花は白々と夜に咲く

作者:長針

 大阪・難波。
「……ったく、今日もいいことなかったぜ」
 夜が更けてなお煌々と輝くネオンと楽しげな喧噪。そんな人々で賑わう場所を避けるように、酷く酔っぱらった男性が暗い顔で歩いていた。まだ若い。二十代半ばくらいだろう。だが、目元に深く染み着いたくまと、色つやが失われて久しいボサボサの髪のせいか、ひどく老け込んで見えた。
「こんばんわ」
 かけられた声に男性が後ろを振り返る。言葉を失った。
 ネオンによって希釈され、ぼやけた闇の中ではっきりと浮かび上がる裸身。白く艶やかな曲線を描くその身体は果実のように瑞々しく、僅かばかりの草花によって秘され、彩られている。
 美しい女性だ。致命的なまでに。
「あ、あの、君は?」
 女性は答えず、ただ微笑むだけ。頭の中で危険だとか、怪しいとか警鐘を鳴らす声がわめき立てているが、金縛りにあったかのように身体が動かない。
「わたくしと……一緒になってほしいのです」
 花が恥じらうかのごとく可憐な笑み。それを見て男性は地獄に突き落とされるように首を縦に振っていた。
「まあ……嬉しい!」
 蕾が綻ぶように喜色を浮かべ、女性が顔を近づける。そのまま二つの唇が重ねられ、
「!」
 男性の身体の奥で、『それ』が芽生えた。

「皆さん、本日はご足労いただきありがとうございます」
 一同が到着すると書類を胸に抱えたセリカに折り目正しく迎え入れられた。
「早速ですが本題に入らせていただきます。先の爆殖核爆砕戦の結果、大阪城周辺に抑え込まれていた攻性植物たちが動き出したようなのです。攻性植物たちは大阪で重点的かつ同時多発的に事件を起こすことにより人々を遠ざけ拠点の拡大を目論んでいると見られます。大規模な侵攻ではありませんが、放置すればゲート破壊成功率もじわじわと下がってしまうでしょう」
 セリカが書類をめくる。
「今回の事件はその侵攻の一環で、女性型の攻性植物が深夜の大阪の繁華街に現れ、酔っぱらった男性を誘惑して、攻性植物化させようとしているというものです。被害者の男性は女性に免疫がなく、明らかに怪しい攻性植物の誘惑を振り払うことができません。かと言って事前に被害者を避難させると、ターゲットは別の場所に現れてしまい被害を防ぐことはより困難になります。
 ですが、攻性植物が現れるまでのほんの僅かな間に接触し、誘惑に乗らないように仕向けることができれば男性の安全は確保できるでしょう。幸い……と言っていいかどうかは判りませんが、男性は女性とは縁遠いので効果的なアプローチをとることができればまず事態を有利に進めることができるはずです」
 そこで言葉を切り、セリカは一同の顔を見回した。皆が頷くのを確認して再び口を開く。
「次に戦闘についてです。場所は大阪・難波の繁華街路地裏。相手は女性型の攻性植物『白の純潔の巫女』が一体です。もし男性が魅了されると攻性植物に寄生され、配下として加わりますので注意してください。女性型の攻撃方法は、身体に咲く花を『捕食形態』へと変化させ毒を注入する、蔓草を触手のように伸ばし捕縛する、地面を催眠効果のある自身の花で埋め尽くして浸食するの三つです。寄生された男性の方は、身体から黄金の果実を発生させ、その光で味方を進化させる、身体の一部を発光させ収束した光で破壊光線を放つの二つです。
 女性型は高い攻撃と更に高い敏捷によって厄介なバッドステータスを確実にばらまくトリッキーなアタッカータイプで、男性型の方は防御のみに特化して女性型の損害を抑えることを最優先に動く極端なディフェンダータイプとなります。このため男性への魅了を防ぐことができなければかなり不利な長期戦及び消耗戦になることが予想されます」
