ミッション破壊作戦～機械の遊戯

■リプレイ

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　今回のミッションは、別子銅山跡である。
　ケルベロス達を乗せたヘリオンは、轟音を響かせながら愛媛県の上空を飛んでいる。

　ヘリオンの飛ぶ音に耳を澄ませながら、ソフィア・フィアリス（傲慢なる紅き翼・e16957）は眼下に広がる雲と銅山を眺めている。本来なら東洋のマチュピチュとも言われる歴史遺産がそこにはあるはずだった。
　しかし、魔空回廊の何十メートルものドームがそびえたっている。
　もうすぐ降下突撃の時間である。
「調停者はもういないけど、その跡はケルベロス達が継いでくれたわ。だから、見ててね。彼らのこれからを」
　ソフィアはそう言って、聖骸布のスティールローズを撫でた。
　隣では不知火・梓（酔虎・e00528）が、「やれやれ」と独り言を言っている。
「魂の叫びっつーのは、何度やっても慣れねぇ。なんて言ってもらんねぇかんなぁ。思いの丈をぶつけて、きっちり破壊してやろぅ」
　そんなことを言いながら、梓は立ち上がる。
　突撃前にケルベロス達は集まって、作戦の確認をし、最後の準備を行った。
「うぅん、和さんとシェスさんと一緒のミッション破壊っすか。二人には、もう暴走させたくないっすね。後ろへは抜かせないっす」
　篠・佐久弥（塵塚怪王・e19558）がそう言った。
「かわりに、支援や攻撃はよろしく。頼りにしてるっすよー」
　その後、一人一人で降下口へと向かった。

　天海・矜棲（ランブルフィッシュ海賊団船長・e03027）はドームと銅山を降下口から見下ろしている。突風を受けながら、彼はそのいずこかにいる宿敵へと想いを馳せる。
「お前は宿敵だ、私怨は当然ある。だがそれ以上に、お前の下に広がる岩肌に怒りの炎が燃え上がる！　先人達が築いた産業の痕跡と、長い年月を経て蘇った自然を台無しにした罪は重い！　この地を、お前から必ず取り戻す！」
　熱い魂の叫びを上げると、矜棲は光の小剣グラディウスをストラップで携えて、降下口から飛び降りた。風の中へ。宿敵を目指して。

「この一帯はなぁ、キレンゲショウマっつー黄色くてちっちぇー可愛い花のなぁ、数少ねぇ自生地なんだわ。んな場所にいつまでも居座られんのは、すげー迷惑なんだなぁ。だからなぁ、お前はここでぶっ壊す」
　続いて梓はぶらりと降下口に現れると、言いたい事を言い捨て、長楊枝を吐き捨てると、空へと飛んだ。念のためにグラディウスはストラップをつけてベルトにくくっている。

「美しかった別子銅山。単なる鉱山跡というだけでなく、かつてまちが形成され、かつての人々の息遣いが残っていた、天空のまち。それを無残に破壊しつくしたのは断じて許し難い！　ボクたちの別子銅山を返せー！」
　平・和（平和を愛する脳筋哲学徒・e00547）は、小剣グラディウスを振りかざしながら叫び、その後、風の中に身を躍らせた。

「人々の軌跡が遺っている場所だから、儚く切ない懐かしむようなうつくしさが此処には在る。それを壊したのだから……今度は、貴方が壊れてしまう番なのだわ」
　シャーリィン・ウィスタリア（千夜のアルジャンナ・e02576）は別子銅山の歴史に想いを馳せた。その後、躊躇わずに、グラディウスを抱いてドームへと飛び立った。

「かつて此処には人の営みがあったと聞いた。四季を彩る景色、色とりどりに咲き誇る花々、そしてこの国の産業を支えてきた数多の人々が生きた証が、後世に語り継がねばならん歴史の１ページを破り引き裂いた罪は重いぞ！　我ら地獄の番犬の牙、貴様を欠片残さず噛み砕かん！」
　リィン・シェンファ（蒼き焔纏いし防人・e03506）は、ストラップに手首を通し、グラディウスと自分を繋いで降下口に現れた。目を伏せて戦意を集中する。思考はあくまで冷静に、行動は大胆かつ熱くなれと自分に言い聞かせるのだ。そして、魂の叫びを上げるとともに、空中へ潔く飛んでいく。

