白百合が朱に染まるとき

作者:荒井真


 夕焼けが校舎を朱に染める。
 遠くのグラウンドで部活動に励んでいる生徒たちの掛け声が若干、周囲の空気を震わせる。そんな校舎の裏を歩く二人の少女。
 周囲に人の気配は無く、グラウンド以外では教師と若干名の生徒が校舎に残っているだけのようだ。
「ごめんね。結華ちゃん、こんな時間まで、また生徒会の手伝いしてもらって」
「何言ってるの~、そんなの気にしない! 凛ちゃん一人にあの作業量はだめでしょ」
 少女の一人、結華がおっとりした調子で、申し訳なさそうにもうひとりの少女、凛に謝る。だが、彼女は疲れた素振りも見せず、親指をサムズアップさせ、問題ない、と返答する。
 しばらくお互いに無言で、手をつなぎ校舎に向けて歩いていく。言葉をかわさなくても、この人の気配のない二人だけの雰囲気が好きなのだろう。ふたりとも表情は楽しそうだ。
 だが、この日だけは違ったようだ。
「あの、さ……凛ちゃん。実は、その……」
「ん? どうしたの結華ちゃん」
 妙に結華の頬が赤いのは夕日のせいか、それとも違うのか。
「ええっと、その……今度の日曜日、一緒に映画見に行かない?」
「え、私でいいの?」
 コクコクとうなずく結華。
「じゃあ、結華ちゃん、一緒に行こっか!」
 ぱぁっと、表情を破顔させる結華。よほど嬉しかったのだろう、彼女は凛の手をギュッと握る。
 その時だった。
「そこのお嬢ちゃん達、ちょっと頼みがあるのだが」
 やけに低音の効いた男の声が校舎の角から聞こえてきた。誰もいないと思っていた二人は、一瞬身を震わせる。
 その声の主は、ゆらり、と少女たちの眼の前に姿を現す。
 身長はおそらく3メートルは超えているだろう。筋骨隆々、それは少女たちにとってはまさに壁の容易に感じられただろう。
 更に目を引いたのは大小様々な刀剣が腰のベルト、そして背中にも。おそらくは10本以上。
 この異常な状況に危機感を覚えた凛が結華をかばうように立ちふさがる。
「実はよぉ、ちょっとこの剣の試し切りをさせてもらいたいさ、お嬢ちゃんたちでな! ヒャハハハ!!」
 巨躯の男がそう言うが早いか、青い刀剣を両の手に持ち、斬りかかる。
「結華ちゃん! にげ」
 凛の言葉は最後まで紡がれることはなく、その振り下ろされた青い剣は、二人ごと切り裂いた。
「ヒヒヒ……悪くないな……試し切りし放題じゃないか」
 そうして、まだ人の気配がするグラウンドへと歩き出す。少女二人の血で染まった剣をぶら下げながら。


 更科・久遠(サキュバスのヘリオライダー・en0258)は真剣な表情で眼鏡をクイッと、持ち上げる。
 彼女の近くにいた樫木・正彦(牡羊座の人間要塞・e00916)も表情も、いつもの笑みは消え、眼光は鋭く、そして静かに久遠の言葉を待つ。
「緊急事態です。正彦さんが危惧していた通り、郊外の高校で起こるエインヘリアルの虐殺事件が予知されました。このまま放置すれば、最初の被害者である女の子二人だけでなく、学校内に残っている人たちの命も奪われてしまいます。更には恐怖と絶望で、この地球上で活動しているエインヘリアルの定命化が遅れてしまうことが懸念されます。今からその学校に向かえば、二人の女の子、結華さんと凛さんが襲われる直後に間に合うはずですので、急ぎエインヘリアルの撃破をお願いします」
 久遠は正彦、そして集まったケルベロスたちを見回すと説明の続きを始めた。
「敵はエインヘリアル一体、特徴は……そうですね。3メートルを超える身体に無数の剣、さらに使う剣によって、攻撃方法が変わるようですね。緑色の剣は自身の傷を癒やす効果があり、青色の剣はシンプルに斬撃を放つ攻撃です。注意すべきは青と赤の二刀流にしたときの十文字切りです。威力も高く、体の動きを鈍らせる効果もあるようです」
