混色竜アルメトラ

作者:沙羅衝

 ここは竜十字島にある鍾乳洞の奥。青白い光がある人物を浮かび上がらせていた。ドラグナーの竜性破滅願望者・中村・裕美。
「ふむ。……成る程成る程。……という事は」
 などとブツブツと呟きながら、映し出されている画面を確認していた。
「ふふ。やっぱり……見つけたわよ」
 裕美はそう言って、後ろを見る。そこには全身を黒い鱗で覆ったドラグナー、ケイオス・ウロボロスが控えていた。顔面の中央方向に並べた赤い目をギロリと彼女に向ける。その存在は歪であり、人によっては背徳的な恐怖が襲うかもしれない。
「お前達……この場所に向かいドラゴンの封印を解きなさい……。そして、封印から解かれたドラゴンに喰われ、その身のグラビティ・チェインを捧げるのよ」

 所変わってここは、福井県と岐阜県の境にある巨大な湖、九頭竜湖。冬が終わり、雪深かったこの地にも春が訪れ、爽やかな風がその細長い湖を駆け抜けていた。
 その場所から少し離れた場所に、裕美に命じられたケイオス・ウロボロスが4体集まっていた。その場所はやや開けている様だったが、人間の姿はない。よく見れば、木に飲み込まれた建造物らしきものが見える。既に遺跡と化しているほど古く、その文化のかつての姿を知る事は出来ない。
「きー、きー……」
「ギギ……ギ……」
 ケイオス・ウロボロスはその一角に集まると、超音波のような高い声で何かを唱え始めた。その声は時間がたつほどに激しく、そして人間では確認できない音域まで広がっていく。
 ドッ……! ガツッ!! バキバキバキ……!
 すると突如にして、地面が盛り上がり、巨大な腕が姿を現す。周囲の木々をなぎ倒し、更に地面を跳ね上げた。
「グオオオオオオオオ!!!」
 大地を震わすほどの咆哮。
 ドラゴンだ。
 そのドラゴンは、長い金色の鬣を振り乱し、再び咆えた。
 細長い体の中心に大きな珠を携え、宙に浮かぶ。珠の中央から光が生まれ、虹色の輝きを放っていた。
 混色竜アルメトラ。その竜はそう呼ばれていた。だが、知性という物は感じられなかった。完全な飢餓状態だからである。
 そしてアルメトラは、目の前にいるケイオス・ウロボロスに気がつく。飢餓状態のドラゴンには、彼らを餌としか思えないだろう。
 1匹、そしてもう1匹と、本能の赴くままに切り裂き、喰らう。
「グオオオオオオオオォォォオォ!!!」
 ケイオス・ウロボロスの全てがアルメトラの力となった時、まだまだ足りぬとばかりに、再び咆哮が山々にこだましたのだった。

 宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)が、神妙な面持ちでケルベロスの前に居た。少し青ざめてもいるようだ。
「ええか皆、リーナ・スノーライト(マギアアサシン・e16540)ちゃん達が調べてくれて分かったことやねんけど、ドラゴンの活動が確認されたわ。
 どうやら今回の活動っちゅうのが、大侵略期に封印されていたドラゴンの居場所を探し当てて、そのドラゴンの封印を破って戦力にしようっちゅう事らしいねんな」
 ドラゴンの活動と聞き、ケルベロス達に緊張が走る。それは絹も同じだったようで、ごくりと唾を飲み込みながら言葉を続ける。
「この作戦を行っているのは、ケイオス・ウロボロスっちゅうかなりきもいドラグナーやねんけど、もう復活したドラゴンに喰われとる。ちゅうても、知っての通り、コギトエルゴスム化しとるから、死んではおらんけどな。全員喰われとるから、こいつらとの戦いはない。
 今んとこ、復活したドラゴンは、かなりの飢餓状態でな、定命化も始まってる。意思疎通は出来へん位なんやけど、その戦闘力は半端やないで」
 ドラゴンは圧倒的な戦力を持っている。ケルベロス達からすれば当然の知識だが、いざ戦闘になった時の強さは想像に余りある。
「で、今回の敵は混色竜アルメトラ。戦闘が長引けば長引くほど、弱体化をしていくっちゅう情報があるわ。せやから、それまで耐えて耐えて耐えまくらなあかんで。そんでその時間は10分くらいやろうという分析が出てる。
 そんなドラゴンを一般人のおる街に出現させるわけにいかへん。死守やで」
 その言葉に頷くケルベロス達。絹は全員の反応を確かめつつ、手に持っているタブレット端末で、正確な情報をケルベロス達に伝えた。
「今回のドラゴン、アルメトラは、抱えている珠から虹色の光を体に伝播させて、ブレスにして放って来る。攻撃力は当然やけど、その効果はこっちの神経に影響して、体の部位を痺れさせるっちゅうやっかいなモンや。加えて爪と尻尾の攻撃は強い。ちゅうか、全部強い。10分ちゅう時間をどうしのぐかが鍵になるやろう。
 ……作戦が生死を分けるで。しっかりな」
 少し申し訳なさそうにする絹に、正直ありがたいと、あるケルベロスが言った。全くの情報が無ければ、備えも出来ない。ドラゴンにそのまま挑むなど、自殺しに行くようなものだ。
「うん、それがうちの仕事や。そんで、皆の帰ってくる場所を作ること、これもうちの大事な大事な仕事。
 帰ってきたら、大きな打ち上げやで! ご馳走作って待ってるから、絶対に、絶対に! 帰ってくるんやで!」