 そう言ってセリカは書類を抱え直し、
「今回は戦闘に入る前の行動で状況がかなり変わってきますが、皆さんならきっと上手くやれるはずです。それではご武運を!」
 皆へと向かって敬礼した。


参加者
久遠・翔(銀の輪舞・e00222)
アリス・セカンドカラー(腐敗の魔少女・e01753)
瀬戸・玲子(ヤンデレメイド・e02756)
浦葉・響花(未完の歌姫・e03196)
円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)
田中・レッドキャップ(美貌の食神妖花・e44402)
小野・雪乃(光と共に歩む者・e61713)

■リプレイ

●遭遇の多い路地裏
「なになに……美人局に注意?」
 男性が真面目そうなメイド喫茶の店員っぽい人からそんなチラシを受け取ったのはつい先程のことだった。
「もし、そこの人生に疲れ切った男よ」
 唐突にかけられた声に振り向く。
 暗幕がかけられ、黒い水晶玉がでんと置かれたテーブル、その前にすっぽりと黒いローブを被った人影が座っていたのである。
「あの……あなたは?」
「見ての通り占い師じゃ。ここで会ったのも何かの縁じゃ。今宵は私が無料で占ってやろう」
「は、はあ……」
 雰囲気に呑まれて頷く男性。占い師はおもむろに水晶玉らしき物体に手をかざすと、なんと表面が粘液のように波立ち、いかにも不吉な黒い淀みが浮かび上がる。
「むっどういう事じゃ! お主には凶悪な女難の相が色濃く出ておる」
「じょ、女難? いや、そんなまさかーー」
「これはいかん。これはいかんぞ。用心してすぐに帰るのじゃ! 特にデカ乳の全裸女を見たら即逃げるのじゃ」
「は、はい!」
 男性は思わず背筋を伸ばし、帰り道である路地へと入っていった。しかし、歩いているとだんだん冷静さを取り戻し、
「いや……ないだろ。どんな状況だよ。デカ乳の全裸の女を見かけるって……」
 狐に摘まれたような表情で首を傾げた。
「うわっ!?」
 考え事をしていたせいで周りへ目が行っていなかった男性の身体に誰かがぶつかる。ぶつかった相手は千鳥足気味にたたらを踏み、その場に尻餅をついてしまう。一瞬、さっきの占い師の言葉が頭に過ぎるが相手は女性でもましてや全裸でもなく、同年代くらいの酔った青年だった。
「す、すみません。すみませんっす!」
 涙声で青年が平謝りする。切迫しているが何となく人の良さそうな雰囲気があり、気づけば男性は事情を尋ねていた。
「あの……なにかあったんですか?」
「実はっすね……友人が美人局にあってしまいましてね。最初はそんなのひっかからないだろうってバカにしてたんすよ。でも、美人にお近づきになれたと思ったらあれよあれよという間に……気づいたら写真撮られてエラい額の請求が来て首が回んなくなっちまったんすんよ。うっかり抱き着いた友人なんて家族にも負債を背負わさる始末で……」
「そ、そうなんですか」
 堰を切ったように次々と事情を話す青年に戸惑い半分同情半分で男性が頷く。どうしたものかとオロオロとしていたが、
「それじゃあ、自分は金策しないといけないんでこの辺で失礼させてもらうっす。噂だと色んなタイプの美人局がいるらしいっすから貴方も注意してください。特に際どい格好をしている女性に一緒になってくださいとか言われたら全力で逃げた方がいいっす」
 そう言って青年は腕で涙を拭い、去っていった。
「な、なんだった一体……いや、でも美人局って……」
 呆気にとられながらも考え込む男性。ひょっとしてという思いを表情に過ぎらせながら路地の角を曲がる。
「きゃっ!?」
