ソフィアの誕生日~アップグレード・ハート

作者:のずみりん

「アップグレードを所望します」
 その日、ソフィア・グランペール(レプリカントの鎧装騎兵・en0010)は単刀直入に言った。ケルベロスたちと、そして自分自身に。
「守るには力が要ります。今を守るために、今より強くなりたいとソフィアは感じました」
 第二次大侵略期の始まりから、デウスエクスの攻撃は激化の一途を辿っている。惨敗、惜敗、辛勝、苦闘……この口下手なレプリカントの少女も、多くのケルベロスが経験した記憶に思う所あるのだろう。
「……人間の言葉では『修行』、というのでしょうか? そう、修行しましょう」
 確保したという会場……首都郊外山中の地図に重なり、一緒に紙が散らばっていく。
 手に取れば走り書きの設計図、ラフスケッチ……グラビティや武術のメモだろうか? その他形にならないメモ書きが多々、山ほど。
「ソフィアはソフィアの事を考えてみました……みました」
 頭から煙が出そうなソフィアの顔。要するに、アイデアは煮詰まらなかったと。
「皆様にも似たような経験はないでしょうか……」
 古人に曰く、三人寄れば文殊の知恵とはソフィア談。たしかに一人で悶々と考えるより、皆で意見交換し、実際に試してまとまるものもあるかもしれない。
 地図の場所は広く、ケルベロスがグラビティや装備のテスト、組手で少々暴れても迷惑にならない規模だ。
 付近にはちょっとした工作スペースを置けそうな小屋もあり、ちょっとした改良・試作を現地でテストしながら行う事もできるだろう。
「アップグレード……修行は努力の試行錯誤と聞きます。皆でやりましょう……やりませんか?」
 こちらも努力したのだろう、不器用な微笑みでソフィアは誘いかけた。


■リプレイ

●ブルー・ブループリント
 修行するにしても、誕生日だ。
 邪魔にならない程度の細やかな差し入れを手に、神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)は会場、工作小屋の扉をたたいた。
「誕生日おめでと、う……とは、言いづらい空気のようだな」
「ありがとうございます、あきらどの。だいじょぶです、ソフィアはげんきです」
 あまり大丈夫でなさそうなソフィア・グランペール(レプリカントの鎧装騎兵・en0010)の声。ボクスドラゴン『ラグナル』にソフィアと差し入れを託し、晟は作業机に並ぶ設計図、ラフスケッチを手に取ってみる。
「形にするって難しいよね」
 専門外ながら見て取れる悩み。晟は二藤・樹(不動の仕事人・e03613)に同意し、目を細める。
 設計図を青写真と呼ぶのは歴史上の経緯だが、目前のそれもまた、迷いと憂鬱のブループリントだ。
「俺は普段『いかに楽をするか』って作ってるけど。アイデアって最初、意外と曖昧なんだよ」
 DIYショップのカーテンレールとスプリング、組み合わせたら青いジャージの袖裏に仮止めする。
「ほう、スリーブガンか」
「最近みた映画に刺激されてね。隠し武器はロマンだから」
 同意する晟に笑い、軽く腕を一振り。樹の袖からカーテンレールがバネで展開される、が……。
「あ……っ」
 ひっかかり止まるレールにソフィアが思わずと声を漏らす。
「予想通り、ジャージの袖だとコートみたいには難しいな……小型化するか、袖を広げるか……」
 分析し、樹はしかし難しい事じゃあないと顔を上げて見せる。
「俺はやりたい事が定まってるし、モデルはあるからね。ソフィアはどうかな?」
「やりたい事……ソフィアの目的は、守ることで……いえ」
 その様子に頷き、椅子ごと工作台に戻る樹。そうだった。『守る』というのは確固たるようで曖昧とした概念だ。アイデアを納得に昇華させるには手段がいる。
「耐えるか、よけるか、無効化……攻撃される前に倒すのも立派な防御だが、ソフィア君。出来ること、したいの確認から始めてみてはどうかな。私が確認は、ちょっとまずい気もするが、うむ」
 ふと気まずそうな晟に、そっと麦茶を置く空木・樒(病葉落とし・e19729)が間を取り持ってくれた。
「大目標が定まれば、それを実現するために具体的に何をすれば良いかも少しずつ見えてくるでしょうからね……あとは、それが向いていないなら取り止める勇気ですね」
「ありがとうございます、晟殿、樒殿……何をするか……」
 今日は皆のサポート、相談役という空木・樒(病葉落とし・e19729)に礼を言うソフィアだが、表情は硬く……と、いうところに呼びかけるは因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145)
「よし、まずはコアブラスターに改善の余地があるか胸部装甲をパッカーンしてみようか?」
「パッカーン、と?」
「パッカーンと」
 五月の青空の下、景気よい掌の音が響き渡った。

