ザザの誕生日~ローズ・アフタヌーン

作者:志羽

●贅沢タイム
 誕生日は、ちょっとした贅沢をしちゃおう。
 そう決めたザザ・コドラ(鴇色・en0050)はどんな贅沢にしようかしらと色々と調べ、そして出会った。
 ローズ・アフタヌーンティー。
 高層ビルの上階にある、高級ホテルのラウンジにて只今催されている薔薇をテーマとしたアフタヌーンティーだ。
 ふかふかのソファ、ふかふかのクッション。それらにゆっくり座って楽しむ時間。
 窓際の席であれば、高層ビルから景色を楽しむ事もできる。それは夜となれば、一層の事。
 薔薇のスコーンのお供はもちろん薔薇ジャムとクロテッドクリーム。マフィンの中にも薔薇ジャムが。
 そしてティースタンドにはどれから行こうかと迷うものばかり。
 一段目には小さなカップに入った冷製スープ。キュウリとハムのサンドイッチにサーモンとチーズのタルティーヌ。ローストビーフとキャベツのミニバーガー。キッシュはじゃがいもとベーコン。チーズのムース。それからピクルスとオリーブが添えられている。
 二段目は薔薇のムース。薔薇の香りを纏うマカロン、ラズベリーのパートドフリュイ。ローズジャムのクレームダンジュ。
 三段目は薔薇を模した菓子がまず目に留まる。薄く切った林檎を重ねて薔薇を象ったプチカスタードタルト。それからチョコレートで作った花弁を組み合わせて作った薔薇は皿を彩るように二輪。ガラスの細長い器には色々なフルーツの入った、ローズシロップを使ったジュレが宝石のように輝いている。
 もちろん、飲物もちょっと特別だ。
 ローズティーは硝子のポットに入っており、鮮やかな薔薇の花弁を目でも楽しめる。
 もちろん他にも、ミルクティーやコーヒーなどもチョイスできる。
 そして夜になると、シャンパンを薔薇のシロップで割ったものも頼めるのだとか。
 そんな、ローズ・アフタヌーンティーを見つけたザザは瞳を輝かせ、これにしよう! と決めたのだった。

●お誘い
「幸せは独り占めしちゃだめだと思うのよね!」
 ということで、皆もよかったらとザザはとあるホテルで行われているローズ・アフタヌーンティーの事を話す。
 そのアフタヌーンティーは昼もだが、夜も楽しむ事ができるのだと。
「たまにはリッチでゴージャスな気分になるのも良いかなと思って。べ、別に一人で行くのが寂しいわけじゃないのよ」
 と、言いながらザザの尻尾は左右にゆるゆると動いていた。
 その様子に楽しみなんだなぁと夜浪・イチ(蘇芳のヘリオライダー・en0047)は思いつつ、行くなら早く予約しちゃったほうが良いよと一言。
「よやく?」
「うん。だってそれ、どう見ても人気がありそうだから……席、あるのかなぁって……」
「!! も、もー! 早く言いなさいよ! 予約!!」
 と、いそいそと電話を始めつつ、おめかしもしていかなきゃねとはしゃぐ。
 そして皆も席が取れたら一緒に楽しみましょうねとザザは満面の笑みを浮かべた。


