城ヶ島強行調査~渦の中へ

作者:林雪

●城ヶ島強行調査敢行
「ついに、ついに城ヶ島の強行調査が行われることになりましたよっ!」
 いくぶん興奮した様子で、ヘリオライダー笹島・ねむがいきなりそう切り出した。
「城ヶ島、ドラゴンが多すぎてちょっと手が出せなくて攻略出来ないでいたんですけど、アーキ・ランレイト(異能銃士・e12006)くんを始め、城ヶ島攻略に向けた、たーくさんの立案があったので! よって! 作戦敢行ですっっ! みんな、がんばってー!」
 片腕をぐるぐるっ! と回し先に激励してしまってから自分の役目をはたと思い出し、ねむがええと、と降りてきたスクリーンを示す。
「作戦、説明しますね。三浦半島南部、城ヶ島……今回の、目的地です。城ヶ島は鎌倉奪還戦と同時にドラゴン勢力に制圧されちゃって、今も彼らの拠点になってます。これまでに町中に現れて暴れたりしたドラゴンは、ここから外に出てきた個体、ってことになります」
 大多数はこの城ヶ島拠点に留まり守りを固め、配下のオーク、竜牙兵、ドラグナーを操り事件を引き起こしあわよくば拠点を広げようとしていると考えられる。
「この、真ん中に写ってる橋、城ヶ島大橋っていいますが、三浦半島の先端から城ヶ島につながってる、唯一の陸路です。アーキくんからは、これを抑えようって提案をもらいましたー」
 ぱちぱちー、とねむが手をたたく。

●城ヶ島侵入作戦
「と言っても、いきなり正面から行くのは無謀なのです。なので、今回は部隊ごとに侵入作戦を立ててもらって、いっぺんに多方面から城ヶ島を探るです。どれか1部隊でいいから情報を持ち帰ることができれば、それを元に本格的な攻略作戦が立てられますからねっ」
 城ヶ島内部の敵戦力、拠点情報など内部の様子を探る。危険ではあるが重要な任務である。
「肝心の城ヶ島への侵入方法なんですが、ヘリオンがみんなを送れるのは、三浦半島南部まで、です」
 空域には、既に飛行能力を取り戻したドラゴンが多数警戒に当たっている。ヘリオンでつっこめばどうなるかは火を見るより明らかだ。
「なのでそこから先は、部隊ごとに作戦立案をお願いしまーす。こちらでご用意できるのは小型の船舶とか潜水服、水陸両用車などなど、ですので、作戦にあわせて申請して下さいね」
 それから、とねむがすこし表情を固くした。
「見つからないで城ヶ島に侵入出来れば調査が行えますけども、敵に発見されてしまった場合は、そのままドラゴンとの戦闘になるです。場所は敵の拠点ですから、たとえ一匹倒せてもすぐ別のが来ちゃうので、それ以上の調査はきっと無理です」
 ねむが顔の前に指でバッテンを作ってみせる。
「でも戦闘になっちゃったときは、他の部隊の調査が成功するように、なるべーく派手に戦って囮になる、っていうのも重要な援護になると思うです!」
 もちろん、ねむは無茶をしろと言っているわけではない。
「空にも海にもドラゴンがいる場所の真ん中に向かって行く、すごく、すごく危険な任務です。巣の中に足をつっこむようなものだって、思います。だから絶対、無理しないで。危ないって思ったら、すぐ撤退するのだって勇気だって、ねむは思いますよ」


参加者
ラビ・ジルベストリ(噛み合わぬ歯車・e00059)
芦牙也・紅羽(白面金毛二尾の狐・e00260)
ビスマス・テルマール(なめろう鎧装騎兵・e01893)
ナギサト・スウォールド(老ドラゴニアンの抜刀士・e03263)
メロウ・グランデル(メガネ店経営ケルベロス・e03824)
据灸庵・赤煙(ドラゴニアンのウィッチドクター・e04357)
イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)
アーキ・ランレイト(異能銃士・e12006)

