こんなにも月がきれいな夜だから

作者:長谷部兼光

●満天の星
 少しばかり、夜風に当たりたくなった。
 文丸・宗樹(シリウスの瞳・e03473)は帳の降りた荒野を歩く。
 街の喧騒から遠く離れ、荒野にあるのはただ、剥き出しの岩稜と静寂か。
 弟分のバジルに促され、空を見上げる。
 天気は快晴。満天の星を阻むものは無く、何より今夜は、ひときわ大きく輝く『それ』が良く見えた。
「ああ、そうか。今日は……」
 不意に、静寂が途切れる。
 聴き慣れているような、初めて聴いたような、ひどく蠱惑的な絃の音。
 音色は次第に宗樹へ近づき、そしてついに、岩陰より現れたその姿は――。
「――アラウディオ?」
 違えるはずも無い。宗樹は懐かしき、盟友を呼んだ。
 だがバジルは対照的に大きく唸り、彼を威嚇する。
 彼を見知ったバジルらしくも無い、おかしな態度。
 ……いいや。
 違う。
 おかしいのは彼の方だ。
 相対したそれには宗樹の良く知る楽天家な気質も、人垂らしの性分も無く。

 なにより、こんな奇麗な『満月』の夜に、彼が外を出歩く筈がない。

 真っ当に此処に立っていること自体が、既に真っ当ではないのだ。
 仮に彼が病を克服したのなら、自分に教えてくれた筈だ。
 けれどもきっとそうじゃない。
 そう、ならなかった。
 だから。経緯はわからないが彼はもう、ウェアライダーとは別種のモノに成ってしまったのだろう。
 唯一の君と似て非なるモノは何も語らず、絃を爪弾く。
 旋律に帯びるグラビティ。
 それを操れるのはケルベロスと、そして。
「……行こう。バジル」
 不意に、あの時彼に契らされた言葉が宗樹の脳裏を過った。

『もし狂っちまったら、お前が俺を殺せ』

●月の下で
 宗樹と連絡が取れない。
 ザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)は集合したケルベロスにそう告げた。
「宿敵達は昼も夜もお構いなしか。だが、奴らの好きにはさせん」
 状況は一刻を争う。すぐにでも救援に向かわねば。
 戦場は荒野。戦闘を遮る様な障害物も見当たらず、人気(ひとけ)も無い。存分に動き回ることが出来るだろう。
 襲撃者の名は奏でる者”アラウディオ”。
 楽器を奏でる事によりサルベージを行う死神で、その音色はケルベロスの精神すら容易く惑わすだろうと王子は警告した。
「下手をすれば同士討ちからの全滅もありうる。対策は、しっかりとな」


参加者
葛籠川・オルン(澆薄たる影月・e03127)
紗神・炯介(白き獣・e09948)
九十九折・かだん(スプリガン・e18614)
清水・湖満(氷雨・e25983)
ジジ・グロット(ドワーフの鎧装騎兵・e33109)
レイラ・ゴルィニシチェ(双宵謡・e37747)
ルナ・ゴルィニシチェ(双弓謡・e37748)

