薄暗い鍾乳洞の中、宙に浮かんだディスプレイの上を、不可思議な言語が滑っていく。中心には分厚い眼鏡の少女。示された答えを素早く確認すると、竜性破滅願望者・中村・裕美はにんまりと笑った。
「ついに見つけたわ……。お前達、この場所に行ってドラゴンの封印を解くのよ」
ドラグナーの少女は周囲に控える漆黒の異形に指示を出す。数体いるそれは黒い鱗に竜の翼、赤い瞳を持つ。それらもまた、ドラグナーであった。
「忘れないで、お前達の役目は目覚めたドラゴンの餌になること。グラビティ・チェインを捧げるために存在しているのよ」
異形のドラグナー、ケイオス・ウロボロス達はデータの示す場所を確認すると、鍾乳洞をゆっくりと出て行く。その背を見送り、中村・裕美はつぶやいた。
「全ては、ドラゴン種族の未来のために」
ぎゃあぎゃあと鳴きながら、四体のケイオス・ウロボロスが小さな島の崖に降り立った。その人語とは明らかに異なる不快な音こそ、封印を破る呪文だ。鳴き声の高まりと共に波が荒れ始め、やがて海の中から巨大な影が飛び出した。
しぶきの中から、青い巨体が空へと伸びる。長いひげ、二股に分かれた一対の角。太い手足と十数メートルはあろうかという長い体。その目は飢餓に狂っているが、ケイオス・ウロボロスはその場から動かない。
飢えた龍、タイダル・ネプトゥヌスがケイオス・ウロボロスに襲いかかる様はまさに津波。圧倒的な質量で叩き潰し、その牙で噛み砕き、グラビティ・チェインを吸収していく。
――――オ、オ、オ、オォォ!
たった四体のドラグナーで飢えを満たしきれるはずもなく、タイダル・ネプトゥヌスは吠え声を上げる。次なる獲物を、より多くのグラビティ・チェインを求めて。
信田・御幸(真白の葛の葉・e43055)らの危惧は現実のものとなった。アレス・ランディス(照柿色のヘリオライダー・en0088)は重々しく事態を告げる。
「奴らは、大侵略期に封印されていたドラゴンを探し出して戦力に加えるつもりのようだ」
作戦を実行しているドラグナー自体は、目覚めたドラゴンに即座に食い散らかされてコギトエルゴスム化している。
「そちらはコギトエルゴスムを破壊してしまえばいいが、問題はドラゴンだ」
飢えと定命化により狂気に陥ったドラゴンとは、会話どころか意思の疎通すら厳しいだろうと見られている。しかしそれゆえに凶暴化しており、人里に到達されてしまえば、その被害は計り知れない。
「幸いというべきか、戦闘が始まればドラゴンは弱体化していく。そこを耐えきることが出来れば、勝機も見えるだろう」
耐えるべき時間は、戦いを始めてからおよそ十分間だとアレスは見積もっている。その時間が過ぎれば、ドラゴンは弱体化し勝ち目が見えてくる。
ドラゴンの大きさは尻尾まで含めておおよそ十四メートル。崖の上で、海を背にしている。周辺は岩場であり、海水に濡れてはいるがケルベロスならば問題なく移動できるだろう。
「最大の特徴は咆哮による津波だろう。これは離れていても逃げ切れんから、十分注意してほしい」
現地には少し高い岩もいくつかあり、登ればドラゴンの上を取ることはできる。しかし津波や長い尾でのなぎ払いは、岩の上でも射程に収まってしまう。爪によって切り裂こうと、ドラゴンが飛びかかってくる恐れもある。岩の上であっても安全圏ではない。
「定命化が始まっているとはいえドラゴンだ。厳しい戦いになるが、どうか無事に帰ってきてもらいたい」
ケルベロス達に告げた後、アレスは独り言のように言う。
「それにしても、こんな状態のドラゴンまでかき集めるとは。連中は何が狙いなのだろうな……」
参加者 | |
---|---|
ウォーグ・レイヘリオス(山吹の竜騎を継ぐもの・e01045) |
御門・愛華(竜喰らい・e03827) |
レイ・ジョーカー(魔弾魔狼・e05510) |
