魔竜王の遺産~熊本市襲撃

作者:紫村雪乃


 大地が鳴動した。
 驚いて振り向く人々。場所は熊本市である。
 人々を睥睨するように、それは威容をさらしていた。
 漆黒の巨馬にまたがった黒衣の騎士。兜も鎧もすべてが禍々しい漆黒の色に染められている。その身から立ち上る瘴気のごとき妖気もまた闇の色であった。
 髑髏の顔をもつそれは、無論人間ではない。眼窩の奥に陰火のような真紅の光が明滅していた。黒牙卿・ヴォーダンだ。
 ヴォーダンが巨馬の腹を蹴った。すると巨馬が足を踏み出した。再び大地が鳴動する。
 刹那である。綱を解かれた猟犬のように彼の背後に控えていた異形の者たちが動き出した。ヴォーダンのものに似た、しかし厚みを減じたような黒い鎧をまとった竜牙兵である。
 その時に至り、ようやく人々は事態を理解したようである。悲鳴をあげながら逃げ出した。
 が、遅い。すぐに黒い奔流が人々を飲み込んだ。
 老人の首がとぶ。少女が両断される。たちまち辺りは阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。

「大変です。大侵略期のドラゴンを復活させていた黒幕が、遂に動き出しました!」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は叫んだ。
 敵の目的は『魔竜王の遺産ドラゴンオーブ』の探索。そのありかを発見したようであった。
「ドラゴンオーブの力は不明ですが、魔竜王の遺産ともいわれており、その力は魔竜王の再臨の可能性すらあるようです。そのドラゴンオーブをドラゴンたち渡す事は出来ません」
 現在、ドラゴンオーブの封印場所である『熊本市』には竜十字島より出撃したドラゴンの軍勢『アストライオス軍団』が向かって来ている。が、敵はそれだけではなかった。このドラゴンの軍勢に先立ち、敵は魔空回廊を最大限に利用して配下の軍勢を送り込んでくるのだ。目的はドラゴンオーブ復活の為のグラビティ・チェインを確保するこどある。市街の破壊と略奪を行おうとしているのだった。
「配下の軍勢はドラグナー、竜牙兵、オーク、屍隷兵で、九つの部隊に分かれています。その部隊をもって、竜十字島から出撃したアストライオス軍団が到着するまでに、『ドラゴンオーブの封印解除に必要なグラビティ・チェインを略奪』しようとしているのでしょう」
 熊本市の戦いで、多くのグラビティ・チェインを略奪されればされるだけドラゴンの軍勢によるドラゴンオーブ奪取を阻止できる可能性が下がってしまう。必ず阻止しなければならなかった。
「襲撃場所は熊本市街地。人々が大勢いるので避難させる必要があるでしょう」
 敵は九つの部隊に分かれている。それぞれに指揮官がおり、その指示に従って市民の虐殺を行うのだ。市民を救出しつつ、敵ボスを素早く撃破する事が出来れば戦いが有利になるだろう。
「ドラゴンとの決戦の前哨戦ではありますが、後の戦いに大きな影響を与えるので、熊本市民の皆さんへの被害を最小限に抑えるようにしてください」
 セリカはいった。


参加者
叢雲・蓮(無常迅速・e00144)
稲垣・晴香(伝説の後継者・e00734)
ジェノバイド・ドラグロア(忌まわしき狂血と紫焔・e06599)
影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)
エストレイア・ティアクライス(オーダーメイデン・e24843)
ロージー・フラッグ(ラディアントハート・e25051)
キーア・フラム(憎悪の黒炎竜・e27514)
リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)

