狂い咲くヒナギクの群れ

作者:なちゅい

●その植物は花壇に留まらず
 ヒナギクといえば。
 春に花を咲かせる一重咲きの花として知られ、自然に群生しているのも珍しくはないが、園芸植物としても好まれる植物だ。
 基本的な見頃が春なので、今の時期だとやや遅くはある。
 だが、大阪市内のとある小学校ではこの遅い時期にも、花を咲かせたヒナギクが中庭の花壇に見ることができた。
 そこに飛んできた謎の花粉。それらはヒナギクを次々に攻性植物化させてしまう。
 5本が怪物化して人より大きくなったヒナギクは、葉や根をうごめかして獲物を捜し求める。
 丁度、今は午前の授業中だ。周囲の校舎にはたくさんの小学生たちがいた。
 デウスエクスの出現を受け、校内に鳴り響く警報音。
「こっちや、中庭を通らへんよう避難したってや!」
 小学生達は教師の指示に従って避難しようとするが、ヒナギクの攻性植物達は構わずその背から襲い掛かり、幼い命を絶ってしまう。
 攻性植物達は次々に小学生達の命を奪い去り、多数のグラビティ・チェインを得ていくのである……。

 ケルベロス達は新たな事件の情報を求め、ヘリポートへと情報を求めに向かう。
「皆、お疲れ様。来てくれて嬉しいよ」
 彼らを出迎えるのは、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)だ。
 いずれも、このまま臨戦態勢といった状態でやってきてくれているのが彼女にとっては嬉しいようで、笑顔も見せる。
 しかしながら、事件の説明となれば、彼女も表情を引き締めてから口を開く。
「爆殖核爆砕戦の結果、大阪城周辺に抑え込まれていた攻性植物達が動き出しているよ」
 攻性植物達は、大阪市内への攻撃を重点的に始めているようだ。
 おそらく、大阪市内で事件を多数発生させて一般人を避難させ、大阪市内を中心に拠点の拡大を狙っているのだろう。
「大規模な侵攻ではないけれどね。放置すれば、ゲート破壊成功率が『じわじわと下がって』しまうよ」
 それを防ぐ為にも、敵の侵攻を完全に塞ぎ、さらに隙を突いて反攻に転じたい。
 今回の敵に関する予知は、ベルベット・ソルスタイン(身勝手な正義・e44622)の助力を得たとのことだ。
「胞子の影響で、学校の花壇に攻性植物が発生する……と思ったのよ」
 ベルベットが話すとおり、大阪市内の某小学校の中庭にある花壇に咲いていたヒナギクが5本、一度に攻性植物化してしまう。
 このヒナギク達は、一般人を見つけるとすぐ殺そうと動く。
 現場は小学校。被害に遭うのは教師もいるが、そのほとんどが年端も行かぬ小学生だ。
「敵の数も多いから、非常に危険な状態だよ」
 だが、この攻性植物達は別行動することなく固まって動き、戦い始めれば逃走などの行動を行わない。
 これらもあって対処は決して難しくはないが、数で押し寄せる敵は同じ植物から生まれた攻性植物ということもあり、互いに連携も行ってくる。油断は禁物だ。
「ヒナギクの攻性植物は、5体現れるのを確認しているよ」
 リーダーはおらず、いずれの個体も同程度の能力を持つ。
 3体はキャスター、2体はメディックとして行動し、それぞれの布陣ごとにグラビティは異なる。
 キャスター陣は、捕食、光花、蔓触手。
 メディック陣は光花、埋葬、収穫といった形態を使い分けて来るようだ。
「先に説明したおとおり、敵出現場所は大阪市内の某小学校の中庭だね」
 午前中、花壇に植えられたヒナギク5本が攻性植物化し、固まって行動しつつ授業中の生徒、教師の命を狙う。
 ケルベロス達は相手が攻性植物化した直後、現場に駆けつけることが可能だ。
 すぐ、警察、消防も駆けつけるはずなので、そのタイミングで避難誘導を引き継ぐことができる。
 できるかぎり、攻性植物の抑え、討伐に専念したい。
「将来を担う小学生達の命を散らすわけには行かないよ」
 説明の最後に、リーゼリットは犠牲に遭う子供達を慮ってケルベロス達にその救出を願うのだった。


