのまま埋葬してやる、と言わんばかりに細く掠れたなんとも言えない声をあげ、ケルベロスたちを飲み込みにかかる。
「っの、野菜ヤローが!」
ヴァーツラフの革靴の先が、ウィルのボディーにめり込む。並ぶように、タンクの破壊光線がウィルに向けられた。
「凶暴なヤツ……!」
素早く星座を描き出し、異紡はメディック役に徹する。
「ぶーちゃん、みんなの回復手伝って!」
ダメージを負いつつ、言葉が熊蜂似のボクスドラゴンに指示を飛ばした。間髪入れずに放った炎弾は、ウィルの横をわずかにかすめる。案外に動きの素早いウィルを正確に捕らえるべく、雪乃がポジショニングで狙撃場所を確保する。
シエナのノワドゥココが、ウィルを再び捕らえようとした、その時。
「あぁっ?!」
エリンが思わず叫んだ。タンクの破壊光線が狙いを定めたのは、ウィルではなくシエナだったのだ。その小さな体が衝撃に飛ばされ、地面に倒れ伏す。
「……ッ!」
「シエナくん!」
予想していたとは言え、タンクの裏切りはやはり衝撃だった。そこへウィルが、しぶとく捕食の一撃を繰り出してくる。ハエトリグサがブラッドリーの肩に食い入って、毒を注入していく。
「……やってくれるね……ッ!」
この状況でも、ブラッドリーにとって戦いは楽しいものでしかないらしく、その表情は妖しく笑みの形に歪む。
どうやら2体を同時に相手にしなくてはならない状況であると、皆察知していた。もちろんシエナも、それは理解している。それでも、ギリギリまで説得を試みたかった。ふらつく体を持ち上げ、笑みさえ浮かべて正面からタンクに呼びかける。
「Remarquer! わたし達と一緒に来て!」
少年たちによってたかってオモチャにされた攻性植物が、彼女には哀れでならない。
しかしタンクはジリジリと距離を詰めてくる。一方でウィルを威嚇し、ケルベロスにも牙を剥く。ウィルはウィルで、タンクとケルベロス、仕留めやすいのはどちらか、と見定めているようだ。
「……ごめんねシエナさんっ、もう見てられませんっ!」
叫んだクロコが、簒奪者の鎌を振りかざし、タンクに向かって投げつけた。動物が絞め殺されるような声を上げるタンク。
「ひぃ!?」
戻った鎌を受け止めつつ、自分の攻撃の結果におののいてしまうクロコだった。
「あ、ぶない!」
そのタンクの怒声とともに、ふっと再び倒れそうになるシエナを、言葉が受け止めた。異紡も駆け寄り、具合を確認する。
恐らく2体の攻性植物に、共闘という意識はないのだろう。単に敵が増えて、矛先が変わっただけ。それともデウスエクスとしての本能が、ケルベロスに向かわせるのか。
真相はわからないが、ウィルもタンクも戦いをやめる気配はない。再度光花形態へと転じる。
「テメェは、いい加減に沈みやがれえぇ……っ!!」
熱を集め始めるウィル。その懐深くに潜り込んだヴァーツラフのソードオフショットガンから徹甲弾の散弾が発射される。体をみじん切りよろしく穴だらけにされたウィルは、その場で砕け散った。
残るは、タンク。
「残念だよ、君にシエナくんの説得が届かなくてさ」
同じく攻性植物使いのエリンが前に出て、そう言った。だが説得を肩代わりする気はなく、一気に攻撃へと転じる。
同じくクラッシャーのブラッドリーも傷の具合をまるで気にせず、薄笑みを浮かべて前に出る。
「……さぁ、楽しい時間の始まりだよ!」
次の瞬間、彼の背後から無数のナイフが現れ、タンクに襲い掛かった。
その斬撃の合間に、銃を構え狙いを定めるスナイパーの雪乃。
「確実に、当てますよー……」
言って、詠唱を始める。放たれたのはペトリフィケイションの魔法光線。銃口はまあ気分の問題なのだが、とにかく雪乃の攻撃はタンクに直撃する。
タンクが反撃にと大きな体を揺さぶり、大地を揺るがし始めた……。
●撤退
「……潮時だな。退くぞ」
短く、吐き捨てるようにヴァーツラフが言った。
「どうしてさ、折角……、まだ楽しもうよ」
ゼエゼエと荒い息をしながら、ブラッドリーはまだ戦いへの意欲を失わない。
「蕪ヤローは殺った。意味わかんだろ」
実際、戦おうと思えば続行は出来る状態だった。もう少し身を削って戦えば、タンクを倒すことも出来るかも知れない。だが。
「……シエナくん」
エリンが、言わんとするところを察知して呟いた。攻性植物を、それも元々は彼女が説得しようとしていたタンクを、そこまでして今倒す理由がなかった。
「そうしましょう。ウィルを倒した以上、わたしたちの勝ち、ですもんね」
クロコが頷いたのを合図に、それぞれ撤退準備に入る。言葉が極力前に出て盾となり、徐々に距離を広げていった。
ケルベロスたちは攻性植物『ウィル』1体を撃破。『タンク』を追い込むも撤退の道をを選んだのだった。
作者:林雪 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2015年11月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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