■リプレイ


 熊本市西区。
 北には山の稜線が見える。南側は市街地だ。といっても近くには田畑も広がっていた。
 その市街地にオークの群れが襲いかかった。嗜虐王エラガバルス配下のオークらしく残虐無残なオークどもである。
「きゃあ」
 少女が悲鳴をあげた。その首に触手が巻き付いている。
 その時だ。八つの人影が疾り来った。
「間に合ったようなのだよ」
 叢雲・蓮(無常迅速・e00144)は少女と見紛うばかりに美麗な顔を辺りにむけた。オークの群れだ。
 蓮たちは上代城跡に降下した。そして索敵によりオークの一群を見出したのであった。
「大将首を狙えないのはちょっと詰まらないけれども、一番槍で頑張るの!」
 白銀のまじった艶やかなた黒髪を翻し、蓮はダッシュした。少女を絞め殺そうとしているオークに接近。一気に背を呪われた刃で刺し貫く。
 次の瞬間、オークが苦悶した。蓮のもつ喰霊刀から流し込まれた呪詛がオークの魂を蝕んでいるのである。
「今のうちだよ。速く逃げて」
 少女の首にからんだ触手を引きちぎり、蓮は叫んだ。
「やるね」
 稲垣・晴香(伝説の後継者・e00734)は蓮に微笑みかけた。まるで頭を撫でられた子犬のように蓮が笑み返す。
「……ちょっとした戦争並みの規模で攻めてきましたね。そっちが派手に来るなら、此方も派手に迎え撃ちますよ」
 群がる敵を前にして、この場合、晴香は不敵に笑った。気が強そうだが、整った顔立ち。鍛え抜かれた肉体は華奢に見えるが、胸と尻が発達しており、わずかな身じろぎても大きく揺れて存在を誇示している。
 薄く笑いつつ、晴香は跳んだ。降り立ったのはオークの只中である。片足を軸に蹴りを放った。回し蹴りというやつだ。
 あまりの速さと鋭さ、重さのために晴香の脚は豪風をまいた。竜巻に飲み込まれたようにオークたちが吹き飛ばされる。
「もう大丈夫よ」
 晴香は倒れていた少年を抱き起こした。
「走れる?」
「う、うん」
 少年はどぎまぎしつつうなずいた。彼は晴香のことを知っていたのだ。晴香は有名な美人女子プロレスラーであった。
「じゃあ、頑張って走って。もうすぐ助けが来てくれる。それまでは絶対に私達が守って魅せるから!」
 晴香は少年の背を励ますように叩いた。


「とにかくボス格じゃない雑魚敵を狩り尽くすぜ!」
 ジェノバイド・ドラグロア(忌まわしき狂血と紫焔・e06599)はニヤリとした。精悍だが美形といっていい顔に浮かんだのは楽しくてたまらぬ笑みだ。
 正気を地獄化した戦闘狂。破滅と背中合わせの男がジェノバイドであった。
「てめぇらの相手は、この俺だぁぁ! いや、俺達か!」
 叫ぶと、ジェノバイドは跳んだ。軽々と十メートルほどの高さに舞い上がり、一気に降下。背丈ほどもある巨大な戦斧をオークの頭蓋にうちおろした。
 グシャリ、と。嫌な音がした。衝撃に地に叩きつけられたオークの頭蓋は西瓜のように粉砕されている。
「わたしは影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)。ケルベロスだよ」
 高らかに少女は名乗った。ポニーテールの似合う可愛らしい美少女である。やや垂れ気味の大きな目には強い光がやどっている。
 すると数体のオークがリナの方をむいた。目論み通りである。オークの敵意をむけさせるのが彼女の狙いであったのだから。
 数体のオークがリナめがけて迫った。が、リナの動きの方が速い。
 リナの手から銀光が噴出した。アスガルド神により創造された選ばれし者の槍を投擲したのである。
 それは高空まで飛翔すると空で分裂した。そして刃の雨を降らせた。リナに迫っていたオークがズタズタに切り裂かれる。
「ドラゴンオーブ……そんなものの為に熊本市の人達を襲うなんて許せないよ!」
 血まみれのオークを前に、リナは叫んだ。