 またしても誰かとぶつかった。左側からの軽い衝撃とともに、反射的に差し出した腕にぽふんと柔らかい感触が当たる。不思議に思いながら確認すると、女性がこちらに倒れるようによりかかっており、腕の中では半ば押しつぶされた柔らかく大きな膨らみが腕の中でふよふよと形を変えていた。
「わ、わわわっ!?」
「す、すいません」
 涙で瞳を滲ませながら女性がこちらを見上げる。態勢の関係かこちらの右目と向こうの左目がぴたりと合った。魅惑的な茶色の瞳は僅かに濡れて艶やかで、おまけになにか瑞々しく甘い香りに頭がくらくらしてきた。
「ほら、いつまでそうしてるのよ。この人も困ってるじゃない」
「え? い、いえそんなことは……」
 投げかけられた別の声に我を取り戻し、改めてぶつかってきた相手と声の主を確認する。黒い髪の清楚な雰囲気の少女と背の高い快活そうな女性だ。どこかの店のバイトなのか同じ制服を着ていた。
「ごめんなさいね、この子ったらそそっかしくて」
「あの……本当にすみません。わ、わ……あのお怪我はされませんでしたか?」
「い、いや、いいんですよ。大したことないですから」
 謝りながらふとさっきの占い師と青年の言葉が過ぎる。だとしたらまずい。もしこの二人が美人局だったら振りきる自身がない。
「ちょっと失礼するわね」
「わわっ……な、なんですか!?」
 おもむろに女性の手が伸び、そっと身体に触れてきた。優しく繊細なタッチに身体が硬直してしまう。
「ん。怪我はない様ね。後輩が悪かったわ」
 女性はそう言って優しく微笑みかけてきただけだった。
「その……ご迷惑おかけしてすみませんでした。良かったら、これを……」
 差し出されたのは小さなガーベラの花束だった。咄嗟に受け取ると少女は一礼し、そのまま走り去ってしまった。
「ああ、もうあの子ったら。それじゃ、夜道には気をつけるのよ」
 走って行った少女を苦笑混じりに見つめ、女性も軽く手を振りながら追いかけて行った。
「夢、じゃないよな?」
 慌ただしくも甘酸っぱい一時に、男性は自分のほっぺたをつねっていた。痛い。手元に残ったガーベラの花束も消えてなくなったりはしていなかった。つまり今し方の素敵な出会いは現実だったのだ。
「じゃじゃ~ん、お姫様参上!!」
「へっ!?」
 余韻を噛みしめていた男性が、突如として響いた声と降臨した光に頓狂な声を上げる。見ればそこには絵本のお姫様のようなフリフリのフリルで飾られたドレスを着た少女がばっちりとポーズを決めて立っていた。
「な、なにか用かな?」
 雰囲気に呑まれながらも、先程の体験に味をしめた男性は気取った調子で応対する。
「あの~この製品をモニターして欲しいんだ。お願いしても、いい?」
「モニター? モニターかあ……」
 上目づかいに尋ねてくる少女にどぎまぎしつつも、色気のない言葉に男性はあまり乗り気にはなれなかった。男性は首を横に振りながら口を開こうとしたが、
「これはね、そのままの姿を写すグラスなんだ。お兄さんは、私のそのままの、ありのままの姿を見たくない?」
「え……?」
 あどけなさの残る、しかしどこかコケティッシュな色香の匂い立つ少女の仕草に背徳的な欲望が鎌首をもたげた、その一瞬。
「それじゃ、モニターよろしく♪」
 少女はゴーグルのようなデバイスを男性に装着するや、脱兎の勢いでその場を去って行った。
「えっ? ちょ、ちょっと!」
 デバイスを着けたまま周囲を見回すが、すでに少女の影も形もない。どうしたものかとそのままの状態で頭をかく。そして、
「こんばんわ」
 一体今度は何だと、期待と疑念を等分に男性が声のした方へと向き直りーー言葉を失った。
「……!」
 そこにはおどろおどろしい、それこそゲームで量産されるようなチープながらも嫌悪をもよおすゾンビとしか形容できない物体が立っているではないか!
