●スライム忍者の受難
「サッサトダセ!」「ニンジャ、ハヤク!」
多数のオーク達に囲まれる一人のくノ一……だが、オーク達は彼女を襲う気配がない。
その理由は『彼女のまとう軟体生物』にある。
「解りましたよ……その代わり、私のスライムもいっぱい活躍させてくださいね?」
「ゲヘヘ……スライム、チカラ、ユウノウ!」
「オマエらニンジャ、チガウ。タップリ使ッテヤル」
下卑た笑い声をあげるオーク達を、くノ一・雷霧は唇を噛み締めながら、その背を見送る……。
――夏と言えばバカンス。バカンスと言えばリゾート、リゾート地では女性達も開放的な姿で夏を楽しむ。
おかげさまで、エスニック調ワンピースやチューブブラを扱う、エキゾチックなブティックも繁忙期だ。
「ホルターネックのワンピで背中オープンにしてみたんだけど……どうかな」
「いいじゃん、柄も南国っぽいし! 旅行先で出会いがあるかもしんないし、オシャレしとかなきゃねー!」
「そ、そうだよね……たまにはいっか」
――その直後。
女性達のかしましく賑わう店舗に渦巻く空間、魔空回廊からオーク達が雪崩れこむ。
「コイツ、クラエ!」
オークの投げつけたスライムは、女性のワンピースをみるみるうちに溶かし、胸元を露わにする。
「きゃああああああああああああああああああああああああああッッ!?」
慌てて試着室へ逃げる女性だが、カーテンすらスライムに溶かされ、かえって追い詰められる形に。
阿鼻叫喚のブティック内でオーク達は次々と女性の痴態を暴き、魔空回廊へ連れ去り始めるのだった――。
「美の追究は全人類の命題。そしてお洒落に水を差す輩は誰であろうと許されない……今回のオーク、特に許し難い手段を用いたわよ」
激おこ案件にオリヴィア・シャゼル(貞淑なヘリオライダー・en0098)、いつもの淑女ぶりも忘れて状況説明を始める。
「オーク達が女性の集まる場を襲撃して、略取する流れはこれまで通りよ。魔空回廊を通じて大多数で連れ去っていく点もね」
従来通りならば、事前に避難させてしまうのも得策ではない。
オリヴィアの予知から外れてしまい、オーク達は別の場所に襲撃して被害は防げなくなるだろう。
「対応はオークが出現してから行なう必要があるのだけど……今回、私が特に許し難いとする理由は『服だけを溶かすスライムを使用する』という悪辣極まりない方法よ!」
スライムの特性は『女性達のまとう衣だけを溶解させる』という。
「そのような方法で恥辱にまみれさせたあげく、あまつさえ拉致しようという姑息な思考。今回ばかりは腹を据えかねたわ。避難が遅れれば女性達にさらなる苦痛を与えてしまう、そうなる前にケルベロスの手で引導を渡しなさい……いいわね?」
オリヴィアの放つ怒気に押され、ケルベロス達も「お、おう……」と曖昧に返す。
店内は試着室と商品を展示するショップスペースで分かれており、試着室側に5名とショップ部分の10名。『合計15名』の女性が店内にいる。
「これに対して、オークは総勢10体。数は少ない方だけど一般市民にとっては脅威的な数よ。おまけにスライムで服を溶かされてしまうから、抵抗しづらい状態にさせられる可能性があり得るわね。肌を晒すのと、裸を晒されるのでは大きく意味が変わるのだから」
幸いなことに『ケルベロスの装備が溶かされることはない』ので、戦闘にあまり支障はでないだろう。
「オークはこの情報を知らないから、皆にもスライムを投げつけてくるでしょうね。装備に張りついて不快になるだけだから、グラビティで乾かしてしまえば問題ないわ。あとは触手で雁字搦めにしたり、乱れ打ちしたり……標準的な攻撃方法をとるわよ」
予知によると、特筆して強力なオークは居ない。
全員で協力しあえば、状況を打破することも難しくないだろう。
「いいこと? 夏といえば男も女もファッショナブルに決めて、一夏のアバンチュールに勤しむ季節。キャミソール一枚でも勝負服になり得るの、溶かして台無しにするなんて言語道断、一挙撃滅!」