●兎に角、試してみよう
「ソフィアだって、羞恥の心はあります」
「ゴメン、思いつめてたようだから……あとちょっとの好奇心……スイマセンなんでもないです」
 赤らんだレプリカント少女の戸惑い、焦りの混じった顔立ちはつつきまわしたくなる可愛さだった……などと言えば、白兎の頬にもみじが一つ増えてしまいそうだが。
 目の据わったソフィアを宥めすかし、彼が連れ出した先は野外の試験スペース。
「基本、僕は正面切って戦うのが好みじゃないからね。支援型の提案だよ……と、先客だ。ちょっと待ってて」
 二人が見やった先には瑠璃水晶の刃を構える女武芸者と、それを囲む畳表の的。
「……カタリ、いざ参る!」
 名乗りをあげ、安達原・カタリ(黄泉帰る女武芸者・e33419)の呪霊剣【浄瑠璃金】が閃く。弧を描く一閃、魅せられたように集まる霊体を纏い、二つ目の三日月。切れ時に揺れる瑠璃の刀身を地獄の炎で染め御し、円月を裂く三撃目……いや、まだだ。
「南無八幡大菩薩……!」
 逆袈裟の太刀が紅蓮の月を解き放つ。彼岸花の弧が逃した畳表すべてを鮮やかに切り伏せた。
「おみごと……!」
「ありがとうございます。まだ道半ばですけれども……ソフィアさんも、何か新しい力は見つけられそう?」
 悠然と、しかし僅かに気恥ずかしさをにじませ、馴染みだした喰霊刀を納めるカタリ。未だ……と、言いかけてソフィアは出かけた白兎と、彼の連れだつ仲間に気づいた。
「誕生日おめでとう、先日は大変助かった……礼になるかはわからないが、模擬戦しないか?」
「マーク殿も壮健で何よりです……マーク殿とソフィア、ですか?」
「いや、僕とソフィアで、マークとだ」
 きょとんとしたソフィアに、得心した様子でカタリが微笑む。
「物は試しと言います。とりあえずやってみないと良し悪しはわかりませんから」

「SYSTEM PRACTCE MODE.R/D-1 ALL TRUSTED」
 マークの戦闘機動に、ソフィアの射撃が宙を切る。その動きはソフィアも相対した彼の戦友にも似て、一方でよく知る動きでもあり、全く覚えのないものにもなる。
「マーク殿の動き、まるで違います……!」
「大丈夫、このままでいい……集中して、このまま」
 食らいつく演習弾の衝撃によろめくソフィア。彼女を支えながら、必殺のトリガーを絞る白兎だが瞬間、マークの身体が跳躍した。
「TRAP DETECT、AVOIDING……!?」
「ソフィア、了解です!」
 跳躍した頂点を、狙いすましたソフィアのミサイルが撃つ。バランスを失ったマークが墜落、地面へズボリと綺麗に落ちた。
「SYSTEM SUSPEND……やられたな、そのための落とし穴か」
「よく知る罠は意識しちゃうよね。嵌ってくれなくても十分なワケ」
 状況はまだマーク有利だが、してやられたというべきだろう。『R/D-1』AIは多重罠までを警戒していたが、それすらも上回るとは。
「とまぁ、こんな感じ。ドローンとかと併用すれば複数人にナビゲートとかも出来るだろうし……ソフィアはそういう計算とか、いける?」
「支援……ナビゲート」
 白兎の手を握り、ソフィアは神妙に頷いた。