■リプレイ

●絢爛薔薇色
 それはまさに薔薇づくし。
 素晴らしいじゃねぇかとまず恵が手を伸ばしたのは冷製スープから。
 先日聴いた『ローズマインド』という言葉。
 薔薇栽培を通じて学ぶ心、思いやり優しさ助け合いの心――花を、薔薇を愛するものとしていつの間にか忘れていたその心。
 恵は見ているだけで幸せになれるティースタンドのように人を幸せにしていきたいと思った。
 出来るかどうか解らねぇが始めなければ始まらねぇ――その手始めは薔薇のショートケーキの贈物だ。
 その、薔薇のショートケーキを貰ったザザは恵へとありがとうと笑んで返す。
「ローズ・アフタヌーンティーなんて……とってもゴージャス、ですね!」
 誕生日、だからこそいつもより素敵なひとときにと希月は笑む。
「ザザ様はどれが一番気になりますか?」
「私は……全部気になる……!」
「僕はタルトが気になって気になって……気になってしまいます」
 どれも美味しいけれど、とクィルが言えばそうなのよねとザザも頷く。
 鼻を抜ける薔薇香はアラタの逸る気持ちを落ち着けて。
「ザザにピッタリなのは勿論、夜も女子力高いから似合うよなー♪」
「アラタちゃんもここ、似合うわよ!」
 そうかなと笑いながら見る街は、自分たちが守る場所。
 美味しい時間の間に手を綺麗にして、アラタは笑顔でリボンの薔薇を付けた小袋をザザへ差し出す。
「いつもありがとう、それと18歳の誕生日おめでとう! ザザ。ハッピーな今日と、楽しい一年にしてくれ♪」
「わ、ありがと!」
「僕からも、薔薇のマカロンです」
 そういえば、とザザさんは角飾りやお洋服に薔薇がたくさんありますねとクィルは問えば、好きなのとザザは言う。
 似合うと思いますと言えば嬉しそうに、笑って。
「薔薇はね、昔住んでた家で沢山育ててたの。だから、想い出のお花でもあるの。今日はお祝いしてもらって本当にありがとね」
「来年も……お祝いさせて下さい、ね!」
 希月の言葉に頷いて、まず最初の一日目は皆と一緒で楽しいとザザは笑った。
 そこへお祝いをと、見知った顔。
「よう、ザザ。誕生目出とう」
 今年もまたひとつ大きくなったな、と軽口叩いて祝いの品をとジィジと揃いのお守りをヒコは渡す。
 そこへ、言祝ぎを重ねるオルテンシア。
「今年も、これからも同じ幸いを分け合えること、とても嬉しく思うわ」
 ありがとうとザザは笑み返す。
 そしてオルテンシアはヒコに視線向け。
「さて。そこな殿方、おひとりならば相席よろしくて?」
「――……勿論、喜んで」
 と、二人でひと時を。
「確かに、贅沢。まるでどこぞの女帝にでもなった心地ね」
「なった、じゃなくて実際相違無いんじゃないか?」
「――であれば。相伴、光栄に思いなさい」
 オルテンシアがスコーンにジャムを纏わせながら紡いだ言葉に、身に過ぎる大役だとヒコが演じ口運ぶは砂糖の薔薇。
 それは花喰鳥と伝う君が、花喰む姿。
 視線向けたオルテンシアはその様になるほど洒落が利いてるわと紡げば。
「――……嘘でも生花は寄越すなよ」
 甘すぎるぐらいの方が好みだと苦笑まじりに零すヒコ。
「ええ、ええ。花なら専ら賜る側ゆえ」
 足らぬ甘さや可愛げは菓子が埋めてくれるはずと、オルテンシアは笑い返した。

 姉妹で一緒に過ごすプチ贅沢な午後。
 一番下の皿がなくなれば、次は甘い物。
 ルリィが林檎のプチカスタードタルトをとれば。
「お姉さまたちのも美味しそうよね」
 横からユーロの手がでてガード。素直に言えば、あげるのにとルリィが思っている頂戴とばかりにあーん。
 結局分けてあげるのは妹への甘さだ。
 ルリィとしてはカレンのも気になるけれど、おねだりするのは妹の手前我慢。
 けれどその気持ちは尻尾に現れていた。
 それに気付いて価、カレンはあーんして、と一匙掬ってルリィの口へ。
 お返し頂戴と開けた口に妹達からの贈物。
 こんなことができるのも、幸せな時間の中だから。

 食べちゃダメ、と薔薇を食もうとした匣竜にメインはこっちとイェロは笑う。
 ツンとすまし顔しながらも示されたティースタンドから薔薇を模したタルト、初めて見るマカロンを吟味中。
 イェロが吟味する前を撮っていったのはパートドフリュイ。
 ラズベリーが一番好きだから口にしたそれは食めば溶けていくよう。
 それに薔薇の香りのする紅茶。
 その香りもどこか落ち着くものがある。
 ふと、この場に誘ったザザと距離はあるもの目があって。
 おめでとうと零せば、聞こえたのか察したのか。
 嬉しそうに笑う姿に、此度の縁に肖って、これからどうぞよしなにねと、イェロは笑んだ。