宇原場・日出武(偽りの天才・e18180) |
卜部・サナ(仔兎剣士・e25183) |
ルチアナ・ヴェントホーテ(波止場の歌姫・e26658) |
ウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591) |
一比古・アヤメ(信じる者の幸福・e36948) |
●かの龍は波濤に在りて
空の青と海の蒼の狭間に、その龍はいた。既にドラグナーは殺され、破壊すべきモノも無い岩場に、その尾を踊らせ岩を砕く。その姿はまさに、理性無き暴虐。タガが外れたが故のエネルギーは、現場に駆けつけたケルベロス達を圧倒する。
「凄いパワーを感じるよ」
卜部・サナ(仔兎剣士・e25183)は愛刀【星火燎原】の柄に手をかけ、油断なく状況を見据える。あんな化け物を野放しにしては、枕を高くして眠ることは不可能だ。
一方でルチアナ・ヴェントホーテ(波止場の歌姫・e26658)は悪戯っぽく笑った。
「きっと今の私の実力を知るに最高の相手ね」
大侵略期のドラゴン。封印から目覚め、定命化を目前にして理性を失ってはいるが、強力とされるこの難敵を沈められれば、強さの証明になるだろうか。友人であるサナと上手く連携して戦えば、勝機は見えるはず。それは荒ぶる龍には無い力だ。
「哀れな」
かつてタイダル・ネプトゥヌスをこの地に封印した者たちの末裔、ウォーグ・レイヘリオス(山吹の竜騎を継ぐもの・e01045)は、目の前のドラゴンのただ荒れ狂う様を憐憫の目で見る。
「……我が先祖に代わり、今ここで引導を渡しましょう」
【騎士王の宝珠】を一撫でし、竜騎の御旗を掲げた。封印の解かれた今、このドラゴンを撃滅するのは己の役割であると自覚する。
そこに至るまで、耐えるべき十分間。ウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591)は片目を閉じ、タイマーを起動する。
「必ず倒す」
これまで相対したいかなる敵よりも強大な暴威。吠えるタイダル・ネプトゥヌスに抗うようにベースギターをかき鳴らす。この身に代えても、と心の奥で固く誓う。誰も犠牲にしないために。
その思いは御門・愛華(竜喰らい・e03827)も同じ。
「いくよ、ヒルコ。……ッ!?」
狂気に満ちた瞳がケルベロス達を捉える。盾となるべく前に立つ愛華をタイダル・ネプトゥヌスの爪が容赦なく襲った。地獄と化した左手でとっさに体をかばうも、重い質量を持った龍の腕は愛華の体を易々と切り裂き、跳ね飛ばす。
「いっ……」
その様をまざまざと見せつけられ、宇原場・日出武(偽りの天才・e18180)は足を止める。この位置にいれば、あれを食らうことは無い……少なくとも、今は。だが、齢十五の少女の体を躊躇無く真っ二つにしようとする、それを可能とする敵の前に、僅かに怯む。しかし。
「い……今助ける!」
日出武の役割は回復専念。早速、動くべき状況が来た。ならば、ウィッチドクターとして最善の治療を施すまでだ。そう思ったときには、もう体が動いている。
「話が通じるなら色々確認したいこともあるんだけどな……うわ」
一比古・アヤメ(信じる者の幸福・e36948)はタイダル・ネプトゥヌスの咆哮に耳を塞ぐ。隙を見て光の盾を送るが、ドラゴンは先ほどから吠えるばかり。濁った金の瞳には、会話を可能にするほどの知性は見いだせない。
「話して分かる相手じゃねぇ。だが平和に暮らしてるヤツ等の命は奪わせねぇ……確実に撃ち抜いてやる!」
レイ・ジョーカー(魔弾魔狼・e05510)は俊足で以って接敵し、ドラゴンの顔の高さまで跳躍する。その蹴りは確かに龍の横面を打ち抜いた。しかし。
(「固い……!」)
これまで戦ってきたデウスエクスとは、手応えが違う。歯が立たない、そんな言葉が脳裏をよぎる。それでもレイは果敢に攻撃を試みる。この攻撃がたとえ蟻の一穴でも、十分後には突破口になっていると信じて。