「ワイルドグラビティ!」
 ノル・キサラギ(銀花・e01639)は地面に棒で大きく書く。
「……の、前に。誕生日おめでとうね! 俺たちも一緒にアップグレードしようっと」
「ありがとうございます。実のところ、ソフィアも初めてなのです」
 率直に頭を下げる少女に、グレッグ・ロックハート(浅き夢見じ・e23784)がお互い似たようなもんさと微笑む。
「ワイルドグラビティは俺も興味があったからな」
「でも紙に書いてても思いつかないし、身体を動かして考えるっていいんじゃない? 先日の菩薩累乗会の時とか二人で上手く戦えてたし……そういうので!」
 ノルの提案に乗り、まずはソフィアのドローンが吊るす標的相手。ランダムに旋回運動をつけて、いざ!
「コードXF-10、術式演算。ターゲットロック。演算完了、行動解析完了――時剋連撃!」
「受け取った、白刃一閃!」
 ノルの『XF-10術式演算/時剋連撃』行動予測プログラムを駆使した未来位置の弱点へ零距離射撃、撃ち抜いた標的を更にグレッグが迫撃する……が。
「……普通の連続攻撃だな、これでは」
「攻撃がヒットした時点で未来予測は変化……途切れちゃうからね。難しいな」
 連続が難しいなら、同時では?
「タイミングが難しすぎる! 寸分の狂いもなく合わせる必要があるのか……もっと予測範囲を広げる? あるいはX-0、魔術拡張なら……」
「逆に俺がリードするなら、そうだな。『凛華』の力を借りてみるか?」
 思案し、誰からとなくふと笑う。ワイルドグラビティ……合体攻撃は思いのほか難しいが、試行錯誤して自分を磨くと言うのは、新鮮で楽しいものだ。

「修行といえば、まずは精神を落ち着かせる所から。なので取り敢えずは滝行で不要な思念を洗い流すのじゃ。そして修練すれば、この通り……!」
 流れる滝を裂く一之瀬・白(八極龍拳・e31651)の拳にソフィアと【番犬部】の仲間たちが拍手する。成功したのは最近だそうだが、立派な修行の成果だ。
「かりん殿、フィロヴェール殿も『気』を……?」
「いえ、ぼくはどちらかと言うと守る方が慣れているので……フィロヴェールと似ているかもしれませんね」
「わたし、どっちかっていうと、サポートするほうだからっ」
 普段は『ヤギさんソード』を愛用のフィロヴェール・クレーズ(飛び跳ねるうたうたい・e24363)だが、今日はオウガメタルでの特訓だ。
 かりんのハンマーと打ち合う金属生命体、受け流し絡みつく柔らかさは餅つきに見えなくもない。
「どちらも毛色の違う戦い方じゃし、興味深いのう。折角じゃし…連繋して、合わせ技の練習でもしてみるか?」
 歌、ハンマー、そして……。
「番犬部特製『自爆スイッチ』~!」
 爆発スイッチ、オンである。バランスはよさそうだが、これもまとめるには大変そうだ。

