飛び惑いし悪意の種

作者:幾夜緋琉

●飛び惑いし悪意の種
 大阪府大阪市此花区。
 大阪市の中央部からは少し離れた所にある、川に挟まれた市街地。
 その一角に育った緑の木々の下へ舞い込んでくるは……謎の花粉。
 普通の花粉とは何か違う、その花粉が取り憑いたのは、枯れてしまった桜の樹。
 複数の樹々に、瞬く間に花粉は取り憑いていき……ぱぱっ、と桃色の花を咲かせて、怪物化してしまう。
『え? ……な、何だこれは!?』
 そして、偶然通りがかった、回りの住民達を……次々と幹をまき付けて捉え、左右に引き裂く様に引っ張り、真っ二つに引き裂こうとするのであった。

「ケルベロスの皆さん、集まって頂けましたね? それでは、早速にはなりますが説明します」
 と、セリカ・リュミエールは、集まったケルベロスに一礼も早々に、早速。
「爆殖核爆砕戦の結果により、大阪城周辺で押さえ込まれていた攻性植物が動き始めました」
 と言いながら、大阪府大阪市、此花区辺りを指し示し。
「攻性植物太刀は、大阪市内への攻撃を重点的に行おうとしている様で、今回現れるのも、もうシーズンが終わったはずの桜の樹が、謎の胞子によって一度に、複数が攻性植物化し、市街地で暴れだそうとしている様なのです」
「この攻性植物達が厄介なのは、一般人を見つけ次第、すぐに殺そうとする、という事です。当然ながら、とても危険な状態にある、と言えるでしょう」
「彼らの様な攻性植物を大阪市内で多数発生させ、一般人を中心街から避難させることによって、大阪市内を中心として拠点を拡大しよう……というのを狙ったものなのかもしれません」
「大規模な侵攻作戦では無いとしても、このまま放置すればゲート破壊の成功率も少しずつ下がっていってしまう事でしょう。それを防ぐ為に、敵の進行を今防ぎ、隙を見つけ次第反攻に転じる必要があります」
「尚、攻性植物化したのは3体の様で、彼らは別行動する事もなく固まって動いており、戦い始めれば闘争などは行わない様ですから、対処する事自体は難しくはありません」
「しかしながら、数の多さは脅威です。同じ植物から生まれた攻性植物であるのならば、互いに連携もしてくる様なので、油断する事は出来ないと思います」
 更に、セリカは細かい状況の説明へ。
「今回の攻性植物が居るのは、此花区のビジネス街の一角に、朝11時頃に現れました」
「時間的な部分もあり、回りには子供と共に散歩に来ていた様な、一般家族の方々位しか居ない様です」
「とは言えそんな一般人の方々を、この攻性植物は身体に吸収して生気をする等と言う事はせず、捉え、殺す事のみを狙いとしている様なのです」
「つまり、この攻性植物は生気を吸うのを殺す事のみで行う様なので、取りあえず周りの人達を周囲から避難させることが重要になるでしょう」
「又、攻撃手段は幹を鞭のようにしならせての攻撃や、桜の葉の様なモノを突如頭上から降り注がせて、視界を奪った後に、幹による叩き潰す攻撃、等をしてくる様ですから、真っ正面から喰らわない様にご注意下さい」
 そして、セリカは最後に。
「幸い、回りの一般人を事前に避難させる事は可能ですから、戦闘に集中する事が可能です。とは言え、3体の攻性植物と同時に戦わなければなりませんので、決して油断はなさらない様にお願い致します」
 と、頭を下げた。


参加者
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)
バーヴェン・ルース(復讐者・e00819)
アイシア・クロフォード(ドタバタ系忍者・e01053)
レイリス・スカーレット(紫電の空想科学魔導師・e03163)
ソラネ・ハクアサウロ(暴竜突撃・e03737)
彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)
餓鬼堂・ラギッド(探求の奇食調理師・e15298)
エリアス・アンカー(異域之鬼・e50581)

