ミッション破壊作戦~炎と略奪の精霊たち~

作者:坂本ピエロギ

「皆さん、お疲れさまです。先程、充填を完了したグラディウスの使用許可が下りました」
 ヘリポートに集合したケルベロス達に、イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)が依頼の解説を始めた。
 ケルベロスの任務においてグラディウスを用いるのはただ1つ。強襲型魔空回廊の破壊、それのみだ。
「今回の目標はシャイターンの魔空回廊です。その数は全部で8つ、魔空回廊を保有しているデウスエクス13勢力の中でも最多の勢力です」
 魔空回廊はデウスエクスにとって地球侵略の橋頭保であり戦略上重要な拠点だ。それ故、回廊の周辺は敵の精鋭部隊が常に守りを固めており、通常の方法では破壊はおろか近づく事すら困難である。
「そこで使用するのが、この『グラディウス』です。通常の兵器としては使えないものの、他のどの兵器にもない力――強襲型魔空回廊を破壊する力をグラディウスは持っています」
 そう言ってイマジネイターがヘリオンから降ろしたのは長さ70cm程度の小剣だった。
 この作戦では1人につき1本のグラディウスを所持して、回廊上空から高空降下による強襲を行う。回廊周辺を覆う半径30mほどのドーム状のバリアと、その真下に控えている本陣をグラディウスの力で破壊すること。それがミッション破壊作戦の最終目標だ。
「グラディウスは攻撃時に雷光と爆炎を発生させる機能を持っていて、持ち主の魂の叫びが強いほど、その威力は上昇する。この攻撃で与えたダメージは回廊に蓄積されてゆき、最大でも10回程度の降下作戦を行えば、回廊を破壊することが出来ます」
 雷光や爆炎が着弾すると、かく乱効果のあるスモークが発生し、回廊を守護する精鋭部隊をしばらくの間無力化できる。グラディウス所持者が雷光や爆炎で負傷する事はないので、安心して使用しよう。
 強襲実行後は、スモークに身を隠した迅速な行動が肝要だ。スモークが効いている間は、敵は連携を取って攻撃してくる事はないので、グラディウスを奪取されないよう注意しつつ速やかに撤退することが望ましい。
 ただし回廊内の全ての敵を無力化する事は不可能なので、強力な敵との戦闘は免れない。無茶な戦いを続けるなどして時間を浪費すれば、態勢を整えた敵に包囲される恐れもある。そうなれば作戦は失敗、降伏か暴走して撤退するしか方法はない。
「グラディウスは一度使用すれば全てのグラビティを使い果たすまで止まりません。再充填の完了には三十日程度の時間が必要となるため、頻繁に強襲をかける事は出来ないのです」
 攻撃地点の選択は慎重に行ってくださいね、そう言ってイマジネイターはケルベロス達の方へと向き直る。
「魔空回廊の首魁は強敵ばかり。皆さんの勝利をお祈りします――どうかご武運を!」
 イマジネイターはケルベロスに一礼し、ヘリオンの操縦席へと乗り込んだ。


参加者
テンペスタ・シェイクスピア(究極レプリカントキック・e00991)
八崎・伶(放浪酒人・e06365)
コンスタンツァ・キルシェ(ロリポップガンナー・e07326)
上里・藤(黎明の光を探せ・e27726)
豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077)
津雲・しらべ(さっぱりしました・e35874)
ガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)
カーラ・バハル(ガジェットユーザー・e52477)