■リプレイ

●渦の中へ
「(思った以上に読みづらく、激しいようじゃの)」
 ナギサト・スウォールド(老ドラゴニアンの抜刀士・e03263)はそう思いつつエンジンを切る。操舵を担当する彼は、この海の潮の流れに胸のざわつきを抑えきれない。
「(最悪の場合のことも想定しておかねばなるまい……)」
 その胸中を察知したかのタイミングで、据灸庵・赤煙(ドラゴニアンのウィッチドクター・e04357)が声をかけた。
「龍が出るか蛇が出るか……なんて。下手な洒落でしたね」
 穏やかな赤煙の口調に、ナギサトも表情を緩める。一瞬交わした視線で、互いに覚悟のほどがわかった。
 目指すは城ヶ島。
 船にはあらかじめ、漂流物に見えるよう細工がしてある。樹皮やツタなどを括り付け、塗装を剥がし傷をつけた。乗り込むケルベロスたちも勿論、それぞれに工夫を怠っていない。
「(任務は任務として頑張りますけど、竜の角……うふふ♪)」
 メロウ・グランデル(メガネ店経営ケルベロス・e03824)もまたしっかりと隠密気流を発動し、体の露出部には泥を塗りと完璧に装備を整えつつ、秘めた目的への期待に胸躍らせていた。
「敵は強い方がやり甲斐があるわ。乗るか反るか、全力を尽くさないと、ね!」
 強気を崩さないのは、芦牙也・紅羽(白面金毛二尾の狐・e00260)。不安がないわけではないが、持ち前の負けず嫌いがそれを吹き飛ばそうとする。
 たぷん、たぷんと波が船の横腹を打つ。
「静かですね……」
 イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)が、マルチカム柄のシールを貼った刀の鞘をなんとなく撫でて呟いた。
 一方、記録用の端末を胸元に下げたラビ・ジルベストリ(噛み合わぬ歯車・e00059)は、大きな帽子からスマホを次々取り出し、設定を確認していた。サーヴァントのナメビスの様子をみていたビスマス・テルマール(なめろう鎧装騎兵・e01893)が、驚いて覗き込む。
「ラビさん、ずいぶんいっぱい持っていらしたんですね?」
「なに、ちょいと拝借してきた。他人の金を贅沢に使うってのはなかなか気分がいい」
 機嫌よくそう言って、画面をタップする。記録用、ネット配信用に複数持参したらしい。
「最近の電話は凄いのぉ。手の平パソコンじゃ」
「ちょっとナギサト、年寄りくさいわよ」
「くさいもなにも、正真正銘の年寄りじゃ」
 紅羽とナギサトのやりとりで、皆少しだけ肩の力が抜けた。とはいえ、緊張感が失われたわけではない。
 彼らを乗せた偽装船を先行する形で、船影が3つ、海上を走る。同じタイミングで出航した仲間の、小型船が2隻と水陸両用のホバークラフト1隻。
 先よりアーキ・ランレイト(異能銃士・e12006)は、城ヶ島を真っ直ぐに見つめていた。この任務の向こう側にある決戦。その予感に震えと、それ以上に武者震いを禁じえなかった。そこへ。
「……来たぞ」