「どうしたのですか?」
「う、うわあ!?」
 気遣わしげな声ですり寄ってくるゾンビへ男性が無茶苦茶に腕を振る。その拍子に眼鏡のように装着されたデバイスが外れ落ちる。すると先程まで見えていたゾンビは跡形もなく消えており、代わりに花や草木で果実のような身体を隠し、飾った全裸に近い格好の妖しい女性が立っていた。
「わたくしと……一緒になってくれませんか?」
 花が恥じらうかのごとく可憐な笑み。しかし、男性の目にはもはやそれが姿通りのものには見えなかった。それどころかそれまでに見聞きしたことが頭の中で一斉に蘇り、警報が鳴り響く。しかし身体は動かず、女性の顔がどんどん近づいてくる。
「ちょーっと待ったー!」
 割り込んできた声にはっと我に返る。そこへ黒猫が飛び込んできて、男性はその場で尻餅をついてしまう。
「あなたの企みは、ここまで」
 黒猫ーー円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)はトンボを切ると元の少女の姿に戻り、金色の瞳を目の前の攻性植物へと静かに向ける。それを皮切りに様々な容姿の人々が路地の影から飛び込んできたが、なんとそのほとんどが見覚えのある顔だった。
「な、なにが、どうなって……わあ!?」
 混乱する男性の身体が持ち上げられる。
「あんなおいしそうなお姉さんを前にこの場を離れないといけないなんて……! 焦る! 焦れる! 焦がれる! でも、それがいい!!」
 そんな悔しそうな、嬉しそうな叫びとともに男性を米俵のように抱え、田中・レッドキャップ(美貌の食神妖花・e44402)の声が路地裏に朗々とこだましながら遠ざかりつつあった。
「あら、逃がしませんわよ」
 すかさず攻性植物が蔓を伸ばす。だが、その射線を人影が塞いだ。
「男性に追いすがるのもいいけれど、しつこいのは嫌われるわよ?」
 蔓を受け止めたエディス・ポランスキー(銀鎖・e19178)がにっと笑う。同時にキープアウトテープが張り巡らされ、完全にこの場を隔離した。
「これで準備万端。覚悟はいい?」
 言いながら、瀬戸・玲子(ヤンデレメイド・e02756)が眼鏡を外す。同時に小さな山羊角と蝙蝠羽、尻尾がそれぞれの部位から姿を現した。
 攻性植物はきょとんとした顔で一同を見ていたが、
「まあ、こんなにお友達がいらっしゃるなんて……嬉しいですわ」
 婉然と微笑み、身体から生えた植物の蔓をぞわりと伸ばした。

●乱痴気騒ぎの夜
 戦場はエラいことになっていた。
「そーれ、れっつ触手ぷれい♪ からの~揉むべし! 揉むべし! 少しは私にもよこせー、誤利益にー、誤利益にあやからせろー!」
 触手状に変化させた尻尾で攻性植物の身体を絡め取り、快楽エネルギーを流し込むや、すかさずその大きな胸を揉みしだいたのはアリス・セカンドカラー(腐敗の魔少女・e01753)だ。無邪気に楽しむようでありながら、時に愛撫するように、時に大胆に攻性植物を巧みに攻めていた。
「あん、痛い……でも、いい」
 痛みを訴えつつもうっとりとした表情で攻性植物が身悶えする。そこへ絶好の機会と言わんばかりにレッドキャップが躍り掛かる。
「さぁ、侵し愛って冒し愛って犯し愛って、殺し愛ましょう? ボクは、あなたが欲しいーーああ、愛しています。喰べてしまいたいほどに!」
 恍惚の絶頂を味わうように顔をとろけさせたレッドキャップは身体から放った快楽エネルギーで攻性植物を捕らえ、たわわな果実を獣のように蹂躙した。
「ああ……嬉しい! だからお礼を上げるわ!」
 攻性植物はますます快楽に顔を歪め、白い花と緑の蔓を二人に向かって巻き付ける。結果、それぞれが溶けそうなほど密着し、どさくさに紛れて互いの身体を貪り合った。
「ーー漂うモノ達よ……我の元に集い皆を救え!」
 文字通り膠着しつつあった三者を引き剥がしたのは凛然とした浦葉・響花(未完の歌姫・e03196)の声だった。謎めいた呪文とともに不可視の存在が降臨し、加護を与えたのだ。
 響花は鬼のような目で攻性植物を睨み、
「お礼というならこんなものより、その乳をよこしなさいよ! 植物の分際で生意気なその乳を! 私に! 今すぐ! もしくはデカ乳になる秘訣を! さあ!」