■リプレイ

●季節外れの仲間はずれ
 大阪府は大阪市此花区。
 川に挟まれた何の変哲も無い市街地は、今の所、平穏に包まれている。
 ……しかし、そんな市街地に突如飛んできた胞子……既に花が散ったはずの、桜の花が突如咲き誇ってしまうという話。
 勿論、花は理由も無く咲いた訳では無い。
 最近、この大阪府内の様々な所で出現している、攻性植物事件の一つであり……胞子を植え付けられた桜の木々は、突如として一般人を捉え、殺してしまう……という話。
「ーム……攻性植物のこの動き……不穏だな」
 こめかみをトントンと叩きながら、バーヴェン・ルース(復讐者・e00819)が思慮すると、それに頷きながら彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)も。
「ええ。この事件は攻性植物勢力の活動の活発化の一つでしょう……大阪全体で彼らは動いていて、その中心は大阪城にあるユグドラシル。そして、ミッションで姿が確認されたレプリゼンタ・ロキでしょう。ですから、この件の解決の為には、大阪城とロキへの対処が不可欠でしょう……」
 その考えが正しいかどうかは、まだ解らない。
 とは言え、今回の様に胞子を飛び散らせ、次々と人を殺すという攻性植物は……珍しいパターンである。
「しっかし、大阪の攻性植物もあの手この手と活発に動いてやがる。オレもゴールデンウィークを全部費やして手伝いに回っているしよ」
「そうですねぇ。ふーむ……攻性植物も黄金の果実だけを量産していればいいのですがねぇ。動いて人を襲うとか、植物としてそもそもあるまじきと言うか……」
 相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)に餓鬼堂・ラギッド(探求の奇食調理師・e15298)が肩を竦める。
 そしてレイリス・スカーレット(紫電の空想科学魔導師・e03163)が。
「制御されていない攻性植物は危険だ。空中戦が出来るかとは思ったが……まぁ、期待は出来なさそうだな」
 と言うと、アイシア・クロフォード(ドタバタ系忍者・e01053)が。
「そうだねっ。まぁ、今回は全ての攻性植物を倒すのがお仕事だし、変に体力調整しなくていいのは楽かな? まぁ、何にしても初めてのパターンだから、油断せずに倒さないといけないね」
 そしてエリアス・アンカー(異域之鬼・e50581)も。
「……枯れたとは言え、3本とも桜の木なのか。だが、元は寿命をまっとうした樹ならば、静かに眠らせてやるのが筋だろう」
 そんな仲間達の言葉に、笑いながらラギッドが。
「鬼畜植物は枯らすに限ります。さっさと片付けて奥さんの元に帰りますかね」
 とのろけると、それに泰地、バーヴェン、ソラネ・ハクアサウロ(暴竜突撃・e03737)らも。
「何にせよ、攻性植物の勢力拡大を阻止するためだ。今日もきっちりと仕留めるぜ!」
「ーム。デウスエクスの陰謀は初動でなるべく崩さないと被害が広がるッ。みんな、征くぞ!!」
「今迄にないタイプの攻性植物……どのような動きをするかは予測が出来ません。慎重に参りましょう」
 と覚悟を決めて、ケルベロス達は不意に桜が咲き始めた市街地へと急ぐのであった。