■リプレイ

●ミッション9-3「加賀連続復讐事件」
 日本海から吹く湿った夜風を、ヘリオンの羽が切り裂く。
 津雲・しらべ(さっぱりしました・e35874)は眼下に鎮座する強襲型魔空回廊を見下ろしながらグラディウスを握りしめた。シャイターン『復讐屋』が支配するこの地を、今度こそ取り戻すために。
 復讐を代行し、殺した人間をエインヘリアルに生まれ変わらせるという復讐屋。極一部の地球人の歪な願いを叶えている彼に対し、ケルベロスの抱く思いは様々だ。
「復讐自体は否定しないが……デウスエクスは不要な存在だ。故に轢き潰す」
 降下準備を終えたテンペスタ・シェイクスピア(究極レプリカントキック・e00991)は、両の瞳に決意を宿して言った。
 その隣では豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077)が現地の地図をチェックしている。どんな状況でも迅速に撤退できるよう、事前の準備は怠らない。
「よし、行こう……!」
「準備OKっす。必ず勝つっすよ」
 降下ポイント到着を告げる機内アナウンスと共にハッチが開放され、先導のケルベロスが次々と降下してゆく。久々に破壊作戦へ参加する緊張ゆえか、上里・藤(黎明の光を探せ・e27726)の表情はやや固い。
 一方、隣のコンスタンツァ・キルシェ(ロリポップガンナー・e07326)は、黙々と準備を終えた。賞金稼ぎ一族の出である彼女は、復讐屋を明確な抹殺対象と定めているようで、
「ケルベロスのプライドと賞金稼ぎの意地に賭けて、絶対にぶち殺すっす」
 そう言い残して、ハッチから身を躍らせた。
「それじゃ俺も行くとするか。魔空回廊も復讐屋も、叩き潰してやるぜ」
 コンスタンツァに続いて、八崎・伶(放浪酒人・e06365)がボクスドラゴンの『焔』を連れて降下していく。
「よしっ! 頑張るぜ!」
 仲間の背を追うように、カーラ・バハル(ガジェットユーザー・e52477)もまたハッチを飛び降りた。勝って帰る、ただそれだけを胸に抱いて。