ヒートアップするオリヴィアに圧倒されつつ、ケルベロス達はヘリオンに乗り込むのだった。
参加者 | |
---|---|
峰谷・恵(暴力的発育淫魔少女・e04366) |
リーナ・スノーライト(マギアアサシン・e16540) |
不知火・シノン(蒼弾の射手・e26449) |
金剛・吹雪(シスコンスマホ少年・e26762) |
雁・藍奈(ハートビートスタンピード・e31002) |
ユリーカ・ストライカー(蒼撃天使・e36966) |
刻杜・境(融けた龍血結晶・e44790) |
ヴァイドゥーリャ・ヤクシー(煙霞痼疾・e56524) |
●旅行気分を壊す狼藉者
オーク達の襲撃に備え、ケルベロス達は早々に店内へ潜伏していた。
15人の買い物客や店員に混ざり、南国テイストたっぷりな装いを任務の傍らチェックする。
(「これも、胸囲が足りない……!」)
伸縮性の高いチューブブラを手にする峰谷・恵(暴力的発育淫魔少女・e04366)はタグを確認するが最大サイズはエクスプロージョン待ったなし。
わなわな震える横からホルターネックのキャミソールを差し出すのは不知火・シノン(蒼弾の射手・e26449)だ。
「これなら恵さんでも着られそうですけど、デザインはどうでしょう?」
「胸元ざっくり、大人っぽい……いいかもっ」
しかし、シノンの意識はデザインよりも周囲に見える大玉スイカの数々……そして見下ろした胸元のなだらかな渓谷(ソフト表現)
(「「毎日牛乳飲んでるのに、どうしてこんなに差が……ぐぬぬ……」)
えもいえぬ敗北感に唇を噛み締めるが、もう成長は見込めない。世は無情なり。
店内は20~30代の女性が多く、今回のメンバーではヴァイドゥーリャ・ヤクシー(煙霞痼疾・e56524)が最も馴染んでいる。
彼女の名誉のために補足すると、今回のメンバーが10代ばかりで唯一の20代前半というのもあった。
「このバングル良いわね。透かし彫りに……柘榴石かしら?」
試着室の近くにある小物を手に取り、金の腕輪を着けるとルージュで染めた唇に弧を描く。
「水着もいっぱい、ね……」
「これが『トレンド』というのでしょうか? 服飾方面のデータは流動性、変動率が共に高いですね」
リーナ・スノーライト(マギアアサシン・e16540)がクロスオープンタイプのビキニを手に取ると、ユリーカ・ストライカー(蒼撃天使・e36966)も『情報収集』と称し、ワンピース水着に手をつける。
(「ひやぁ、どこもかしこもお姉さんだらけっす……それより避難経路、避難経路……!」)
イシコロエフェクトで辛うじて潜入していた金剛・吹雪(シスコンスマホ少年・e26762)だが、不自然に膨らむスポーツバッグの存在で目立ってしまう気がして、個々に分かれる雁・藍奈(ハートビートスタンピード・e31002)達の間を渡り歩くように一人店内の避難経路を確認していた。
「藍奈、オークってどんな敵なの?」
初めて相対する敵について、制服姿の刻杜・境(融けた龍血結晶・e44790)は藍奈に耳打ちして尋ねる。『女性に子を産ませる』とは聞いていたが――。
「オークはね、新しいオークを増やす為に拉致するんだよ。だから、オークにとって女性は『オークを量産する為の道具』でしかないの……酷い話だよねっ」
拉致されてしまえばどのような扱いを受けるか――皆まで言わずとも、惨たらしい目に遭うことは想像に難くない。
(「…………苗床集め、ってことね。平和的な理由な訳ないか」)
なんにせよ『下衆な相手である』ことに変わりない。
境が眉を顰めたくなるのも無理はないだろう。
リーナ達が潜入して十数分。
なかなか姿を現さないオークにシノンの表情が微かに強張った直後、ショップスペースの片隅に歪みが生じていく。
「ヒャッハー!女ダァーッ!!」
――きゃああああああああああああああああああああああああああああああっ!?