●闇風
 そしてケルベロス達が到着した市街地。
 ……今の所は、極々普通の街並みが目の前に広がっており、平和そのもの。
「さて……そろそろでしょうか?」
 と周りを見渡しつつ、桜の木を探すソラネ。
 道路を挟む形で数本の桜並木が立ち並んでおり、桜の季節ならばその花に立ち止る人も多く居ただろう……が、既に桜も散った時期もあり、歩く人は桜の木に興味など示さない。
 そして……ふわりと飛んできた胞子が、その桜の木に取り憑いてしまうと、すぐ。
『……!!』
 瞬く間に、枝葉に桜の葉を咲き誇らせる。
 突然桜が咲いたことに、周りの市民達は……驚き半分、感動半分といった所で、写真を撮り始める。
 そんな攻性植物の出現に対し、すぐにケルベロス達は行動開始。
 取りあえず、現れた攻性植物と市民の間に飛び込み、立ち塞がるソラネと、そのボクスドラゴン、ギルティラ。
「ここは私たちが預かりました。みなさんは警察の指示に従って避難して下さい!」
 強い口調で、市民の方達へ避難を促すと、同時にバーヴェンが。
「ーム。すまない、先ほど連絡した通りだ。回りの市民の避難を頼む!」
 回りにいた警察官や消防の方々へ、逃げる一般市民の方達の避難を指示。
 当然警察官、消防の方達は、指示に従い市民の方々の避難誘導を開始。
 ……ただ、一般市民の逃亡を阻止せんが如く、5体の攻性植物らは身を震わせ、桜の花びらを舞散らせての威嚇。
 しかし、そんな攻性植物の真っ正面でラギッドが。
「させませんよー。大人しくしなさい。脳みそもない癖に小癪なチームワークを見せてくれますねぇ……それを封じてあげますよ」
 ニヤリと笑い、そして先手とばかりにデストロイブレイドの一撃を叩き込む。
 それに連携し、動くエリアス。
「今回は敵の惹きつけとやらで、ディフェンダーとは言え受けるダメージはデカそうだな。ノイズ・キャンセラーと武装白衣の性能が役立ってくれれば良いが……何にせよ、皆が俺の目だな」
 と呟きながら、『遊鬼羅刹』の一閃を叩きつけ、更にギルティラもボクスブレスで攻撃。
 ディフェンダー陣の連携攻撃に対し、攻性植物は幹をビタンビタンと地面に叩きつけ、ケルベロスに対する威嚇の姿勢。
「やる気一杯、といった所か。皆、決して油断するなよ」
 とレイリスはそう皆に声を掛けつつ、
「異相次元限定解除、通常空間との限定接続を実行……さあ、虚実の劇場を始めよう。戦場の演出家は伊達では無いぞ」
 と『CARNAGE WEAPON UNCHAINED』を詠唱し、中衛列に妨アップを付与すると、それに続きアイシアも、一般人がある程度近くに居なくなったことを確認して、殺界形成を発動し、一般人避け。
 そして、頭のゴーグルを目に合わせつつ。
「皆、いくよ!」
 とステルスリーフの自己強化で気合いを入れる。
 そして、攻性植物は反撃開始。
 言葉無く、二体は身体を更に震わせ、実った桜の花びらを視界いっぱいに舞散らせる。
 そして視界をなくしたところに、二体が鞭のようにしならせた幹で弾く攻撃……もう一体が、幹を足元から蹴り上げる様に、叩き上げる攻撃。
 攻性植物は息の合った、様々な攻撃でケルベロス達に小さくないダメージを喰らわせる。
 しかし、待機していた泰地がすぐに。
「大丈夫か!」
 と後衛から気功治療術を使い、攻撃を受け止めた前衛、ラギッドを回復。
 そして、スナイパーのソラネが。
「繋いだ縁は何時までも。周り回って、守りましょう」
 と『人竜一体・機騎廻貝』によるBS耐性付与と、回復を行い、悠乃もエリアスに護殻装殻術で強化を付与。
 そして……最後にバーヴェンが。
「さて……先ずはお前からだ」
 と、敵の行動を一瞥した上で、接近して『日龍陽光斬』の一閃で、桜の木を一刀両断。
 大きく花びらを散らせ、幹の一つが切断されるものの……まだ、命は在る。
 次の刻、喰らったダメージをギルティラは属性インストールで自己強化すると、エリアスもシャウトで自己ヒール。
 対しラギッドは。
「本当連携が怖いので攪乱させますねー。味方同士で殴り合って下さいな」
 と『亡飲獰食・【催】』の催眠効果を付与し、混乱状態に陥れる。
 対しレイリスは『CARNAGE WEAPON UNCHAINED』でBS耐性を更に重ねる事で、敵のBS効果に対するエンチャントを強化。
 そしてアイシアは。
「これで動きを止める!」
 と気合いを雷と共に放ち『雷遁 雷刃手裏剣』で、樹への落雷。
 と、その一撃は、かなりの大ダメージを及ぼしたようで……一体目の攻性植物は、ぴたっ、と動きが止る。
「どうやら、弱点の様ですね……残るは四体ですか」
「ええ……次は、右手前を狙いましょう。バッドステータス使いの様ですから」
 ソラネ、悠乃が声を掛け合い、そして攻撃ターゲットを変更。
 勿論、その間攻性植物が反攻してくるのだが……前衛陣が絶対に後ろへ攻撃を通さない、と言うべく、身を持って立ち塞がっていく。
 そして、泰地がフローレスフラワーズで仲間の体力を回復しつつ、バーヴェンが絶空斬による一閃。
 一本、又一本と……幹を確実に叩っ切り、敵を弱らせていく。
 そして、経過する事十数分。
 視界を奪われながらも、敵を一体に集中させる事で、見えなくともその方向へ攻撃を放つ事で、確実にダメージを与え、一体ずつ倒していく。
 そして、残るは後一体。
 仲間達を失った攻性植物は……枝をふるふると震わせている。
 恐怖か、怒りかは解らないが……既にその幹はボロボロで、桜の葉も最早残り少ない状況。
「そろそろ、か? ならこっちをくれてやる!」
 と、エリアスが『遊鬼羅刹』の一撃を叩き込むと、その一撃に幹の部分に風穴が開く。
 そして、ラギッドも。
「そうですね! この戦いが終わったら私のお店でお食事にしましょう。腕を振るっちゃいますよ!」
 と言いながら、デストロイブレイドの一閃で、風穴を更にこじ開けていく。
 そして……。
「せめて祈ろう。汝の魂に幸いあれ……!」
 と、バーヴェンが最近接すると共に、全力の『日輪陽光斬』を枝葉の分かれ目の部分から叩き込み……最後の攻性植物は、完全に崩れ墜ちるのであった。