「お、オークと戦う事になるなんて……」
 メイド服をまとった美麗な娘が慨嘆した。エストレイア・ティアクライス(オーダーメイデン・e24843)である。
「けれど人々を救う為なら仕方がありません!」
 エストレイアは地を蹴った。摩擦熱で生じた炎を足にまとわせ、オークの群れに躍り込む。
 その時、オークの触手が舞った。が、その悉くをすり抜け、エストレイアはオークに迫った。
「諸共に朽ち果てろぉ!」
 エストレイアの脚がはねあがった。空を灼く一条の炎。激烈な蹴りの一撃にオークの顔がひしゃげた。
「殺せ」
 他のオークが怒号を放った。
「させません」
 エストレイアの背後にピンクの髪を翻して可愛らしい娘が舞い降りた。着地の振動で大きな乳房がたぷんと揺れる。ロージー・フラッグ(ラディアントハート・e25051)であった。
「ならお前から殺してやる」
 オークたちが躍りかかった。その眼前、ロージーは手刀を一閃させた。
 疾る蒼光。それは凍てつく刃であった。ロージーの手刀には冥府深層の冷気が秘められていたのである。
 手刀に断ち切られたオークの肉が裂けた。しぶく鮮血。いや、その鮮血すら凍結した。

「ドラゴンの僕達…全て燃やし尽くしてあげるわ…!」
 夜が人の姿をとったかのような妖麗な娘がいった。警告ではない。宣告であった。
 キーア・フラム(憎悪の黒炎竜・e27514)。その瞳に燃えているのはオークに対する激烈な憎悪である。が、同時にその瞳は潤んでもいる。
 オークにより、キーアは過去何度も性的に屈していた。オークのことを思う度、我知らず彼女の股間は疼いてしまうのである。
 その迷いを振り切るようにキーアは巨槍を放った。
 ゲイボルグ投擲法。分裂した槍が数条の光の尾をひいてオークに降り注いだ。
「ぎゃあ」
 切り裂かれた数体のオークが悲鳴をあげた。痛みと恐怖に混乱しているのである。
「もっと切り裂いてあげるわ」
 キーアが冷笑した。が、その笑いとは裏腹に股間の疼きは強まっている。そこに一瞬の隙ができた。彼女の背に鋼の鞭と化した触手がとんだ。
 ビシッ。
 眩い紫電が散った。雷に撃たれたかのように触手がはじかれる。
 キーアの背後。雷の壁を屹立している。
「支援完了」
 まだ高圧の紫電をまといつかせた電磁施術攻杖をおろし、人形を思わせる玲瓏たる美しい娘は機械じみた声音で独語した。
 リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)。八人めのケルベロスであった。


 オークの一群を撃破した後のことである。
 空に翔けのぼった三人の男女があった。ジェノバイド、エストレイア、ロージーの翼ある三人だ。
「オークどもめ。どこにいる?」
 ジェノバイドが下方を見渡した。少しでもオークをひきつけておけば嗜虐王エラガバルス殲滅班の手助けになるという計算が胸にある。
「エラガバルスはあそこにいるかもしれません」
 ロージーが市街地の方を指し示した。かなり激烈な戦闘が行われているようだ。
「うん?」
 怪訝そうにエストレイアは眉をひそめた。まるで濁流のようにオークの大群が疾駆している。
「人々を襲おうとしているようではないようですね」
「じゃあ、何を……あっ」
 はっとしてロージーは目を見開いた。
「もしかするとエラガバルスの元へむかおうとしているのかも……」
「なるほど」
 ジェノバイドの真紅の瞳が光った。
「エラガバルスへの援軍というわけかよ。ならオレたちがやることは一つだ。あいつらをぶっ斃す」
「斃す……私たちだけで?」
 ごくりとロージーは唾を飲み込んだ。敵は大群だ。あまりに数が多い。たった八人でどこまで戦えるか。いかに楽天家のロージーも無謀な戦いであることを認めないわけにはいかなかった。
「……でも、やるしかありません。あのオークたちを斃す、もしくは引き止めることができればエラガバルス殲滅の手助けになるはずですから」
 微笑んで言い放ったエストレイアであるが、その顔色は紙のように白かった。

