●アスファルトに咲く花
大阪城の北側に位置するとある川。そこは、先日巨大な攻性植物による攻撃が行われた場所だった。
ケルベロスの活躍によってその敵は無事に倒された。
だが、その場所でまた、新たなる脅威が生まれようとしていた。
攻性植物が死に際に撒き散らした胞子が風に乗って流れていくが、それを見とがめる者は誰もいない。
川岸から駅にかけての地域は繁華街となっていた。
道行く人々は気にも留めないが、その片隅にタンポポの花がいくつか咲いている。
生命力の強いその花は、電柱の根本にできたアスファルトの裂け目から生えているのだ。
戦闘の余波で傷ついた街で、花はただ静かに咲いている。
けれど、飛んできた胞子がタンポポに降りかかると、その様子は一気に変化した。
タンポポの花が、人間ほどのサイズを持つ攻性植物となったのだ。
「ダンディィィィィ!」
5輪のタンポポは5体の怪物と化し、力強い叫び声を放つ。
そして、近くにいた不幸な一般人へと襲いかかった。
●ヘリオライダーの依頼
大阪市内で攻性植物による事件が発生することを石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)は告げた。
「爆殖核爆砕戦以降、大阪城周辺におさえこむことがてきていた攻性植物に動きがあるようです」
攻性植物は大阪市内への攻撃を重点的に行おうとしているらしい。
事件を多発させて一般人を避難させ、拠点を拡大しようとしているのだろう。
「大規模な侵攻ではありませんが、放置すればゲートへ攻撃する際の成功率もじわじわと下がっていくでしょう」
それを避けるためにも敵の侵攻を防がなければならない。
いずれは隙を見つけて反攻に転じる必要もあるだろう。もちろん、そのための調査などは後日の話になるだろうが。
それから、芹架は今回の事件について詳細を語り始めた。
「今回現れる敵は、タンポポの花が攻性植物化したものになります」
謎の胞子が花にとりついたことが原因だ。現場の近くでは先日巨大攻性植物との戦闘も起きており、撃破時に飛び散った胞子だと考えられる。
「5体のタンポポが同時に出現しますが、敵は固まって行動するようです。また、戦闘に入れば逃走することは考えないようなので、対処は難しくないでしょう」
ただ、数が多いので油断は禁物だ。同種の植物から生まれたこともあってか、連携も取れているようなので、注意したほうがいいだろう。
5体のタンポポ型攻性植物は、大阪市内のとある繁華街の路上で出現し、近くにいる一般人を狙って攻撃をしかけようとする。
とはいえ、出現地点はわかっているので、周囲の一般人は警察などが避難させてくれるはずだ。
周囲のビルを別にすれば、障害物のたぐいは特にない。
「戦闘ではまず、黄色い花弁を針のように硬化させ、叩きつけることで攻撃を行います。防具を破られる可能性があるので、注意してください」
また、花を瞬時に綿毛に変えて、範囲に向けて飛ばすことも可能だ。地面や人体に触れると爆発し、ダメージとともにプレッシャーを与えてくる。
攻撃後はすぐに元の黄色い花に戻るようだが、これに回復効果などはない。弾を込め直したり、矢をつがえたりするようなことなのだろう。
根を通じて生命力を分け合い、回復することもできるらしい。範囲に有効なこの回復能力は、対象を強靭にして防御力を高める効果もある。
「敵はすべて同じ能力を持っており、特に誰がリーダーということもないようです。ただ、役割分担する動きは多少見られます」
5体のうち4体は前衛で、残る1体は後衛から支援する動きを見せるようだ。
特に余計なことをしなければ、敵が攻性植物化するのと同じくらいのタイミングで現場に到着できるだろう。
「市内の植物を攻性植物化させる胞子は厄介ですが、数をそろえるだけではケルベロスを倒すことはできないはずです」
