愛し苺の叛乱

作者:幾夜緋琉

●愛し苺の叛乱
 大阪府の某所にある、苺農園。
 ビニールハウスの中に、連なり赤く実った苺達。
 美しい苺は本当に美味しそうで、心も躍る。
『ら~、ららら~♪』
 ……その心の踊り様を示すかの様に、そのビニールハウスの間近に現れたのは……甘菓子兎・フレジエと、ストロングベリー3体。
 ただ……その歌声は声が震えており、まだまだ発展途上といった感じ。
 そしてフレジエは、数人の職員が世話しているビニールハウスの中に勝手に入っていき、実る苺を摘み取り、一口。
「……うーん。このイチゴはいまいちですぅ。これ、私にふさわしくないですぅ。こーんなイチゴは必要ないから、めちゃくちゃにしちゃってくださぁい!」
 とあどけなく言い放つフレジエに、ストロングベリーは蔦の様な物を伸ばし、実る苺を次々とたたき落として行くのであった。

「ケルベロスの皆さん、集まってくれたッスね! それじゃ早速ッスけど、説明するッス!!」
 と、黒瀬・ダンテは、集まったケルベロスに軽く挨拶すると共に。
「爆殖核爆砕戦の結果、どうやら大阪城周辺に押さえ込まれていた攻性植物達が動き始めた様なんッス!」
「この攻性植物達は、大阪市内への攻撃を重点的に行おうとしている様で、恐らく大阪市内で事件を多数発生させ、一般人を避難させることで、大阪市内を中心とした拠点拡大計画を実行しよう、としている様なんッス!」
「勿論、それを放置しておく訳には行かないッス。敵の侵攻を完全に防ぎ、更に隙を見つけて反攻に点じなければならないッス!」
「そんな中で、今回現れるのは甘菓子兎・フレジエと言う攻性植物の様で、配下を率いて大阪府近郊のいちご農家へと現れてしまう様ッス。このフレジエについてはすぐに撤退してしまう為、戦う事は出来ないッスけど、配下のストロングベリー達が、いちご農家に襲いかかる所に駆けつけるのが可能ッス!」
 と、そこまで言うとダンテは一端言葉を句切り。
「戦う相手になるのはこのストロングベリー達だけッス。数は3体で、恐らくケルベロスの皆さんに対し、蔦のような物をまずは伸ばして拘束しようとする様ッス」
「でも蔦の攻撃が上手く効かないのが解ると、その腕などにあるイチゴを爆弾の様に弾けさせ、果肉を目潰しに使ってくる様ッス」
「又、手足も普通にあるッスから、殴ったり蹴ったり、という肉弾戦的な手法も採る様ッス。特に接近し、顔にイチゴを叩きつけて目潰しする攻撃が一番攻撃力が高い様ッスね」
「それに3体のストロングベリー達は相互に連携してくる様ッスから、連携攻撃で一気に体力が減ってしまう可能性もあるッスから、連携攻撃には要注意ッスよ!」
 そして、ダンテは。
「甘菓子兎フレジエの目的は全然解らないッスけど、いちご農家の皆さんが襲われるこの状況をこのまま放置しておく事も出来ないッス。どうか皆さんの力で討伐してきて欲しいッス!!」
 と、拳を強く振り上げるのであった。


参加者
メルティアリア・プティフルール(春風ツンデレイション・e00008)
蛇荷・カイリ(暗夜切り裂く雷光となりて・e00608)
パトリック・グッドフェロー(胡蝶の夢・e01239)
蒼天翼・真琴(秘めたる思いを持つ小さき騎士・e01526)
パトリシア・バラン(ヴァンプ不撓・e03793)
中村・憐(生きてるだけで丸儲け・e42329)
シュネー・グリュクトート(ヴァイスケッツァー・e42582)
グラハ・ラジャシック(我濁濫悪・e50382)