 血相を変えてオークたちは殺到していた。だから気がつかなかった。飛翔してくる砲弾に。
「あっ」
 気がついた時は遅かった。砲弾によってばらまかれた炎の嵐がオークを飲み込む。さすがにオークたちはたたらを踏んで立ち止まった。
「足をとめました」
 ナパームミサイルを放ったロージーが叫んだ。
「ドローン各機、支援対指定完了……データリンク開始。これより、適切な医療及び薬剤投与に関する技術・物資支援を行う」
 リティはドローンを放った。彼女が操るドローンには医療支援能力がある。
 そのリティの顔はあくまで冷徹。が、彼女は機械じみた正確無比の頭脳ははじきださしている。生き残る確率は九パーセントであると。
「ボクが一番たくさんやっつけてみせるのだ!」
「さぁ、死にてぇ奴からかかってきなぁぁ!」
 蓮とジェノバイドがオークに襲いかかった。疾風と化して一気に間合いを詰める。
 蓮の腰から白光が噴出した。抜き打ちの一閃はオークの首を刎ねている。
 ジェノバイドの一撃は紅蓮の炎を舞わせた。ルーンアックス――閻魔村雨がオークの顔面を粉砕する。
「殺せ!」
 怒号はどのオークの発したものであったか。
 オークの触手が鞭のように唸った。素早く身じろぎし、蓮とジェノバイドが躱す。が、数が多い。躱しきれるものではなかった。
 ビシッ。
 触手が打った。それは鋼の鞭の威力を秘めている。
「うっ」
「くっ」
 呻いたのは晴香とジェノバイドであった。蓮を晴香は庇ったのであるが、肉が爆ぜたように裂けている。
「晴香姉ちゃん!」
「大丈夫。注意をそらさないで」
 顔色を変える蓮にむかって晴香が叫んだ。が、遅かった。蓮の首に触手が巻きつく。
「放つは雷槍、全てを貫け!」
 稲妻が疾った。リナの刺突である。一億ボルトの紫電の幻影をからませた槍が蓮をとらえているオークの腹を貫いた。
 触手が緩んだ。そうリナが見てとった時だ。衝撃がリナの背を襲った。
 触手の一撃。リナの背の肉が切り裂かれた。
「ち、治癒を」
 エストレイアがグラビティを発動しようとした。が、気づいた。いつの間にか数体のオークに取り囲まれている。
「よ、寄るなぁ!」
 エストレイアの口から恐怖と嫌悪の滲む絶叫が迸りでた。
「私に触れたら八つ裂きにしてやる! 触れなくても八つ裂きにしてやる!」
 エストレイアの身に装備された砲身の砲口が火を噴いた。吐き出された熱弾がオークを吹き飛ばす。
 瞬間、無数の触手がとんだ。咄嗟にエストレイアが跳び退る。が、逃れることはできなかった。数本の触手がエストレイアのしなやかな肢体にからみつく。
「あっ」
 エストレイアの口からひび割れた声がもれた。触手に締め上げられ、エストレイアの肉体が軋む。
 刹那である。空に光が散り、触手が断ち切られた。槍撃の乱舞である。
「見たか、オークども」
 投擲の姿勢から素早くキーアは身構えた。そして迫った触手を槍ではじいた。いや、はじききれなかった。軌道を変えられた触手がキーアのなめらかな頬を切り裂く。
「くっ」
 キーアの顔に絶望の色が滲んだ。
 個の戦いであるならばオークごときに遅れをとるケルベロスではない。が、オークの数が多い。多すぎる。超人存在であるケルベロスであろうとも、十倍近い数のオークを相手取ることは不可能に近かった。