●黒く染まり
 そして……どうにかケルベロス達は、無事に攻性植物を討ち倒す。
「……ふぅ……どうやら、無事に打ち倒せた様ですね」
 と、息を吐き、汗を拭うソラネ。
 そして周りを見渡せば……市街地も、攻性植物が暴れた結果、木々は砕け散り、何処か悲惨な状況となってしまっている。
「……本当、こんな綺麗な桜を恐ろしい攻性植物に帰るなんて、許せないよ」
 と、攻性植物から解かれた樹に軽く手を当てながら、憤るアイシア。
 ……攻性植物の胞子が取り憑かなければ、枯れた桜の木も、また来年には花を付けてくれたかもしれない。
 でも、攻性植物となったからには、最早それも叶わないだろう。
「何にせよ、取りあえず周りの修復から始めるとするか?」
 そしてエリアスが、そう仲間達に促すと、ラギッドやバーヴェンらが頷き、その修復を手伝う。
 壊れたビルを修理して、逃げた際に転んだりして怪我した人に手当。
 その一方で、悠乃は。
「動きを知る事も対処の一つになる。そう私は思うから……泰地さん、ソラネさん、手伝って貰っても宜しいでしょうか?」
「ん? ああ、一応用意してきたぜ」
「そうですね。少しでも、この大阪に頻発している攻性植物を止める事が出来るのなら……」
 と三人はその場を離れていく。
 そして、一通りの修理、手当も終わり……。
「終わった終わった、っと……さて、皆。折角だし、食事しませんか? 私の店に」
 その店が何を出しているかは、言わず。
「そうだな。腹も減ったし、折角だから寄っていくか!」
 エリアスの言葉に皆も頷きつつ……ケルベロス達は其の場を一端後にするのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年5月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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