ドクダミ攻性植物大量発生!

作者:雪見進


 ここは大阪城の近くの静かな市街地。
 そんな市街地に何か、黄色い果粉のような謎の粉が漂う。その粉が、地面にゆっくりと集まって行く。その粉が集まる先は、アスファルトの隙間から生えている雑草。いや、雑草などという植物は存在しない。ただ、人間が勝手に邪魔な植物を十把一絡げにそう呼んでいるだけだ。
 その謎の粉を浴びた植物……ドクダミ草は、静かに葉を躍動させる。
「……なんか、変な匂いしない?」
「この匂いしってる。草むしりすると匂うんだよね」
 その名の通り特徴的な悪臭を漂わせながら、ドクダミはアスファルトの隙間から真っ白は根を抜き、動き出す。
「お、おいあれ!」
「キャァ!」
 突然動き始めた植物に悲鳴をあげる人々。さらに、地面から抜けてくるドクダミの根は、外に生えている葉の量の数倍となり、鞭のように伸ばして、近くの人間に攻撃を仕掛ける。
「た、助けてくれ!」
「逃げろ!」
 静かな市街地は一瞬にして、地獄絵図となるのだった。


「爆殖核爆砕の結果、大阪城周辺に押さえ込まれていた攻性植物達が動き始めました」
 大阪城を中心とした地図を広げて、説明をしているのはチヒロ・スプリンフィールド(ヴァルキュリアのヘリオライダー・en0177)。攻性植物たちは、大阪市内への攻撃を重点的に行なっている様子なのだ。
「おそらく、大阪市での事件を多数発生させて、大阪市内を中心として、拠点を拡大させようという計画だと思われます」
 このままだと、ゲートを破壊する事が難しくなってしまうかもしれない。
「それを防ぐ為にも、敵の侵攻を防いで、隙を見つける必要があると思います」
 その為にも、今は攻性植物の被害を防がなければならない。チヒロは詳細な説明に移るのだった。

「今回現れるのは、ドクダミという植物の攻性植物です」
 説明をしながら、図鑑の写真と簡単な解説をするチヒロ。
「……嫌な匂いのする植物みたいですけど、お茶になったりもするらしいですね」
 ドクダミ茶という、名前だけ聞くと美味しくなさそうなお茶になっていたりもする。
「美味しかったですよ」
 何かのヒントにならないかと色々調べるチヒロだが、この感想は事件解決には意味は無いだろう。
「……ともかく、生命力の強い植物です。なので、攻性植物になってさらに強い生命力があると思います」
 味はともかく、現れた攻性植物の数は5体。しかし、数が多くてもバラバラに行動する事はなく、積極的に人間に攻撃を仕掛けている。
「近くにいる人間に攻撃を仕掛けるようです」
 事件発生時には周囲に結構な数の一般市民がいる。すぐに被害が出ない範囲で避難してもらっているが、無理の無い範囲で周囲へ警戒を促して欲しいとチヒロは言う。
「念には念を入れて、です」
 ちょっと心配性である。

「ともかく、皆さんであれば被害を最小限に抑えて、攻性植物を撃破出来ると信じています。よろしくお願いします」
 そう言って、チヒロは皆に後を託すのだった。

「また、攻性植物が動き出したでござるか」
 説明を聞き、立ち上がったのはウィリアム。これまで何度も戦いを繰り広げてきた相手だけに、慎重になっている様子でもあった……。


参加者
ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)
愛柳・ミライ(宇宙救済係・e02784)
葉月・静夏(戦うことを楽しもう・e04116)
草間・影士(焔拳・e05971)
ガロンド・エクシャメル(災禍喚ぶ呪いの黄金・e09925)
フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)
ハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606)
ヒマラヤン・サイアミーゼス(カオスウィザード・e16046)