●道のり険しくも、目標高く
「おー、やってるやってる」
 模擬戦フィールドの見知った仲間たちの姿にギルフォード・アドレウス(咎人・e21730)は、ひょいと柵へと昇る。
「外から見るって、なかなかないからなぁ。今日は頭切り替えて、周りから学ぶ姿勢で見学するぞ……と」
 腹に響く衝撃を感じた先はエリアス・アンカー(異域之鬼・e50581)と交久瀬・麗威(影に紛れて闇を食らう・e61592)、二人のオウガが組手の真っ最中。
「地球に来てから本に料理にばかりでしたからね……お手柔らかに、お願いしますね?」
「何がお手柔らかにだ、この野郎っ!」
 規格外、というしかない。眼鏡の似合う知性的な優男でも、麗威の拳は間違いなくオウガの重さ。
 技術、知識という新たな『腕力』を手にした鉄拳が巧みさを増して迫ってくる……面白い!
「俺には俺で、得たものがあってな!」
 拳をぶつけ、反動で転回。エリアスもまた定命化からの日々で多くを得た。武器や防具……徒手空拳の今もそうだ。手足を守る手袋、ブーツは肉体を保護し大胆な動きを後押ししてくれる。
「なるほど、いいものを選びましたね! ではこれは!」
 全力をもって応える麗威。地響きを響かせる知り合いたちに、新技の試し打ちをと構えていたニルヴァーナ・アーリマン(外法のぽんこつ猫・e61577)の心で何かが燃え上がる。
「ここはちぃっと乱入したるにゃぁ……神意顕現、神威再臨、我ら神を騙るもの……」
 根源的な三つの煩悩を払うという不動明王の権能を騙り再現する『不動明王倶利伽羅剣』……その力は目前の三つを切り……三つ?
「エリアスにレイに……ギルもだったかにゃ? ニャーも混ぜるにゃぁ!」
「おぉっ、乱入ですか!?」
「み、みんなを止めないと……足元に気をつけて!」
 更に先には組手の相手を探す霜憑・みい(滄海一粟・e46584)の姿。守ろうと飛び出す彼女の選択は『二太刀ー冬霞ー』……なにしろ実力はよく知った仲間、手加減して止められるなどとは思えない。
「おい、なんかこっちに向かってないか!?」
「うにゃぁ? みいの……こ、これ切り払……にゃぁんでこうなるにゃぁぁぁ」
 二太刀は太刀に非ず。ニルヴァーナたちへと巻き上がる霞は喰霊刀から滴る呪いの血。派手にすっ転ぶニルヴァーナの刃があらぬ方に向く。
 エリアスは何とかかわすが、その心に危険な悪戯心がうずいていた。
「この状況、奴ならどう動く……?」
「それは僕も見てみたいね」
 オウガたちの溢れる闘志、地をはしるエリアスの角撃『棲鬼針山』にギルフォードの反応は素早かった。
「物騒な招待状を……!」
 見学者から当事者へ、一気に切り替え『秘術  北極星』。グラビティの三又槍で角の剣山を拘束、それを支点に戦場へと棒高跳び。
「祓え、『残火』」
 オウガメタル『残火』が『ライジングダーク』の黒光を放ち、冬霞を振り払う。着地と同時、麗威の拳に即興で連携するニルヴァーナと打ち合い数合。
「死地に飛び込む覚悟は出来たか? ラクシュミ様にお祈りは? 俺と得物で打ち合う心の準備はOK?」
 冗談めかしつつ、ギルフォードの目は笑ってない。これは、まずい。
「後悔は先に立たず……です」
「賑やかさ倍増ですねぇ」
 みいと麗威が見合わせる。いつもながら、頭一つ抜けた強さだ。
「やっぱ、強いな」
 頭をふるい、エリアスは笑う。超えるべき壁が、頼もしき仲間がいる。実感した今日この日は楽しき日々だ。

「……目標は、遠いです」
「うん……ちょっと規格外かな?」
 飛び出したギルフォードと『坂の町の古民家』の仲間たちの大暴れっぷりを見学しながら、ソフィアとイズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)は感想を漏らす。
「ですが、目指したくもあります」
「何か見えてきたなら、試してみる? 誕生日記念に」
 ソフィアの様子に、イズナはヴァルキリーらしい微笑みで誘いかけた。