「ね、もう少しそっち、いい?」
「……いいよ。こっち、来てください」
 絃はもっと傍へと月夜を促し、二人で眺める硝子向こう。
「ティータイムより、うんと大人な感じ」
「贅沢っすね、すごく」
 宝石の如き夜の景にグラスを傾けゆるり瞳細める絃。
 月夜の指はどれにしようと悩み、サンドイッチを。
 甘いのは最後に取っておきたいでしょうと言って、絃の口元へ。
「……ん、うまい」
 サンドイッチのお返しに絃が選んだのは薔薇香るマカロンだ。
「はい、あーん」
 その瞳覗き込んでどう? と問えば。
 ほろり崩れていく甘さに美味しいと笑み返す。
「薔薇ジャムの甘さはお好み通り?」
「うん、甘過ぎなくて。気に入りました」
 そう返すと、どれが一番か教えてと月夜のエメラルドの瞳が煌めく。
「一番は……悩むけれど、このカスタードタルト。綺麗だし美味しくて」
 そう言って、絃はエメラルドの双眸見詰め小さく笑み。
「――でも、本当の一番はあなたですよ」
 ほのり染まった薔薇色の頬に触れ、悪戯っぽく口許緩める。
 最後にはしっかり期待に応えてくれる。このまま、酔い痴れてしまうと月夜はその指先を受け入れる。

 ふかふかで良い昼寝場所。けれど。
「でもね、アルさん、今日はバラの日よ?
 お昼寝のことは、すこーしだけ忘れてね」
 今日は薔薇を楽しむ日。アラドファルは頷いて、ティースタンドに目を向ける。
「この、タルティーヌ……というのは色どりも綺麗で良いな」
 春乃の作ったパンで真似てみたいとアラドファルは紡げば。
「タルティーヌを、わたしが?」
 何個でも作ってあげると春乃は笑む。
 次に口にしたクレームダンジュ。
 蕩けるそれに早速と春乃の口へ。
「これ、凄く美味しいぞ」
 ぱくりとすれば、お返しにパートドフリュイを摘まんであーんと口元へ。
 そして三段目――宝石のようなジュレにアラドファルは笑む。
「あの日一緒に見た鉱石本の写真に似ているな」
「わたしも、ちょうど同じこと考えてたの」
 一緒に食べてみようと口にして、ローズティーを喉へ。
 くん、と香りをかげば。
「どんな味になってるか試してみる?」
「……試していいのか?」
 挑発には挑発で。

 窓の外に目を細めたジェミの、次の視線向く先はティースタンド。
「可愛い! 綺麗! 豪華! これ、全部食べていいの?」
「ハイ。沢山食べて下サイ。ジェミはじきに、誕生日ですネ」
 微笑みながら、少し早いですが、お祝い致しまショウとエトヴァは紡ぐ。
 すると覚えててくれたんだ、と零し嬉しいなと、ジェミはエトヴァにはにかみ微笑んだ。
「俺達が家族になっテ、四か月と少し……何か変化はありましたカ?」
 家族になって。なんだか以前よりとっても甘えん坊になった気がするとジェミは言う。
 そしていつも側にいるのは、ジェミがそうしたいから。
 そしてエトヴァにも変化はあった。
 夜に惑う事は少なくなり、いつも君が傍にいてくれる事だ。
「一緒にいる時もだけど、そうでない時も今頃どうしてるかなって思う誰かがいる幸せ。教えてもらってる気がするんだ」
 そう聞いて、エトヴァは穏やかに笑みを浮かべる。
「……俺はずっと、君を見守っておりマス」
 君と共に過ごす事が、俺の幸せデス、と。

「すごい、薔薇尽くしだ……可愛い……」
 夢のようだと言わんばかりの恍惚の表情浮かべたのはエヴァンジェリン。
 壮観だねえと零すゼレフが最初にとったのは白雪めいたクレームダンジュだ。
「……ふふ、ゼレフさん、お鼻」
 と、鼻先の白雪にエヴァンジェリンは思わず吹き出してナプキン差し出す。
 僕にも娘がいたら、こんな感じだったのかな――なんて、口にはせず。
 どれもこれも、美味しくて満喫した末に、楽しかった? と問えば。
「――勿論」
 訪れる前より君の瞳が和らいだならそれが今日一番の薔薇の恵みとゼレフも笑み、日暮れ前には送っていくよと続け。
「スブ・ロサ――今日の話は内緒にしとこっか」
 立てた指添えて微笑めばエヴァンジェリンも真似るように声重ねて。
「スブ・ロサ……薔薇の下で……わかった、アナタがそう言うのなら、内緒」
 指を添えて、楽し気に。

