飛来し風に乗る悪胞

作者:幾夜緋琉

●飛来し風に乗る悪胞
 大阪府大阪市浪速区、道頓堀からちょっと南の方に進んだ辺りにある、なんば地域。
 空港に向かうバスが多数でる商業施設や、名古屋から南方を通過し、やってくる私鉄の到着地でもあるそこは、大阪地区に誇る、交通の要所。
 そこも最近は、大阪地域の様々なところで事件は起きている話題はあるものの、事件が解決すればその場はいつもの光景を取り戻していた。
 そんなコンクリートジャングルの一角には、小さな公園。
 くつかの樹が生えていて、ひとときの憩いの場にもなっている。
 が……そこに飛んできたのは、金色の胞子。
 風に舞い踊りしその花粉は、その僅かな木々に取り付いて……瞬く間に、その樹は樹ならざる物へと変化。
『うわ、な、なんなんやこれ!!』
 と、驚きの声をあげる町の人々を、次々ととらえたその攻性植物。
 一人、また一人とつり上げた後、その蔓を強く締め上げ、樹の幹の中へ次々と取り込んでいってしまうのであった。

「ケルベロスの皆さん、集まってくれたッスね! それじゃ早速ッスけど、説明するッスよ!」
 と、黒瀬・ダンテは、集まったケルベロスへ元気な挨拶も早々に、早速。
「爆殖核爆砕戦から少し経過しているッスけど、まだ大阪城周辺に抑え込まれていた攻性植物が動き出してるッス」
「どうやら攻性植物は、大阪市内への攻撃を重点的に行おうとしている様ッス。おそらく、大阪市内で事件を多発させ、一般人を大阪市内から避難させることで、大阪市内を中心とした拠点拡大の作戦を実行している様ッス」
「今の所は大規模な侵攻作戦にはなっていないッスけど、これをこのまま放置しとけば、ゲートの破壊成功率もじわりじわりと下がっていくッス。それを防ぐためにも、敵の侵攻を完全に防ぎ、さらに隙を見つけて反攻へと転じなければならないッス!」
「今回現れるのは、偶然なんばの辺りに生えていた、シダレヤナギの樹の攻性植物が五匹ッス。この攻性植物は、謎の胞子によって複数が一気に攻性植物として誕生し、市街地で暴れ出そうとしているんッス」
「この攻性植物らは、一般人を見つけると殺そうとしてくる、とっても危険な攻性植物ッス。ただ、数は多いものの、別行動する事なく固まって動き、戦い始めたら相手を殺す事に集中する様ッスから、対処はそんなに難しくはないッス」
「でも、数の多さは驚異ッス。同じ植物から生まれた攻性植物であるからなのか、互いに連携もしっかりとしている様ッスから、決して油断は出来ないッス!」
 更にダンテは。
「攻性植物が現れたのは、なんば駅にほど近い、小さな公園の一角ッス。つまり、すぐ間近に一般人がいる環境であり、ちょうど攻性植物が現れた瞬間に、3人の一般人の方達がいて、攻性植物にとらわれてしまった様なんッス」
「ケルベロスの皆さんが到着できるのは、ちょうど現れる瞬間ッスから、速攻で攻撃を仕掛ければ、ぎりぎり捕獲されるのは回避出来るはずッス。もちろん、その後は、攻性植物を倒さないといけないッスけどね」
「ちなみに、攻性植物達の攻撃手段はその蔓を絡みつかせて手足を縛り上げたり、その体を強力な力で締め上げて、まるで握りつぶすがごとくの攻撃をしてくる模様ッス。特に締め上げ攻撃は、攻撃力の高い一撃ッスから、注意して欲しいッス」
 そして、最後にダンテは。
「攻性植物がいくら連携しようとも、ケルベロスの皆さんの絆を上回ることは出来ないはずッス。だから、ケルベロスの皆さん、宜しく頼むッスよ!!」
 と、力強く、送り出すのであった。


参加者
陶・流石(撃鉄歯・e00001)
ミリア・シェルテッド(ドリアッドのウィッチドクター・e00892)
カエデ・スカイ(デウスエクススレイヤー・e10221)
速水・紅牙(ロンリードッグ・e34113)
兎之原・十三(首狩り子兎・e45359)
牧野・友枝(抗いの拳・e56541)
碓氷・凪(比丘尼の系譜・e56592)
穂村・花園(忌火・e56672)