●海上戦
 アーキの言葉に、他方向を見張っていた全員の視線が、城ヶ島方面に集まった。
 迎撃に出てきたのは3体。体は小さめだが、ひどく荒っぽく攻撃的な気配がここまでひしひしと伝わってくる。
 飛来したドラゴンたちは、あっという間に目の前の3隻の船に襲いかかった。ブレスを吐き、牙を剥き、恐ろしい声を上げる。しかし、こちらの船に向かってくる竜はいない。どうやらうまく目をあざむけたようだ。
 船は潮に流され続ける。このままうまく城ヶ島へ流れ着ければ、潜入成功だ。だが。
「……皆さん……!」
 ビスマスが祈るような声を出す。目の前で繰り広げられる戦いを今はただ、固唾を呑んで見守ることしか出来ない。
「きついな、これ」
「ええ、想像以上に……」
 アーキと赤煙も、押し殺した声で言う。戦況が、ではなく、黙って見ていなくてはならないことが、だ。
 しかし今は、これこそが自分たちに与えられた使命なのだとぐっと堪え、気配を殺すことに集中する。
 乱戦の中、ホバークラフトが飛び出した。逃がすまいと取りすがったドラゴンを、遠距離グラビティが迎撃する。攻撃に気圧され、ホバーを取り逃がした赤い翼竜は、怒りも露わにすぐさま別の船に攻撃を転じた。
「……!」
 メロウのピンクの瞳が、大きく見開かれる。接近戦だ。赤い竜に乗り移られた目の前の船が、巨体の重みで傾ぐ。しかも、もともとその船を襲っていた蒼い竜も、まだ元気に空から雷のブレスを吐いてくるのだ。
「2体がかり……!」
 紅羽がくやしげに拳を握り締めた。出来るものなら船を飛び移って加勢したかった。同じ光景を呆然と見つめ、無意識に刀の柄に手をかけていたイリスを、ナギサトの声が諫める。
「気を鎮めるのじゃ、今は心に凪を」
 赤い翼竜の撃破と引き換えに、1隻が沈む。残る1隻の周囲を、毒々しい紫の翼と蒼色の翼が取り囲んだ。冷徹に状況を見据えながら、ラビは全体の戦力の勘定をする。
「(あれは……!)」
 その時、ビスマスの目に映ったのは、城ヶ島から飛来する3つの黒い影。新手が、と驚愕する間すらなく、3体のドラゴンは疾風のように飛び去った。船に残った仲間たちの安否を思えば、いやな汗をかかずにはいられない。
 それから、どれだけの時間が経ったのか。
 残る1隻も、最終的に4体を相手どっての奮戦の後に沈んだようだった。
「(ホバーはどうなった……?)」
 ラビがふと考えるが、今はそれもわからない。
 とぷん、とぷん。
 恐ろしく長い時間、波に揺られているような気分になる。得体の知れない渦の中に飲み込まれてしまうような、漠然とした不安。いつしか全員、目を閉じていた。
 ゆっくりと、ゆっくりと。
 ……。