 たまには一人で静かに。
 こういう場所でお茶するのは初めて、とアンセルムは思う。
「ええと、ケーキスタンドは一段目から食べて、お茶はソーサーも持ち上げて、と」
 それっぽく見えるかな、と思いながら口に運ぶ菓子も茶も美味い。
 こうしているとどこかの貴族にでもなった気分だとアンセルムは零す。
「昼と夜の境目に一日を静かに振り返る、薔薇の香りがする貴族…………いや、ないない。この想像やめよう」
 余計なことは考えず、ただ今は。
 静かに楽しむ、それだけで十分。

●夜色薔薇色
 成人。つまりもう二人でお酒を飲めるという事。
 しゅわ、とあがる泡を見詰めつつ。眺めてばかりではと早苗はグラスを手に。
「さーさールルド、乾杯じゃ!」
「おう、乾杯」
 味がわからない分、やや冒険。
 そう思いながら早苗と共にルルドも一口。
「……結構甘みが強いな」
「むむむ……! これはなんとも。飲む前から香ってはいたが、口に含むとより強く感じられるのじゃな……!」
「だが、疲れた時にこういうのを飲むと、溜まった疲れが吹き飛ぶ感じがするな」
「こういうお洒落なでーともたまには良いのう。いつもこうだとちょっと疲れちゃうかもじゃけど!」
「ありがとな、早苗」
 そう言って、ルルドは言葉を継ぐ。
「こういう時に早苗が居てくれて本当に感謝してる」
「……なに、その……わしにできるのはこのくらいじゃからな」
 再度紡がれる有難うに、未来のルルドを支えるのがわしの役目ゆえ! と早苗は笑みを。

 食べるのがもったいない。見てるだけで幸せで、ウォーレンのローズティーはそれだけで空っぽに。
 めかしこんできた姿は新鮮で、けれどそんな姿はいつもの先輩やと光流は思う。
「お茶しか飲んでへんやん。食べへんの? せやったら俺が全部食べてまうで?」
「食べるよー?」
 言いながらティースタンドを自分の方に引き寄せるふり。
「せやけど遅なると帰れへんようになるで」
「ゆっくりして行こうよ、光流さんもお洒落してるし帰れなくなってもホテルならそのまま泊まれるから」
「……? 泊まる? ここに? ほんまに良えの?」
 食べてまうで、と冗談めかすがウォーレンは首を傾げる。
「何やその……大丈夫なんやな」
「大丈夫だよ、安心して」
 そう言いながら、やっぱりスコーンかなーとウォーレンは手を伸ばし、クロテッドクリームたっぷりに薔薇ジャムと一緒に食べれば舌も幸せ。
 光流は残りのシャンパンを口に含み。
「こういうのが薔薇色の人生って言うんやろな」
「うん、まさに薔薇色の人生って感じ」
 この夜に乾杯を。

「美しい夜景に美しい華……静かで優雅な一時……最高だ……」
 煌めく夜景を見ながら薔薇シロップで割ったシャンパン。その御供にジュレを。
 シャインは軽くグラスを持ち上げ、シャンパンに口をつける。
「青薔薇の花言葉『神の祝福』と『奇跡』に……」
 夜景とシャンパンの煌めきを楽しみながら。

 シャンパンではなくサイダーで割った物をつかさはミュゲの傍に。
「ほら、ミュゲ? お前の分」
「よかったな、ミュゲ。これもしゅわしゅわで一緒だぞ?」
 目の前のティースタンド、そして夜景。
 それに無邪気にはしゃぐ姿につかさとレイヴンは顔を見合わせ笑って、遅いアフタヌーンティーの始まり。
 グラスを軽く合わせ含むシャンパンからは薔薇の香りだ。
「香り過ぎずに味も損なわないってのはある意味凄いな」
「ああ、薔薇の香りが丁度良い」
 レイヴンはシャンパンとも合っていて、とても美味しいなと。菓子を取り分けつつ、高級ラウンジと聞いて気後れしてしまうと思ったがと零し。
「また、機会があれば家族皆で来たいな」
「ぅん? あぁ、そうだな……また、機会があったら皆で来ようか」
 約束と、紡ぎ合って。