参加者
毒島・漆(医猟咒師・e01815)
千手・明子(火焔の天稟・e02471)
進藤・隆治(獄翼持つ黒機竜・e04573)
螺堂・セイヤ(螺旋竜・e05343)
湯島・美緒(サキュバスのミュージックファイター・e06659)
天照・葵依(護剣の神薙・e15383)
影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)
サイレン・ミラージュ(静かなる竜・e37421)

■リプレイ

●激闘のはじまり
 ケルベロス達は、ここ九頭竜湖に到達していた。木々の緑が湖に映りこみ、きらきらとした光を湖面が眩しい。爽やかな風と、少し待ち遠しいといわんばかりの夏の香りが、ケルベロス達の体を包む。
「グオオオオオオオオォォォオォ!!!」
 しかし、その自然の豊かさを切り裂くような咆哮と、木が叩き割れ、吹き飛ぶ音が山々に響き渡った。
 ケルベロス達はその現場へと、躊躇う事無く降り立った。
「ドラゴン相手でも、何度だって阻止してみせるよ」
 影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)はそう言うが、やはり実際に見るドラゴンの迫力、そして威圧感は想像していた以上かも知れない。
「グォォォォォ……!」
 声を轟かせ、地を唸らせるアルメトラ。軽く空中に浮かびながら、まだ足りぬとばかりに、ケルベロス達を見る。その視線は獲物を目の前にした獣そのものだ。
「こんなところにいたのか……。ここで、終わらせる」
 進藤・隆治(獄翼持つ黒機竜・e04573)の声と共に、ケルベロス達が戦闘体制に入った。
 しかし、突如として抱えている巨大な珠の中央に、虹色の光が渦巻いて大きくなっていく。
「情報にあるブレス……! 皆、構えて!!」
 千手・明子(火焔の天稟・e02471)はそう言いつつも、目の前に居るドラゴンの圧倒的な力を感じとり、戦慄する。
「ギャアアアアアア!!!」
 その光は一瞬だった。明子の声と同時に前へ体をなげうつ隆治と湯島・美緒(サキュバスのミュージックファイター・e06659)。そしてサイレン・ミラージュ(静かなる竜・e37421)。
 隆治と美緒は、情報から耐性のある防具を吟味し、そして防御に徹したおかげか、そのブレスを耐え切った。パリパリとした感覚の神経汚染により、感覚が無い部位がある事も分かった。
「う……あ……!」
 しかし、サイレンは一番経験の少ないケルベロスだ。そして、その防具はそのブレスには効果の無いものだったのだ。
 膝から崩れ落ち、四つんばいになったまま、口から唾液が垂れる。
「ガアアアアア!!」
 そしてアルメトラは、目の前のサイレンに一気に降下し、その鉤爪を振るった。
 バン!!
 短く、単調な音。その音がしたと同時に、木に叩きつけられた音がした。咄嗟に主人を護ったウイングキャットの『アンセム』が、地面に落ち、意識を失った。
 覚悟はしていた。しかし、その破壊力を目の当たりにすると、恐怖の二文字がケルベロス達に降り注ぐ。
「貴様ァ!!」
 螺堂・セイヤ(螺旋竜・e05343)がその感情をむき出しにして叫ぶ。しかし、ふと自らの体に実に付けた群青色の御守りの存在に気が付く。まだこれからだ。俺たちはまだ何もしていない。そう感じたセイヤは、ふうと息を吐き、オウガメタルからオウガ粒子を展開し、後衛のメンバーに纏わせた。そしてリナは、前衛の隆治と美緒、そしてサイレンにケルベロスチェインを張り巡らせた。
「美しいドラゴンだというのに残念だ……。生前は力はもちろん、かなりの知性も持ち合わせていただろうに……哀れな……。ここで静かに眠らせてやりたいものだな」
 天照・葵依(護剣の神薙・e15383)がサイレンにボクスドラゴンの『月詠』と共に、努めて冷静に回復を施し、その麻痺の力を除去していった。すると、何とかサイレンは立ち上がることができた。だが、全てを回復することは出来なかった。それ程までに傷は深かったのだ。
 彼女は葵依に会釈し、そして、気丈に腕時計のアラームのスイッチを入れた。
「では、まずは耐久戦。気張って行きましょう!」
 毒島・漆(医猟咒師・e01815)が彼女を見て頷き、全員を鼓舞する。ここで破れる訳には行かない。我々が砦なのだ、と。
 それが、激闘のはじまりだった。