■リプレイ

●風に流れて
 大阪は浪速区。
 道頓堀からほど近く、空港への交通至便にすぐれた施設もあり、正しくここは大阪南部の交通の要。
 ……しかし、そんな所にもまた、出て来てしまった攻性植物……数多くの攻性植物が姿を現わし、一般人を次々と襲うという……。
「……うーん、攻性植物が元気ですねぇ……梅雨にでもなれば、日照不足と水分過多で根腐れでも起こしてくれるんでしょうか」
 とミリア・シェルテッド(ドリアッドのウィッチドクター・e00892)が肩を竦めると、それにカエデ・スカイ(デウスエクススレイヤー・e10221)と速水・紅牙(ロンリードッグ・e34113)も。
「んー。あの花粉だか胞子だかは、どんな植物にも取り憑いてああなるのかなー? だとしたらとんでもなく面倒だね……早く元を断たないと」
「ああっ! これは例の胞子クラゲ絡みの事件かっ。倒しても胞子が広がるのは大変だが、最後まで完璧に努めてこその番犬稼業……キチッと決めにいかなきゃなっ!」
 腰に手を当てて、びしっと決める紅牙。
 ……そして、ダンテから指示された場所へと向かう道の途中で。
「しかし、一般人を狙ってるあたり、こちらのことはきっちり脅威と認識してくれてるんだろうな。ロキのだけの入れ知恵っつう事もなさそうだし、オウガみてぇに巻き込まれている連中が他にもいんのかね?」
 と陶・流石(撃鉄歯・e00001)が溜息を吐くと、それに碓氷・凪(比丘尼の系譜・e56592)も。
「んー……どうだろうね。でも難波って有名な繁華街なのに、そんな所で事件だなんて。公園となると……ウラ難波の辺りかな?」
 等といいながら、この辺りのガイドブックをパラパラと捲る凪。
 ……この辺りの美味しい食べ物が、色々と記されたガイドにニヤリ、と笑みを浮かべ。
「なるほどー……今、熱のおいしいお店も多いみたいだし。よしよし……てきぱき片付けないとね! てきぱきと!」
 気合いを入れる凪、そして、兎之原・十三(首狩り子兎・e45359)、牧野・友枝(抗いの拳・e56541)、穂村・花園(忌火・e56672)らも。
「うん……今回は、草刈りだ、ね……シダレヤナギの、攻勢、植物。ここで、きっちり、刈って、しまおう」
「そうだね。接近戦はやり難いけど……そうは言ってらんないねこりゃ」
「例えどんな事態であろうと、こいつらの存在する世界を認める訳にはいかねぇ。燃えて落ちろ、デウスエクス!」
 三者三様の言葉で覚悟を決めると、流石、楓、ミリアも。
「しかし植物連中も生きる為に必死なんだろうが、だからといって喰われてやる義理もねえ。さっさと片付けるだけだ」
「うん。本当い傍迷惑な事をしてくれるなぁ……ゼッタイに食い止めないとね!」
「んー……根腐れには程遠いでしょうが、ちまちまと伐採してちょっとずつ奪還に甲剣するとしましょう」
 そして、ケルベロス達は……ダンテに指示されたその場所へとたどり着いた。

