●ドラゴンの封印を解く者
竜十字島の鍾乳洞の奥、普段は鍾乳石から滴る雫が水面を打つ音しかしない静謐な空間に、不似合いな電子音がことのほか高く響いた。
タブレットの画面を見つめ、ニタリと笑う眼鏡の女。ドラグナーの竜性破滅願望者・中村・裕美。
「さあ、見つけたわよ。お前達、この場所に向かいドラゴンの封印を解きなさい。そして、ドラゴンに喰われ、その身のグラビティ・チェインを捧げなさい」
竜鱗の肌を持つ異形のドラグナー、ケイオス・ウロボロスは、彼女の言葉に従い、飛び立った。
「全ては、ドラゴン種族の未来の為に……」
●目覚めた金色の竜
水平線から一筋の陽射しが昇ってくるのを孤島は見つめていた。
人が住まなくなって久しい無人島。手つかずの森に覆われた美しい島だった。そこに突如として訪れる異形の来客。四体のケイオス・ウロボロスである。
ケイオス・ウロボロスはしばらく島を徘徊していたかと思いきや、一斉に蝙蝠のような鳴き声をあげた。ドラゴンを復活させるための呪文であるらしい。
大地がむくむくと隆起し、ドラゴンの長い首が持ち上がった。ドラゴンは長く封印されていたために完全なる飢餓状態にあった。理性を喪失した金色の瞳にケイオス・ウロボロスたちを捉えるや否や、獰猛に襲い掛かり、瞬く間に食らい尽くしてしまった。
それでも飢餓はおさまらないらしい。重たそうに大地から身を這いずり出す。
なんと美しい竜だったろうか。いくらか痩せ細っていたとはいえ、全長15メートルほどの堂々たる体格。金色の鱗を持ち、胸には太陽を象った紋章が浮かぶ。巨大な翼の下には、かつてオラトリオを喰らって進化したのかもしれない、さらに一対の天使のごとき翼を持っていた。また、尾には薔薇の蔓が絡まり、ケイオス・ウロボロスを喰らっていくらか生気を取り戻したのか、紅と蒼の大きな薔薇が七輪連なって咲きはじめていた。
夜明けを告げる陽射しが餌を求めて吼える金色の竜を照らしていた。
●ドラゴン討伐作戦概要
「信田・御幸(真白の葛の葉・e43055)さん達が危惧していた、ドラゴンの活動が確認されました。敵は封印されているドラゴンの居場所を探し当て、そのドラゴンの封印を破って戦力化しようとしているようです」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は一呼吸おいて、重たい口調で先をつづけた。
「今回の討伐目標であるドラゴンは、『時空戦竜ゴルティメーデン』。ロウガ・ジェラフィード(金色の戦天使・e04854)さんが妙な胸騒ぎがすると言うので予知してみたところ、この個体に行き当たりました。かつては強大な力を持つドラゴンだったようですが、かなりの飢餓状態な上、理性を喪失し意思疎通も不可能な状態にあります。定命化も始まっているようで、戦闘が長引けば、ドラゴンの戦闘力は弱体化していくので、戦闘開始後10分以上耐えしのべば、勝機が見えてくるのではないでしょうか。ただその10分を耐え切るのも相当な困難を伴うことが予想されます」
万が一にも敗北してドラゴンが人里に降りてくるようなことになれば、大きな被害がでるのは確実となる。
「場所は無人島、時は夜明け前。島には森以外何もなく、ドラゴンは15メートルほどの巨大な体躯、金色で目立つので、発見は容易だと思います。かつてオラトリオを好んで捕食していたのでしょうか? それらしい進化を遂げています。理性を喪失していても、本能からオラトリオを求めているかもしれません。その点は注意する必要がありますね。敵の攻撃も、ドラゴンとしての基礎攻撃の他に、攻性植物のような技も使ってくると予想されます。くれぐれも油断なきよう」
セリカは最後に祈りを込めて告げた。
「ドラゴンを復活させる真意がどこにあるのかはわかりませんが、復活したドラゴンを野放しにしておくことはできません。皆さんの活躍に期待します」