●虹色のブレス
「……頼んだよ」
 リナがケルベロスチェインに願いをこめながら、後ろに控える葵依と月詠、それに漆と明子に幾重にも仕込む。前を行く3人が耐えている間に、彼等が倒れてしまっては、この作戦は崩壊する。
 ケルベロス達は、バランスの良い陣形を取った。絹の情報からの10分間を、如何にして耐えるかという事が、今回の作戦の中心となっていた。
「明子さん、行きます!」
 漆が圧縮したエクトプラズム霊弾を放ち、アルメトラを牽制する。
「お相手願います。恐ろしき竜よ」
 明子が漆の霊弾の影から飛び出し、重力を宿した飛び蹴りをその尾の部分にヒットさせる。
「グォォオォオ!!」
 しかし、彼女の攻撃に弾かれたその尾を、今度は反対方向、つまりケルベロス達へと振り回す。
「明子さん!」
 バヂイ!!
 明子に向かって放たれたの前の尻尾を、美緒が庇うがその尾は巨大であり、後ろに控える葵依と漆を巻き込む。
 3人が吹き飛び、木々に、そして地面に叩きつけられた。先ほどリナのチェインが無ければ、3人ともかなりのダメージを負っていたはずだ。
「……速い……な」
 隆治がそう言いながらも前を向き、惨殺ナイフを抜き放ち、その眉間に突き立てた。
「ッガアアアアア!!!」
 のた打ち回るアルメトラ。
 ケルベロス達の攻撃は、まず狙いに長けた者がその動きを制限し、中衛に位置した者、つまりセイヤとリナによる傷の増加を目的とした一撃を、効果的に打ち込むというものだった。
 それにはまず耐えること。そのセイヤとリナはまず序盤は自分達の攻撃が当たらないと考え、先に防御の陣を形成することが大事と考えた。
「まだだ、焦るなよ……」
 セイヤはそう自分に言い聞かせながら、自分達にオウガ粒子を展開していった。
 そして、葵依が尻尾の攻撃に起き上がりながら、紙兵を撒き、月詠が漆に属性を流し込んだ。アルメトラの攻撃のその効果を軽減する為の策だった。
「どんなに強いドラゴンであろうとも、私たちの仲間の絆があれば、きっと勝てると信じています!」
 サイレンは気丈に振る舞い、立ち向かう。アンセムが倒れた今、その作戦の一つであった邪気を祓う羽ばたきは見込めない。その為に彼女は攻性植物から黄金の果実を生成し、自らと明子、隆治に纏わせた。
「……よし、これで」
「来るぞ!!」
 サイレンは気を抜いたのでは無い。自らの役割に徹していただけだった。だが隆治の言葉を理解することが遅れた。
「え!?」
 サイレンが見上げると、アルメトラの口から、輝きがあふれ出していた。
「ギャアアアアアア!!!」
 一瞬だった。その光は明子、隆治を通過した。そしてサイレンも。
 ドサ……。
 そのブレスでサイレンは倒れ、ぴくりとも動くことが出来なかった。それは最初に受けていたダメージの蓄積もあっただろう。
「サイレン!!」
 セイヤが駆け寄り彼女を抱き起こし、状態を確かめる。
「……大丈夫だ。まだ、息はある!」
 そのまま彼女を後方に下げ、木に横たわらせた。生きている限り、何度も立ち上がれる。だが、ドラゴンの強さを再認識した瞬間だった。