■リプレイ

●絃
 音の色が途切れた。
 夜は再び寂寞をたたえ、そして宗樹の体は地に沈む。
 間違いなく、一つの激闘があったのだ。此処に至るまでの道は決して凡庸では有り得ず、だからこそ天に瞬く星達はただ、その結末を見守る。
 暫しの無。死神は宗樹を一瞥すると絃を爪弾く。物哀しく奏でられるその旋律はきっと、宗樹へ贈る最期のレクイエムなのだろう。
 だが。
「悪いけれど、そうはいかないよ」
「……!」
 不意に聞こえたその声に、死神は振く。そこにあったのは、最早不可避の距離まで迫った星の煌き。
 紗神・炯介(白き獣・e09948)の蹴撃を間近にした死神は、演奏を中断し往なそうとたものの、機動力を奪われて、押し切られる形で後退る。
「君も誰かの――彼の、大切な人だったのかい?」
 幽愁を帯びた声色で、炯介は死神ならぬ『彼』に問う。けれども彼は何も応えず、悪意の向きだけをこちらに変えた。
 彼の身に何があったのか、炯介にはわからない。だが、体の自由が利かないと言うのなら、彼の代わりにやるべきことはただ一つ。
「止めるよ。ここで」
 炯介が死神に一撃浴びせたその隙に、ルナ・ゴルィニシチェ(双弓謡・e37748)は前衛達と共に倒れた宗樹の救護に向かう。
 ルナにとって、宗樹は面識の無い人物だが、救出対象が既知か未知かであるかなど些細な問題で、何より、
「ココロザシ? ってゆーの? ソレ一緒なら仲間でしょ。したら力かすし、どーにかしよってなるんじゃん?」
 仲間を助ける事に何の躊躇いがあるだろう。
 ジジ・グロット(ドワーフの鎧装騎兵・e33109)もルナの言葉に頷くと、宗樹の容体を窺う。
「バジルちゃん、ムッシュー・宗樹、ダイジョブですか?」
 バジルの姿は見当たらない。宗樹自身は傷を負い、気を失ってはいるものの、命に別状はないようだ。
 ジジが胸を撫で降ろし、ルナが宗樹を毛布で包んで抱えた刹那、死神は後衛へ向け絃を弾く。
 ルナはダメージを覚悟するが、しかし九十九折・かだん(スプリガン・e18614)が身を挺し、宗樹とルナへ迫る音波を物理的に遮断する。
「聞こえてる? 助けにきたよ、もー大丈夫」
 レイラ・ゴルィニシチェ(双宵謡・e37747)は宗樹へ呼び掛けながら、オウガメタルを活性化させた。
 輝く粒子が後衛を照らし、催眠と言う名の靄を散らす。だが、未だ幾ばくか絃の影響は残っている。油断は禁物だ。
「チェニャはスナイパーヨロシク。めずらしーポジだけどがんばんだよ? ルナルナ、後はまかせんね。ジャマされないよーにみはっとく」
「おっけ。まかされた。ヴィズはお留守番ね。初ジャマー、キンチョーすんなよ?」
 レイラのボクスドラゴン・チェニャが夜色のブレスを死神にぶつけたと同時、怪力無双を発動したルナは軽々と宗樹を持ち上げ、彼を戦域外へと運ぶ。ルナのボクスドラゴン・ヴィズはその路を塞ぐ形で戦場に留まり、かだんへ光の属性をインストールした。
 かだんを照らすのは、煌々と輝く満月。
 戦場から遥か彼方先より注がれる視線が、彼女の――ウェアライダーの意識を狂わせる。
 緑の瞳孔は完全に開き、吐き出す息もひどく荒い。本来外れるべきではない箍が外れてしまっているのだとかだんの全身全霊が警告するが、理性は既に魅入られていた。
 だからもう、ぶつけるしかない。ぶつかるしかない。
「――……月夜に、血の気を抜けるなら、好都合」
 飢餓の厳冬の恐怖。静寂に萌ゆる森の常闇。死を与え、命を巡らす王の影。その合切を以てかだんは死神を威圧する。死神の両眼に焼きつくのは、獰猛な命の王の相貌か。
「月が綺麗でも、明るい星は見えるんだよね。女神の星ヴィニェーラは言うまでもないけど……戦いの赫い星は、マールスは見えるかな?」
 無数の光が瞬く夜の空。きっとそれらの星も遠巻きに、この戦いを観ているのだろう。命の王の直上、赫う星のカンヴァスに、フィアールカ・ツヴェターエヴァ(赫星拳姫・e15338)は虹を描く。
「スームカ! お願いなの!」
 フェアリーブーツ・Золушкаが死神に直撃したのを見計らい、フィアールカのミミック・スームカは一面に黄金をばら撒いた。
「ムムム、ジャマーで催眠いっぱい……手ごわいムッシューやね」
 難しい表情を浮かべながら、ジジは黄金舞う荒野を駆ける。
 皆で策は練った。後はただ、それを成すのみ。
「うちのこと、捕まえられるっ?」
 右手に鉄塊剣、左手にパイルバンカー、重量級の武器を携えて、ジジはリスの如ぎ身のこなしでヒット&アウェイを繰り返し、死神の視線を奪う。
「ほしたら、うちらディフェンダーが気張って引き付けますよって、皆サン、その隙に集中攻撃、シルブプレーですっ!」
 それではお言葉に甘えて、と、葛籠川・オルン(澆薄たる影月・e03127)は、懐より小型のウィルスカプセルを取り出した。
「哀れと言えばいいのか。せめて、その愉快な楽で盟友を殺す前に間に合い僥倖だ」
 冷淡な口調に密か混淆するのは、同情の念。
 ……かたかたとカプセルが震える。
 いや。震えているのは自身の手指だ。これまで共に冷静沈着を紡いできた指先が、月の光に曝されて、知らずの内に勇んでいた。
 狙いは外さない。オルンが投擲したカプセルは死神にぶつかると奇麗に解け、封入されていたウィルスが死神の躰を侵食する。
「正直、宗樹のことは何も知らへん。でも、害成すデウスエクスは倒さんとあかんの」
 清水・湖満(氷雨・e25983)は薄く巨きな魔法の木の葉を創り出し、前衛を包む。
 湖満もまた生前の『彼』と同様に、音楽が好きだ。
 死神の絃捌きには相応の修練の跡が見て取れ、それはきっと、『彼』が培った技術を肉体ごと間借りしているのだろう。
 これが音楽を愛する者の末路だというのなら、あまりにも惨過ぎる。
「絃(それ)を利用してひとを傷付けるのは、絶対に許さへんわ」
 人として当然の拒絶。だが、死神は応えない。
 スキットルの蓋を開け、煽る。
 冥海の酒が、死神の『怒り』を洗い流した。

