ストロベリー・ジャーニー

作者:洗井落雲

●甘菓子兎、歌って踊る
「ふふふん、ふ~ん。ららら、る~」
 いちご農園への道を、少女が歌いながら歩いている。お腹に手を当て、呼吸ごとにひっこめたり膨らませたり……腹式呼吸を意識したトレーニングのようだ。
 少女は一見すると、とても愛らしい姿をしていたが、彼女の背後に控える異形の大男達により、彼女が纏う異常の雰囲気を強調させていた。
 背後に控える大男たちは、鍛えられた緑の体躯に、イチゴの頭を持つ怪人である。
 『ストロングベリー』と名付けられたその怪人は、デウスエクス、攻性植物だ。
 なれば、この少女もまた異形の存在。
 デウスエクス、攻性植物。『甘菓子兎・フレジエ』が、彼女の正体であった。
 フレジエは上機嫌の様子で、いちご農園へと進入した。突然の来訪者に戸惑う農園管理者たちであったが、じろりと睨みつけるように顔を向けるストロングベリーの威圧に委縮し、身体を縮こませることしかできない。
 フレジエは、その小さな手で、みのる真っ赤なイチゴを一つ、もぎ取った。
 そのまま口の中に運び、咀嚼する。もぐもぐと口をうごかし、飲み込んだ後に、フレジエはその可愛らしい眉をひそめた。
「このイチゴはいまいちですぅ、私にふさわしくないですぅ」
 ハンカチを取り出し、口元をぬぐいながら、フレジエは言う。
「こんなイチゴは必要ないから、めちゃくちゃにしちゃってくださぁい」
 そう言って、フレジエは農園を後にした。残されたストロングベリーは、フレジエの命令を完遂すべく、ゆっくりと動き始めた。

●いちご狩り
「爆殖核爆砕戦の結果、大阪城周辺に抑え込まれていた攻性植物達が動き出したようだ」
 アーサー・カトール(ウェアライダーのヘリオライダー・en0240)は、集まったケルベロス達に向かって、そう言った。
 攻性植物達は大阪市内への攻撃を重点的に行おうとしているようだ。恐らく、大阪市内で事件を起こすことで住民の排除を行い、大阪市内を中心に、拠点を拡大させようという計画なのだろう。
「大規模な侵攻、と言うわけではないが、このまま放置すれば、ゲート破壊成功率もじわじわと下がって行ってしまうだろう。それを防ぐためにも、事件を防ぎ、さらに隙を見つけて反攻に転じなければならない」
 ふむん、とアーサーは唸ると、
「さて、今回現れたのは、『甘菓子兎・フレジエ』と言う攻性植物だ。配下の『ストロングベリー』と言う攻性植物を連れ、大阪府近隣のいちご農家に現れた。フレジエは直ぐに姿を消してしまったが、フレジエに命じられ、いちご農家を攻撃しようとするストロングベリーが現場に残っている。これを撃退して欲しい」
 敵が現れたのは、郊外のいちご農園だ。敵はその農園にあるビニールハウスの中にいる。戦闘に巻き込まれてしまうのはもったいないが、農園としては、ビニールハウス一つの損害で済むのなら軽傷と言うものだろう。
 周囲の人々の避難や、封鎖は、連絡を受けた警察により行われる。また、農園の職員に関してだが、予知を大きく逸脱し、敵の襲撃が中止されてしまう可能性がある関係から、ギリギリまで作業を続けてもらっているが、敵の襲撃と同時に速やかに避難する様に、準備と連絡はしてもらっている。
 そのため、ケルベロス達が、避難誘導などを行う必要はない。敵との戦いに集中してもらいたい。
 敵となるのとは、2体のストロングベリーだ。それぞれ、ケルベロスで言う所の『ディフェンダー』と『クラッシャー』として行動する。どちらもケルベロス達が扱う『攻性植物』と同等のグラビティで攻撃してくるようだ。
「それから……農園ではいちご狩りはもちろん、併設されているショップで、いちごを使ったデザート……いちごのパフェやソフトクリーム、自家製のいちごのジャムなどが楽しめるようだ。ご褒美と言うわけではないが、首尾よく作戦を完了できたなら、楽しむ余裕もあるだろう」
 アーサーはそう言って、ヒゲを撫でた。
「フレジエの目的は分からないが、ひとまず襲撃は食い止めなければならない。君達の無事と、作戦の成功を祈っているよ」
 アーサーはそう言って、ケルベロス達を送り出したのだった。