それを、敵に教えてやって欲しいと芹架は告げた。
参加者 | |
---|---|
ルア・エレジア(まいにち通常運行・e01994) |
ドールィ・ガモウ(焦脚の業・e03847) |
小車・ひさぎ(二十歳高校三年生・e05366) |
浜咲・アルメリア(捧花・e27886) |
リチャード・ツァオ(異端英国紳士・e32732) |
草津・翠華(碧眼の継承者・e36712) |
兎之原・十三(首狩り子兎・e45359) |
モニ・ブランデッド(おばあちゃんを尋ねて三千里・e47974) |
●ダンディな叫び
繁華街の一角を、ケルベロスたちが走っていた。
「今回は、草刈りだ、ね」
兎耳をつけた兎之原・十三(首狩り子兎・e45359)の訥々とした言葉に、仲間たちの何人かが頷いた。
「タンポポの、攻性、植物。かわいいけれど、放って、おく、わけにも、いかない、よ。こで、きっちり、刈って、しまおう」
この先で、もう胞子にとりつかれたタンポポが動き出す頃だ。
「前回、巨大な攻性植物を撃破した人は後始末をしっかりしてほしかったわ。厄介な敵を5体も引き受けないといけないなんて、給金が無ければ引き受けなかったわよ」
草津・翠華(碧眼の継承者・e36712)が走りながらぼやいた。
とはいえ、巨大攻性植物が死に際に胞子をばらまくなどということはわからなかったはずだし、知っていたとしても防ぐのは不可能だっただろう。
「まったくだな。返す言葉もねェぜ」
だが、ドールィ・ガモウ(焦脚の業・e03847)は言い訳をしようとはしなかった。
「この前の胞子の影響、か。なっちまったモンは仕方ねェ、キッチリ後始末をつけてやるぜ」
鋭く目を光らせて、彼はただ行く手を見据える。
「生命力の強い花って、歌の歌詞とかになってたりするよね。心の強さに例えたりしちゃってさ。でもこうなったら引っこ抜いて燃やしたいって思うのは、仕方ないと思うんだ……」
敵の居場所はもうすぐだ。呟きながら、ルア・エレジア(まいにち通常運行・e01994)は急ぎ足になる。
「よし、綿毛なら吹き飛ばしてやる! 綿毛なら!」
決意を込めて、ルアが角を曲がった。
「……綿毛な……ら……。……わた……げ……花弁!?」
角を曲がったその先で、ちょうどタンポポたちはアスファルトから這い出したところだった。
黄色い花が人の頭ほどもある大きさになっているのを見て、ルアが驚愕の声を出す。
「ダンディィィィィィィ!」
繁華街の一角で攻性植物の叫びが響いた。
「確かにタンポポはちょっと土があれば根を伸ばす強い花だよ? でも動き出さなくていい、力強く叫ばなくていい! まったく、攻性植物ってのはホント厄介!」
尻尾の毛を逆立たせて、小車・ひさぎ(二十歳高校三年生・e05366)が叫んだ。
だが、力強く動き出すのは攻性植物だけではない。
「モニの初めてのお仕事なのよ。おばあちゃんを見つけるためにモニも強く動き出すのよ。タンポポはここで止まってもらうのよ」
狐耳を生やした少女がゆっくりと、しかし力強くしゃべる。モニ・ブランデッド(おばあちゃんを尋ねて三千里・e47974)は緑色をしたつぶらな瞳で敵を見つめた。
「タンポポと言えばお浸しやらいろいろ食べれますけどこれは煮ても焼いても食べれそうに無いですねぇ。これ以上被害が広がるのはいただけませんしとっとと処理をしてしまいましょうか」
リチャード・ツァオ(異端英国紳士・e32732)が落ち着いた手つきでバスタードソードを構えると、長いマントがわずかに舞う。
人間大となったタンポポたちが、犠牲者を求めて動き出す。
その前に、ケルベロスたちは立ちはだかる。
「――好きには、させないわ。この地球は、あたしたちの守る領域よ」
ぼんやりとした様子で……しかし、それでも浜咲・アルメリア(捧花・e27886)の言葉ははっきりと街角に響く。
そして、戦いが始まった。