参加者 | |
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メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015) |
八王子・東西南北(ヒキコモゴミニート・e00658) |
ソロ・ドレンテ(胡蝶の夢・e01399) |
ロウガ・ジェラフィード(金色の戦天使・e04854) |
空国・モカ(街を吹き抜ける風・e07709) |
渡羽・数汰(勇者候補生・e15313) |
瀬部・燐太郎(戦場の健啖家・e23218) |
九十九屋・幻(紅雷の戦鬼・e50360) |
●時空戦竜
「まさかこれほどとはな……」
膝をついた空国・モカ(街を吹き抜ける風・e07709)の顔に苦渋の色が浮かんだ。
夜明けの陽射しと共にやってきたケルベロスたちが、そのドラゴンに挑んで、どのくらいの時が経ったのだろう? 二分? 三分は経っていないだろう。しかしもう二時間も三時間も戦っているような気さえする。
時空戦竜ゴルティメーデン。数多のオラトリオを喰らい、時空さえも支配する力を持つと云われた竜。その伝説が嘘か真か、少なくとも、今の飢餓状態にある竜にはかつての力はないはずだった。それなのに、こちらの攻撃が効いている気配はなく、竜が軽く尾を振るだけで前衛は薙ぎ払われてしまう。まるで時の牢獄に閉じ込められて戦い、足掻いているような絶望感さえすでに漂っていた……。
岩に叩きつけられた八王子・東西南北(ヒキコモゴミニート・e00658)は身を起こし、竜を見据えた。
「さすが最強の敵ドラゴン……。少し前のボクなら逃げ出しているところです。だけど、ボクはもう逃げません。ボクはケルベロスだから、皆と一緒に最後まで戦い抜きます……というか、ベッドの下に薄い本を放置したまま逝けません!」
「その気持ち、わかります」
瀬部・燐太郎(戦場の健啖家・e23218)はふっと微笑み、
「薄い本のことも、逃げ出したい気持ちも。私も今回の強敵を前に、少し後悔していたところですが、ケルベロスであるのなら、敵に一矢報いることなく退路につくわけにはいかない!」
「理由はどうあれ、皆、思いは同じということか」
大地に突き刺した剣を支えに、ロウガ・ジェラフィード(金色の戦天使・e04854)は立ち上がった。軽口を叩けるなら、まだケルベロスたちの心の剣は折れてはいない。
「行こう」
ロウガは静かに告げた。
●時の牢獄の中で
「敵は確かに恐ろしく強い……!」
ソロ・ドレンテ(胡蝶の夢・e01399)は眼力を、一部が機械と化した頭脳を用いて、冷静に敵の戦力を分析していた。そこから導き出された答え――現状、ケルベロス達がドラゴンを打ち倒す可能性は限りなく低い。だが。
「予測が未来と同じとは限らない!」
ケルベロス達が連携し、敵が弱体化するまで持ちこたえられたなら、勝機はあるはず。ソロはバスターライフルを構え、凍てつく閃光を放った。
「そうだ、いかに敵が強大とはいえ……」
その呟きとともに渡羽・数汰(勇者候補生・e15313)が刀を構える。圧倒的な敵を前にしても怯むことなく、確実な一撃を狙って。
「くひひ、時空を司る金色竜か。かつてないほどに心が躍るな! 雷光団第一級戦鬼、九十九屋 幻だ。手合わせ願うよ!」
歓喜の笑みをもらし、九十九屋・幻(紅雷の戦鬼・e50360)は愛刀・紅光を手に、跳ねるように竜に踊りかかった。爪による牽制をかいくぐり、幻は竜の頭頂部に蹴りを入れて相手の気を引く。
その隙を数汰は見逃さなかった。相手の懐に飛び込み、鋭い太刀を浴びせる。竜鱗に覆われた敵の皮膚は硬い。それでも胸に一筋の傷が生じた。
間髪入れず、燐太郎が巨大なガトリングガンを腰溜めでぶっ放す!