●魂の叫びは流星となって
 一番槍で飛び降りたガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)は、グラディウスをひと思いにバリアへ突き刺した。
「赦せないから、邪魔だから殺す……そんなのは、赦されないと思います」
 ガートルードが胸に抱くのは、怒り。
 地球人を食い物にするシャイターンと、そんな彼らに手を貸す同胞への怒りだ。
「罪あらば法で裁く、それが私達のルール。血を流して解決するなんて間違ってます!」
 復讐の名を借りた殺戮は今日でお終いだ。そんな決意と共に、魂の叫びを解き放つ。
「心の闇につけ込み、殺戮を行う外道達。お前等の好きにはさせない!」
 続けて、テンペスタがバリアに斬りつける。
「復讐を否定はしない。それは感情から生まれるエネルギーだからだ。だが、それを他者に委ねた時点でその想いは堕落したっ!!」
 他者に復讐を委ねる。その不純さに怒りを込め、テンペスタのグラディウスが眩い輝きを放ち始めた。空気の弾ける音と共に、刀身がグラビティを帯びた雷を生成する。
「やるなら自分の手でやれっ、刺し違えてでもっ!! 堕落した復讐など、私の地球への愛の前には塵芥同然!!」
 雷光が、降下してきた藤と伶の顔を照らした。二人の戦士はグラディウスを手に、あらん限りの魂の叫びを込める。
「復讐屋とは笑わせるぜ。人の闇に付け込んでおいて、頼んだヤツが悪いたァいい度胸だ」
 伶のグラディウスが赤く明滅しながら、火の玉を次々と吐き出した。それはまるで意思を持つかのように眼下の回廊へ降り注ぎ、回廊のシャイターンを焼き尽くしていった。
「手ェ汚してんのも、攫ってンのもてめェらだろ。ふざけたことしてねぇで、さっさとココから出て行きやがれ!」
「俺は復讐したいほど誰かを憎んだことないから、復讐の是非にはなんも言わないけどさ」
 回廊の奥の深い闇を一点に見据え、藤が口を開く。
「人間の復讐に介入するなよデウスエクス。その復讐は人間のもので、人間だけの都合だ」
 藤は言う。デウスエクスは、シャイターンは地球にとって当事者ではないと。
「お前たちの立ち入っていい領分じゃないんだ! とっとと消えろ復讐屋!」
「気に食わないシャイターンっすねえ。本当に気にくわないっす」
 コンスタンツァの刃が煌めき、バリアを突き刺した。
「アタシは賞金稼ぎ一族、雌カマキリのキルシェファミリーの出。どうしようもない外道の復讐を請け負った事も沢山ある」
 彼女のファミリーに仕事を頼むのは、力のない者ばかり。自らの魂を削って作った金を、涙と共に差し出す。そんな人達だった。
「アンタみたいな外道は許せねっす。人は、アタシ達のソウルは、シャイターンのてのひらで踊らされる程安くない」
 故に、人の弱さに付けこみ利用する悪党は絶対に許せない。
「人間なめんな!! 今度こそ絶対に解放するっす!!」
 炎弾が、雷光が、復讐屋の魔空回廊へと降り注ぐ。焼かれ、打たれ、為す術なく絶命していくシャイターンの精鋭達を見下ろしながら、しらべはグラディウスを力強く差し込んだ。
「私は復讐を否定しない。でも虐殺は否定する」
 しらべの語る言葉は多くない。
 だが、かつて復讐を果たした身として、彼女は断言した。
「無関係な誰かを傷つけるのは復讐じゃない。ただの虐殺だ」
 たとえ代行だとしても、その先にあるのが虐殺なら私は赦さない、認めない。そんな想いを込めて、グラディウスをバリアにねじ込んでゆく。
「身勝手な想いだけで復讐が果たせると思うな! 覚悟の違いを思い知れ!」
 続いて降下してきた姶玖亜は、皮肉な笑みを浮かべながらグラディウスの力を解放する。
「復讐代行とは、ダークヒーローにでもなったつもりかい? だが、人同士のトラブルは人の手で解決させて貰う」
 加賀の地を地球人の手に取り戻す。そこにお前達の居場所はない。
 己が言葉を魂へと換えて、姶玖亜はグラディウスへ力を注ぎ込んだ。
「お前達は今日で廃業さ。何、地獄へ帰る切符代が無いなら――」
 金属のこすれ合うような音を立てて、視界が白く染まってゆく。
 刀身の光が脈打ちながら膨れあがり、そして――。
「現物支給してやろう……鉛玉(コイツ)を」
 衝撃で震える空気に青い髪を弄ばれながら、姶玖亜は今一度、魂の叫びを込める。
「人々の……ボクの願いに応えろ! グラディウス!!」
 グラビティの奔流が一条の光線と化して、回廊の中枢を薙ぎ払った。
 炎と爆発に呑まれる魔空回廊。そこへカーラが、最後の一撃を叩き込む。
「復讐の良いの悪いのとかはよくわかんねエ。やりたい奴を止めたいとも思わねエ」
 皆の力になりたい。復讐屋を倒さねば。カーラは胸の内に渦巻く思いを力ずくで押し固め、残らずグラディウスに注ぎこむ。
 復讐屋を放置すれば、人々の心は疑心暗鬼に陥る。その先に待っているのは、人々が影で殺し合う世界。得をするのはシャイターンだけだ。正義面して人の心を利用する者、それはカーラが最も嫌悪する類いの人種だった。
「復讐できないッて恨みも全部受けてやるから、とっとと消えてなくなっちまえ!」
 一際巨大な爆発のなか、音を立てて崩壊していく魔空回廊。
 バリアを突き破り、必殺キックで突入していくテンペスタの声が夜闇に響く。
「食らえ! 愛と怒りと悲しみのっ!! 究ぅぅう極ぅっ!! レプリカントキック!!」
 この日、復讐屋の強襲型魔空回廊は地上から永久に姿を消した。