●蠱惑
 食い破らんとする程の勢いで下唇を強く噛み、炯介は絃の音色に抗う。『叫び』を上げる程音色に侵されている訳ではなく、未だ強い気概で跳ね除けられる範囲なら、何よりハンマーを振るった方が最善だろう。
(「愛する人がいる。今はもう、いない。その魂を護りたい。だから、」)
 死神は、殺す。
 静かに。激しく。炯介は竜槌・デス・メモリーに死者を弄ぶモノ達への憎悪を籠め、超重の氷撃を死神に見舞った。
 氷気を振り払い、死神は激しく絃をかき鳴らす。ジジは防具を頼りに真正面から音撃を凌ぎ切り、直後、湖満から受け取った魔法の葉と一緒に、勢い良く夜空へ跳びだした。
「お酒で怒り(よい)を覚ますなら、へべれけになるまでアンコールやね!」
 輝きを増した虹を纏う。ジジの小柄な体はそのまま死神にぶつかり、再び彼の目を奪った。
 消えゆくジジの残光をなぞって、かだんは星のカンヴァスに、再び七色のラインを引く。
 かだんが死神の胴に着地した衝撃は、地に伝わって荒野を捲り、土砂が爆ぜる。
 ふと、同病であるオルンの顔が脳裏を掠めた。死神と戦い始めてから、彼とは言葉を交わしていない。月が囃す以上、互いにそんな余裕は無いのだ。
 しかし、敢えて確認しない。彼が自分の面倒も見れない奴とは思わない。かだんはある種の信頼を持って、オルンを気にもかけない事にした。
「オルン……ムリしてない?」
 オルンは自身を気遣うレイラの言葉に応えない。彼女が中衛に敷設したマインの爆発にも無感動で、ただ、強くナイフを握りしめる。
 今の、人の形を取る自分は、普段の獣人姿と比べて、一層神経質かつ情緒不安定だという自覚がある。
 だから応えない。残虐性を帯びた今の状態で、他所に意識を向けて、万が一にも彼女を傷つけたくはない。
「リラ。今はそっと、ね」
 オルンの意を汲んだルナはレイラをそう諭し、ゾディアックソードを操って、前衛の足元に守護星座を描きだす。
「傷を拡げます……嬲る様で、好めませんがね」
 ヴィズとチェニャ、そしてオルンは天地に輝く星座を駆け抜けて肉薄し、死神の体をジグザグに暴き立てる。一人と二匹に増幅された怒りの矛先は前衛達から変わらない。
 フィアールカの足取りは不思議と翼を得たかのように軽やかだ。全ての重力から脱したように地を滑り、夜空をはばたき、『敵』を捉え繰り出した蹴撃は、刃の如く鋭く――。
 がきん、と、重い金属音が耳朶を揺さぶり、フィアールカの目は醒める。
「Жесть!」
 最悪だ、とフィアールカは思わず悪態を付く。『敵』だと思って蹴り抜こうとした相手は、湖満だった。
 不幸中の幸いは、良く周囲の状況を観察していた湖満が咄嗟、左腕で日本刀を抜き放ち、フィアールカの刃脚を相殺した事だろう。
「気にせんで。フィアールカは悪うない」
 確率の問題だ。敵のグラビティの構成上、対策を重ねても一度か二度は催眠にしてやられる事もある。
「前衛には負担を強いるね、ごめんね。頑張って!」
 湖満は右腕の篭手から紙兵を散らし、前衛の守りをさらに固め、スームカが主の代わりに具現化した武装で死神を殴った。
 死神の絃は俄か、不協和音を奏で始める。