「『時』が来た。報いを受ける、その時がな!」
時空戦竜の時が尽きるのが先か、燐太郎の放つ弾丸が尽きるのが先か。
煙が噴き上がり、巨大な竜の姿を呑みこんだ。
「このまま押し切れるかもしれない……!」
メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)は祈る。仲間のケアに徹していたメリルディは、長期戦が敵以上にこちら側に過剰な消耗を強いることに気づいていた。
ガトリングガンが弾切れを起こした。肩で息をする燐太郎の顔が曇る。
風が煙を吹き流した後、そこにゴルティメーデンは毅然と佇んでいた。朝日を背に浴びた姿は気高く、とても理性を失っているとは思えない神々しさだった。
金色の竜は天高く咆哮し、天使のごとき翼を大きく広げた。その翼が太陽さながらに光り輝いたとき。
凄まじい光が放たれ、轟音は他のすべての物音を無に、世界の景色を白一色に塗り替えた。まさに時がモノクロに一瞬静止したかのようで、次の瞬間には大地が深く穿たれていた。その余波ともいうべき波動と爆風を受けるだけで、後衛にいたケルベロス達はいとも簡単に吹き飛んでしまう……。
なんとか起き上がったメリルディは、巨木に衝突して項垂れている燐太郎に駆け寄った。
「大丈夫?」
燐太郎は大丈夫というサインを示すが、衝突した際に痛めたのか、あるいはガトリングガンの連射が響いたのか、腰が持ち上がらない様子だった。
「圧倒的だわ。あんなのまともに受けたら、ひとたまりもないわ。でも……」
そのメリルディの呟きを拾うように、ロウガが言葉を継いだ。
「ここで膝を折るわけには行かぬ。今の攻撃を見ても、奴が我らの祖先を喰らったのは間違いない。ならば、奴の始末は末裔である者の定め。我が先達から奪いし時と命、悪用などさせてなるものか……!」
金色の竜の目は、オラトリオであるロウガを追っていた。ロウガは剣を振るい、時を奪う竜から時を稼ぐ。理性を欠いた竜には、後衛にいるメリルディよりも、手近にいるロウガの方が目に付くのか。だが、それはケルベロス達にとっては好都合と言えた。回復役のメリルディを欠いてしまえば、一気に総崩れとなるだろう。
ロウガに気を取られている隙をつき、ケルベロス達は猛攻を仕掛ける。
「お前の存在自体が危険なんだ、人喰いドラゴンよ!」
モカは一筋の風となって迫り、竜の腹に愛用するナイフ・旋風の切っ先を突き立てた。
「竜の時を凪げ、旋風!」
その一撃は確かな傷を竜に刻んだ。少しずつではあるが、竜にダメージは蓄積されているはず。
「危ない、モカ!」
常に戦況に気を配っていたソロは、逸早くモカの足元に忍び寄っている気配を察した。
「何っ?」
竜の尾から伸びた薔薇の蔓が地中を這って忍び寄り、モカを縛り上げた。自由を封じられて宙に吊るされる格好となったモカの身に棘が喰らいこみ、苦しむモカの表情とは似つかわしくない美しい薔薇が咲く。
「ああっ……!」
身悶えることすら許さない薔薇の拘束を、ロウガが断ち切った。しかしその隙を突かれ、竜の尾がロウガを地に激しく叩きつけた。
拘束を断たれ真っ逆さまに墜落するモカ。彼女を抱き留めたのは、幻。
「……すまない」
息も絶え絶えにモカが告げる。
「キミは一旦後ろに下がって、休んできなよ」
「私はまだ……」
「いいから!」
一方、燐太郎も満身創痍の体の東西南北に自分とポジションを交代するようにと声をかけた。
「ボクだって、まだいける……はず!」
「無理するな! 一人が無理したって勝てる相手じゃない! 薄い本残したまま、死ねないんだろう?」
燐太郎はニカっと笑い、親指を立てた。
だが、ポジションチェンジするにも時間は喰う。ましてや一秒一分が無限にも感じられる竜が相手。この僅かで永遠とも思える隙を埋めるのは、中衛の二人、ソロと数汰の双肩にかかっていた。
「私たちが今やられたら、戦線は崩壊必死。わかってるな?」
ソロの問いかけに、数汰は気合を漲らせた。
「上等! ドラゴン相手にどこまでやれるか、存分に試してやるさ!」
数汰は臆することなく、むしろ意気揚々と打って出た。それを迎え撃つべく竜は尾で薙ぎ払おうとするが、数汰の読みが勝つ。身を屈めてかいくぐり、敵の首筋に斬りかかり、さらにはナイフを突き立てる。
そこにカランカランと高下駄の鳴る音が響いたとき。青白い幻想的な蝶が舞う。
「蝶が生み出す世界の中で、偽りの夢と時に溺れてしまえ」
ソロの囁きとともに放たれたいくつもの蝶の羽ばたきが、時を司る竜を翻弄、時を奪っていく。
「ケルス、彼女の傷を癒して」
メリルディが後衛に下がったモカの傷を癒していた。薔薇の棘が食い込んだ傷は予想以上に深い。その傷を押して、モカは立ち上がる。
「あんな化け物を野放しにするわけにはいかない。断じて……! あいつはこの身を犠牲にしてでも、止めなくては……!」
メリルディは小さく首を横に振った。
「ううん、それより大事なことがある。絶対にみんなで無事に帰ること」
●淀み始める時
みんなで帰る――。そんなメリルディのささやかな願いも、遠い夢物語のように思えた。無限の時空の牢獄の中で戦っている。ソロと数汰は、この数十秒の間に、もう半日、一日と戦ったかのような疲労感を覚えていた。二人で戦うのはすでに限界をとっくに超えている。何分経った? いつ敵の弱体化は始まる? そんな時など永遠に来ないのでは?