参加者
シエル・アラモード(碧空に謳う・e00336)
パティ・パンプキン(ハロウィンの魔女っ娘・e00506)
芥河・りぼん(リサイクルエンジン・e01034)
古峨・小鉄(とらとらことら・e03695)
板餅・えにか(萌え群れの頭目・e07179)
西院・織櫻(櫻鬼・e18663)
風鈴・羽菜(シャドウエルフの巫術士・e39832)
春乃・ツクシ(癒しの風・e56846)

■リプレイ

●ケルベロス・ミーツ・ストロベリー
 ヘリオンより降下し、現場であるイチゴ農園へと到着したケルベロス達は、早速目標のビニールハウスへと向かった。農園にはいくつものビニールハウスが存在する。それを眺めながら、
「とても甘くて美味しそうな苺ですのに……」
 と、呟いたのは、シエル・アラモード(碧空に謳う・e00336)だ。外から見てもわかるほど、大きくて赤いイチゴの実。口にすれば、それは極上の味がするに違いない。
「……あら? あそこに大きな苺が見えますわ!」
 シエルが指さす。そこには、ビニールハウスの中でうごめく、大きなイチゴ――。
「うむ、間違いない! アレなのだ!」
 パティ・パンプキン(ハロウィンの魔女っ娘・e00506)が頷きつつ、言った。目標のビニールハウスの付近には、農園の作業員だろう、数名の人々が、恐る恐る中の様子をうかがっている。従業員の一人が、こちらに気付き、手を振るのへ、
「私達はケルベロスです。もう大丈夫ですよ」
 風鈴・羽菜(シャドウエルフの巫術士・e39832)が、穏やかに、従業員たちを落ち着かせるように言葉をかけた。
「後は私達におまかせください」
 羽菜の言葉に、従業員達は頷き合った後、ケルベロス達に頭を下げて、避難を開始した。それを見届けたのちに、ケルベロス達はビニールハウスへと突入する。
「うちらのシマで勝手に商売する観葉植物業者がいると聞いて駆けつけました。責任者の方へ連絡願えますかね?」
 と、板餅・えにか(萌え群れの頭目・e07179)が言った。その目でじーっと、ビニールハウス内に佇む二つの異形――『ストロングベリー』を睨むように見据える。
 えにかの言葉に、ストロングベリーたちはその視線を――目がないのでよくわからないが、とりあえず顔を向けた。ケルベロス達の姿を確認するや、ストロングベリー達はゆっくりと体を動かし、ケルベロス達と相対する。
「これがストロ……ングベリーっ。筋肉の育て方が理想的ですね! ……って、いやいや、そうじゃなくて!」
 言いつつ、芥河・りぼん(リサイクルエンジン・e01034)ぶんぶんと頭をふる。
「今回のあなた達の仕業! 理由は分かりませんが許せません! イチゴに謝ってもらいます!」
 りぼんはストロングベリーをびしっと指さしながら、宣言する。
 ストロングベリーたちの足元には、既にぐちゃぐちゃとなったイチゴの実や草が散乱している。
「せっかく実ったのに……皆、頑張って育てたのに……」
 その無残な姿を見ながら、春乃・ツクシ(癒しの風・e56846)が呟いた。そんな主の気持ちを代弁するかのように、ボクスドラゴン、『リンゴ』も、また悲し気に鳴いた。
「例え味が、いまいちじゃとしても、このきらきら輝く粒たちはちゃんと需要……特に俺にっ! ……あるんじゃから潰したらイカン」
 古峨・小鉄(とらとらことら・e03695)の言葉に、ボクスドラゴン、『お花ちゃん』もまた、むっ、とした様子でストロングベリー達をにらむ。
 その言葉を聞いたかどうかはわからない。だが、ストロングベリー達は、ケルベロス達に向かい、ファイティングポーズをとった。こちらを邪魔者と認識したらしい。
「苺を斬る……なんとも奇妙な感覚ではありますが」
 西院・織櫻(櫻鬼・e18663)が呟きながら、腰の刀に手をやった。
「苺頭は斬ると苺の汁が出るのか血が出るのか。我が刃の新たな糧となるか否か、試させて頂きます」
 その刀を抜き放つ。それを合図にしたかのように、ストロングベリー達の身体から、ぶわり、とプレッシャーのようなものが発せらるのを感じた。恐らくは、殺気。
「おーおー、やる気かしら。責任者はお呼びいただけないようで」
 えにかが肩をすくめつつ、言った。
「いずれ責任者に話はきかせてもらいますけれど、ええ。今は貴方達への対処が先決」
 えにかもまた、武器を取り出し、構えた。それを合図にするように、ケルベロス達は各々構える。
「苺は野菜界の裏切り者。苺と苺の攻性植物は滅ぼさねばならないわけですよ。そう言わけで、この私、生の苺は絶対食べないえにかさん! 苺ジャムにされたければ――」
 自分の好き嫌いが多分に含まれているわけだが、それはさておき。えにかはすうっ、と息を吸い込み、
「かかってきなさい!」
 啖呵を切る。
 その言葉に、ストロングベリー達は、ぐっ、と体に力をこめる。口があれば、吠えていただろう。それが開戦の合図となった。