●Try To Try!
 機理原・真理(フォートレスガール・e08508)の『改造チェーンソー剣』が、ソフィアのゾディアックソードをがしりと浮ける。
「すいません、二対一で……!」
「問題ありませんですよ……カントさんもやりたい事があるですし、ね!」
 鍔迫り合いながらやり取り。その間も側方を攻めるイズナだが、今度は『鎧装用シールドユニット』が展開。
 アームドフォートに支えられたサブアームだが、防壁はゲシュタルトグレイブとイズナを易々と押し返した。
 真理の実力は実際、相当なものだ。何とかついていけているのは二対一に加え……。
「ジョブレスオーラ、ヴォルケイノときて……次は、と……これにしますか」
 突如戦場を覆う色とりどりの爆発。無責任に戦況を変化させる第三者、アルニ・カント(砂銀・e00596)の『仕掛け』の御蔭もあった。
 もちろん真理も対象となるわけだが、この状況では追いかけるイズナたちが差を詰める助けの方が相対的に大きい。
「真理殿の防御に、連続攻撃での突破は困難です……ではっ」
 距離を取り、立て直し、再びの攻防。今度は二刀からの星天十字撃、だが……。
「威力は上がりますが、隙も増えているですよ。これはどう防ぎます?」
 受け止めたソフィアをカウンター気味に払うシールドバッシュ。アルニの降り注ぐミサイルが、今度は真理への援護になる。
「……やってみよう。ソフィア!」
 土煙から飛び出したのはイズナだった。伸ばしたバトルオーラを剣に見立て、突き立てるような『ハウリングフィスト』。強襲に真理も盾を支えて受け止める……まさにそこが狙い。
「もう一度……イズナ殿……!」
 拮抗する力を後押しする十字の衝撃。許容値を超え、シールドごとサブアームが飛んだ。
「強いの、ですね……」
「真理殿に言われると……恐縮です」
 どちらかとなく刃を治めた双方に、アルニから炭酸飲料のボトルがほおられる。
「おつかれさまと、誕生日おめでとうございます。どうですか?」
「アルニ殿も、ありがとうございます。漠然ですが、見えてきた気がします」
「咄嗟だったけど、剣は色々できそうだもんね。後は仕掛ける時の守りが課題かな……」
 また一つ、プランは増やせそうだ。

●二十歳へのアップグレード
「へぇ、そんな凄い戦いだったんだ」
「そのサブアームさばき、すごかったんだよう。もう、サブどころか腕が三つ四つあるみたいなんだもん」
 天羽・蛍(突撃戦闘機・e39796)はイズナの話を聞きながら、テキパキと工作を進めていく。得意の高速修理に、オプションドローンも組み合わせての仕事ぶり。
 それは助けるだけでなく、整備士として彼女自身のレベルアップでもあるのだ。

「女は度胸、狙った獲物は必ず仕留めるが雌カマキリのキルシェファミリーの家訓っす……!」
「尻に敷かれて食われるとか、カッコ悪いところは見せられないね。全力でいくよ……」
 レスター・ストレイン(デッドエンドスナイパー・e28723)とコンスタンツァ・キルシェ(ロリポップガンナー・e07326)、双方を把握しているのは、審判のソフィアだけだ。
 数で勝負のコンスタンツァ、耐えて狙い撃つレスター。正反対なガンスリンガー二人の戦いは森の中、静と動を繰り返し続く。
「家出してきたけど……一族代々銃で食ってきたんすよこっちは! そこ!」
「その勘と度胸は見習いたいけどね……計算高さでは俺が一枚上手だ」
 コンスタンツァの直感か、レスターの論理か? 総力を出し尽くし、疲労を見計らって仕掛けた決戦は、ほぼ互角。
「と、いいたいけど……」
「踏み込まれて、ますね。ソフィアの判定は、コンスタンツァ殿の勝利です」
 勝利の一因は戦場の大きさ。この広さでは小回りの利くコンスタンツァがまさったが、違う広さ、違う場所ならどうなったか。
「戦場がもっと広かったら危なかったっすね……隠れて狙い撃つって性に合わないっすけど、狙撃……むぅ」
 極めるか、広く学ぶか。方向性の選択も一つのアップグレードだ。

「おかえりー。誕生日おめでとう!」
「蛍殿も……ありがとうございます」
 ささやかな晩餐に帰ってきたソフィアを、修理を終えた蛍が迎え入れる。
「どうでしたか? アップグレードは」
「おかげさま、です」
 樒へ頷くソフィアの顔に憂いはなく、少し豊かな表情が見えた気がした。

作者:のずみりん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年5月23日
難度:易しい
参加:22人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 5
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