 お酒を飲むときは漆と一緒。
 その約束を覚えているとメリルディは紡ぐ。
「約束、覚えていてくれたんですね」
 そう言って漆はグラスを掲げる。
 目の前には薔薇割りのシャンパン。そのおともはキッシュとプチカスタードタルトだ。
「薔薇のお菓子もあるけど、それだとシャンパンが霞んじゃうきがしたんだ」
 甘いのとしょっぱいのとどっちが合うかな? と悩むメリルディ。
「とりあえず両方を試してみるのがいいんじゃ無いでしょうか?」
 ただ、敢えて俺の好みを言うなら、と漆が示したのは。
「こっちのキッシュでしょうか」
 その言葉にそっか、と頷いてキッシュを一口分、フォークで漆の口元に。
「食べたら感想、教えてね」
 メリルディはどっちも美味しいと思うと笑む。
 それは一緒だから。

「……羨ましい?」
「悔しくなんかないですよ……ちょっとしか」
 その言葉に成人した暁には祝杯をあげようと夜は紡ぐ。
「あと一年、待っていて」
 埋まらぬ年の差を感じてぷくりと頬を膨らませるものの、目の前のティースタンドに綻ぶ。
「姫君はどの宝石が最もお気に入り?」
「ジュレもマカロンも美味で、一番を選べない幸せ!」
 舌の上で華やぐ甘さの薔薇。
 アイヴォリーが幸せそうに寛ぐ様は硝子に映る。その姿を夜が見つめているのとぱちりと、二人の視線が合う。
「もう、いつから見てたんです?」
 そう言われて、今度は硝子越しに見つめあう。
 大人の貴方につり合う恋人に見えるかしらと、アイヴォリーがふと思う。
 悪戯に笑う人。
 この人に沢山キスをして、隅々まで同じ香りに染まったなら、少しでも近付けるのかしら――なんて、願ってしまう。
 その想いを見透かしてか。
「ねぇ今夜」
 口付けを交わしたらきっと薔薇の香りに満たされるよ、と。
 夜は悪戯心を乗せて笑む。
「後で試してみる?
 アイヴォリーは艶やかに、薔薇の露で濡れた唇で笑みを象る。
 貴方のお望みのままに、幾らでも。

「いぶくん見て見て。すっごい可愛いよー!」
 ふかふかソファとクッションにはしゃぐ結弦とその姿可愛いと思ういぶき。
 花弁の浮かぶシャンパンで乾杯し、同じ物に手を伸ばす。
 スープもサンドイッチも。
 どれもおいしくて、その都度重なるのは。
「おいしいねー」
「とっても美味しい」
 好きな物に囲まれた空間で目の前には大好きないぶき。
 この至福の時間がずっと続けばいいのになと思う結弦の口から零れるのは応えを知っている問。
 勿論、お誘いはいつだって喜んでといぶきは笑む。
 とびきりの思い出が、また一つ増える幸せ。
 ゆづさん、ゆづさんと、意味なくいぶきが呼ぶ声は結弦の胸を、ほろりと甘く溶かす。
「なぁに、いぶくん」
 とろりとしたのは決して酒精のせいだけではなく。

 シィラの足には戴き物の靴。素敵な紳士様と同席で緊張しちゃうと、笑って。
「お酒の楽しみ方、教えて下さいね」
 すると難しいことはないとシュカは返す。
「食事と同じさ。愉しめば良い……味が判る間まで、ね」
 では、乾杯とグラスを傾け口にすれば薔薇の香りが心地よい。
「ねえ、何を頂きましょうか。わたしは一通り食べたくなって……」
 シィラが瞳輝かせる様子にシュカはくすりと笑い、今宵は君が主役なのだから、と紡ぐ。
「好きなものを、好きなだけ」
 有難うございますとシィラははにかみシュカの言葉に甘える。
 チョコの薔薇に薔薇のタルト。それにマカロンを添えれば。
「お皿が庭になったみたい」
 その一つを口に運べば、美味しいですねと自然と口元は綻ぶ。
 幸せそうな表情にそうだねと頷くシュカは小さく目見零した。
 今宵は白薔薇も咲んでいる様だ、と。
 共に過ごせるひと時は夜景の如く煌めいて。
 泡沫の如く、儚い時間。
 だからこそ、一際輝いて見えるのかも知れぬなとシュカは零す。
 今という時間が深く心に刻まれますようにとシィラは笑んだ。

作者:志羽 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年5月28日
難度:易しい
参加:34人
結果:成功!
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