ソロが薔薇の蔓に捕まる。棘に身悶えるソロを救ったのは、幻。蔓を断ち切り、ソロを庇うように前に立つ。
「二人とも、よく頑張ったよ。今は私に任せて」
「私も手伝おう。どこまで持ちこたえられるかわからないが」
と燐太郎も前に出た。
「ボクだって!」
東西南北はネット上での知識を総動員した自身が考える最高のセクシーポーズを決め、投げキッスとともにハート形のビームを放った。正直、そのセクシーポーズが竜に通じるのかどうかはまったく未知数だが、
「ボクたちはケルベロスだ! 絶対に負けない!」
そう東西南北が力強く言い放った言葉は、皆を鼓舞した。
燐太郎は地獄化して変形した左手を敵へと向け、掌から弾丸を放った。その一撃は反撃の狼煙。幻は敵へと躍りかかった。
ケルベロス達にしつこく纏わりつかれて鬱陶しかったのか、竜は天使の翼を金色に染めた。放たれる閃光にケルベロス達は吹き飛ばされる……が、その一撃には、一発目程の威力はなかった。明らかに竜は弱体化を始めていた。それは時間経過によるものなのか、諦めずに攻撃を重ね続けた末の成果なのか。
いずれにしろ、金色の竜が支配していた戦況は変わりつつあった。
幻は、自身の血を刀に垂らし、刃に雷の気を漲らせた。
「その薔薇の蔓にも一つ咲かせてあげよう、紅く染まった血の花を!」
凄まじい勢いで竜に突っ込んだ幻は、竜に必殺の一撃を打ち込む! これにはさしもの金色竜も苦悶のような呻き声を上げた。
これを好機と見る。
「この瞬間を待っていたんだ!」
数汰は空高く舞い上がり、己の刃に、幻の技にも劣らぬ雷気を宿し、
「その身に刻め、裁きの鉄槌を!」
と気合一閃振り下ろす。
幻、数汰の合わせ技は竜の体に深い傷を刻み込んだ。竜は暴れ、のたうちまわった挙句、断末魔の咆哮のように天高く吼え立てた。これで斃れてくれと願うばかりだったが……。
「まだなのか……」
数汰は激しく息を切らしつつ、唇を噛んだ。
竜の口からはどろどろと血が滴った。竜が負うた傷は確かに深いのだろう。だが、それ以上に飢えている。ケルベロス達の戦いで、先に喰らったケイオス・ウロボロスも消化してしまったか。さっきまでは理性を欠いていたとはいえ、瞳に気高い力があった。今はまさに飢えた獣そのもの。
竜はもう一吼えすると、尾を振るった。その強烈な一撃を喰らった幻は、森の奥に沈み、意識を喪失した。
「これで本当に死にかけているの……?」
ソロの計算は合わなくなっていた。
「そうだとしても、そうでなくとも……」
と東西南北は強い決意を秘めた顔つきでエクスカリバールを構えた。
「ボクはケルベロスだ! ケルベロスになって多くのものを……仲間を得た! これ以上、誰も傷つけさせはしない! ドラゴン怖くて、ケルベロスが務まるか!」
うおおおおおぉぉと叫びながら敵に突っ込み、玉砕覚悟でエクスカリバールで鱗を抉る。
「離れろ、東西南北!」
モカが叫ぶ。
「嫌だ、ボクは逃げない!」
竜が自身の体を揺さぶり、東西南北は振り飛ばされた。
刹那、竜の翼は三度光り輝く。
すべてを滅ぼす閃光が辺り一面にばら撒かれ、その閃光に東西南北は呑まれた。
「……ボクは逃げなかったよ」
吹き飛ばされた東西南北は力なく大地を転がった。メリルディが駆け寄り、彼の上半身を抱き上げる。
「東西南北! クッソオォオオ!」
燐太郎はガトリングガンを撃ちまくった。まるで悲鳴のようにガトリングガンは弾を吐く。