 そこまで言うと、再び眼鏡を持ち上げて、ケルベロスたちに周囲の状況を説明する。
 戦場となる校舎裏はそれなりに広く、邪魔になる障害物や人も少女二人以外にはいないようだ。
 また、からめ手などは使ってくることはないようなので、純粋に力押しとなるだろう。ただ、傷を癒やす力を持っているために、長期戦には注意です、と久遠は付け加えた。
「アスガルドで凶悪犯罪を起こしていたようなエインヘリアルをこのまま放っておくわけにはいきません。絶対に。それに結華さんと凛さんの友情を引き裂くような行為も許せません。皆さん、どうか……よろしくお願いします……!」
 そう頭を下げ、お願いすると久遠はこれから戦いに向かうケルベロスたちを見送った。


参加者
樫木・正彦(牡羊座の人間要塞・e00916)
草火部・あぽろ(超太陽砲・e01028)
ヴィットリオ・ファルコニエーリ(残り火の戦場進行・e02033)
巽・真紀(竜巻ダンサー・e02677)
神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)
ルーチェ・プロキオン(魔法少女ぷりずむルーチェ・e04143)
武田・静流(折れない槍・e36259)
ルドラ・ヴリトラハン(オウガの光輪拳士・e50579)

■リプレイ


 沈みゆく太陽の斜光が、現場へと疾走するケルベロス達と校舎を紅く照らす。
 校舎裏にたどり着くと、そこには二人の少女と三メートルは超えるであろう巨躯の男。彼女たちが凛と結華だろう、そして背中と腰に大量の剣を挿しているのがエインヘリアル。
 問題なく間に合ったようだ。エインヘリアルが青い刀身を振り上げる。
 だが、樫木・正彦(牡羊座の人間要塞・e00916)が、その体型に見合わず誰よりも早く大地を蹴りつけ、宙を舞う。
「命には値段があってね、そう簡単に切り売りはできないんだよ。やろうか?」
 凶刃を振り下ろさんとするエインヘリアルに言い放つと、七色の光を身にまとう急降下蹴りを敵に叩きつける。その一撃は、ゴン、と鈍い音を立てエインヘリアルの後頭部に命中した。
「な、なんだ! お前らは!」
 突然の、しかも予想打にしなかった一撃をもらい、正彦へと意識を向ける。
「そんな細いのより、こっちの方が斬り応えあるだろう」
 更にエインヘリアルへと挑発の言葉を投げつけながら、ちらりと仲間たちの様子をうかがう。呆然としている少女たちへ仲間たちが救助に向かっているのが見える。
 今の所、順調に作戦が進んでいることを確認した正彦はゾディアックソードを水平に構える。
「そんな刃のない武器でこの俺を切れるのか? ヒヒヒ……なら、お前たちでこの刃の試し切りと行こうか!」
 エインヘリアルは、ニヤリと口の端を釣り上げると、その青い刀身を再び振り上げ、少女たちではなく、正彦に振り下ろす。しかし、彼の口元には僅かな笑み。
(「戦闘は怖いけど、命には値段があるんだ。ならば……恐怖心を笑って誤魔化して敵に立ち向かおう」)
 青い刀身が夕日を反射し、ごちゃまぜの色となって、正彦へ一閃するが、その刃は彼に届くことはなかった。
「ぐ……まったく……反撃できない女子供で試し斬りをするぐらいなら、大根を斬っていた方が余程建設的だな」
 神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)が、その巨躯で、エインヘリアルの刃を受け止めたのだ。痛みで顔を少ししかめているが、動けなくなるほどの傷ではない。
「な、なんだとォ……!」
「むん!」
 彼の言葉に怒りの声を上げるエインヘリアルだが、晟は敵の激高を無視し、その岩のような巨躯をフル稼働させた。