●ぼくらのストロベリー・ウォーズ
 さて、敵はディフェンダーの役割を果たすストロングベリー……以下、盾苺と呼ぶことにするが、この盾苺と、クラッシャーの役割を果たすストロングベリー、以下、剣苺と呼ぶ、この二体である。
 盾苺は剣苺をサポートしつつ、剣苺が全力攻撃を行う。戦法としては、オーソドックスな物だろう。
「みんな! 後で苺が待っておるのだ!」
 パティが縛霊手を振るえば、戦場にジャック・オー・ランタンの様な紙兵が舞う。かぼちゃの紙兵は仲間たちの元へと赴くと、その身を以てケルベロス達のサポートを開始する。パティのボクスドラゴン、『ジャック』は封印箱に入り込み、箱ごと盾苺にアタック。
「そうですわね、苺のスイーツに苺狩り……あら、これも苺狩りと言うのでしょうか……?」
 『青碧の龍戦槌』を砲撃形態に変形させて、竜砲弾を放つシエル。盾苺はこれを受け、吹っ飛ばされる。すぐさま体を起こすが、そのダメージはしっかりと足へと来ているようだ。
「私は生の苺はノーサンキューだけれど、狩るのならお手伝いするわよ」
 えにかが言いながら、その手を振るう。天空に召喚された無数の刀剣が、さながら豪雨のごとく、盾苺と剣苺、両者へと降り注ぐ。盾苺は剣苺を庇うように動き、その攻撃を受けた。盾苺の身体が切り裂かれ、内部に見えるは人骨である。それははったりであろうか、或いは、かつての犠牲者であろうか?
「苺狩り、いいですね! 丁度時期も詰み時ですっ!」
 名前通りの『大型スパナ』を振り回して、りぼんはイチゴ畑を駆ける。大型スパナを鋭く突き出し、その先端を盾苺の首を挟み込むような形で、
「出荷するには、イチゴだけにしないと駄目ですよねっ!」
 言葉通り、首と胴体を泣き別れにするかのような、狙いすまされた一撃が、盾苺の首に痛烈な打撃を与える。
「なるほど。では、余分な所を刈り取らせていただきましょう」
 淡々とした様子で、織櫻が言った。携えるのは二振りの刃。『瑠璃丸』と『櫻鬼』。瑠璃の象嵌と桜の象嵌が目をひく。
 ふっ、と一息吐くや、織櫻は盾苺へと迫る。一閃。常人には、恐らく、何かがきらりと光ったとしか認識できないであろうその斬撃は、盾苺の四肢を切り裂いた。まさにその斬撃、遍く全てを断ち斬る閃刃。『雨音断ち(アマネダチ)』と名付けられたその業、まさに神速の刃。
「鯖っこ3匹、俺と同じ盾役じゃ。皆まとめて面倒見たるじゃ、俺に続けーっ!」
 小鉄はガジェットをドリルへと変形させて突撃。三匹……とはいかなかったが、お花ちゃんも封印箱によるタックルで、小鉄に続く。盾苺は、二人の攻撃を受けて、ついに片膝をついた。
 もちろん、デウスエクス達も黙ってやられているわけではない。
 盾苺はその身を癒すことに専念したが、剣苺は苛烈な攻撃を繰り出している。その腕をハエトリグサの様な形状に変化させて振るうと、腕が伸び、巨大な口がケルベロス達へと迫った。その口には何やらねばねばとした液のようなものが滴っている。毒であろう。
 その攻撃を遮るように飛び出したのは、お花ちゃんだ。噛みつくように閉じるその口に対して、その身体で防御する。
「お花ちゃん!」
 小鉄が思わず叫ぶ。お花ちゃんはハエトリグサから逃れて着地。ぷるぷると頭をふった。
「流石じゃ! 俺も負けてられないの!」
 と、小鉄。
「すぐ、治療しますね……!」
 ツクシは慌てて、ぶん、と拳を振るった。それがオウガの治療法なのである。負傷を吹き飛ばす拳の風圧は、お花ちゃんを直撃。与えられた毒もろとも、負傷を吹き飛ばした。
 リンゴも、味方ケルベロス達へ、自身の属性を注入。これによる援護を行う。
「お二人とも、お熱くなっているのでは? 少し冷まして差し上げましょう」
 羽菜がふうわり、と手元の九尾扇を振るわせれば、その羽はそれぞれ伸びて鞭のようにしなり、苺達を打ち据える。同時に流される冷気が、苺達を冷やし尽くした。
 そうしながら、足元を見やる。戦闘の余波で散らばってしまったイチゴの姿が、あった。仕方のないこととはいえ、やはり気分は良くない。
「……あまり被害の出ないうちに、戦いを終わらせたいですね……」
 呟く。その言葉に、
「はい……イチゴさん達に、これ以上傷ついてほしくありません……」
 ツクシが頷く。
「もったいないのだー!?」
 じたばたとしつつ、パティが言った。続いて、むっ、とした表情でストロングベリー達を睨みつけつつ、紙兵を散布。ジャックはブレスを吐いて、盾苺を攻撃。
「そうですわね。こんなに美味しそうな苺ですもの、これ以上無駄にするわけにはまいりません」
 シエルは青碧の龍戦槌で、盾苺を強かに打ちつける。全身を打ちつけた盾苺が、よろよろとした様子を見せた。
「なら、いい加減退場してもらいまサー!」
 えにかが言った。途端、世界に一匹の獣が現れた。それは、古の神獣の叡智より生まれた幻影。
「『四本ニ本三本足(アサハヨンホンヒルハニホンヨルハサンボン)』――人間様に1と5はないんだぞ苺やろー!」
 その幻影は瞬く間に消えたが、確かなダメージと混乱を、ストロングベリー達へと与えていた。
 りぼんが大型スパナで再度殴り掛かり、織櫻がそれに追撃を加える。
「まずは一つ――」
 静かに言うと、雷の霊力を纏わせた刃で、鋭い突きを放つ。その一撃は深々と盾苺の首に突き刺さり、次の瞬間にはその頭部が宙を舞った。
「畳みかけるんじゃ!」
 小鉄の言葉に、ケルベロス達は頷いた。小鉄は手りゅう弾を投げて攻撃、お花ちゃんはブレスでそれに追従する。
 剣苺は、えにかの幻影に惑わされたままなのか、その身を動かすことはない。
「リンゴ、もう少しだよ……!」
 ツクシの言葉に、リンゴが頷く。ツクシとリンゴはそれぞれケルベロス達を回復し、最後のラッシュへの援護とした。
「では、私からも……」
 羽菜が優雅な所作で、星型のオーラを剣苺へと蹴りつける。直撃した剣苺の皮膚のようなものが剥げ、内部があらわになっていく。
「小鉄、シエル、りぼん……力を貸して欲しいのだ!」
 パティの言葉に、三人は頷いた。
「では参りましょう――」
「季節外れだけど、盛大にっ!」
「『It's a Halloween Project(トリック・オア・トリート!)』じゃ!」
『ようこそ、終わらないハロウィンの世界へ!』
 四人が声をあげると、瞬間、世界が変わった。そこは洋館の吹き抜けエントランスホール。これより始まるは、ハロウィンの魔物たちによる、盛大なパーティ。
「かぼちゃのランタンに追いかけられて――」
 パティの言葉通りに。生まれたジャック・オー・ランタンが、剣苺を斬りつけ。
「嘆きの妖精の葬送歌――」
 シエルの言葉通りに。嘆きの妖精達の歌が、剣苺の魂を揺さぶり。
「足下注意っ! 怪我一生っ――」
 りぼんの言葉通りに。突如床が崩壊。現れた巨大な手が、剣苺を強かに打ちつける。
「最後は虎に、斬られて終わり、じゃ」
 小鉄の言葉通りに。一匹のワータイガーが、その爪を研ぎ澄ませて剣苺を待っていた。
 館が消えれば、全ては終わり。
 すっかり元の風景に戻った後には、倒れたストロングベリー達が残るのみ。それもやがてしおれて溶けて、姿を消したのであった。