●ダンディな攻撃
飛び出してきた敵の1体が、ケルベロスたちへ綿毛をばらまいた。
爆発の中から、真っ先に飛び出したのはアルメリアだ。
鉄茨が地面を走り、後続の仲間たちと彼女自身を守る陣を描き出す。
「助かるぜ、アルメリア!」
守護陣に敵が踏み込もうとしたところで、ドールィの振り回した尻尾が攻性植物たちを薙ぎ払った。
2人に向けて、タンポポの黄色い花弁が硬化して振り下ろされる。
「今、殴りかかってきた奴らは、防衛役ね。仲間を守ろうとしてる」
「そのようですね。まずは右側の方から狙いましょう」
リチャードはアルメリアの呼びかけに応じた。
綿毛爆弾が炸裂した場所の手前で、彼は攻撃が最大限の効果を発揮する瞬間を計っていた。
「闇を友とし光で貫く。我前に立つなら覚悟するが良い」
蝙蝠型の手裏剣が、紳士の手の内に出現する。
「燃え散れ! 炮蝙烙蝠!!」
投げ放つそれは空中で炎をまとった。塗ってある燐が空気との摩擦で着火したのだ。
あたかも本物の蝙蝠のごとく不規則な軌道を描く手裏剣は、攻性植物へと食らいつき、燃え上がらせる。
「わー、熱そう。でも、手加減しないからね」
黒豹の後肢でルアが燃え上がる敵を蹴りつけた。
敵の後衛は根を通じて回復を試みているが、リチャードが与えた炎を完全に消しきることはできなかった。
「……草刈りを、はじめる、よ」
十三が刀に殺意を込める。
「【月喰み】解放……刎ねる……刎ねる……兎が刎ねる……無明の新月、見て刎ねる」
神速の一閃と共に、怨霊が荒れ狂い、切り刻む。
別の敵が飛ばした綿毛の爆弾に対抗して、翠華がドローンを展開して仲間たちを守っていた。
「お金を稼ぐのも楽じゃないわね」
呟いた翠華の隣では、ひさぎやモニが敵に狙いをつけている。
「お願いするんよ、わこ! モニもよろしくな!」
ひさぎがオウガメタルに命じると、漆黒の太陽が顕現して敵を焼いた。
「うん、モニも、がんばるのよ」
すうっと息を吸い、少女の口が咆哮を放つ。
狙いすました叫びはなんだか不安定に揺れていたが、それでも敵の前衛を打ち、動きを止める。
「いいぞ、モニ。効いてるぜ」
「その調子でお願い。でも、油断はしないでね」
ドールィやアルメリアが大きく息を吐く少女へと声をかけていた。
敵の前衛は、どうやら2体の打撃役を、2体の防衛役が守るという構成だ。さらに後衛にはメディックが控えている。
ドールィはルアへと突撃しようとするタンポポの前に飛び込んだ。
「そっちには行かせねェよ!」
打撃役のタンポポは、矛先をドールィに変えて尖った花弁を鱗へと突き刺す。
「こないだのでかいのほどの威力はねェな。それよりも……」
さらに別の1体が、十三へと突撃するのが見えた。
とっさに地面を蹴る。だが、わずかに届かない。
「行かせねェって言っただろ! 下がれ、十三!」
届かないその敵に噛みついて、ドールィは無理やり攻撃を自分に向けさせる。
5体もいるとかばいきれないことも多い。今のはギリギリ届かせたが、ドールィもアルメリアも、そしてアルメリアのウイングキャット、すあまも間に合わないタイミングで攻撃が来る。
「助かった、よ。ありがとう、ね」
「なあに……気にすんな!」
訥々と礼を述べる十三に応じながら、ドールィの体が宙返りをした。
炎をまとった脚が敵を吹き飛ばし、その表面にひびを入れる。
敵の攻撃によるダメージは少しずつ蓄積していっていたが、まだしのぐことができる程度だった。
「なかなか止めきれないんだぜー……」
ひさぎは敵の足止めを続けていた。
だが、敵に回復役がいるせいで、なかなか止めきることができない。
モニが後方から摩擦熱による炎を飛ばして牽制してくれているが、敵は前衛の回復を優先しているようだ。
「刈らせて、もらう、よ」
十三の刃が、流れる水のごとく敵を切り裂いた。仲間たちが狙っていた1体は、深い傷を負いながらも打撃役のタンポポを守った。