■リプレイ

●苺実る
 大阪府某所にある、苺農園。
 極々普通の苺農園の敷地内には、多くの赤く美味しそうな苺達が実っている。
 ……でも、そんな美しい苺達を、私欲のままに貪ろうとしているのは、甘菓子兎・フレジエ。
「せっかく大切に育てているいちごなのに……誰かが一生懸命やっている事を踏み躙るだなんて、ちょっと悪趣味なんじゃない?」
「ああ。苺はこれからの時期が本当の旬だっていうのに……気に入らないからっていう理由でめちゃくちゃにするのは良い度胸だな? 全く、農家の努力を踏み躙るなっつーの!」
 と、メルティアリア・プティフルール(春風ツンデレイション・e00008)に対し、蒼天翼・真琴(秘めたる思いを持つ小さき騎士・e01526)は苛立ち気味。
 今回の攻性植物、フレジエは、農家の人達が世話をしているビニールハウスを訪れるなり、断りもなく実る苺を摘み取り、一口口にしては不満を告げる。
 そして……フレジエの指示によって、彼女の配下、ストロングベリー達が蔦の様な者を伸ばし、実る苺を次々と叩き落としてしまう、との事。
 恐らく、苺農家の方達の言葉に対しても、全く話を聞かず、美味しく無いものは悪だ、との事で、聞く耳を持っていない事だろう。
「んー……でも、人様の育てたイチゴをイマイチだのと言っている訳には、ストロングベリーって美味しそうじゃないっすね」
 と中村・憐(生きてるだけで丸儲け・e42329)が肩を竦めると、グラハ・ラジャシック(我濁濫悪・e50382)が。
「ああ……ただ、やる事が地味な割には、見た目のインパクトだけはあるな、この配下共……まあ精々、いい喰い応えしている事を祈ろうかね」
「そうっすね。無責任に偉そうな事を言って暴れてる輩は、潰して土に漉き込んで畑の肥やしとしてリサイクルしてやるっすよ!」
 憐とグラハの言葉、更にパトリシア・バラン(ヴァンプ不撓・e03793)にシュネー・グリュクトート(ヴァイスケッツァー・e42582)が。
「本当、一次産業の方々を狙うなんてやってくれるジャナイノ。ケルベロスも美味しい物を食べないとやる気が出ないと知られちゃったのカシラ?」
「本当やめてよね! このイチゴはもしかしたらシュネーの口の中に入るストロベリーチョコレートになっていた可能性もあるのにぃぃ!! だから許さないわ、食べ物の恨みは怖いって日本語、シュネーったら最近知ったんだから!!」
「ふふ。まぁ深い考えがあろうとなかろうと、経済にダメージが与えられるのは捨ておけないのダワ」
 そしてパトリック・グッドフェロー(胡蝶の夢・e01239)も。
「本当、食い物の恨みは恐ろしい……とは言え攻性植物、本当見境がないなぁ……樹だけじゃなくて、草にも出てくるのか……イチゴは野菜だぜ? 本当はな。イチゴのジュースとかソースを使ったケーキとかは、確かに好きだけど、さぁ……何とまぁ不思議というか、不気味な奴らだ」
 その攻性植物の動きに不信感を覚えつつ、蛇荷・カイリ(暗夜切り裂く雷光となりて・e00608)が。
「例え一つ一つの火力が高いのだとしても、こっちはそれを凌駕する速さで全て刈り取ってあげるんだからっ! さぁ、行くわよっ!」
 とカイリに真琴が。
「ああ。一般家庭の家計に大打撃を喰らわす苺のバケモノは許せんっ! 確実に仕留めるぞっ!」
 と、ぶるぶると拳を握りしめるのであった。