●一番長い10分間
「前だけを見ろ! 集中するんだ! 背後は我々で全力をもって支えてやるからな……!」
 葵依が叫び、己の覚悟を言葉にのせる。
「月詠!! 援護を! もうこれ以上誰一人として膝をつかせるな!!」
 後ろで支援を任された者のプライド。葵依と月詠は懸命に回復と支援を繰り返した。その甲斐があってか、徐々にアルメトラのブレスに耐えることが出来るようになっていた。
『ちょっとばかし毒を仕込ませてもらうよ。痛くは無いから大丈夫だ。』
 隆治の毒の入っている沼の槍がヒットする。此方の攻撃も、動きが鈍り始めたアルメトラを直撃する。
 しかし、彼の隣の美緒の状態が悪くなり始めていた。
「まだ……、まだ倒れる訳には、いきません!」
 美緒はそう叫び、気合を入れてアルメトラの前に立つ。ブレスの効果を打ち消すことには成功していたのだが、余りにも攻撃を受けすぎた。
「あっ!!」
 アルメトラの爪がリナのチェインを切り裂きながら美緒の腹を貫くと、美緒はそのまま崩れ落ちた。
「美緒、もう良いわ!!」
 明子が意識を失った彼女を担ぎ、サイレンの隣へ運ぶ。そしてまた前を向き、正確な蹴りを打ち込む。
「みんな、まだ行ける? わたしは、まだ大丈夫! もう一息のはずだよ!!」
 リナは全員の士気を上げつつも、冷静に状況を分析していた。絹の言う10分は、もう間もなくのはずである。倒れる仲間を目にしても、ここで怯む訳には行かなかった。此方の攻撃の効果も徐々にだが、相手を蝕み始めたのが分かる。リナはそれを再確認し、セイヤのほうを見る。するとセイヤも考えは同じだったようで、頷く。
「仕上げだ、喰らえ!!」
 セイヤがバトルガントレット『魔龍凱甲ウロボロス』に空を載せて叩き付けると、リナも同じく空を纏わせたケルベロスチェインで、これまで負わせた傷を穿つ。
「グォォォオォオオオォオオオオオ!!!」
 明らかな悲鳴の咆哮を上げるアルメトラ。少しずつ付けていた傷が一気に広がったのだ。
『"重刃争術"……瘴刀【叫獄】』
 如意棒『穿刀・烏刃喰』に地獄の瘴気を注入し、漆がアルメトラを叩く。
「……あと、少しだ」
 隆治がそう言って一人、最前線に立つ。サイレンと美緒が倒れた今、守備の者は自分だけだ。恐らくもう直ぐ弱体化が始まるはずだ。
 だが、その隆治を容赦ない爪の攻撃が襲う。
 ガツッ!!!
 巨大な爪を諸手で掴む隆治。
「ぐ……おおおお!!!」
 だが、その強大な力は健在のようで、隆治の膝が地面に落ちる。そして、叩き潰された。
「隆治さん!!」
 明子が叫ぶ。これで、前線は崩れてしまう。あと少しの時間のはずだ。しかし、これ以上は厳しくなる。
 まだか……。そう他のケルベロスが思った時だった。
 隆治を叩き潰したアルメトラの爪が、ゆっくりと何かに持ち上げられるように、動いたのだ。
「隆治……!!」
 葵依は目を疑った。それは左腕の地獄を燃え滾らせながら起き上がる隆治だったのだ。
「我輩は、ここで……死ぬ訳にはいかないんだよ」
 隆治の魂が肉体を凌駕し、グラビティの輝きが轟く。
「……誰も、殺させない。生きて……生きて帰るぞ! うおおおおおお!!!!」
 アルメトラの爪を弾き飛ばし、隆治の咆哮が響き渡った。