●闇からの風
 そして、現場に到着すると……立ち並ぶシダレヤナギの樹。
 丁度ケルベロス達が到着した瞬間……シダレヤナギは次々と攻性植物化し、うぞぞぞ……と奇妙な姿を取り始める。
 そして、不幸な事に、近くに居た一般人三人が驚き、其の場に座り込んでしまい……其処に近づく、蔓。
「させるかよ!」
 と、一気に距離を詰めた流石が、至近距離で捉える蔓にハウリングフィストを叩きつけ、切断。
 勿論、残る二名の一般人の元には、カエデ、友枝が割り込み。
「一般人を狙うだなんて! と、植物に言っても無駄かー。むしろ倒しやすい相手を狙うのは理にかなってる……? いやいや、感心している場合じゃ無いでしょ私。取りあえず、その蔦を離しなさーい!」
「ああ……ウチらが相手だッ!」
 夫々が、降魔真拳とグラビティシェイキングで蔦を叩っ切り、している中、一般人三人を攻性植物の下から抱え運ぶ仲間達。
「な、なんや、なんやあれは、なあ!」
 と、襲われ掛けた一般人達が騒ぐ物の、凪と十三が。
「今詳しい事を説明している時間は無いんだけど、ざっというとここは危険だから逃げてねって事!」
「そう。はやく、ここから、逃げて、ね。敵の攻撃、当たらない、ところまで」
 と短く説明し、背中を押して、半ば力尽くで、其の場から離脱するように促す。
 ……勿論、得物である一般人が逃がされまいと、攻性植物五体は蔓を地面に叩きつける。
 ……そんな攻性植物の動きに。
「なんだかんだ言って植物だ。いやがるだろ」
 と言いながら、『焼け落ちろ、忌々しき世界』で、炎を掃射。
 燃え上がる炎に、苦しみを露わにする攻性植物だが……炎は程なく止み、攻性植物はケルベロスへ明かな敵対心を燃やす。
 そんなシダレヤナギを、真っ正面に見据えた十三。
「……草刈りを、はじめる、よ」
 と短く言葉を紡ぐと共に、シダレヤナギ達にアイスエイジを一閃。更に流石も続いてクイックドロウで、即、シダレヤナギに武器封じを付与する。
 そして二人の攻撃はクラッシャー効果も伴い、大ダメージ。
 更にケルベロス達を殺さんが如く、蔓を次々と対抗してきたケルベロス達に巻き付け、ぐぐぐぐ、と締め付けてくる。
「い、いたっ、ちょっ、これ洒落にならないんですけど!?」
 と、カエデが苦しみに顔を歪めるが、すぐに凪が後衛から『雨霖鈴曲』でキュアしつつ、BS耐性の付与。
 そして、勿論締め付けられているカエデと花園二人は、己自身でどうにか切り抜けるために。
「はなせ、離せーっ!!」
「これはガキの癇癪さ。それで燃え堕ちるなら、そんなもんなんだろ?」
 とシュリケンスコールを蔓にまきびしの如くまき散らし、花園は『焼け落ちろ、忌々しき世界』で炎を付与。
 そして、ジャマーの友枝は横から接近すると。
「震えろ! グラビティシェイキング!」
 と力強い宣言と共に、グラビティシェイキングで、空いた敵に叩きつけると、紅牙も。
「はっはー、さぁとっっととごーとぅへる、だぜー!!」
 と刀を軽々と振り回しながら、ハウリングの一撃をくわっルト、同時にミリアもアイスエイジを一閃。
 そして、次の刻。
 とは言っても、攻性植物の動きには大きな変化は無い。
 ただ単純に、ケルベロス達を殺す為に、蔓を振り回し続けるのみ。
 5匹のシダレヤナギからお攻撃を、前衛に立つ流石、十三、カエデに花園が順繰りに攻撃を受けるように立ち回る。
 ……拘束攻撃よりも、締め上げ攻撃の方がかなり痛い。
 喰らった仲間には、凪の咎人の血と、ミリアのメディカルレインが仲間達を癒し、その刻の間に拘束、締め上げを解除する様にする。
 そして、友枝が。
「コイツで動きを止めて……!」
 と指天殺を嗾け、そして紅牙も。
「……もう、どうなっても知らないからなっ!!」
 と『スパイラル・スパイク』で、バッドステータスを一気に倍増させて叩き込む。
 そして、カエデが。
「忍法、我見の術!」
 と『我見の術』を使い、怒り効果を付与する事で、自分への攻撃を集中させると、花園はまたも炎で攻性植物を攻撃。
 そして、流石が。
「おう、目ぇ逸らしてんじゃねぇよ」
 と睨み付けての『鉄視心揺』、十三も。
「【月喰み】解放……刎ねる……刎ねる……兎が跳ねる……氷の刃を持て刎ねる」
 と『上弦:冷兎・未感』。
 その一撃が、元々ダメージを喰らっていた攻性植物を一体、討ち倒す。
 ……残るは後4体となるが、仲間の死には一切気を向けない攻性植物達。
「所詮、仲間同士って言う気は無い様ですね……まぁ、攻性植物ですから仕方ありませんが」
 ミリアがぽつり溜息。
 ともあれ、連携しない攻性植物達に対し、一致団結し、対峙するケルベロス達。
 連携し、一体、また一体と討ち倒していき……そして、戦闘開始から七分程。
 残る攻性植物は、ボロボロの後一匹……そんな攻性植物へ。
「これで、終わり……その首、もらう、よ」
 と短い言葉と共に、攻性植物の下へと接近。
 そして……至近距離からの呪怨斬月は、攻性植物の蔦を刎ね飛ばし……攻性植物全て、崩れ墜ちるのであった。

●風に乗る悪魔は
 そして、攻性植物を無事に倒したケルベロス。
「あー……血を使いすぎたぁ。早くおいしいものを食べて栄養補給したいよー」
 と、其の場にぺたりと座る凪。
 そして、武器を降ろして息を吐くケルベロス達……。
「……そうですね。美味しいのを食べるのはいいと思います。取りあえず、ヒールついでに除草剤でも撒いておきますかね? 攻性植物に除草剤が効くかはわかりませんけど、まぁ気休め程度です」
 と買ってきていた除草剤を、その辺りに撒くミリア。
「んだな。植物連中は何をしでかすかわからんところがあるからな。それにあんましヒールあるからっつってのもよくないんだろ?」
「そうですね。ファンシーになっちゃいますから。まぁ……そういうのも面白いとは思いますけどね」
 花園、ミリアの会話。
 もう、攻性植物の姿形は無いけれど……少しでも、問題無い様に、回りの市民の方達が安心出来るように……ヒール。
 そして、大体のヒールが終わった所で。
「ふぅ、終わった……かな?」
 ぐるりと周りを見渡した友枝が呟くと、こくっ、と頷く十三。
「うん……これで、しばらくは、落ち着いて、くれるか、な……」
「でも前に飛んできた胞子みたいなヤツの量を考えると、まだ起こりそうだね……」
「出て来たら潰すまでっ! それがけるべろす、の仕事だからなっ!」
 力強い紅牙の言葉、そしてカエデと陶も。
「そうだね。さてと……それじゃ凪さんの言う、おいしいものを食べて帰らない?」
「ん、それはいいねぇ。良し、行こうぜ!」
 と頷き、向かう。
 ……その中、一人ミリアは。
(「それにしても、攻性植物のツタって何かに再利用出来ませんかね……」)
 懐に忍ばせた、蔓をびよーんびよーんと伸ばしたりする。
 確かに、以外に強靱で、紐の代替えにも使えそうではある。
 ……ともあれ、ケルベロス達は無事に終わったことに安堵し、帰路へとつくのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年6月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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