 キーアの相棒のキキョウから蔓がするするとのび、オークを締め上げた。が、横からうなりとんだ触手が切り裂く。のみならず、他の触手がキーアを打ち据えた。
「回復を」
 リティが魔術的手術を施そうとした。ケルベロスたちはばらばらになっていてヒールドローンは使えない。
 瞬間、リティの息がつまった。首に触手がまきついたのだ。いや、手足にも。
「嬲り殺してやるぞ」
 ニタリとオークが笑った。
「お姉ちゃん!」
 駆け寄ろうとする蓮。が、その前にオークが立ちはだかった。
「どけ。邪魔するな!」
 蓮の日本刀がオークを切り捨てた。が、前には進めない。後ろに控えていたオークが立ちはだかったからだ。そのオークから触手がとぶ。
 と、晴香が飛びついた。蓮を抱えて転がる。
「くそっ」
 晴香と蓮を庇うようにジェノバイドが走り込んだ。閻魔村雨で触手を払う。
「何て数だ。いくら倒してもきりがねえぜ」
 その時だ。爆発が起こった。爆炎から逃れるようにエストレイアが跳び退る。
「ま、負けません。オークはすべて滅ぼします」
 荒い息をつきながらエストレイアがいった。が、疲労で今にも倒れそうだ。
「そうだよ」
 触手を切り捨てつつ、リナが叫んだ。
「まだまだわたしたちはやれる。一緒にかんばろ」
「きゃあ」
 悲鳴が発せられた。ロージーのものだ。触手に手足の自由を奪われ、数体のオークに押し倒されている。
「すぐには殺さねえ。じっくり楽しんでから殺してやる」
 オークが舌なめずりした。
 と――。
 それは突然起こった。空気が変わるというのだろうか。戦場に渦巻いていたどす黒い瘴気のごとき殺気が急速にひいていく。代わって戦場を支配したのは恐慌の鳴動であった。
 オークが逃走し始めた。そのことに気づいたのはエストレイアとリナである。
 二人は同時に動いた。リナは疾走し、リティをとらえていたオークを無数の霊体を憑依させた刃で切り裂く。
 エストレイアは砲身でオークをロックオンした。ロージーをおさえつけているオークだ。轟音ともに撃ちだされた砲弾がオークを粉砕した。
 仲間がやられた。そうと知っても足をとめる勇敢なオークはいない。
「逃がすかよ」
 ジェノバイドはオークを追った。その手にあるは獄と彼の狂血で具現化させた紅紫色の長刀だ。
「てめぇに明日は来ねぇ! 真っ二つにブチ斬ってやらぁ!」
 空を紫光が裂いた。両断されたオークが地に転がる。
「ボクもやるのだ」
「私もよ。オークにプロレスラーの恐ろしさを教えてやる」
 蓮と晴香がオークの群れの中に飛び込んだ。舞う剣光が赤光に変わる。蹴撃が巻き起こした旋風は血風に。
「ひ、ひぃ」
 悲鳴はどのオークがもらしたものであったか。恐怖と混乱は伝染、拡大する。今やオークは逃げ惑う烏合の衆にしかすぎなかった。
「生存確率、九十九パーセントに上昇」
 相変わらず落ち着いた声音で呟くと、リティはヒールドローンを放った。ロージーはミサイルポッドから焼夷弾をばら撒き、オークを焼き払う。
「楽しんで殺すのは私の方です!」
「それは私の台詞よ」
 キーアは背後からオークに襲いかかった。巨槍を背に突き立てる。
「神をも滅ぼす尽きる事のない黒炎…魂の一片すら残さず燃え尽きろっ…!」
 膨大なグラビティをすべてを焼き尽くす漆黒の業火に変換、キーアはオークめがけて解き放った。


 そこは地獄絵図であった。地には累々とオークの骸が転がっている。立っているのは満身創痍、息も絶え絶えのケルベロスたちだけであった。
 もはや彼らに声はない。ただ疲れて座り込んだ。
 まさに獅子奮迅。鬼すら退きかねぬ決死の彼らの戦いがもたらした大戦果が、戦いの帰趨にどれほどの影響をもたらしたか。彼らが知るのは後のことであった。

作者:紫村雪乃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年6月23日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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