ケルベロス達は防戦を続ける。タイダル・ネプトゥヌスをこの地に釘付けにするために。
「一分」
ウルトレスが告げる。長い長い最初の六十秒が過ぎ、残り九分を、ケルベロス達は耐える。
●長き防衛戦
ディフェンダーのケルベロス達は、そしてメディックを担う者は回復と防戦に専念する。一方、キャスターとスナイパーはその命中精度を活かし、敵の動きを鈍らせる作戦に出た。
ウルトレスが展開し続けるドローンはおびただしい数になり、尻尾の一撃から前衛を守る。傷ついたケルベロスへはすぐさま後衛から回復が飛び、戦線を立て直すことに貢献している。
ドラゴンの太い尾が、サナをなぎ払わんと振るわれる。広範囲に攻撃するにもかかわらず、その場所にはたった一人。それさえ。間に割って入ったレイのライドキャリバー、ファントムに防がれた。代償として音を立てて岩場にたたきつけたれたファントムだが、まだ消えはしない。ウォーグのボクスドラゴン、メルゥガが属性の力を注ぎ、キャリバーの修復にかかる。
「一人相手にそんな攻撃、非効率だよね?」
ルチアナが精神折檻(セイシンセッカン)をタイダル・ネプトゥヌスに浴びせかける。狂気の龍といえど感じるところはあったようで、その動きが僅かながらに鈍った。
(「おかげで助かってるけど!」)
最大効率を考えれば、今の選択はあり得ない。冷静なケルベロスなら避ける行動を、しかし狂気の龍は取る。それはルチアナ達にとってはありがたいことだ。
タイダル・ネプトゥヌスの津波が襲えば、日出武の慈雨が凍える寒さを洗い流し、傷を癒やしていく。
(「あああアレは絶対に痛いぞ……すぐ治さねば」)
内心の動揺ぶりを押し隠し、日出武は休むこと無く回復を行う。それでも治しきれない分は、アヤメが請け負った。
「さあ、歌うよ!」
大きく息を吸い、龍の咆哮にかき消されぬよう、努めて明るく「スカイクリーパー」を歌い上げた。時間は確実に過ぎていく。勝利をたぐり寄せる為、そしてこの場に集った仲間を、無辜の一般人を守るため、アヤメは希望を歌い続ける。
幾度目かの尾の一撃に、愛華が弾き飛ばされる。岩に強かに背を打ち付け、呼吸が乱れるが……愛華は手をぐっと握り、立ち上がる。ふとその手を覆う白銀の甲が目に入った。
「ここで負けたら、今まで犠牲になった人たちに顔向けできない……」
デウスエクスの犠牲になった地球の人々がいた。一方で、飢えに苦しみながらも、矜持を持って堂々戦い、華々しく散っていったローカストもいた。このドラゴンの暴威を見過ごすならば、人々の死を、強敵の生き様をも踏みにじることになるような気がする。
「見てて、断華さん。これが、わたしの戦いだよ!」
かつて戦ったローカストに呼びかけて、愛華はステップを踏む。オーラが白い花びらを形作る。舞い散れば、傷が癒やされる。
隙を突いて攻撃に転じていたウォーグが、サナを狙う動きに気づく。
「させません!」
傷だらけの山吹の竜騎が受け止めた一撃は、戦い初めに受けたそれよりも……軽い。
「大丈夫!?」
「ええ、これくらい……大したことではありません。時間は?」
「八分二十四秒」
ウルトレスがタイマーを読み上げる。あと二分を切った。ウォーグが気力を溜めて体勢を立て直し、仲間達も回復の手を差し伸べるのを見届けて、サナは白いウサギの耳をひょこりと揺らす。
「サナは、少しでも動きを止めるね」
呼び起こされた御業が巨大な神秘で龍の巨体を鷲掴みにした。暴れ抵抗するドラゴンに対抗すべく、サナは集中力を高める。
そうして、最後の一分間が訪れる。
タイダル・ネプトゥヌスはひときわ大きく吠えると、その背後で海水が盛り上がる。これまでの耐久戦で二度見た、後列まで届く津波。その波は後衛の頭上で崩れ、グラビティを滝のように降り注がせる。