●ストロベリー・パーティ
 戦闘後、ケルベロス達は可能な限りのヒールを行った。ちなみに、ビニールハウス等はえにかの手で直すそうだ。
「いい女はビニールハウスの張り替えくらい嗜んでるもんですよ」
 とは本人の弁。
「……できる限り、ヒールは出来ましたけれど……」
 ツクシは言う。イチゴの草にあたる部分はヒールで治すことができた。だが、そこまでだ。なっていた実を元に戻すことはできない。無残な姿をさらすイチゴ達。その一つを取り上げて、
「このままでは、可哀想です……何とか、してあげたいですが……」
 そう言ってしょげかえるツクシに、
「そうねー。私は生の苺は食べない、と心に誓っているのだけれど――」
 えにかが、そう言って、苺を一つ、拾い上げた。
「これくらいならまぁ。よーく洗って、苺ジャムくらいにはなるかしらー。私、苺ジャムなら食べるのよー」
 そう言って、ツクシに笑いかけた。
 ツクシはその言葉に、笑顔を見せて頷く。
「あちらに籠がありましたよ」
 羽菜が言いながら、イチゴ摘み用の籠を持ってくる。
「こんなに美味しそうな苺なのですもの。無駄にしてはもったいないですよね?」
 そう言って、柔らかい笑顔を見せた。