■リプレイ


 ここは大阪城の近くの市街地。そこをゆっくりと歩くケルベロスたちの姿があった。
「ついに、大阪城の勢力が再び動き出しましたね」
 フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)が呟く。今回の攻性植物は以前に大阪で発生した爆殖核爆砕戦の影響で発生したものだと思われている。
「……また、カンギが一枚噛んでいるんじゃないだろうな」
 フローネの言葉に続けるハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606)。ハインツの言うカンギとは攻性植物勢力の将の一人である『レプリゼンタ・カンギ』の事だろう。以前にも様々な事件に関わってきた相手だ。
 ハインツは過去のカンギの起こした様々な事件に強い憤りを覚えている様子だ。
「まずはひとつずつ、確実に対応していきましょう!」
「そうだな。もう、誰の命も奪わせやしないぜ」
 攻性植物によって失われた命は少なくない。そんな相手が動き始めたのだ、気を引き締めなければならない。
 しかし、常に気を張っている訳にはいかない。
「やー、久しぶりウィリアム」
「久しぶりでござる。ノーフィア殿は元気そうでござるな?」
 長い間、ケルベロスとして活動していると、依頼で複数顔を合わせる者も増えてくる。
「絶好調! ウィリアムも調子は悪くないよね。今回もよろしくさ!」
「うむ、拙者も好調でござる。よろしく頼むでござる」
 他の皆にも挨拶を交わすウィリアム・シュバリエ(ドラゴニアンの刀剣士・en0007)とノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)。
 攻性植物との大きな戦いは何度目になるだろうか。その分、ケルベロス達も絆を強めている。
 軽く歓談をしている中で、話は今回攻性植物化した植物へ話が移って行く。
「生命力の強い植物に、何時だって人類は生存圏を脅かされてばかりなのです」
 従来、植物は人間にとって毒のある物が多く、それを知恵によって有用してきたという歴史がある。
 そう言う愛柳・ミライ(宇宙救済係・e02784)には、苦い体験をした友人がいたようだ。
「……友人宅の庭が、間違って撒いたハーブで埋め尽くされてましたが、大阪はそうはさせないのです……!」
 ミライの友人が撒いたハーブとはミントの事だろうか? ミントは生命力は非常に強く、地面に撒くと他の植物を駆逐するほどだとか。
「住む場所って、中々変えられませんから……!」
 さらに悪い事に、ハーブとしての香りも弱くなってしまうという。
「が、今日はそうはいかない、のです!」
 元気な声で気合いを入れるミライ。今回の攻性植物はドクダミが変化してしまったもの。
「どっちかと言えば、薬草のようなカウントだった気がするが、攻性植物になっちゃもう関係ないか」
 そんなドクダミについてガロンド・エクシャメル(災禍喚ぶ呪いの黄金・e09925)が呟く。実際、薬草、野菜、雑草などの区別は非常に曖昧。ドクダミも平安時代頃から中国から薬草として渡来したと……言う説がある。
「ドクダミは厄介だけど、地下茎全部外に出てる今なら!」
 ノーフィアはドクダミに詳しい様子。実際、ドクダミの一番の問題は地中に長く広がっている地下茎。草刈りの重要なのは地表から出ている草じゃなく、地面の中の根。その重要な根がドクダミの場合、とても長いのだ。
「こま切れにした破片からでも生えてくるくらい、地味に生命力の強い植物なのです」
 ヒマラヤン・サイアミーゼス(カオスウィザード・e16046)も同意するように答える。普通に切ったくらいでは、そこから根を伸ばす生命力の強さがある。
 そんな経緯があるから、今ではやっかいな雑草というカテゴリーになっているのだろう。実際、この季節、道端に目をやると可愛らしい白い花が咲いている。花は可愛らしいがその葉には少し紫色があり、それが『毒』をイメージさせる。
「そうでござるな……」
 ノーフィアとヒマラヤンの言葉に同意するウィリアム。実際にドクダミで苦労した事があるのか、その同意にはとても力強さがあった。
 そんなドクダミだがガロンドの言うように薬草としての意味合いも大きくお茶として飲まれる事がある。
「ドクダミ茶、飲んでみたいね。ささっと倒して飲んでみよう」
 攻性植物になってしまったドクダミはどうにも出来ないが、お茶なら普通に売っているものだ。そんな葉月・静夏(戦うことを楽しもう・e04116)を見て、ちょっと微笑むウィリアム。何か用意しているのだろうか。
 そんな相談をするケルベロスたち。それを楽しそうに眺めている様子に見える、ミライのボクスドラゴン、ポンちゃんとノーフィアのボクスドラゴン、ペレ。お互いに顔を見合わせて、翼をぱたぱた、しっぽをふりふり。
 それを見たハインツのオルトロスのチビ助とヒマラヤンのウイングキャット、ウィー・エフトも一緒にしっぽをふわふわさせたり。そんな様子を見守るように歩き回るガロンドのミミック、アドウィクス。
 なんだか楽しそうな様子なのでした。
「ともかく、ここで逃すと余計に厄介な事になるだろうからな、まとめて草刈りと行くか」
 皆を代表するように声を上げる草間・影士(焔拳・e05971)。その言葉に皆でうなづき、目的地へ向かうのだった。