「ルチアナ! みんな、大丈夫!?」
水に濡れたサナが後方の友人を気遣う。陸の奥へ広がる海水の中から、ルチアナやレイの姿が見え、サナは安堵する。
「た、大したことないなデカブツめ……ノーダメージだ、天才だからな!」
凍るように冷たい水の中から日出武が顔を出した。声が、体が震えるのは水が冷たかったから、ただそれだけだと自分に言い聞かせる。
最も脆い位置に攻撃を受け、ケルベロス達は立て直しに注力する。
「残り三十秒です」
「あと少しだ!」
レイが反撃に転じる。海水の残る岩場にグラビティが燃え、エアシューズの軌道に沿って炎の道を残した。
「残り十秒」
九、八、七。レイが接敵に成功し、ドラゴンの腕を強かに蹴りつける。四、三、二、一。
「耐えきったぞ……十分、経過しました」
ウルトレスが宣言する。ディフェンダーは満身創痍、後衛も浅くは無い傷を負い、ファントムに至っては消えかかってはいるが……それでも、全員倒れることなく十分を守り抜いた。
だが、本番はここからだ。
●海龍は荒れ狂う
タイダル・ネプトゥヌスは十分に弱った。爪の一撃を受けきったウルトレスは、一転して攻勢に出た。
しかし、弱ったとはいえ相手はドラゴン。前衛を中心に、徐々に体力を削りきられる者が出てくる。幾度目かの尻尾の一撃で、ついにファントムが消滅した。
「……やはり、強いね」
攻防の中で、愛華は覚悟を決める。岩場の水たまりを踏み、高く高く跳ぶ。どの岩場よりも高く、タイダル・ネプトゥヌスの目の前に飛び上がる。落下の勢いと共にグラビティが虹を作る。攻撃を引きつけようとする愛華の狙い通り、ドラゴンの金の瞳が愛華だけに向けられる。
「……ッ!」
太い腕が振り下ろされ、愛華を直撃。他のケルベロスが息を呑む。海水にじわりと赤が混じり、倒れた愛華は動かない。
「こいつめ! 食らえ、フィストオブザノーススターウワラバスタイル!」
今この瞬間、回復は無用と悟った日出武はこの一手のみ、攻撃に転じる。急所のような気がする場所を適当に突き、上手くいけばドラゴンも断末魔と共に死んでくれそうな気がするグラビティ。……だが残念ながら、タイダル・ネプトゥヌスはまだ死んでいない。
ディフェンダーが二人になったことを受け、サナが前に出る。ケルベロス達の盾となるこの選択が、吉と出るか凶と出るか。
「絶対にここから先は通さねぇ!!」
レイが龍に駆け寄る。一歩進むごとに、両手の銃――【魔狼銃 フェンリル】と【冥淵銃 アビス】の銃口に生まれた光が増していく。ドラゴンの懐に潜り込む頃には二本の槍のように長く伸び、撃ち出される時を待っている。
「全てを撃ち貫け!! グングニルッ!!!」
光の槍がタイダル・ネプトゥヌスを貫くと、ドラゴンは大きく悲鳴を上げる。痛みと衝撃を嫌い、ドラゴンの巨体が数歩、後ろに下がっていく。
「まだ、終わりませんよ!」
レイが下がるとほぼ同時、隙を逃さずウォーグが詰め寄る。竜騎の御旗に宿るオーラは蒼く輝き、まっすぐにタイダル・ネプトゥヌスの顎を目がけて駆け上る。翔竜蒼煌撃(ショウリュウソウコウゲキ)、その攻撃はまさに龍が天へと昇るが如く。
怯んだタイダル・ネプトゥヌスが吼えながらもさらに一歩後に下がる。
「ノリが良いのは結構だが、少し黙ってろ――」
ベースギターをかき鳴らし、ウルトレスがPunish My Heaven(パニッシュ・マイ・ヘヴン)を仕掛けた。重いベースのヘッドを龍の体に叩き込む。渾身の打撃が、ドラゴンを更に崖淵へと押し込んでいく。
だが、ケルベロス達の快進撃に歯止めがかかる。長い尾が前衛陣をなぎ払い、ダメージの蓄積していたウォーグとウルトレスが岩場に叩きつけられる。
「まだまだ……この程度で!」
ウォーグが必死の形相で立ち上がる。祖先の封印したドラゴンを、逃がすわけにはいかない。気力を振り絞り、戦い抜くこと数分。彼女もまたついにドラゴンの爪の下、倒れることとなる。