雪崩れ込むように魔空回廊から現れたオーク達。
招かれざる来訪者に多数の悲鳴が上がり、試着室も騒動に気づいた人々が慌てて飛び出してきた。
「おいでなすったね、みんな急いで外に出て!!」
混乱する女性達にヴァイドゥーリャが避難指示を出し、吹雪とユリーカが誘導に走る。
「ハルナ! お姉さん達を守って!!」
「試着室の5名もこちらへ、陽動している間に離脱してください」
外で待機させていたビハインドのハルナを呼び込み、吹雪は最短ルートの中継点から誘導。女性達をなだめながらユリーカも呼び掛ける。
――――さて、10体のオークの前に躍り出た恵達5人は。
「ブタさんこちら、スライム当ててご覧♪」
挑発する恵が自慢のビッグボムを揺らすが、オーク達の反応はというと。
「…………乳クサイ。ガキ、バッカダ」
「欲シイノ、『女』ダケ。ガキ、イラナイ」
微妙。あまりにも微妙。ダシのない味噌汁を飲んだような顔をしている。
――女性を拉致する色情狂たるオークでも『対象外』は存在した。
それは……子を成せるほど、成熟していない女!
つまるところ『お子様に用はない』のだ――小中学生の恵と境、そして実年齢より幼く見えたリーナは琴線にも触れなかった模様。
屈辱極まる評価をよりによってオークから受け、恵の額にビキと青筋が浮かぶ。
「乳臭いガキ、ね…………ふーん……」
「……あんなのに言われると、物凄く腹が立つね……」
リーナと境も想定外の暴言に目が据わっている。よーし、覚悟はできたかクソ雑魚ブタ野郎ども!!?
「乙女心を傷つけて、絶対許さないんだからね!!」
「オレ、アイツで、ガマンする」「ガマン、ヒツヨウ」
散々な言い様のオーク達に藍奈が反論すると、ギリギリ射程範囲だったらしく粘液の塊を投擲し始める。
飛び散る汁が展示された衣服の繊維だけを溶かすが、特殊加工を施したケルベロスの防具は溶かせない。
(「ふふんっ、そんなスライムなんか怖くな――」)
ビチャビチャビチャッッ!!
……溶けないだけで、スライム自体はへばりついてくる。
「ひゃあああああああああああああっ!? ぬるぬる!ぬるぬるが入ってくるーーーーーー!!?」
全身ベショベショにされた藍奈は半泣きしながら、胸の間に入り込むスライムを振り払おうと手足をばたつかせる。
オークの標的にはシノンも含まれていた。
「ウーン……乳ナイ……ケド、まぁイケルか」
「……人が気にしていることを、ずけずけと――――死ね! 薄汚いオークめッ!!」
スライムを振りかぶろうとするオークに向け、シノンが殺意マシマシ飛び膝蹴りを顔面に叩きつける。すかさず引き金に指をかけ、至近距離から容赦なく弾丸を撃ちこんでいく。
人が気にしていることを茶化してはいけない。デリカシーのない奴はフルボッコだZO☆
『苗床にはならない』と判断した境達は始末してしまおうと、背中から伸びる触手を蠢かせ、オーク達は攻撃行動に移る。
「細切れチャーシューより……酷い目に遭わせるから、ね……」
表情には出ないリーナだが『覚悟しやがれ』と、凄む視線と同時に霊刀が桜吹雪と共に走る。
主力と防衛役が入り乱れているせいで、剣閃は狙い通りにいかないと見るや、返す刀でリーナはオークが伸ばす触手を斬り伏せた。
ずぶ濡れにされていく藍奈とシノンを援護しようと、制服が溶けるのも構わず境が飛び込む。
「あなた達には、選り好みする資格もないって教えてあげるよ」
血の池地獄を床一面に広げようと、境は限界までグラビティを注いで注意を引こうと試みた。
「ボクを子供扱いしたこと、絶対後悔させてやるんだから! ――13・59・3713接続」
全身の魔力をフル稼働させ、恵は全身から爽やかな風を巻き起こしパーカーがめくれ上がる。左手の中指に達した淡い光を境達に向け、
「再現、【聖なる風】」
全身にまとわりつく粘液を一気に吹き飛ばし、消散させる。
しかし数で攻め込むオークの関心は、より良い捕獲対象が居れば矛先を容易く変えてしまう。
「イイ女、居タ! アイツ、連レてく!!」
一匹のオークは避難誘導に専念するヴァイドゥーリャに目を付けた。さっそく弱らせようとスライムを投げ飛ばし、
「ハルナ、早く行って!!」
「援護します」
吹雪の声に反応してハルナが、ユリーカが近くの市民への飛沫を防ごうと自らを盾にする。
当のヴァイドゥーリャは不敵な笑みを浮かべ、眼光を鋭くした。
「なに、あたしが好みだって? 冗談はその気色悪いツラと触手だけにしなよ」
慄く女性を急ぎ店外へと送り出し、店内はユリーカ達8人と10体のオークのみとなった。
「イイ女、まだイタ」「ガキ。男。全部イラナイ。イラナイの、ブッ殺セ!」
興奮で鼻息を荒くするオーク達――――しかし、言いたい放題いった結果がどうなるか?