 必死に、それはそれは必死に訴えた。
「ああ、もう何が何だか……ったく、知ってはいたけど、本当に羞恥心の欠片もないわね! 下手なサキュバスよりサキュバスしてるよ、本当っ!」
「同感。前に同じタイプの敵と戦ったことあるけど、格好のはしたなさは共通してる」
 あらゆる意味でカオスな状態に辟易する玲子に、呆れを強く滲ませたキアリが頷く。
「ちょ、ちょっと、このままじゃ、や、ヤバいっす。いろ、色々と! 主に、む、目のやり場がっ!」
 顔を真っ赤にしながら噛み噛みの悲鳴を上げたのは久遠・翔(銀の輪舞・e00222)だ。実際、嬌声やら甘酸っぱい匂いやら絵面やら何もかもヒドい。
「久遠もいっぱいいっぱいみたいだし、あの二人も結構攻撃もらってるし、ここいらでいっちょ仕掛けますか」
 そう言ってエディスはアリスとレッドキャップに向かっていた蔓と花の間に躍り出る。
「もう! 邪魔しないで下さる?」
「そうはいかない。アタシが立ってる限り、貴方の刃は届かせないわ」
 蔓と花の乱舞をエディスが一身に受ける。思いのほか頑健に耐える彼女に、攻性植物が焦れたように接近した、正にその時。
「ーー良く来たわね、此処に!!」
 交差法気味のカウンターで、流れ出た血を纏わせた拳が攻性植物に叩きつけられた。
「今です、皆さん!」
 小野・雪乃(光と共に歩む者・e61713)が叫ぶ。すかさず皆は一斉攻撃の態勢を整えた。その様子を確認してから雪乃は万感を込めるように拳を握り、そして深く息を吸い込んだ。
「ーーーー♪」
 本来のものよりやや落ち着いたテンポと柔らかい声でその歌は歌われた。失われた愛しい想いを捧げる穏やかな旋律は、世界を、仲間を癒していく。それを合図に一同は攻撃を開始した。
「前回の個体はやられそうになったら惨めったらしく命乞いをしてきたけど……あなたもそうなのかしら? 何なら試してみる?」
「ひどいこと言うのね? 本当にひどいわ」
 攻性植物が微笑む。キアリはその反応に僅かに眉をひそめたが、
「残念、どのみち殺すわ。アロン」
 あえて挑発気味に言い放ち、使い魔と同時に攻撃を仕掛ける。蹴り出された星の軌跡と猛犬の剣撃は攻性植物を守る装甲を容赦なく切り裂いた。
「あなたみたいな敵って嫌い! ……どことなく母さん思い浮かべちゃうから」
 複雑な表情で銃を構えたのは玲子だ。マテバ・オートリボルバーの照準を装甲の穴へと合わせる。
「ーー圧縮開始、銃弾形成。神から奪いし叡智、混沌と化して、神を撃て!」
 詠唱とともに目まぐるしく魔導書のページが次々にめくれ、それに呼応するかのようにリボルバーの弾倉が激しく回転する。そして魔導書がパタンと閉じられると同時、弾倉がピタリと止まりーー一発の銃弾が放たれた。
「まあ……痛いわ。赤いわ。きれいだわ。お礼をしないと」
 狙い過たず弾丸に貫かれた攻性植物が流れ出る血をうっとりと見つめながら身体中の植物をざわつかせる。
「させないっすーー全て吹き飛べ!!」
 間髪入れず翔が斬馬刀を構え、ただ単純に刀身の腹をぶち当てる要領で一気に振り抜いた。渾身の一撃は攻性植物の身体を捉え、遙か彼方へと打ち上げる。
「ああ、私は星にーー」
 勢いのせいか攻性植物は台詞を言い終わらぬまま文字通り星となった。それを見送った翔が皆の方へと振り向いたとき、
「「「あー!!」」」
 三者三様の、しかし同音の声が響いた。
「お、おっぱい様……」
「まだ喰べてなかったのに……」
「で、デカ乳の秘訣が……」
 アリス、レッドキャップ、響花が愕然としながら立ち尽くしていた。明らかにまずい空気に一同はいたたまれない顔になる。しかし、三人が大人しくしていたのはここまでだった。
 以降の詳細は伏せるがーー正に乱痴気騒ぎという他なかった。

作者:長針 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年6月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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