●終止符
 ケルベロス達が練った催眠対策はとても優れていた。
 だが一点、前衛達の抱える理破、あるいは頑斬の穴は大きい。積極的に攻撃を受け止めるつもりなら、万事に対応できるよう、穴は塞いでおくべきだった。
 このまま戦況が推移すれば純粋に、音撃の威力で蹴散らされる可能性もあるだろう。
 故に攻め切らなければならない。
 死神が絃を爪弾けば、ジジの体から戦言葉の効能が抜ける。
「逆境! でも! 最後まで諦めへんよ!」
 ジジはパイルの切っ先に凍気を奔らせ、死神目掛けて吶喊する。杭は死神の胸部を貫き、そこから四肢に伸びゆく凍気をオルンが継いだ。
「……あなたは、『あれ』を、真っ直ぐに見れたのですか? 美しいと、思えたのですか?」
 凍てる無音。すべての粒子を停めてしまうように、すべてを無かったことにするように。
「愚問でしたね。死神に訊いても、意味はない、か」
 せめて月に狂う同族として、穏やかな終焉あれかしと。
 絃の音すら氷結せしめる凍えは静かに、確実に……死神を追い詰めた。
「宗樹の代わりに、討ち取らせてもらうよ」
 湖満は刀にしじまを纏わせて、氷の刃を創り出す。
 諸刃の譜、その渾身の一撃が死神の躰を氷瀑の如く凝結させる。
 三種の凍気は器より流れ落ちて地に零れ、荒野は瞬く間に銀盤と化す。
「流れし脚はヴォルガの激流! サラスヴァティー・サーンクツィイ!」
 輝く銀盤、煌く黄金。足技(ダンス)の幕引きにフィギュアを演るのもいいだろう。フィアールカは流麗にリンクを滑り、閃く氷晶と共に怒涛の蹴撃で死神を圧倒した。
「せっかくキレイな音なのに、ココロがないんじゃモッタイナイね。アンタのココロから奏でる音、ちょい聴きたかったな」
「そだね。うちらのデュエット、見せてあげよ、ルナルナ」
 月と宵。双謡が呼び出した二頭の幻竜のブレスは氷界を蒸発させ死神を焼き払い、かだんは躊躇なくその豪炎に飛び込んだ。
「多分だけど、きっと。お前の音色は、人を傷付ける為じゃなくて。狂わせる為じゃなくて。人の笑顔の為に、奏でられてたものなんだろ」
 地を駆ける混沌が煮立ち、二刀のチェーンソーが赤く燃える。
「聴かせてくれよ。聴いてるよ。大丈夫、お前の音色でおかしくなったりしない。私はただの観客だ」
 身体が軋む。後先は考えない。今一度、この身を焦がす地獄(ねつ)が欲しい。
「お前の音色で。おかしくなったり、しない。おかしいとしたら。月のせいだ」
 ブレスの終わり、かだんは唸りを上げるチェーンソーを死神に叩き当て、全力を賭して薙ぎ払う。
 死神を灼く炎は猛り、死神もまたその炎に対抗するように絃を弾く。
 けれど。
「音楽も、その音楽で皆を楽しませる事も、好きだったんだろう。こんな不本意はもう終わりにしよう」
 悪魔の翼に山羊の角。炯介は失われた左目から溢れる地獄を全身に纏わせ、
「――ただ、安らかに」
 彼の魂の救済を願い、天(そら)へと還れる様に――祈る。
 シリウスの如く輝く青白い炎が、死神を焼き尽くした。