強化していた生命力が傷口から流れ出し、敵から強靱さが失われる。
今撃てば倒せると判断し、ひさぎは一気に敵へと接近した。
ウエスタンブーツの底についた車輪が回転すると、紫色の髪が揺れた。
「爆ぜろ、“凍星”」
至近距離から御業に呼びかける。
打ち出した見えざる塊が、攻性植物を包み込むように氷を散開させ、音もなく砕けた。
「向こうが連携してくるならこっちだってね」
呟いて、ひさぎは次なる敵へと視線を向けた。
防衛役の1体が倒れた後、もう1体はすべての攻撃を引き受ける勢いで仲間をかばっている。
攻撃を受けながらも、タンポポがルアへと突撃した。
「もしかしたら花弁も吹き飛ばせるかもしれない! そうだ、最初から諦めたら試合終了とかなんとか誰かが言ってた。俺は吹く! ふーっ! ふーっ! ふぅぅぅぅぅ!!!」
向かってくる敵に、少年は必死に息を吹きかける……が、もちろん吹き飛ぶわけもない。
「……く、苦しい……」
アルメリアは滑り込むような足捌きで彼と攻性植物の間に割り込んだ。
「なにやってるのよ、ルア!」
「いや、吹き飛ばしたら防げるかと思って……助かったよ、アルメリアちゃん」
怒声に対して、ルアは軽い笑みを向けてきた。
軽薄な男に見えるが、信頼できる人物だと同じ旅団の仲間であるアルメリアは知っていた。
「澄ませ、《手向花》。叢雲流霊華術、参輪・桜花」
身にまとった気が、白紅の花となって彼女自身と、そして前衛の仲間たちのもとへ咲く。
精神を研ぎ澄ます気を受けて、ルアが突撃してきた敵へと飛びかかりながら息を吸う。
「いまコロスから逃げんなよ!!」
咆哮とともに繰り出す拳は、霊華術によって咲き誇る花を舞わせながら敵を捉え、そして打ち砕いた。
「真面目にやりなさいよ。そしたら、頼りになるんだから」
笑顔を向けてきたルアに、アルメリアは大きく息を吐いた。
●ダンディな全滅
数を減らしても、戦いはなおも続いた。
敵は防衛役の2体が倒れたが、ケルベロス側の防衛役もけっしてダメージは浅くなかった。
ひるむ様子のない打撃役の攻性植物が、まず前衛に、次いで後衛に綿毛の爆弾を降らせてきた。
一撃目で、すあまが十三をかばって倒れた。
そして、二撃目に対してドールィが翠華を守る。
翠華は自分のペースを崩すことなく、前衛と後衛を見渡した。
ドールィがもっとも回復が必要だと判断し、翠華は九尾扇を彼へ向ける。
ちらつく幻影が、ドラゴニアンの巨躯を包んだ。
「悪ィな、これでまだまだ闘えるぜ」
「仕事だから回復しているだけよ。お礼を言う必要はないわ」
「そうでもないぜ。こうしてまめに声をかけるのも連携のため、仕事をうまくやるためさ。オラァ!」
ドールィが炎を吐き出し、敵へと叩きつける。
仲間たちの陣形に、すでに九尾扇は幾度も力を与えている。敵の後衛が与えた強化を、炎は焼き尽くしていた。
「あなたがそう考えているなら、好きにすればいいわ」
守りを打ち破ってもまだ敵は倒れない。次の敵の攻撃に備えて、翠華はさらに回復の技を準備する。
これまで防衛役守られていた打撃役の体力を、ケルベロスたちの攻撃は着実に削っていった。
「煮ても焼いても食べられませんが、攻性植物同士ならどうでしょうかね」
リチャードの手にした攻性植物が敵を捕食する。
「霊なら、食べるかも、ね」
無数の霊を憑依させた十三の刀も敵を汚染する。
毒に犯された1体が弱っていく。
モニはつぶらな瞳で、しっかりと敵を狙っていた。
今のところはうまくやれている。アルメリアやドールィ、ひさぎが気を使ってくれているおかげだろうか。
ピンクの髪をなびかせて、流れるようにアルメリアが炎を起こして敵を焼く。ドールィの炎をまとった蹴りが、ひさぎの回転するグレイブが、さらに敵を弱らせる。
「モニ、トドメを頼むぜ」
呼びかけてくれたひさぎの言葉でタイミングを合わせ、モニはボロボロになったタンポポの姿に、心の中で怒りを呼び起こした。