「攻性植物は公園に誘い出すから、避難をお願いなのです」
「分かったでござる。攻性植物は頼んだでござる」
 ヒマラヤンの言葉を受け、周囲の避難誘導及び注意喚起に向かうウィリアム達。
 その背中を見送り、攻性植物の出現場所へ向かうケルベロスたち。
「ズズズズゥ」
 到着と同時に地面から這い出し、塊となるドクダミ攻性植物。
(「美味しそうな雰囲気じゃないね〜」)
 そんなドクダミ攻性植物を見ながら、心の中でお茶の味を想像する静夏。巨大化もしているし、お茶にしない部分も混じって攻性植物化しているので、そこから味を想像するのは難しそうだ。
 不気味な音を響かせながら、ケルベロスたちを敵と認識したようで、襲いかかってくる。
「黒曜牙竜のノーフィアよりドクダミたちへ。大地と光の祝福を」
 ノーフィアが宣戦布告となる言葉を響かせる。戦いの開始だ!


 最初に動いたのはフローネ。ダイヤモンド・ハンマーを背後巨大アームで構え砲撃モードへ変形させえる。
「ミライさんいきましょう!」
 ダイヤモンド。ハンマーより竜砲弾を攻性植物へ放つ。
「はい、フローネさん!」
 フローネの攻撃に重ねて、ミライが時空凍結弾を放つ。
 竜砲弾と時空凍結弾が同時に炸裂し、白く光り輝く粒子が煌びやかに舞う。その輝きは、ダイヤモンドのような美しい輝きであった。
「そこは地元の人に迷惑がかかるから、こっちに来てもらうよ」
 ガロンドがシニカルな軽口と共に、別角度から巨大光弾を放ち、さらにアドィクスが攻性植物の根にかみつき、援護攻撃を行う。
「ほらーこっちにおいでよー」
 さらに、楽しそうに誘導するのは静夏。
「ブレイズー、クラーッシュー!」
 グラビティの名前をのんびり叫びながら、左拳にブレイズキャリバー特有の地獄に炎を纏わせながらのパンチで攻性植物を焼く。
「こっちをみてーよー!」
 攻性植物の注意を引く為に、公園に誘導する為に、攻撃を繰り出すノーフィア。降魔の力を込めた一撃を繰り出し、同時にペレが連携でブレスを放つ。
「こっちなのです!」
 ヒマラヤンは自身に怪しく蠢く幻影を付与し、ヴィー・エフトがしっぽの輪を飛ばし注意を引く。
「草刈りだ」
 静かな言葉と同時にバトルガントレットを握る影士。そのまま、気合い裂帛の気合を重力振動に変換させ、攻性植物へ叩きつける。
「ズズズズゥ!!」
 ケルベロスたちの攻撃を受け、逆上したかのように、激しく葉を花を地下茎を揺らし、襲いかかってくるドクダミ攻性植物。地下茎の一部を伸ばし、ノーフィアへ攻撃を繰り出す。
「させてたまるか!」
 そこへ割り込むのはハインツ。攻性植物の攻撃から庇いながら、オウガ粒子を放出し仲間たちを支援する。
 そのまま、連続でケルベロスたちへ攻撃を仕掛ける攻性植物。悪臭のする蔓や根を伸ばし、攻撃を繰り出す。
「大丈夫です」
 仲間を庇いながら攻性植物を誘導する静夏。根に絡まり毒を受けるも、大丈夫とアピールする。
 そんな静夏や他の仲間たちへ、ヒールを行うのはミライ。
「クッキーちゃん、お願い!」
 オウガメタルのクッキーちゃんからオウガ粒子を放出し、傷を癒すと同時に感覚を覚醒させる。
「ダメージを受けている人を回復するんだよ、いいね」
 というミライの指示通り動くポンちゃん。属性インストールで静夏の傷を癒す。
「ありがとうね」
「サンキュ、助かった!」
 静夏とノーフィアの大丈夫そうな様子を見て笑顔になるミライ。
 多少ダメージを受けた程度で怯む者などいない。建物への被害を最小限に抑える為に、ケルベロスたちは公園へ向かうのだった。