参加者
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)
赤星・緋色(中学生ご当地ヒーロー・e03584)
アウレリア・ノーチェ(夜の指先・e12921)
藍凛・カノン(過ぎし日の回顧・e28635)
シデル・ユーイング(セクハラ撲滅・e31157)
ノルン・ホルダー(黒雷姫・e42445)
ベルベット・ソルスタイン(身勝手な正義・e44622)

■リプレイ

●可愛い花も見る影なく……
 大阪府大阪市内へと降り立つケルベロスは、とり急ぎ現場を目指す。
「あの時の胞子がこんな形で芽吹くとは……ね」
 優雅なドレスに身を包む、ベルベット・ソルスタイン(身勝手な正義・e44622)が呟く。
 彼女は以前、大阪市内某所の市街地で巨大な攻性植物、サキュレント・エンブリオを撃破している。
「この大阪の花粉も、そろそろ何とかしたい所です」
 スーツ姿のシデル・ユーイング(セクハラ撲滅・e31157)は、眼鏡をツイっと吊り上げて。
「それにしても……、子供が多い所を狙うとはまた」
 一行が目指す場所は、小学校だ。
 ぼやぼやしていると、現れる攻性植物達によって小学生達が被害に遭ってしまう。
「小学生を襲うような悪い植物は、さっさと退治するにかぎる」
 ――私達ケルベロスは、攻性植物なんかには負けない。
 黒猫のウェアライダー、ノルン・ホルダー(黒雷姫・e42445)は仲間達に子供達を安心させようと促す。
 すると、ベルベットは瀟洒な仕草で頷く。
「幼く穢れのない美しい命を散らさない為にも、悪い芽は早くに摘み取らなければいけないわ」
 丁度、目的の小学校の校舎が見えてきた。
 ――全校生徒の皆さん、速やかに担任の先生の指示に従って避難を……。
 ケルベロス達は校内放送が鳴り響く敷地内へと駆け込み、攻性植物の姿を直に確認する。
 そこにいたのは、2~3mほどに巨大化した5本のヒナギク達。
 攻性植物化したそれらは人を求め、根や葉を広げて暴れていた。
「白いヒナギクを見ますとー、前のカモミールの時を思い出しますのー」
 微笑を浮かべる、フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)。
 彼女は先日、ハーブ園で同じように攻性植物と対したそうだが、今回は子供達の恐れを払いたいとのこと。
 一般的に、ヒナギクは小さく可愛らしい花を咲かせる植物。
 しかし、目の前のヒナギクはあまりに禍々しく変貌し、子供達のトラウマになりそうな姿をしていた。
「綺麗な花には棘があると言うが……、それとはまた違った意味で危ないのぉ……」
 見た目は飄々とした青年の藍凛・カノン(過ぎし日の回顧・e28635)は年寄り口調でそう語る。
 夜行性のカノンは午前中ということもあって、些か調子が出ない様子だ。
 ふんわりとした赤髪の少女、赤星・緋色(中学生ご当地ヒーロー・e03584)は、ヒナギクが暑さに弱いことを思い出す。
 これから、夏になる。
 元々、ヒナギクは長く花を咲かせることはできなかっただろうが、その結末がこれでは……。
「みんなの大切に育てたのが、最後が攻性植物なのは可哀想だけど」
 その間も、小学生達は叫び声を上げながら、必死に逃げていた。
「此方ケルベロス。デウスエクス出現を確認、交戦中。位置は――」
 アウレリア・ノーチェ(夜の指先・e12921)がアイズフォンを使って学校関係者と、所轄の警察にデウスエクスの出現を報せる間、メンバー達はすぐさま5体の攻性植物の対処へと移る。
 固まって移動する敵が、避難する小学生達の列にでも突っ込もうものなら大惨事だ。
 気付けば、フラッタリーはダブルジャンプを活かし、さながらツバメのごとく相手へと接近していた。
 比較的近い場所を移動する学童、職員を背にするように構えるフラッタリーは、頭に装着したサークレットを展開する。
 額に地獄の炎を燃やす彼女は、金色の瞳を見開いて凶器の笑みを浮かべていた。
 逆側には、緋色が一般人の壁となるよう位置取りをしている。
 その後方では、シデルが眼鏡を煌かせつつ武器を構えていた。
「オレ達はケルベロスだ、この攻性植物達はオレ達が引き受ける。なので、早く避難を!」
 避難に関しては、半裸裸足といった格闘家スタイルで依頼に臨む相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)がほぼ1人で当たる。
「心配いらねえ、先生の指示に従って避難してくれ!」
 隣人力を働かせて呼びかける泰地はアルティメットモードを発動し、学校関係者を励ます。
 その間も、ケルベロス達による攻性植物の抑えは続く。
 前に出たノルンがグラビティを展開しているすぐ後ろ、ベルベットはわずかに表情を陰らせて。
「あなた達も元は美しい花だったでしょうに……」
 暴れ狂うヒナギクの攻性植物。
 ノルンはそれらから一般人を守る為に立ち塞がり、九尾扇を手にして仲間の布陣を見定めるのである。