●漂着・上陸
 着岸時は、静かだった。先の光景が夢か幻ででもあったかのようだ。どこか呆然とした声で赤煙が呟いた。
「着いた……」
 周囲を警戒しながら、8人は素早く船から陸へ。アーキが地形と地図を素早く見比べて言った。
「常光寺方面、ではなさそうだな」
「やはりか。反対側に流されたようじゃ」
 ナギサトが応じる。
 誰からともなく、空を見上げる。ドラゴンの姿はまだ見えない。
「あれだけ派手に戦ってくれれば、そりゃドラゴンもこっちに目をくれてる暇なんてなかったわよね……」
 紅羽が先の海上戦を脳裏に反芻して、言った。皆、同じ気持ちであったらしくそれぞれに頷く。
「おかげで、無事に上陸できました」
 海の方へぺこりと頭を下げ、ビスマスが仲間に向き直る。
「急ぎましょう。敵を引きつけてくれた皆さんの行動、無駄には出来ません」
「人類の命運はまさに俺たちの肩にかかっている。彼奴等の企みは何としても潰しておかねば、な」
 と、アーキ。
「ですね、何一つ見逃しませんよ!」
 メガネの位置をただして、メロウも力強く言い放つ。
 海は渡りきったが、敵の巣の中にいる状況は変わらない。先よりもなお警戒を強めて、一行は先に進む。
 とりあえずはスマホで現在位置を確認し、もっとも近い施設である、神奈川県水産技術センターを目指した。舗装された道路脇には、身を隠すのに丁度いい茂みが沢山ある。隠密気流、マルチカムそして泥と、視覚嗅覚にわたり装備は完璧。隠された森の小路も駆使し、移動はスムーズだった。
 神奈川県水産技術センター。その施設は闇色に染まっていた。
 もともと黒かったわけではなく、ドラグナーの力で『黒き塔』と化してしまっているようだ。建物に近づき過ぎない位置からまずは慎重に、様子を探る。
「あ! あれ、あれ見て下さい!」
 水産センターに面している海の方を双眼鏡で見ていたメロウが、声をあげた。 
「オークか。ちょっと拍子抜けだが、確かにえらい数だ……目分で100以上」
 ラビが同じく双眼鏡で見ながら状況を伝える。
 とにかくもう少し近くで様子を見ようと、一行は慎重に物陰に身を潜めつつ、センターに面した海の方へ近づいていく。すると。
 波打ち際付近で、オークが隊列を作っているのが見えた。
『前へ!』
 合図とともに横一列が沖に向かって泳ぎだし、浮いているブイに触れてまた戻ってくる。その動きを、黙々と繰り返している。
「泳いでる、みたいだな」
「オークって泳ぐんですね……」
「犬かきでなく豚かき、ってことかの?」
 ぽつりぽつりと、各々思ったことを口にする。しばらく観察してみたが、豚かきは案外早い、くらいの感想しか出てこない。
「まあ城ヶ島の防衛のための水中訓練だろうな……ん?」
 さして重要な情報でもないかと切り上げを提案しようとしたアーキが、違和感に言葉を切った。ほとんど同時に、ビスマスも『それ』に気づいたようだった。
「え……」
「ああっ」
 メロウが思わずメガネのレンズを拭いてみる。しかしやはり、皆同じものが見えているようだ。
「あ、あのオーク……水かきがある!」
 見れば、水からあがってきたオークの手は異様に大きく、指と指の隙間に膜のようなものがある。こんなオークは誰も見たことがなかった。アーキが首を傾げる。
「新種のオーク……ってことか?」
「これは要調査、ですね」
 イリスの言葉に一堂が頷いた。ここまで来たのだ、より詳細な情報を持って帰らないわけにはいかない。
「よし、締めあげて洗いざらい吐かせるか」
 ラビが赤い瞳をニヤリと細める。
 具合良く、3体のオークが訓練場を離れていくのが見えた。どこの世界にも、サボりの常習犯はいるものだ。
 あまり綺麗でない浜辺に、ごろりと身を横たえているオーク3体。だがベラベラしゃべりながら下品に笑い転げたり、触手を蠢かせたりするので、全然落ち着いて観察出来ない。
 これはもう。
「撃破して調べるしかありません! オーク、覚悟!」
「賛成です、動かないで!」
 耐えかねたらしいビスマスとイリスが同時に飛び出し、オークに向かって叫んだ。
『ブヒィ?!』
『なっなんだぁ! オンナが湧いた!』
『オンナのにおいなんざしてなかったぞ?!』
「うっさいわよ! 黙ってやられなさい!」
 船から続いた隠密行動の反動か、紅羽も思いっきり砂を蹴ってオークに向かっていく。速攻で勝負を決めてしまいたいのだ。
「こうなったらオークを徹底的に調べますよー!」
 心に秘めていた目的、ドラゴンの角が甘いかどうかの検証が出来そうもなくなったメロウも、八つ当たり気味に突撃する。
「なかなか行動が早いな、うちの女性陣」
「感心しとる場合か、ゆくぞ」
 ラビとナギサト、赤煙が後衛に、アーキも配置につく。
「調べます、あなた方を徹底的に!」
 と、イリスが刀を抜き払い、いきなりの銀天剣・零の斬をぶちかます。
「絶対逃がしません! 目標捕捉、なめろうスプラッシュランチャー……シュート!」
 ビスマスの攻撃に、同じくスナイパーとして布陣していたナメビスとのコンビネーションが発動、大ダメージ! そこに赤煙のドラゴンブレスが、右往左往するオークたちを丸焼きにする。
「ほら――跪きなさい! 無様にね……!」
 この場面での紅羽のセリフは実にしっくりきた。集中砲火からの踵落としを浴びた1体目のオークは、手も足も出せぬまま彼女の前に永遠にひれ伏すことになった。
『ヒギエェエー?!』
「よしよし、私が治してやろう……」
 体勢の整わないオークに、ラビが薄い笑顔とともに放ったのは『無痛の鋭刃』回復と見せかけて思い切り斬撃、という偽りの一撃である。
『嘘つきッッ?!』
 のけぞったオークにナギサトが追い討ちをかける。放ったそこには剣閃すら見えず、チン、と刀が鞘に収まる高い音のみ。ようやく斬られたことに気づいた、という風にオークが悲鳴を上げる。
「竜の角舐めたかっ、たー!」
 と、叫んで跳び上がるメロウ。まあ実際は語尾のみを大声にしたので、気合いの声にしか聞こえない。秘めた野望は秘密のまま、炎の蹴りをぶちかます!
「ドラゴン狩りの予定が、当てが外れたが。手ぶらでは帰れないからな!」
 アーキの竜爪撃の重たい一撃がまともに入り、早くも2体目が討ち取られる。
『ケルベロスがなんでここに……』
「逃がしませんと言いました!」
 残された1体が仲間の元に走ろうとする行く手を遮り、イリスの剣が雷光を纏う。鋭くオークの喉を突くのと同時にウイングキャットのリムと、ボクスドラゴンのスーのが襲いかかる……。
 フルボッコである。サボりはダメ、という戒めにもなったのではなかろうか。
「大人しくしてもらいます!」
 ビスマスの手から魔力とともに白いハリネズミ『ルイ』が放たれ、決定打となった。