 ケルベロスたちが攻性植物との闘いを開始した頃、避難誘導班は、警察消防と連携して地域住民の避難及び、通行処理を行っていた。
「俺たちはケルベロスだ。攻性植物は仲間達が倒す。なので、安心して避難してくれ!」
「大丈夫だ。焦らず避難してくれ」
 避難誘導に尽力してくれる相馬・泰地(マッスル拳士・e00550) と神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)。
「は、はい」
 そのたくましい背中と勇気の出る声に励まされ、落ち着いて避難を行う一般市民。
「こちら側が安全です」
 さらに空から状況を監視し、情報を伝達してくれる彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)。おかげで、避難も迅速に進む。
「これで安心だな」
 避難が終わった地区には、ユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365) がキープアウトテープを貼り、念には念を入れ安全に気を配る。
 サポートに駆け付けてくれた者たちのおかげで、避難は迅速に進んでいた。

「ズズズィィィ!」
 攻撃を受けた攻性植物たちは、攻撃目標をケルベロスに定め、襲い掛かってくる。
「このまま、公園まで誘い出しましょう」
 作戦通り、広く戦いやすい公園へ攻性植物を誘い出す。その途中に、人影は全く無い。それは、ウィリアムたちが尽力してくれた結果だ。
「さあ、ここなら存分に戦えますね」
 公園への誘い出しに成功したケルベロス達。ここからが本当の戦いだ!


「双翼赤壁陣を敷く」
 ケルベロスたちの配置から、陣形を描き仲間たちを支援するハインツ。その形は鶴翼の陣形を模した形。
「植物には炎なのです!」
 ヒマラヤンが左翼から幻影の炎を放つと同時に、右翼からガロンドがアームドフォートの一斉砲撃を繰り出す。
「ズズズズゥ!」
 左右からの攻撃に動きが悪くなる攻性植物たち。
「そこです!」
 そこへ連携攻撃を繰り出すケルベロスたち。フローネがアームドフォートを突撃形態に変形させ突撃し、ノーフィアが地面の摩擦せ発生させた炎で左から、影士が旋風の刃を込めた蹴りを右から炸裂させる。
「スーカールー・ブレーイカー!」
 最後に、静夏が大きく飛び上がる、高い位置からの強烈な斬撃。
「涙は枯れはしない♪」
 そして最後尾からミライの歌声が響き、仲間たちを鼓舞していく。

 ケルベロスたちの連携攻撃を受けても倒れない攻性植物に負けないように、大きな声を出すのはハインツ。
「これで大丈夫だ、あと一歩頑張ってこうぜ! トイ、トイ、トイ!!」
 黄金のオーラを蔦状に変形させるハインツ。その蔦でヒマラヤンの身体に優しく触れ力を付与する。
「冷式誘導機全機準備完了」
 ハインツのヒールを受け、元気よくグラビティの力でミサイルを作り出すヒマラヤン。猫の模様が入っているのが特徴。
「さあ、突撃するのですよ!」
 ヒマラヤンの合図で攻性植物へ飛来する。そのミサイルは戦闘機のような形で青色のオーラを纏い突撃していく。
「ズズゥゥ」
 ミサイルが命中すると、爆発せずに、命中箇所を凍結させ砕く。身体の大半が凍結消滅すると同時に、全体が灰化し消滅していく攻性植物。
「まずは一体、どんどん行くのですよ!」
 一体目を撃破したヒマラヤン。残り四体の攻性植物を前に気合を入れ直す。戦力は低下しているが油断は禁物だ!


「一般人の避難は終わったぜ」
 避難誘導に尽力してくれた泰地が竜巻のような蹴りを放ちながら、戦闘に加わる。
「もう大丈夫そうだな」
 一緒に戦いに加わった晟。攻性植物は残り四体。しかし、戦況は決まっているように見えた。
 避難が終わった事で少し余裕が見えるガロンド。
「実に無粋だが……仕方あるまい」
 シニカルな表情を浮かべ、アドウィクスの力を解放し、影士の目の前をエクトプラズムで覆う。そのエクトプラズムが何を起こしたのかは不明。しかし、次の瞬間には影士の身体が黄金に輝く。
「……」
 その黄金の光は一瞬。次の瞬間にはバトルオーラ・影焼が影士の身体を覆い、闘志の炎と化す。
「この炎で散らしてやるよ」
 そのまま疾走すると同時に公園の遊具を足場に大きく跳躍。
「ズズゥゥゥ!」
 その影士を蔓で迎え撃つ攻性植物だが、その蔓は影士の身体に触れる前に覆われた炎により燃え尽きる。
「はぁ!」
 そのまま闘気の炎で攻性植物を撃ち抜く。
「幾らしぶとくても、このまま焼き尽くせば、生きていられないだろう」
 拳で攻性植物を撃ち抜いたまま、炎を燃え盛らせ、焼き尽くして行く影士。