攻防の末、メルゥガも消滅し、ケルベロス五人でこの状況を乗り切らねばならない。一方でタイダル・ネプトゥヌスの消耗も激しいと見える。
「あと、少しだと思うんだけどな……」
アヤメがサナに光の盾を送る。サナが倒れれば、後衛を守る者はいなくなる。そうなれば、退くしかない。
ドラゴンの咆哮。海面が盛り上がる。幾度目かの津波に、ケルベロス達が身構える。
「あと一歩……! ドラゴンには、ドラゴンだよね!」
波が到達する前に。ルチアナが素早く竜語魔法を唱え、ドラゴンの幻影から炎を繰り出す。その幻影の姿はかつて三原山に現れた灼獄竜に似ていた。
迫り来る波。守り手は一人、すなわちかばえるのは一人きり。サナは意を決し、【星火燎原】を抜き払う。岩場に登り、波の巻き始め、その薄い部分に向けて跳ぶ。後衛の皆の無事を信じながら、サナは津波を突破。
「行くよ、必殺……波濤の太刀っ!」
サナの繰り出す剣撃もまた、津波の激しさでデウスエクスを襲う。一切の躊躇なく繰り出される連続攻撃が、タイダル・ネプトゥヌスを切り刻んでいく。一太刀与えるごとに重力の鎖を叩き込み……最後の一撃で、ついにタイダル・ネプトゥヌスを崖から押し出した。
ドラゴンは断末魔とともに海中に消える。天まで届くかという飛沫を上げて。サナは確信していた。長い戦いの末、あの龍に死を与えたということを。
●彼の龍は波間に眠る
あと二、三分も長引けば、ケルベロス達が定めた撤退のラインに達していただろう。しかし結果的に、そこに至る前にタイダル・ネプトゥヌスは海底に没した。
「や、やりきった……」
自然、ルチアナの唇から歌がこぼれ出す。その旋律を聴きながら、残ったケルベロス達は総出で負傷者の治療に当たる。
「ウォーグさん、大丈夫……?」
自身も深い傷を負いながら、アヤメはウォーグの治療に当たる。無残なまでの深手を負った山吹の騎士が、薄く目を開く。
「タイダル・ネプトゥヌスは……?」
「倒したよ。今は海の底」
アヤメが答えると、ウォーグは薄く笑って目を閉じる。……気を失っただけだ。だがもっとしっかりした治療が必要だということは誰の目にも明らかだった。
「……ははははは、今回はわたしの勝ちのようわらばっ!」
ヒールの合間、未だ荒れている海に向かって勝ち誇る日出武だったが、自然の起こすちょっとした高波を思い切り被ってしまう。しかしその水温はタイダル・ネプトゥヌスの起こすそれよりずっと優しかった。水も滴るいい男となった日出武は、気を取り直してウルトレスや愛華の治療に専念する。
「そういえば……ドラグナーのコギトエルゴスムが近くにあるはずだ」
「そうだね、忘れずに壊さないと」
痛む体を引きずってレイとアヤメが辺りを探すと、予知通り四つのコギトエルゴスムが岩場の各所から見つかった。レイはそれらをことごとく破壊すると、さらなる情報を求めて周辺を見て回る。
「あ……迎えが来たみたい」
白い兎の耳をぴんと立てて、サナはヘリオンのプロペラの回転音を聞く。怪我の程度はともかく、誰も欠けない帰還がもうじき叶う。
かくして、彼の龍は再び眠った。ケルベロス達に死を与えられたタイダル・ネプトゥヌスが、目覚めることは二度と無いだろう。
作者:廉内球 |
重傷:ウォーグ・レイヘリオス(山吹の竜騎を継ぐもの・e01045) 御門・愛華(竜喰らい・e03827) 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年6月5日
難度:難しい
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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