「東洋のマチュピチュ。早い処、あんた達ぶっ飛ばして、観光できるようになってほしいもんすよね。ミッションで此処に殴りこむたびに思うんすよ。崩れた石垣、工房、赤レンガ造りを見て、ここが壊れる前はさぞ、楽しめたんだろうって」
　佐久弥の独白には冷たい怒りが感じられた。
「ここから出ていけ、っす」
　佐久弥はグラディウスを真っ直ぐに構えると、空の風の中へと飛び込んだ。

「世界レベルで、貴重な銅山に、なんてこと、するですか！　歴史的な重みまで、めちゃくちゃにしたことは、許せない、です！　早く、出て行って！！」
　シェスティン・オーストレーム（無窮のアスクレピオス・e02527）は、グラディウスを抱いて叫んだ。そうして、ドームへと飛び降りた。

「ここは、観光名所として本来の目的を終えた後もひっそりと続いていた場所。そんな場所をフゼイもジョウチョも理解できないようなあんた達が壊していいような場所じゃあない！　壊れてしまったら完全には戻せないんだから！」
　ソフィアはスティールローズとともに降下口へ現れた。そしてグラディウスとともに、ドームを目指し、空中へ飛び込んで行った。

　ケルベロス達がドームへ突撃を行う。
　彼らがグラディウスとともに、ドームへと降り立つ度に、激しい爆風と爆炎が巻き起こる。網膜を焼き尽くしそうな閃光が迸り、その後には巻き上がる炎と、濛々たるスモークがどこまでも広がっていった。
　爆発と爆炎は八回連続で起こった。
　そして周辺一帯にたなびくスモークの中を、ケルベロス達は走った。

　着地後、ケルベロス達は素早く集まった。手分けをして周囲を警戒しつつ、全員そろったところで、ドームを振り返った。
　小さな爆発はまだ続いていた。だが、厳然と、ドームはそこにそびえたっていた。
　ダメだった－－。
　落胆が、ケルベロス達の間に広がる。だが、落ちこんでいる場合ではない。とにかく速度重視で撤退を行わなければならないのだ。
「何度見ても、この無残な光景には憤りを覚えるね……ぷんすか！　みんな集まったね？よーし、撤退だー！」
　和がそう声をかけた、そのとき……。

「侵入者発見。－－ケルベロス、確認－－」
　その爆風と沸き上がるスモークの中で、機械音声が響き渡った。
　驚き振り返るケルベロス達の前に現れたのは、ダモクレス。
「貴様は！」
　矜棲が声を震わせて叫ぶ。
　現れたのは－－矜棲の宿敵、レイドライバー・ジェノサイドフォーム吼。無感情の紅白の目を持つダモクレス。

　矜棲の宿敵と知り、ケルベロス達は次々に武器を手に取って身構えた。
「出たなー、レイドライバー！　ボク怒ってるんだからね！　壊してやるー！」
　怒り狂う和。
　ドライブ音が響く。
　無言のまま、レイドライバー・ジェノサイドフォーム吼はドライブを回しているようだった。その度に、そのメカの体から白い不気味な炎が燃え上がる。
　ヘルフレイムドライブ。敵を発見したと同時に自分の耐性を高めていく、機械的な動き。