「どんなに願っても涙は枯れはしない♪」
 ミライの歌声が響く。その歌声がフローネの背中を押す。
「ただ硬く。ただ重く。父のように!」
 背中の巨大アームにより展開されたダイヤモンドハンマーを真正面に構えるフローネ。さらに、アメジストシールドを展開、同時に紫水晶の輝きが周囲に舞い散る。
「ゼロを1に変える魔法が生まれたときから君に掛かってる♪」
 光散る紫水晶の輝きと同時に同化し、更に硬化するダイヤモンドハンマー。
「―――金剛石の一撃、喰らいなさい!」
 ダイヤモンドとアメジストの輝き、二つの輝きの軌跡を残しながらハンマーが攻性植物に振り下ろされる。次の瞬間、攻性植物は紫水晶の輝きと共に消滅するのだった。

 サポートしてくれていたユーロと悠乃のヒール及び支援を受けながら静夏が動く。
「煌き輝け!」
 後方から助走を付けての跳躍から繰り出される、アクロバットな動き。その中で静夏の拳が炎で燃え上がる。
「この一撃は、夏の夜空を翔る流れ星!」
 アクロバットな動きで攻性植物の頭上を取り、そこから炎の軌跡を描く流星のような一撃。それが、攻性植物を上部から下部まで貫く。
「ズズズゥゥ!」
 炎に焼かれ全身が煌めきながら、燃え尽きていく攻性植物。

 数いた攻性植物も残り一体。
「ズズズゥゥ!」
 仲間を倒された恨みか、奇声を上げる攻性植物。
「我、流るるものの簒奪者にして不滅なるものの捕食者なり」
 それを無視し、ノーフィアが攻性植物の背後を指し示し、詠唱を行う。その指の示した先に、漆黒の球体が形成された。その球体は立体的な魔法陣で構築されている様子。
「然れば我は求め訴えたり、奪え、ただその闇が欲する儘に」
 続けてノーフィアの口から紡がれる言葉と共に、攻性植物が漆黒の球体に引き寄せられ、球体の中へ吸い込まれるように、圧縮され圧壊していく。
「ズズズズゥ」
 そのまま攻性植物は引き千切られたようにボロボロとなり、そのまま灰となった。
「地獄であんたらの仲間に伝えてくれ。沢山の人の命と未来を奪ったこと、今でも忘れてないぞって!」
 攻性植物は灰となり砕けて消えていく。その様子を見届け、ハインツが静かに呟く。その声には強い憤りを感じさせる。
「……」
 そんな様子を静かに見守るケルベロスたち。
「これで全部なのですか。……もう残ってないのですよね?」
 生命力の強い草が元だけに心配してしまうが、この場にはケルベロス以外に動く影は無い。ケルベロスたちの勝利だ!


 念のため、軽く周囲を確認するケルベロスたち。
「……あ、別に茶園とかじゃないんだっけ」
 色々とお茶の話とかが出ていたからか、そんな事を呟くガロンド。
「お疲れ様でござる」
 そんなガロンド達を労うウィリアムの手には、人数分の飲み物。
「良かったら茶でも飲まぬか?」
 その飲み物はお約束のように、ドクダミ茶。興味がありそうだったので用意してくれたようだ。
「いただきますね」
 ドクダミ茶の味は、市販のものだから、とても飲みやすく優しい味。
「美味しいね」
 そんな一休みするノーフィアの頭へ乗るペレ。しかし、すぐに、静かに離れる。
「ぺ、ペレー!?」
 ペレの様子に少し驚くノーフィアだが、その理由にすぐ気付く。
「……うん、早く帰ってお風呂だね」
 激しい戦いであったから、ケルベロスたちの身体にはドクダミの匂いが染みついていた。
「花は可愛くて綺麗なのですけどね」
 身体に染みついてしまったドクダミの匂いに閉口しながらも、ドクダミが悪い訳ではない。公園の中には普通にドクダミの花が咲いている。そんな愛らしい花を見ながら、静かに帰路に付くケルベロスたちであった。

作者:雪見進 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年5月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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