●復讐屋との死闘
 役目を終えたグラディウスを各自で携帯すると、ケルベロスは全速力で駆けだした。
 頭に叩き込んだ地図をなぞり、スモークを突っ切り、抵抗する敵を秒殺し、作戦領域離脱の最短ルートを走り続けた。
 そして撤退開始から数分。廃ビルの谷間に差し掛かったところで、周囲を警戒中していた藤が仲間を制止した。
「……皆、気をつけ――」
 言いかけた藤の鼻先を、紅蓮の炎がかすめた。
「帰さねェよ、ケルベロス」
 行く手を塞ぐように現れたのは、フードを被った一人の男。
 全身を覆う包帯の隙間から、ギラついた瞳でケルベロスを睨めつけるシャイターン。
 強襲型魔空回廊の主、『復讐屋』である。
「次の『復讐』相手はよォ……とびきりの上玉だったんだ。可愛がってグラビティ奪って、生まれ変わらせるつもりだったのによォ……」
 復讐屋は小さな笑い声を漏らすと、こぼれんばかりに目を見開いて、
「ありがとよ。全部ぶち壊しだァ!!」
 白い牙をむいて襲いかかってきた。
「問答無用っすか。ま、分かってたっすけど」
「焼かれて死ねや、ケルベロス!」
 掌から放出されたゲヘナの炎が後衛のコンスタンツァを襲う。
「死ぬのはテメェだ、チンピラが。焔、いけ!」
 身代わりの盾となった伶はヒールドローンを飛ばし、サーヴァントに攻撃を命じた。
 ボクスブレスに包まれる復讐屋に、ケルベロスの攻撃が一斉に降り注ぐ。
 テンペスタのダブルスパイラルバンカーが螺旋を描き、復讐屋の両腹を抉る。
 藤の熾炎業炎砲が、コンスタンツァのクイックドロウが、雪崩を打って叩き込まれる。
 うなりをあげて襲いかかる、ガートルードの戦術超鋼拳。
「ハッ! こんなもんかァ、おい!?」
 復讐屋は横へ跳んで、壁を蹴り、熾炎業炎砲と戦術超鋼拳を回避。コートから取り出した蛇を食らい、傷を癒してゆく。
 その隙にカーラもオウガ粒子を散布して前衛を強化し始める。前衛はカーラを含め5名。時間はかかるがやるしかない。負傷とBSの回復は、後列で紙兵を散布するしらべに任せ、自分は仲間の命中強化と盾役に徹するのみだ。
(「攻撃を避けて、回復もするか。持久戦に持ち込まれると厄介だね」)
 スモークが晴れるのは時間の問題。まずは足を封じねばと姶玖亜は判断する。
「だったら……キミひとりで踊ってもらおうかな!」
「ちィッ!」
 姶玖亜のダンシングショットが、傷を塞いだ復讐屋の意識を強制的に足元へ縛り付けた。すぐさま後衛のしらべが放つ殺神ウイルスと焔のボクスタックルが浴びせられ、強化した復讐屋の防御をはぎ取ってゆく。
 追撃で叩き込まれるテンペスタと藤の旋刃脚。電光石火の蹴りが急所を貫くも、体の自由を奪うには至らない。
「おい復讐屋。憎い奴とか殺したい奴とか、そういうンは生きてりゃ誰でもいるだろうよ。なのにテメェはそいつらの背中を押して回ってる訳だ」
 伶の簒奪者の鎌が復讐屋の胴を袈裟に切り裂いた。奪ったグラビティで傷を癒しながら、伶はなおも語り続ける。
 復讐屋は答えない。傷口に包帯を巻きつけ、指先に魔力を込めて攻撃の態勢へと入る。
「判ってんのか? テメェがどれだけ胸糞悪いやつかってコトが」
「ハッ! 何言ってんだケルベロス? 地球人なんざ単なるエサだろうが」
 復讐屋は、肩をすくめてせせら笑う。
「胸糞悪い? エサの気持ちなんざ知るかよ。目の前のご馳走食って何が悪ィ、ああン?」
 コンスタンツァのフォーチュンスターが直撃。包帯を血で染めた復讐屋の下卑た笑い声がビルの谷間で幾重にも反響する。
「感謝しろよケルベロスども? 残飯はテメェらにキッチリ残して――」
 赤い舌を見せ、実にシャイターンらしい笑みを浮かべた瞬間、姶玖亜のクイックドロウが復讐屋の右手を打ち抜いた。
「いいね、どんどん挑発するといいよ。言えば言うだけ、キミの死は無様になる」