爆風去りし後、竜の首がぐらりと垂れ下がった。しかし地に墜ちるまでは届かなかった。竜は再び首を持ち上げ、鋭い牙の突き出た口から、だらりと涎を垂らした。そして尾で燐太郎を薙ぎ払う。
「届き得ないのか、私達じゃ……」
モカが悲痛に唇を噛んだ。
●金色の竜と天使
「敵の消耗具合をどう見る?」
モカが尋ねると、ソロは暗い顔をした。
「相当深手を負っているはず。おそらくもう一撃か二撃、渾身の力で打ち込めば……」
今、立っているのは、数汰とメリルディを合わせて四人。それも皆満身創痍。
「私だってまだやれるよ……」
森から足を引きずって出てきた幻は、それで精一杯だった、傍に立つ木に寄りかかって再び意識を失った。夢の中でまだ戦っているのか、好戦的な笑みを浮かべて。
モカもソロも同じことを考えていた。撤退、もしくは暴走……。
モカはメリルディを振り返る。メリルディは懸命に東西南北と燐太郎の治療に当たっていた。
みんなで無事に帰ろう。
「そうだったな……」
モカが撤退を考えたとき――。
天使は立ち上がった。そして決意を秘めた眼差しで金色の竜を見上げる。
「奴は……奴を仕留めるのは、オラトリオとしての我が使命」
ロウガは仲間を振り返り、告げた。
「あと一撃、全身全霊の力を奴に加える。もしそれでも無理だったなら、俺を置いてでもいい、撤退してくれ」
ロウガが翼をはばたかせたとき、
「ロウガ!」
メリルディの厳しい声が彼の背中を追いかけた。彼女は言った。
「私もオラトリオ。あなたの気持ちはわかる。だけど、だからこそ、残された者だからこそ、あなたにも言うよ。残された者のことを考えて、と」
ややあってロウガの横顔がふっと微笑み、ありがとうと告げた。
ロウガは翼をはためかせ、太陽へと昇り、剣を高く突き上げた。その剣は、金色の竜が纏うのと同じ霊気を纏っていた。
「我が祖先を喰らいし邪竜ゴルティメーデン! 今こそ我が剣が貴様の時を断ち切ろう!」
太陽から、天使は金色の竜めがけて降下した!
「はああああああああああああああッ!!」
気合一閃、竜の喉元を貫いた剣はそのまま降り、竜の胸に刻まれた紋章にまで達した!
竜は呻き、苦し紛れに爪を振るい、ロウガを空高く弾き飛ばした。
そうした次の瞬間、ゴルティメーデンの尾の薔薇は枯れ、その首は重たく地に横たわった。
「やったのか……?」
数汰が信じられない思いで呟いた。
空の頂から、傷だらけの天使は落ちて来た。ケルベロスたちはよろよろと彼に歩み寄る。
暖かな朝日が細い息をつく天使の寝顔を照らしていた。
「私たちは勝ったんだな……」
モカは思わず天を仰いだ。そこには、金色の朝陽に染まった美しい空が広がっていた。
作者:MILLA |
重傷:八王子・東西南北(ヒキコモゴミニート・e00658) ロウガ・ジェラフィード(金色の戦天使・e04854) 瀬部・燐太郎(名もなき走狗・e23218) 九十九屋・幻(紅雷の戦鬼・e50360) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年6月5日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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