●生きて帰る
 ピピピ! ……ピピピピ!!
 そして、彼らの後方から、一つの音が鳴った。
 それは倒れたサイレンの腕時計から鳴り響くアラームだった。
「10分!!」
 明子の歓喜を含んだ声を聞き、ケルベロス達はアルメトラを確認する。すると、明らかに様子がおかしかった。
 何かに抗うようにのたうちまわり、急激にグラビティの輝きを失っていっていた。
「さあて、反撃と行きましょうかっ!」
 右腕に持った穿刀・烏刃喰を握りなおしながら、漆がゆっくりと前に出る。
 その間アルメトラは、空に向かって咆えていた。
「何かを、思い出しているのかもな……」
 隆治はそう言って自分が与えた攻撃の効果を確認していた。
「だが、再封印の術はすでになくしてしまったから、ここで狩らせてもらうぞ」
 隆治の決意に、葵依が反応する。
『ここに一つ点を穿つ。欠けたるを穿ち満ちたるを顕す。臥龍よ、汝らの翼を描こう。踊れ蘇の筆。慈悲の龍』
 葵依が龍の神の力を、ゆっくりと全員に纏わせ、鼓舞していく。
 仕上げだ。
 ケルベロス達は最後の力を振り絞り、総攻撃を開始した。
「きっちり削り殺してやるよ……」
 漆の超高速斬撃が、アルメトラの体を切り刻む。
「持てる力を全てこの剣。一閃に注ぎ込む!!」
 その漆の斬撃を飛び越え、上空で日本刀『白鷺』を抜刀する明子。
「ガアアア!!」
 力ない腕をその刀でそわす様に受けると、そのまま胴体に向かって突き進む。
『遅い!』
 腕ごと切り裂きながら、その胴体の中心を切りつけていく。
 そして明子が地面に降り立った時、漆黒のオーラを全身に漲らせたセイヤが、右腕のオーラを龍として拳に纏わせ、超速で飛び込んだ。
 そのセイヤの攻撃にあわせるように、リナが稲妻の幻影を纏わせたチェインを放つ。
『打ち貫け!!魔龍の双牙ッッ!!』
『放つは雷槍、全てを貫け!』
 セイヤの黒龍のオーラがアルメトラを飲み込み、リナのチェインが首を貫いたと同時に、激しい雷光をその頭に直撃させた。
 バリン……!
 音を立てて崩れたのは、アルメトラの抱えていた珠。
「……終わらせよう」
 そして隆治が、チェーンソー剣を担ぐ。グラビティにより力を得た鋸状の刃が勢い良く回転し、激しい音を掻き鳴らした。
 アルメトラの眼前まで跳躍した隆治は、両腕に力を込め上段に剣を振り上げた。
 ギャイイイイイイイィィィイィ!!
 振り下ろした剣は、アルメトラの頭上から一直線に切り刻まれ、そのまま地面にまで達する。
「ギャアアア……!!!!」
 断末魔の叫びを上げ、アルメトラは二つに分かれながら地にどうと落ちた。それは重力に屈したかのように激しく跳ね上がり、また地面を打った。
「……さらば」
 アルメトラと少し遅れるようにして、地に降り立った隆治が少し目を瞑りながらそう言った時、空気に溶けていくようにアルメトラは消滅したのだった。

「しかし、これほどのダメージを受けたのは、正直始めてかもしれません」
 漆はそう言って、倒れたサイレンと美緒の容態を確認する。命に別状はないものの、暫くは動けないだろうと判断できた。全員が全員傷を負っている。
「少し、強くなったとは、思っていたんだけど、ね」
 明子はそう言って、激戦の様子を確認する。
 木々は打ち倒され、所々焼け焦げていた。その大きな範囲の傷跡が、良く勝てたものだと感じさせた。
「他の戦いは、どうだったのだろうか?」
 セイヤは他所の戦いを心配する。我々の作戦は、練りに練ったものだったはずだ。少しの気の緩みが命取りになった事は、相対した本人たちが一番良く分かっている。ひょっとすると、かなりの被害が出ているかもしれない。
 今回ドラゴンは10分という制限があった。もし無ければ……と考えると、恐ろしかった。
「うん、そうだね……」
 リナはそれだけ答えた。それ以上言葉には出来なかったからだ。
「何はともあれ、此れからだろう。それは、再認識できたわけだ……」
「そうだ。まずは我々が生きて帰ることが出来た。これは一つの情報になる筈だ。それが、次の一手になる……」
 葵依の言葉に頷きながら、隆治は合計4つのコギトエルゴスムを手に持ち、破壊した。
 そのキラキラとした輝きが風にのり、飛んでいく。
「さあ、帰るぞ。戦いは、始まったばかりなのかもしれない」
 隆治はそう言って、空を見上げた。
 透き通った青は、ケルベロス達をどう見ているのだろう。
 これから梅雨が訪れ、夏となる。その頃の自分達は、どうなっているだろうか。
 未来の自分達の行く末は……。
 ケルベロス達はそれぞれにそんな事を感じ取りながら、帰還したのだった。

作者:沙羅衝 重傷:湯島・美緒(サキュバスのミュージックファイター・e06659) サイレン・ミラージュ(静かなる竜・e37421) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年6月5日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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