●発見
 倒れたオークが3体並ぶと、ちょっとした魚河岸の光景だ。全員で見えるようにぐるりと取り囲み、仔細に観察する。ビスマスが目を丸くして、改めて言った。
「……やはり水かき、ですね」
「あ、見て下さい、こっちの手」
 メロウが示すのは、右端のオークの手。体格は他と変わらないが、水かきだけが小さい。
「不完全なのもいる、ってことか」
「これ、もしかして鰓でしょうか?」
 イリスが、動かなくなったオークの顔の側面を指さして眉を顰める。
「よく見えんな」
 と、ラビがオークの顔を靴先で軽く蹴っぽって横向きにさせた。
「鰓、に見えるのう?」
「鰓があるなら、鰓呼吸もできちゃうってことでしょうかね?」
 ナギサトとビスマスがそう言い合う横で、写真と動画撮影をしていたラビがぼそりと言った。
「しかしこうなると、オークってより……太った河童だな」
 肩を小さく震わせて、ビスマスがたまらず口元を押さえて笑いだしてしまう。
「す、すみません、私も全く同じこと思ったもので」
 つられるように、赤煙も吹き出す。
「た、確かに……お皿はありませんけど、河童ですよね」
「ち、ちょっと……やめてよ変なこと言うの」
 そういう紅羽も必死で笑いを堪えている。
 ナギサトが一緒に笑いそうになりつつも、考察をまとめた。
「オークはデウスエクスの中でも下等な、つまり原始的な種じゃからな。環境に応じて体を変化させていくことが出来るのかもしれん」
 イリスが辺りを見回し、横たわるオークにちらりと視線をやってから、告げた。
「記録も取りましたし、もはや長居は無用と思われます」
「賛成だ。帰還しよう。あそこに潜入出来る隙はない」
 イリスと同じく帰還指示を担当するアーキも頷く。水産技術センター内部で、何が行われているのか気になるのは山々だが、黒い建物には残念ながら侵入出来る隙が見あたらない。
「……他のチーム、どうなったかしら」
「心配ですね……」
「別に、ちょっと気になっただけよ!」
「ええー?!」
 紅羽とメロウの会話をもうちょっと聞いていたい、などと思いつつも、赤煙が口を開く。
「急ぎましょうか。さっきの3体が戻ってくる前に。釣果としてはまずまず。ボウズにならず良かったですね」
 赤煙の声に促されて、一堂は来たとき同様の警戒を怠らず、その場を後にする。
 ふと顔を上げたアーキの視界に、城ヶ島大橋が映った。
 必ず、取り戻してやる。 
 決戦の時は近い。

作者:林雪 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年11月24日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 11/感動した 2/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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