●数で攻めくる攻性植物に……
 小学校内では、大勢の小学生が列を作って敷地外へと退避していく。
「敵は私達が必ず倒すので、貴方達はマニュアルに従い児童の保護を」
 アウレリアは連絡をとる学校関係者を落ち着かせるに、安定した声音で話す。
「貴方達の職能と練磨を信頼しているわ」
 その言葉に、避難誘導に当たる教師達もかなり勇気付けられていたようだ。
 また、直接の避難には泰地が当たり続けている。
「大丈夫だ、お前らはオレ達が守る!」
「「「たのむで、ケルベロス!!」」」
 泰地の声に小学生達が声を合わせて叫び、ケルベロスの勝利を信じてこの場を離れていく。
 警察隊も駆けつけ、避難はより加速する状況が整いつつあった。

 さて、異形と成り果てたヒナギクの攻性植物の数は5体。
 それらはケルベロス目掛けて蔓触手を絡め、花から光を発射してくる。
「凄く気になる事なんだけど、攻性植物の目ってどこにあるんだろう?」
 不謹慎ながらも、これは確かめる絶好の機会だと感じたノルン。
 他のデウスエクスと同じように死角となりそうな場所を確かめつつ、彼女は天空より解き放った無数の刀剣を敵陣へと降り注がせる。
「元より、学校で大切に育てられていた花じゃろうて」
 状況を考えれば、些か苦しいが。
 カノンは被害拡大前に何とかせねばと、地面に鎖を這わせる。
 描かれた魔法陣は仲間達に盾を張っていく。
 相手の数が多いこともあり、仲間達が耐えることが優先とカノンは考えてグラビティを展開する。
 前線では、フラッタリーが敵の攻撃を受け止めていた。
「まだ足りない、まだまだ足リヌ……」
 徐々にその言葉が狂い、獣じみた動作を見せるフラッタリー。
 腕の「蝶之掌」より巨大光弾を発する彼女は、後方の回復役2体を徐々に痺れさせていく。
 仲間達が相手後方を狙う間、シデルは遊撃役らの牽制に当たり、急加速してから突撃して蹴散らしていた。
「私の前で、自由にはさせませんよ」
 彼女はさらに裂帛の気合を発し、相手にプレッシャーを与える。
 だが、攻性植物の上部に大きく咲いた花は中央から真っ二つに裂け、そいつは口を開いて緋色へと食らい付いてきた。
「合わせるよ!」
 体に毒を流し込まれて顔色を悪くしていた緋色は、ファミリアロッドから炎を発して回復役へと浴びせかけていく。
 立ち回る中、ベルベットは教師や生徒が近づいてこないか気がけながら、相手を見つめて。
「美しさの前にひれ伏しなさい」
 ベルベットの美しさは呪いとなり、威圧した相手の動きを幾分か束縛する。
 例え攻性植物だろうと、逃れる術はない。
 動きを鈍らせた相手の隙を見てリボルバー銃を構えていたのは、通信を終えたアウレリアだ。
 成人男性の姿をしたビハインドと並び立つように仲間の壁役を担っていた彼女は、素早く弾丸を発射する。
 根元を撃ち抜かれた攻性植物はグラビティ・チェインがなくなり、見る影もなく枯れてしまう。
 そこで、避難誘導に当たっていた泰地も駆けつけて。
「敵の狙いは明白だが、今できることはこれしかねえよな」
 おそらく、避難した子供達も固唾を飲んでこの戦いを見守っているはず。醜態をさらすわけにはいかない。
 そう考える泰地はもう1体の回復役目掛け、突き出した『マッスルガントレットL』から螺旋弾を放って相手を威圧する。
 1体倒れた攻性植物達だったが、相手はさほど気にする様子も見せない。
 そいつらは全身を蠢かせ、花や根を大きく変形させて仕掛けてくるのだった。