　それを察知すると同時に、ケルベロス達も動いた。
　矜棲は変身ベルトの操舵輪型バックルを回して変身を行った。
「変身！　さあ、錨を上げるぜ！」
　その途端、羅針ドライバー音声が鳴り響く。
『オモカジイッパーイ！　リベル！　ヨーソロー！』
　仲間達は次々に守りを固めていった。
『槍で穿ち、剣で屠れ…大いなる女王の名を以て、戦いの誓を示して。――さあ、夜をはじめましょう』
　夜告げの謳（ファタ・モルガーナ）を使うシャーリィン。
　古の伝承。「大いなる女王」の名を持つ魔女に心を寄せることで一時的にその力を見に下ろす降霊術の謳。戦の女神たるその力で呪術的に仲間の殺傷力を高めていくシャーリィン。
（「親愛なる「魔女」よ、わたくしは貴女の謳になる――」）
　彼女は心の中でそう呟いた。
　彼女のボクスドラゴン、ネフェライラは属性インストールを仲間達に回していく。
「今日こそ決着をつける！」
　矜棲はゾディアックソードを抜くと地面に守護星座を描き、自身と仲間の耐性を高めていった。
「支援、いたします」
　シェスティンは陣形を叫んだ。百戦百識陣によって後列にも敵を打ち破る加護の力が宿る。
『俺は捨てられたモノども率いる敗者達の王。この背を見つめるモノがある限り――再起を誓い、不屈を約さん！！』
　誓約・塵塚怪王（セイヤク・チリヅカカイオウ）を使う佐久弥。
　その祝詞は背にしたモノに、幾たび地に伏せようと再起を行い、不屈を為す姿を見せ続けるという誓約。立ち上がるたびにより誓いは強固となり、強靭になる。
「――泥なんて、っすよ」
　乾いた声で呟く佐久弥。その本質は背の向こうにあるモノを護ろうとする気迫。魂が肉体を凌駕する。
　和は全身を覆うオウガメタルから光の粒子を放出していく。それにより超感覚に目覚めていく仲間達。
「♪On a dark desert highway」
　梓は仲間から数々の加護の力を得ると、精神を研ぎ澄ましてレイドライバー・ジェノサイドフォーム吼を睨み据える。そのアームに対して遠隔の爆破を試みる梓。
　リィンは雷をその日本刀に宿す。雷電を閃かせながら、正しく電光石火の突撃を行うと、刃でレイドライバー・ジェノサイドフォーム吼の装甲を打ち破ろうとした。
『さあ、あなたの罪を数えなさい』
　ジャッジメントレイを行うソフィア。
　収束されたシャイニングレイの力、聖なる光でレイドライバー・ジェノサイドフォーム吼の罪を照射し、直接攻撃していく。
「罪の重さなんてものは裁く側が決めるものなのよ」
　細いソフィアの声は戦闘中に聞こえたかどうか。
　続いて彼女のミミックヒガシバがガブリングを行う。

　力の高められた攻撃を受けたレイドライバー・ジェノサイドフォーム吼は、機械ながらに怯んだようなそぶりを見せた。
　それも一瞬の事、レイドライバー・ジェノサイドフォーム吼は剣のように伸びたアームを伸ばすと、そこに機械の光を宿す。
　メタルメテオール。
　流星のような輝きを持ってレイドライバー・ジェノサイドフォーム吼は矜棲を斬りつけてきた。立て続けの斬撃が矜棲を襲おうとする。
　しかし、その寸前で佐久弥が飛び出、盾の力を得た体で矜棲を庇った。
　それでもこらえきれずに衝撃で吹っ飛ばされる佐久弥。

　その敵の強さに戦慄が走る。
　しかし、躊躇してはいられない。
　シェスティンはピンクの靄で佐久弥を包み込み、瞬時にして治療回復していった。
　続いてシャーリィンが百戦百識陣を行い、前列の力をさらに高めていく。
　ネフェライラは佐久弥に属性インストールを行った。
　立ち直った佐久弥は巨大な鉄塊剣を腕力だけでコントロール。さながら佐久弥の方が振り回されているようにも見えるが、そのまま単純かつ重厚無比の一撃でレイドライバー・ジェノサイドフォーム吼を叩き潰そうとした。
「相手がキャスターじゃなきゃいいだけどね～」
　ソフィアはその鉄塊剣の下をくぐり抜け、縛霊手でレイドライバー・ジェノサイドフォーム吼を殴りつける。瞬間的に蜘蛛の網のように霊力が放射され、敵を捕らえる。
　ヒガシバは愚者の黄金。
　梓は卓抜した技量の一撃をレイドライバー・ジェノサイドフォーム吼に繰り出し、凍結させていった。
「いっくぞー、てややー！」
　和は理力による星型のオーラをフェアリーブーツに宿すと、力いっぱいレイドライバー・ジェノサイドフォーム吼を蹴り上げる。装甲にヒビが入っていくレイドライバー・ジェノサイドフォーム吼。
　矜棲は精神を集中してレイドライバー・ジェノサイドフォーム吼のアームを念じ、遠隔による爆破を試みる。
「……断ち切る！」
　リィンは日本刀に自身の豊富なグラビティを乗せると、渾身の力をこめてレイドライバー・ジェノサイドフォーム吼に叩きつける。そのグラビティの異常な高まりによって、打ち砕かれるレイドライバー・ジェノサイドフォーム吼の加護。