 そのまま、全身の強靭な筋肉を練り上げ、手にしたドラゴニックハンマー『蒼竜之錨鎚【溟】』思い切り振り上げる。体重と超重の力を乗せた一撃が、エインヘリアルの脳天を打ち据える。
「ぐおお……い、痛ぇ!」
 この一撃で倒れるほどではなかったが、ダメージはしっかりと与えたようだ。エインヘリアルは痛みに耐えながら、怒りの炎をその瞳に宿らせ、背中と腰に挿している青と赤の剣を取り出し、十文字に重ねる。
「なら、お前にはこれだあ!」
 十文字切りが裂帛の気合とともに放たれる。赤と青の軌跡が十文字に 晟を切り裂くが、事前に準備をしっかりと行っていたのだろう。傷は浅くないが、まだまだ戦闘に支障はない。
「この程度であれば、本当に大根でも斬っていた方がマシだな」
「言ってくれるじゃ……うおおお?!」
 怒りに燃えるエインヘリアルの台詞を遮るかのように、横合いから炎をまとった激しく、だがどこか華麗な蹴りが、敵の脇腹を撃ち抜く。
 ヴィットリオ・ファルコニエーリ(残り火の戦場進行・e02033)が、相棒であるライドキャリバー『ディート』に騎乗したまま、エインヘリアルに突進、グラインドファイアを放ったのだ。
 ヴィットリオは左足で地面を蹴りつけると、 ディートごと横滑りしながら半回転し、ぴたり、とその場で停止する。鮮やかな金髪がたなびく。
 そして、痛みに耐えている敵を一瞥すると、深い溜め息をついた。
「エインヘリアル、しかもその中でも凶悪犯罪者に空気読めってほうが無茶な話か」
 自分に言い聞かせるかのようにつぶやくヴィットリオ。
 エインヘリアルは不利と悟ったのか、背中の剣から鮮やかな緑の剣を取り出し、頭上に掲げる。柔らかな緑色の光が傷を癒やしていく。
 だが、ヴィットリオはお構いなしに体内のグラビティ・チェイン を破壊力としてエアシューズ 『グリッドスコルズ 』に乗せ、グラビティブレイクを敵へと叩きつけた。
 エインヘリアルの傷はある程度、癒えたようだがケルベロス達の攻撃に対する耐性が、ヴィットリオの一撃により打ち消されてしまった。
「チッ!」
 頼みの綱のつもりだった能力を半分無効化され、舌打ちをするエインヘリアル。その様子を横目に、ヴィットリオは少女たちの方へ視線を移す。
 結華と凛、二人の少女に駆け寄るルーチェ・プロキオン(魔法少女ぷりずむルーチェ・e04143)は、プリンセスモードを発動させる。
「プリズムハート・ライトアップ!」
 くるり、と空中で一回転し、キラキラした光とともにオレンジ色のコスチュームに身を包む。
「みんなのハートを希望で照らす! きらめく愛の魔法少女、ぷりずむ☆ルーチェ!」
 ルーチェは少女二人に左右の手を差し出し、彼女たちの肩を優しく叩き、退避を促す。
「さあ、私たちが来たからには、もう安心ですよ!」
「は、はい……! ありがとうございます」
 おずおずとだが、ルーチェの姿に勇気をもらい、うなずき返す少女達。
「ルドラちゃん、お願いします!」
「わかったわ! 後は任せて!」
 ルーチェの言葉にすぐさま反応し、結華と凛を二人まとめて担ぎ上げるルドラ・ヴリトラハン(オウガの光輪拳士・e50579)。
「うわわわ……!」
 軽々と抱きかかえられ、結華が慌てた声を上げ、多少ジタバタとするが、ルドラの体は石のようにびくともしない。
「みんな、ごめん! ちょっと離れる!」
 仲間たちにそう告げると、彼女は少女達を抱きかかえ、戦場から離脱する。
 どこに彼女たちを連れて行くか一瞬ルドラは思考を巡らせたが、仲間たちからそれほど離れていない校舎の角、ちょうどエインヘリアルから遮蔽になっている場所へと少女を地面へと下ろす。
「ここなら大丈夫だから、待っててね。すぐ終わるから!」
「は、はい!」
 結華を抱きとめながら、凛が力強く、そしてしっかりと頷く。その様子を見てルドラはうなずき返すと、仲間たちのもとへと、駆け出していった。