●確実に個別の撃破を
 ヒナギクの攻性植物はある程度狙いを集中したり、牽制してから攻撃したりなどして連携をとって攻撃を仕掛けてくる。
 その行動範囲は一定であり、大きく突出した攻めを行う様子はない。
 考えなしに散らばって攻めて来る相手よりは、ケルベロスにとって比較的戦いやすい相手ではある。
 カノンが全員をカバーできるように鎖を這わせて魔法陣を描き、ケルベロス達は相手の攻撃に耐える。火力で攻める敵でないことも幸いしていたと言うべきか。
 ケルベロス達はとにかく黄金に輝く果実を生み出す敵を倒そうと、遠距離グラビティで攻めたてる。
 ベルベットがバスターライフルより凍結光線を発射し、相手の体表面を僅かに凍らせると、ノルンは手のひらに集めた雷を相手に向けて。
「ライトニング・スタン」
 放たれた雷は攻性植物の全身を焼き払う。
 もがき苦しむ敵は体力が尽きたのか、へたり込むようにして崩れ落ちてしまった。
 残りは、遊撃を続ける敵3体。
 回復役を失っても、攻性植物達の動きは変わらない。
 相手はヒットアンドアウェイを繰り返し、交互に攻めて来ていた。
 だが、序盤からシデルがそいつらに突撃で足止めし、重力振動波で威圧し続けている。
「そろそろいいかしら」
 少しずつ相手の動きが徐々に鈍ってきていたことを察し、シデルは全員を照準に入れてアームドフォートから無数のレーザーを発して撃ち貫いていく。
 攻性植物も根を蔓触手として襲い掛かり、または直接食らい付いてきていた。
 アウレリアは自身のビハインドと共に仲間を庇うようにして、それらを抑え付ける。
 ビハインドのアルベルトが相手の後ろから現われ、強烈な一撃を見舞う。
 続けてアウレリアが竜鎚から砲弾を発射し、そいつの動きを封じようとした。
 集中攻撃で1体ずつ。確実に倒す為に、泰地も竜鱗重手甲から竜砲弾を発射して相手を怯ませる。
 とはいえ、敵の数の都合もあって、こちらの前線メンバーも疲弊していた。
 カノンはフェアリーブーツを履いた足でステップを踏み、花びらのオーラを降らして広範囲の仲間を癒す。
 さらに、カノンは傷の深い仲間には桃色の霧を展開して、その傷を集中して塞ぐ。
「嗚呼傷ヲ! 更二朱ヲ!! 草花ハ飾ルモノデセU?」
 こちらの回復役が奮闘してくれる間、相手の攻撃を受けるフラッタリーは狂気の視線で相手を睨め付け、猛然と仕掛けていく。
「恨ミ辛三妬mI無苦。唯々渇キ、飢ヱ、欲ス。アァ……ョ!」
 言語すらも狂わせた彼女は発作的に飢餓衝動を内から呼び起こし、黒い地獄の腕で相手の身体を蹂躙する。
「……ヨ! 焚ベヨ!! クbEヨ!! 焔ニ擲テェ――!!!!」
 攻性植物の全身に、傷を刻み込むフラッタリー。
 そいつは全身から体液を流し、急激に萎んでしまう。
 まだ、暴れる敵は残っている。
 緋色は素早く相手の傷の深まり具合から倒すべき敵を見定め、燃え上がる靴で相手の体を蹴りつけた。
 戦場を立ち回りつつノルンはずっと攻性植物の死角を見極めるべく、ワクワクしながら相手を観察していた。
「視覚はないみたいだけど……」
 どうやら意識する方向はあるようで、伸ばす触手を触覚のように使い、こちらの位置などを窺っているらしい。
 だからこそ、仲間に意識が向いていると察したタイミングで、ノルンはドラゴンの幻影を飛ばして相手の体を焼き払おうとする。
「全てを閉ざす極寒の檻……」
 燃え上がる炎に身を焦がす相手の周囲の空気。ベルベットはその熱量を操作して。
「愚かな者を永久の眠りへ導け! 氷結の牢獄(アイシクルジェイル)!」
 超低温にまで冷却してした空気を相手へと吹きつけ、相手を凍結させてしまう。
 氷が残ることはなかったが、それでも相手の動きを止めるには十分。
 さらに、その命までも止められ、攻性植物は身体を硬直させて地面へと倒れていく。
 残る1体も、かなり弱ってきていた。
 序盤から攻め続けていたシデルがここぞと、自身オリジナルのグラビティで仕掛ける。
 これまで立ち回りながら、相手に砲撃、打撃と繰り出してきていたのはこの一撃の為。
「定時でございます」
 シデルはパンプスで強く、攻性植物を蹴りつける。
 その衝撃によって攻性植物たらしめる胞子が爆ぜ飛んだのか、相手は姿を維持できなくなって枯れ果ててしまう。
 戦いが終わってもなおスマートに。
 事も無げに、シデルは眼鏡の縁に手をかけるのである。