「危険。……危険、認識、敵――」
　機械音声で何事か発しているレイドライバー・ジェノサイドフォーム吼。
　そのアームが剣の形態からフォーメーションがかわっていく。
　それは、「砲撃形態」に……。
　出現した砲口にケルベロス達が息を飲む暇もなく、光のエネルギーが溜められていき、やがて火炎とともにエネルギーは発射された。
　破壊の炎が無差別にケルベロス達を焼き尽くしていく。
　守りを固めていなければあえなく死体が転がっていた事であろう。

「助けられる命は、助けたい、です。医者、ですから」
　シェスティンはライトニングロッドを振りかざすと、前衛達のために雷の壁を構築し、彼らの傷を癒やして耐性を高めていった。
　傷の深い佐久弥は鉄塊剣の内部に「地獄」を注ぎ込み、蹂躙形態に変えると同時に自身を癒やしていく。
「斬り結ぶ　太刀の下こそ　地獄なれ　踏み込みゆかば　後は極楽、ってなぁ」
　梓は雷刃突によりレイドライバー・ジェノサイドフォーム吼に突撃し、その装甲を稲妻の閃きとともに打ち砕いた。
　和は惨殺ナイフを閃かせ、惨劇の鏡像を行い、精神面から攻撃していく。
「壊れてしまいなさい。美しい歴史（とき）を奪うのならば！」
　シャーリィンは手の爪を超硬化し、敵を加護ごと超高速で貫いていった。
　リィンはサイコフォースで精神を研ぎ澄ませると、その力により、レイドライバー・ジェノサイドフォーム吼のアーム部分を破壊した。
「さあ、あなたの罪を数えなさい。数えられないなら、こっちで数えてあげるわよ」
　ソフィアが再びジャッジメントレイを行う。
　罪を照射されることにより、傷口が倍加して力を失っていくレイドライバー・ジェノサイドフォーム吼。
　ヒガシバはガブリング。
『これで決めるぜ！　【羅針ドライバー電子音声：オモカジイッパイイッパーイ！　アンカーストライク！　ヨーソロー！】』
　そして矜棲がアンカーストライクを行った。
　変身ベルトの操舵輪型バックルを目一杯回してグラビティを発動していく。
　グラビティで造り上げた巨大な錨を宿敵に撃ち込み、動きを完封。そしてその錨ごと敵へ跳び蹴りを炸裂させて粉砕した。
　それによりレイドライバー・ジェノサイドフォーム吼は沈黙し、動かなくなった。

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　戦闘は終わった。
　矜棲達は、ミッション参加中のケルベロス達に混ざり、速やかに撤収することにした。
　彼らは山中から市街地……新居浜駅方面へ撤退した。他のケルベロスに依頼して市街地に車を用意してもらい、ミッション参加者が多くいそうな香川県方面を目指していく。
　梓は殿で警戒しつつ、仲間達についていった。
　惜しくもドームを破壊することは出来なかった。
　だが、今日蓄積されたダメージはきっと、後続のケルベロス達の助けになるだろう。
　次は、勝ってみせる。その想いを胸に、ケルベロス達は次の目的へ急ぐ。
　リィンが言った。
「全てを元に戻す事は難しい。それでも私は蒼の防人として生の物語を後世に語り継いで行くと誓う」

作者：柊暮葉	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2018年5月31日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 5／感動した 0／素敵だった 1／キャラが大事にされていた 1
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