 少女達が安全な場所へと逃げれるように全力で攻撃を繰り出していた草火部・あぽろ(超太陽砲・e01028)は、無事に彼女たちが避難したのを確認すると、盾役となっている仲間に攻撃が放たれた瞬間、エインヘリアルの背面から攻撃を仕掛ける。
「この太陽の巫女を相手に、余所見する暇があると思ってんのかッ!」
 手にしたルーンアックス 『摩利支天羅刹 』が陽光を反射し、鈍い光を放つ。
 小柄な彼女だが、そのルーンアックスを振るうさまは、 晟と何ら変わらない。全身の強靭なバネがしなり、力を蓄え、そして垂直に放たれる。
 空を切る轟音を立てながら放たれたルーンディバイドは、横一文字にエインヘリアルの腹部を縦に切り裂く、というより叩きつけられた方が近いか。
「ぐおおお!」
「試し斬りしてみるか? 来いよ、俺たちが的になってやる。ただし高くつくぜ……!」
 手の平をクイッ、とさせながら、エインヘリアルを挑発するあぽろ。
「クソッ……いい加減に……しやがれ!」
 まだ倒れはしないが、苛立ちと焦りを感じる声色で、敵は十文字切りを放つ。青と赤の剣閃があぽろを切り裂く。
 だが、すぐさま彼女の衣服に竜巻のグラフィティが描かれ、先程の傷跡が癒えていく。
 傍らには 巽・真紀(竜巻ダンサー・e02677)。
 しなやかに、そして強靭な体全体を使ったストリートダンサーの流麗な動きで、己のうちに秘めた力を変成、そしてあぽろの傷を癒やしたのだ。
「ズイブンと固いヤツみてーじゃねーの。……オーライ、アゲてボコるぞ」
「ああ!」
 真紀の言葉に決意を込め、力強く答えるあぽろ。
 武田・静流(折れない槍・e36259)も、少女二人を必ず助ける、と言う決意を秘めエインヘリアルに攻撃を仕掛ける。
 結華と凛が避難している場所、自分より後ろには絶対に通さないと言う覚悟の元エインヘリアルと対峙する。
(「力の弱い女性を襲って悦に浸るとは、流石は重罪人と言う事ですか、戦士とは思えない行動です」)
 だが、自然と笑みを浮かべる静流。その姿は修羅と差し支えない。
「ふふ。良いですね。自分の覚えた技を惜しげもなく振って闘えるのは」
 心は昂ぶる。だが、その頭は冷静に戦場全体を捉え、視線は敵に向けられている。
 そのエインヘリアルは、まだその巨体に闘志だけは残ってはいるようだが、ケルベロス達の攻撃により徐々に動きを鈍らせて行っているのが、誰の目から見ても明らかだった。
 傷を癒やす力は使っているが、使うたびに、ケルベロス達の攻撃に対する耐性を打ち消されているためだ。
 ルーチェが、エインヘリアルに人差し指を突きつける。
「試し斬りだなんて、人の命や想いはそんな簡単に奪われていいものじゃない……ここで絶対に食い止めます!」
 そう言うと、空中でくるりと一回転する。
「受けて下さい! これが私の……魔法です!!」
 ルーチェの掌と指先に光が収束していく。
「その悪意ごと、熱いハートで焼き尽くします! フラッシュ・イグナイター!!」
 収束した光がケーブル状と化し、それは頑強なエインヘリアルの体を刺し貫いた。そこへトドメとばかりに、エネルギーを送り込み、行き場を失ったエネルギーが敵の体内で爆発。そしてその体を炎が包む。
 爆炎が収まると、そこには全身を炎と爆発で焼き焦がされれ、大地に膝をつくエインヘリアルの姿。
「弱い者いじめしかできないあなたに、そんな沢山の剣を扱いきれるんですか? あなたでは目の前の私達さえ斬れないという事です!」
「ま、まだだ……まだこんなところで終わる俺じゃねぇ……」
 息も絶え絶えに立ち上がり、緑色の剣で傷を癒やすエインヘリアル。
「まったく……女の子相手に試し切りなんて最低ね! こんなのがエインヘリアル……神の戦士だなんて世も末だわ! どう見たって、選ばれた戦士なんて偉大なものではないわよ! ただの盗賊……いえ、それよりもはるかに劣るクズね!」