●夜に謳う
「……礼を言うぞ、ケルベロス」
 その言葉を発したのが、死神なのか、『彼』なのかケルベロス達には判別がつかない。
 或いは、満月が見せた幻なのかも知れぬ。
「宗樹は俺を殺めず、俺もまた宗樹を殺めなかった。それでいい。それで、よかった」
 アラウディオは語る。殺さずに終わる、そんな『縁』があっても良いだろうと。
 絃が響く。その音色にはもう、敵意は無い。
 アラウディオは初めて真っ当に月を見て――笑む。
 装束を、装飾品を、リュートを、全てを遺し……アラウディオの体だけが消失した。

 戦闘が終わり、手負いの獣と言った状態のかだんは、迷惑をかけまいと仲間達から距離を置く。
 そんな様子を心配したルナは手当をしようとかだんに近付いた。
「今はだめだ。これ以上近づくと……噛むかも」
「ダイジョブ。そしたらヴィズが噛みつき返すから」
 ヴィズは小さな口を大きく開けた。
「なんて、ジョーダン。手や肩が必要だったら貸すよ」
 手を伸ばす。仲間を助ける事に何の躊躇いがあるだろう。
 逡巡の後、かだんはルナの好意に甘える事にした。
 唐突に、チェニャがオルンの視界を塞いだ。これで少しは落ち着いた? と、レイラはオルンに訊く。
「放っておいてください……あなたには、関係のないことだ」
「興奮? 恐怖? 収まらないなら抱き締めたら落ちついたりすんのかな」
「こう?」
 ルナの言葉を受けて、レイラはオルンを抱き締めてみた。
「ああ、もう。どうにも……あなた方には敵いませんね」
 そんな四人の様子をみて、ジジは一人考える。自分に出来る事は無いだろうかと。
 ふと、思いつく。
『できない約束をするな? いいえ、私はいつか月にも行ってみせる』
 ……狂月病が『病』なら、いつか、きっと。

「あの、あの文丸さん、三月ぶりなの。フィアールカです。大丈夫なの……?」
 岩壁に寄りかかり、上体を起こした宗樹をフィアールカは慮る。
「ああ。済まない。もう大丈夫だ」
 周囲を見回す宗樹。そんな彼に、炯介は穏やかな口調で、
「終わったよ」
 一言、そう告げた。
「………そうか」
 あいつの事だ。黄泉の旅路でも気楽にやっているんだろう、と、満天の星々を仰ぎ、宗樹は呟いた。
 そこには一言ではとても言い表せぬ万感の思いが込められているのだろう。

 そして夜は過ぎ行く。
 心を惑わせるあの絃の音も、既にずっと昔の事のように感じられた。
「もしも生まれ変われるのなら、その時は素敵な音楽を聴かせてね」
 湖満の言葉は夜空に解け……きっと、彼まで届くだろう。

作者:長谷部兼光 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年6月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 3
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