これから身を以て思い知らされることになる――!
●セクハラ撲滅ラッシュ!
「私も拉致対象に認定されたようですね……藍奈さん、今度は私達のターンです」
「うぅぅ……お、女の子のおしゃれを狙うのはおしゃれ泥棒なんだよっ!」
ぬとぬとした感触が残っているのか、半ベソの藍奈は濡れた手裏剣を無作為に投げまくる。刃の嵐をユリーカはくぐり、オウガメタルを変形させた鋼鉄の拳で左ストレートをぶちかます。
ゴギッ! ――首があらぬ方向に曲がったオークは情けない声を上げて消失していく。
鮮やかな連携で仕留める藍奈とユリーカ。
さらに正確無比な狙いでもって、リーナと吹雪も着実に弱らせていた。
「凍えて潰れろっす!」
改造スマートフォンをなんやかんや操作する吹雪の背後から、鋭く尖った氷塊が空間から飛び出してくる。
艦隊砲撃のごとく広域にばらまかれる氷の砲弾は、範囲をカバーするために威力が数段落ちてしまったが、視界をいくらか遮るには充分だった。
「――目覚めよ力……」
氷塊の隙間から飛び出す黒刃が、オークの喉元を突き破って消滅させる。
漆黒の四翼を背負うリーナは瞬きする間に、別の標的めがけ飛びこんでいた。
「黒死に呑まれ、滅びろ……!」
賽の目に傷をつけ、ズタボロにされたオークもまた、悲鳴をあげるより先に滅せられる。
「あなた達、生まれた子供はどうするの?」
「コモド? チガウ、オーク、イッパイ作る。デモ女、メチャクチャにする、ぐちゃぐちゃになる、オモシロイ!!」
境の問いにオークは下卑た笑みを浮かべ、無数の触手で雁字搦めにする。
絞め殺すことに躊躇がないと実感できるほど、全身が軋む音に境も苦悶の表情を浮かべ、
「っ、く……!」
「あーあー聞くに堪えないねぇ!」
スリットの深いチャイナドレス風のケルベロスコートから、ヴァイドゥーリャの回し蹴りが繰り出される。
美脚がオークの脳を激しく揺さぶり、拘束を解かせると拳に生やした黄金の角でヴァイドゥーリャは乱れ打ちでミンチにする。
「鉄拳制裁じゃあ済まさないから、全員ハンバーグにしてまとめて廃棄処分よ」
「蜂の巣がご所望なら私が風穴あけてあげる」
ウイングキャットのレミィが頭上を飛び回り、オークを引きつけている間にシノンが零距離まで瞬時に詰め寄り、
「フォス・ロー・ダー!」
土手っ腹を蹴り上げるのを皮切りに、ライフルとリボルバーの銃撃を、うように浴びせかけ、宣言通りに穴だらけにして葬り去った。
レディの怒りを買って瞬く間に半数に減らされたオークだが、撤退の二文字などないかのように、触手とスライムを手に攻め込む。
「うー……奪ったり押しつけたりするのも嫌だけど、『眼中にない』って言われるのもムカつくんだからね!」
攻撃の手が飛んでこない恵はヴァイドゥーリャに光の盾を飛ばし、境にラブフェロモンを濃縮させたミストを吹きかける。
恵が支援に専念できることもあって、消耗こそすれど、すぐに持ち直すことが出来た。
「襲うのがそんなに好きなら、これでどうっすか!?」
吹雪の改造スマートフォンから電波が発生し、一体のオークが矛先を仲間の元へ――。
「ヒャッハァー?!」
「アバーーーーーーーーーーーーーッ!!」「オデ、女、チガウ!?」
触手の鞭でしばき、陣形が崩れた隙にユリーカ達が一気に攻勢へ打って出る。
「乱れた戦列を崩すことなど、最新鋭機には容易きことです」
光纏う藍奈の突撃に合わせ、ユリーカが経絡に指先を突き込む。
鈍ったと同時に大きく振りかぶった右脚で股間を盛大に蹴り上げ――パキャッ、と何かが砕けた。悶絶するオークは股間を押さえながら霧散する。
……吹雪の顔色が悪い? 少年よ、男の急所は大事にしような!