 そんなエインヘリアルに向けてルドラが言い放つと跳躍する。そしてそのまま、重力と流星のきらめきを併せ持った飛び蹴りがその眉間へと命中する。
 大きくよろめき、再度膝をつくエインヘリアル。
 そのスキを逃すあぽろではない。
「救いの光をくれてやるよ。太陽神の許で、罪の汚れを濯ぐんだなッ!」
 彼女の右手に太陽の力が充填され、バチバチ音を立てて、あぽろの金髪がより一層輝く。
「光あれ!喰らって消し飛べ、『超太陽砲』!!」
 その力ある言葉とともに、大地を蹴る。一息でエインヘリアルの懐に飛び込むと至近距離から、溜まりに溜まったエネルギー、極大の焼却光線が放たれた。
「うおおおおおお! そ、そん」
 エインヘリアルの言葉は最後まで紡がれること無く、その姿は極光の中にその姿は消えていく。そして、あたり一面に熱と破壊を撒き散らし、轟音とともに光の柱が天をついた。
 極光の柱が消え去った後には、エインヘリアルの姿は無く、ほのかな熱気があたりを包む。
 静流は先程までエインヘリアルが立っていた辺りを見つめ、この戦いが終わったことを確認すると、深く息を吐く。顔をしかめ、手を左胸に当てながら荒い呼吸を整える。
(「長い戦いでした。ですが、それでも勝つのは私たちです」)


 戦闘が終わり、校舎裏はそれほど激しく破壊されている場所は無い。だが、仕方のないこととは言え辺り一面にひび割れた壁や地面が広がっている。
 そんな中でヴィットリオはヒールで辺りを修復していく。癒やしの力を宿した炎が白く、そして淡くまるで雪のように、ふわりふわりと舞い散っていく。その光景は夕陽が照らし、更に幻想的な風景を見せる。
 一通りあたりにヒールを行うと、やけに冷ややかな視線を一部の仲間たちに送っている晟に気がつく。
「どうかしたの?」
 そう聞くヴィットリオにいや、と短く答え、顎でその視線の先を指す。
 そこには校舎の影に隠れながら、結華と凛の成り行きを見守る……と、いうより出歯亀している正彦、 ルーチェ 、あぽろの三人。
 そう言えばと、小声で正彦はルーチェに問いかける。
「あの攻撃は……魔法?」
「えっ」
 どう見ても物理的な攻撃を使っていた彼女は、なんのことかわからないという表情を浮かべ。しばらくお互いに顔を見合わせる。
「お、おい!」
 あぽろが小声で、正彦とルーチェに声を掛ける。
 二人が視線を少女達に戻すと、お互い怪我がないか確認した後、良かったと抱き合っている。しかも、妙にお互いの顔が近い。なんとなく背景に百合の花が広がっているような気がしないでもない。
「おおお……百合萌え……!」
「ちょっと、ちょっとだけ俺にも見せてくれよ、なっ」
「あっ、私は彼女達に怪我がないか心配なだけで……!」
 ドキドキしながら、結華と凛がこのあとどうするかと見守っていると、ゴン! と鈍い音が正彦の方から聞こえた。
「何してんだよオメー! ハアハアしてんじゃねーよ。リアル百合萌えーとか言ってんじゃねー!!」
 正彦の頭上に鉄拳をおろしたのは真紀。
 そのまま、彼の襟首を掴むとズリズリと引きずっていった。他の二人も少女達の成り行きも気にしながらも、残念そうにその場を後にする。
 そんな様子を見ながら晟はやはり罰が当たったか、とため息混じりで思うのだった。

作者:荒井真 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年6月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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