●無邪気な子供達と一緒に……
 攻性植物を撃破し、ケルベロス達は戦場跡となった中庭にヒールグラビティを施すこととなる。
「元の形が変わってしまうので、ヒールは苦手なのだけれど……」
 そうは言っても、手作業では難しいほど破壊された歩道などもある。
 やむなく、アウレリアがリボルバー銃から放った榴弾が破壊箇所に着弾すると、その周囲を噴煙が包む。
 それが晴れると、一定の範囲の歩道が幻想交じりに修復していた。
 近場では、緋色が気力を撃ち出して補修に当たる。シデルは手作業で、その手伝いに動いていたようだ。
「これ位のサービス残業はまあ良いでしょう」
 修復の進行具合に、シデルも小さく頷いていた。
 また、緋色が学校関係者に攻性植物討伐完了を報告すると、校内に関係者が戻ってくる。
 学校は休校となったようだが、花壇を気にかけた小学生達が10数名ほど中庭へとやってきた。
 ベルベットもその来訪に気付いて。
「あなた達がちゃんと指示に従って避難してくれたおかげで、私達も安心して戦う事ができたわ。ありがとう」
 そんな感謝を耳にした子供達からもまた、口々にケルベロス達に対する多謝の気持ちが溢れていた。
「私、修復などはー、不器用ですのでー」
 戦いが終わり、普段のおしとやかな見た目に戻ったフラッタリー。
 彼女は破壊跡を撫でるようにして気力を与え、直した花壇を子供達に確認してもらう。
 そのクラスの子供がぽんぽんと縁を叩いて、嬉しそうに微笑む。
 ノルンは彼らと一緒に、花壇の修復を行っていた。
 依頼として、ケルベロス達が小学生達と接する機会は多くないこともあって、ノルンはここぞとお姉さんぶっていた様子。
「根が残っていれば、花は生きているのよ」
 ヒナギクは時期的に厳しいが、それ以外に戦闘の煽りを受けた植物がちらほらとある。
「しっかり手入れして、また咲かせてあげましょう」
 アウレリアの言葉に、子供達から力強い返事が上がる。
「おじん、めっちゃきれいになったなぁ」
「そうじゃのぉ」
 カノンもまた別の小学生と交流しながら、思い出す。
 ヒナギクの花言葉は――、『無邪気』。
「子供達にはぴったりじゃのぉ」
 再び、花壇に咲くヒナギクに目を落とし、カノンは笑って呟くのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年6月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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