 さて、可能な限りの苺を回収し、ケルベロス達は一息つく事とした。イチゴ農園に併設されたショップには、農園とれたての苺を使った様々なデザート類がある。
「良い苺のパイですね」
 試食品のパイをかじり、織櫻が言う。
「これを……お土産で欲しいのですが。10箱ほど」
 その言葉に、店員が思わず聞き返すと、
「ええ。大丈夫、無駄にはしませんよ。むしろ、私と相方が本気で消費すると数日もつかどうか……」
 と、織櫻は返したのである。
「パフェ食べたいです! あ、あとソフトクリームに……苺ジャム買って帰りましょう!」
 目を輝かせ、ひときわ元気に言うりぼん。
「ふふ……りぼん様、落ち着いてください」
 楽しげに言いながら、落ち着いた所作で、口元にパフェを運ぶシエル。隣では、パティが同じく、大きなイチゴパフェをぱくついている。
「うむ、ろーどーの後のイチゴパフェは最高なのだ!」
 にこにこ笑顔でパティ。ジャックとお花ちゃんも、一緒にデザートを堪能しているようである。
「むむ……パンナコッタに苺ゼリー……まるで宝石みたいじゃ……」
 感動の声をあげつる小鉄。パティもそれらへ視線を移し、
「それ、ずるいのだ。おいしそうなのだー!」
「パティ、俺もそれ欲しーじゃ!」
「では少しずつ交換なのだ」
 と、パティと小鉄は、小皿を用意してもらって、少しずつそれを分け合った。
「むむ……皆さんのもおいしそうです……っ!」
 りぼんもまた、テーブルの上に並べたお皿を眺めて、
「うう、今日はダイエットとか、そう言うのは色々と忘れますっ! お腹がいっぱいになるまで食べますよっ!」
 りぼんの言葉に、
「もう、皆様程々に……でも」
 シエルはそう言って、
「やっぱり、皆で食べると、一段と美味しいですわね」
 幸せそうに笑うと、追加のオーダーをお願いするのだった。

作者:洗井落雲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年6月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 1
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