 愛銃のセレスティアル・ベルに弾を込め、死神の目で復讐屋を見つめる姶玖亜。
「好きなだけ喚け。そして倒されろ。ボクらに枕元で訴えるお前の被害者に、キミの悲鳴をそっくりそのまま聞かせてあげるよ」
「……俺の手を……何してくれてんだテメェら……」
 復讐屋の顔から笑みが消えた。ガードを解き、無造作にケルベロスへと歩み寄ってくる。
「ガートルードさん!」
「ブッ殺す!!」
 カーラのオウガ粒子を纏ったガートルードが跳び、サンライズブリンガーを振り下ろす。
「これで終わりです!」
 得物砕きの一撃を受けるに任せ、復讐屋は獣の咆哮をあげて飛び掛かった。魔力を帯びた収奪の指先が、ガートルードの脇腹を抉り取る。
「ぐ……っ!」
 傷口を庇うガートルード。復讐屋は、さらなる追撃を加えようとする。
「死んどけや、ケルベロス!」
「させねェよ」
 伶のスパイラルアームが横殴りで発射され、復讐屋の体を貫く。衝撃でビルの壁に叩きつけられた復讐屋は、血を吐きながらも取り出した蛇を喰らい、回復を図ろうとした。
 しかし、姶玖亜のダンシングショットとテンペスタのダブルスパイラルバンカーは、彼にそれを許さない。
「無駄さ。キミには死ぬまで踊ってもらうよ」
「復讐屋! 地球から消え去るがいい!」
「ぐっ、ガハッ」
 肩と脇腹に穴が開き、復讐屋の体から黒い血が噴き出した。それはグラビティを糧にしても回復の望めない致命傷だった。
「クソが……俺は……もっと奪って、殺す! テメェも、テメェも、残らず殺す!!」
「諦めろ。お前はここで終わりだ」
 藤は足下にグラビティを集中。無色透明な風を纏い、台風の力を蹴りに込め、放つ。
「畏れろ」
 藤の必殺技『颶の畏れ』が復讐屋の腹にめり込んだ。包帯と血反吐を撒き散らしながら、復讐屋の体が宙を舞う。
「爆ぜ散れ悪党! GO、ロデオGOっス!」
 コンスタンツァが愛銃に魔力を込め、真っ赤な弾丸を射出。怒り狂う闘牛のオーラを纏う魔法の弾が角を振りかざして突進し、復讐屋の胸を撃ち抜く。
「私の……とっておき……先生がくれた……思い出の魔法……」
 しらべは想いを込めたオウガ粒子でガートルードを回復し、最後の一撃を促した。
「コロネーションさん、お願いね」
「はい」
 コロネーションの左手が、巨大な爪に姿を変えた。
「これ以上誰かが傷付く位なら……存分にみせてやる。この異形の姿を」
 復讐屋に「死」が迫る。ガートルードという名の死が。
「ふざけろ、なんで俺が死ぬんだよ! 畜生おおオオオ! クソが、クソがああああ!!」
 血と反吐をまき散らし、のたうち回る復讐屋。
「恐れ戦け! お前に……明日はない!」
「やめろ……! よせ、く、来るな! く――」
 ガートルードが無造作に左腕をなぎ払う。復讐屋は頭を吹き飛ばされ、断末魔を上げることすら出来ぬまま、その生を終えた。

●終焉
 それから駆けること数分、ケルベロスは無事に作戦領域を離脱した。
「お疲れ様。皆さん、ケガはないっすか?」
「大丈夫。グラディウスも全部無事だ」
 カーラの問いに藤が応えた。
「……終わったっすね」
 強襲型魔空回廊の残骸を遠目に眺めながら、コンスタンツァが呟いた。
 人間の復讐心につけこみ、その命を奪い続けたシャイターン『復讐屋』。
 彼が罪なき人々を毒牙にかけることは、もう永久にないだろう。
「私達も帰還するか。迎えが来たようだからな」
 テンペスタの指さす先に、サーチライトを灯すヘリオンの姿が見えた。

作者:坂本ピエロギ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年6月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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