「さーて、肉団子になりたい奴はまだいるわね?」
「生臭いミートボール、ね……。さっきのお返しは、百倍にして返してあげるから……!」
パキパキと拳を鳴らすヴァイドゥーリャに、返り血で真っ赤に染まるリーナが刃の血を払う。
「挿すのは好きでも刺されるのはどうかな? もっとも、気持ちよくはなれないけど」
「デリカシーの無さの全人類の女性にとって天敵、速やかに排除したほうがいいわよね?」
冷たく吐き捨てる境も両腕の真っ赤な水を蛇のように細く伸ばし、シノンも弾丸の再装填を済ませる――勿論、撃ち込むのは肉片も残さぬよう全弾だ。
「もうギッタンギッタンの、ボッコボコにしちゃうんだからねッッ!!!」
堪りに溜まった鬱憤を晴らすように、恵のファミリアと古代語魔法が炸裂したのを合図に、シノン達の一斉攻撃が始まる。
(「ひえぇぇ……自分も気をつけるようにしないとっすね……」)
援護していた吹雪は、あまりの苛烈さに震え上がっていたとか、いないとか。
●夏の支度はお早めに
店内、そして衣服や雑貨の修復を恵達が終えると、ユリーカは店員にケルベロスカードを差し出した。
「これで本日の売上を補填してください。それと、ミラクルでプリズムなコーデを見立ててもらえないでしょうか」
顧客不在では商売あがったり。そう考えたのは彼女だけではなかった。
「このワンピース、可愛い……水着も、買おうかな……」
「私もなにか買っていきましょうか……出来れば、あまり体型が目立たない服があるといいのですが」
リーナとシノンもなにか買おうかと物色しつつ、ハンガーラックに衣装を戻していく。シノン好みのゆったりしたカットソーも探せば見つかるだろう。
「この複雑な柄……いいわね! 地球って本当に素敵なもので溢れてるわ、うふふっ」
ヴァイドゥーリャもオルテガ柄のワンピースを興味深そうに手に取り、鏡の前でサイズをチェックする。
可愛いもの、綺麗なもの。この星には沢山ありそうだと、ヴァイドゥーリャは楽しげに頬を綻ばせた。
一方、ぐったりする藍奈と買い物中の女性陣に遠慮する吹雪は試着室で休憩中。
「うえぇ、まだぬるぬるしてる気がするよぉ……」
「あの、気休めにしかならないっすけど」
「あ、ありがとう……うぅ」
差し出されたタオルを受け取りながら、藍奈はスライムの入り込んだ胸の谷間にタオルを突っ込む。
「ふぁっ!?」
「藍奈さん、お加減はどうですか?」
そこにやってきたユリーカは店員が選んだキャミソールとマキシ丈スカート姿で覗きこんできた。
前屈みになったことで、ユリーカの深い谷間は吹雪少年の視界にも映り――、
「…………ブフッ」
「ふ、吹雪さーーーーーーーーーーーーーーんんっ!!?」
鼻血の海に沈む少年は、よもや持参したバスタオルを自分で使うことになるとは。
真っ赤に染まるタオルに顔を埋めながら、平常心を取り戻すことに励むのだった。
作者:木乃 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年6月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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