「ゆるさないのよ。けなげに咲いていた花を、バケモノにしちゃうなんて」
ゆっくりとしたその言葉に混ざる怒りが、雷となって敵へ降っていく。
怒りが収まったそのとき、すでに敵は残骸となっていた。
もう1体の打撃役が倒れるのも時間の問題だった。
「さっ、それじゃガンガン行くよっ!」
ルアのステッキが一気に伸びて敵を打つ。
「ええ、焼き尽くして、花房!」
ひさぎの御業が敵を焼いた。
反撃と降ってくる綿毛が弾けるが、翠華は陣形を見いだして仲間たちを守った。
攻めていくケルベロスたちの攻撃に、敵の回復はもうほとんど意味をなしていない。
「来なさい。あたしがもう、誰も傷つけさせないわ」
傷だらけになりながらも敵の前にたちはだかるアルメリアへ、尖った花弁が襲いかかろうとした。
しかし、空中で花が動きを止める。
「残念ですが、これで終わりですよ」
横合いからリチャードがバスタードソードを振るって、茎の付け根を切り裂いたのだ。
力を溜めた一撃で切り落とされた、黄色い花が地面に落ちた。
残るは回復役のみ。
モニの牽制でダメージを受けている敵に、もう生き残るすべはない。
「さあ、片付けてやるぜ!」
ドールィの爪が敵を切り裂いた。
「ワタシヲミロ」
もう回復はいらないと判断し、翠華が碧眼で見据えて動きを止める。
「ろう ろう もに りむがんと いるかるら なうぐりふ!」
さらに、モニが呼び出した雪の妖精が巨大な目でにらみつけながら敵に遅いかかった。
「これで、終わり……その首、もらう、よ」
十三は黒血刀を静かに振り上げる。
刃は美しいと言える軌跡を描いて敵に振り下ろされ、タンポポの首を切りとばしていた。
●風はダンディに吹く
敵がもう動かないことを確かめて、十三は刀を納める。
「……これで、しばらくは、落ち着いて、くれるか、な」
妖剣士の衝動が収まったのかどうか、はた目にはわからなかった。
動きを止めたタンポポは、やがて元の小さな姿に戻っていく。
「どうにか片づいたね。やっぱり、タンポポは吹き飛ばせるくらいのサイズがいいなあ」
「そうね……すあま、お疲れさま」
ルアの言葉に相槌を打って、アルメリアは倒れているウイングキャットへと近づいた。
身をすり寄せてくるすあまを、彼女は優しく撫でてやった。
「こんな小っちぇえ花がなあ。あの胞子の量だ、これで終わりじゃねェんだろ?」
ドールィがただの枯れた花となったタンポポを見下ろす。
「できれば終わって欲しいのよ。もう、胞子は飛んでないのよね?」
モニがビニール袋を振り回しているが、それになにか入っているかはわからなかった。
「こいつらは胞子を再拡散はしない……んだよね? 綿毛は爆発したし!」
「できたらそう願いたいところね。新たな攻性植物が出現しない事を祈るしかないわ」
ひさぎの言葉に、翠華は周囲を観察しながら応じた。
「とりあえず片付けて行きましょうか。時間が有れば大阪観光しておきたいですけど、まあ流石にそれはね。今回はやめて起きましょう」
リチャードが壊れた建物をヒールし始める。
「ま、前回よりはだいぶマシってとこか……」
壊れた壁の破片をどけようとしたドールィは、胞子を集めようとしていたモニが、疲れて眠ってしまったことに気づいた。
破片よりも先に、小さな体を安全な場所へとどけてやる。
頑張った少女のためにも、もう事件が起こらなければいいと考えたのは、たぶん彼だけではなかった。
作者:青葉桂都 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年5月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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