●苺弾け
 そして、ケルベロス達は苺農家のビニールハウスへ。
『や、やめろ、やめてくれっ!! 何をしやがるっ!!』
『丹精込めて育てたイチゴやっ、おめえらに喰わせるもんじゃないんや!!』
 と、ビニールハウスの中から叫び声が聞こえてくるが……当然、フレジエに指示されたストロングベリー達は、その訴えを聞き届ける訳も無い。
「ったく……本当傍迷惑な奴らだな」
 とグラハが肩を竦めるも、さっさと真琴はビニールハウスの中へ。
「そこのストロングベリー! 農家の人が丹精込めて育てたイチゴを無駄にするなっ!」
 びしっ、と指を突き立てて声を荒げるが、ストロングベリーはやはり聞く耳を持たない……ちらりとケルベロス達の方を見る程度。
 そして農家の人と、ストロングベリーの間に割り込みつつ、パトリックが剣気解放、カイリが殺界形成を立て続けに使用。
 更にグラハが。
「ほら、邪魔だからさっさと逃げろ」
 とくいくいっ、と指を後ろに流しながら、この場からの離脱を指示を与えながら、獰猛に笑う。
 そんなケルベロス達の言葉や指示に、流石に恐怖を覚えた農家の二人は……悲鳴を上げ、其の場から逃げていく。
 そして……ケルベロス達はビニールハウスの中に居並び、敵の真っ正面に対峙。
「ほら、こっち向きな!」
 とカイリが背後から、斬霊斬の一撃で斬りかかる。
 背中からの一撃に、ストロングベリー一匹はグゥォオオオ、と叫び声の様なものを上げる。
 そして、すぐに他ニ体のストロングベリーがケルベロス側へと向き直り、怒るように蔦を伸ばし、手足拘束へと動く。
 が、その攻撃を身を呈しカバーリングするはメルティアリアと、そのボクスドラゴン、ヴィオレッタ。
 腕、足に巻き付き、身を拘束する蔦は以外に強靱で……簡単には引き千切れない。
「……ッ、このくらい平気。ボクのことより、敵に集中して」
 と唇を噛みしめ、強がるメルティアリアに対し、すぐシュネーが。
「お父様、メルティアリアさんの回復をお願いします」
 と頭を下げると、シュネーのウイングキャット『ファータフェッセル』はこくりと頷き、清浄の翼で回復。
 更にグラハも同時に、ヒールドローンを飛ばし、回復とキュアを重ねていく。
 その回復効果に、どうにか拘束を逃れたメルティアリアとヴィオレッタ。
「ありがとう……ヴィオレッタ行くよ、お願い出来る?」
 とメルティアリアの言葉にこくっ、と頷き、属性インストール。
 BS耐性の付与を受けたメルティアリアは、エスケープマインでの攻撃を放つ。
 一方、パトリックはゼログラビトンで攻撃すると、ジャマーのパトリシアがシュリケンスコール。
 そして、パトリックのボクスドラゴンのティターニアがボクスブレスを敵前衛陣に吐くと、憐、シュネーも。
「さあ、行くっす!!」
「お父様にしかられない様に、頑張るわよ!」
 とサイコフォースにライジングダークを立て続けに仕掛け、更にクラッシャーの真琴がデスサイズシュート。
 ケルベロスの猛攻に、ストロングベリーは少々怒りが見て取れる。
 そして次の刻……と言っても、ストロングベリーはもう一度、3体全員でケルベロスを拘束しようとする。
 が……ディフェンダー陣が確りと立ち塞がりながら、ケルベロスの手を塞ぐ。
 しかしファータフェッセルやグラハが待ち構え、すぐに回復する事で、ずっと拘束されない様に尽力。
 そして拘束を解いた後、後衛を除く全員で、同じストロングベリーを軸にして。
「さァ、皆一気に仕掛けるワヨ!」
 と、パトリシアの声に合せ、一斉攻撃を仕掛けていく事で、確実に体力を削る。
 ……2回、蔦の攻撃を仕掛けたストロングベリーは、効果が無いと知ると、ケルベロスの間近まで蔓を伸ばすと、腕にあったイチゴをパチン、と目の前で弾けさせる。
 赤い果肉と、酸っぱそうな果汁が目に入ると、目が染みる。
 ……でも、薄く目を開けながら、その染みに耐えつつ。
「痛いっすけど……でも、負けないっすよ!!」
 憐が螺旋掌を放ち、シュネーがライジングダーク、ティターニアのボクスタックル。
 そしてカイリの斬霊斬に、真琴のドレインスラッシュ……が決まると、その瞬間。
『……!!』
 声にならない咆哮と共に、ストロングベリー一体が崩れ墜ちる。
 そして、残り二体となったストロングベリーは、流石に少々危険性を感じた様であるが……でも、引くことは無く、連携して攻撃するばかり。
 ただ、攻撃を制限する必要も無いストロングベリーを、一気阿世に攻め込んでいく。
 そして、ビニールハウスの中に入ってから十数分経過し……更にもう一体も倒し、残るはボロボロの後一体。
 そんなストロングベリーへ。
「ジャマーポジション効果のジグザグは抜群の爆発力ヨ! 当たればネ!」
 とパトリシアがチェーンソー斬りを叩き込むと……今迄蓄積されていたバッドステータスが一気に積算される。
 そして、憐が。
「このボール、躱せるものなら躱してみろっす!」
 と『ケルベロスボール3号』を投げつけ、そして真琴も。
「万象生みし根源たる力、我が血の元に呼応せよっ!」
 と『血誓命符・源』。
『グ……アア……!』
 と言う悲鳴に頷き、そしてカイリが至近距離へと接近。
「我が身模するは神の雷ッ! 白光にッ、飲み込まれろぉッ!」
 と、カイリが渾身の『武御怒槌』を放つと共に……最後のストロングベリーも、撃ち砕かれるのであった。

●苺落ちる
 そして、無事にストロングベリー達を討ち倒したケルベロス。
「……ふぅ……終わった、かな?」
「そうすね。消滅して肥やしにもならんとは、本当根性無い連中ッスね!」
 と息を吐き、周りを見渡すメルティアリアに対し、腕を組み拳を振り上げる憐。
 ……流石に苺農園は、戦闘の結果ボロボロになってしまっていて……。
「ほんと、食い物の恨みは怖いと言うぜ……」
 とパトリックがぽつりと呟きカイリとパトリシアが。
「そうねぇ。こんなに苺農園がボロボロにされちゃあ、今年一年は難しいかもしれないわね……」
「エエ。農作物はヒールじゃもどらないからネェ……ケルベロスの組織から、補助金なり何なり出るのカシラ?」
 と小首を傾げていると、憐は。
「んー……何なら、俺がやるっすよ!」
 そう言いながら、避難して貰った苺農家の方々の所へ。
「皆さん、無事にストロングベリーは倒したッス! でも、戦闘の結果、色々と壊れてしまって申し訳無いッス。出来る部分は直すッスけど、これで、必要な物を買い足して欲しいッス!」
 とケルベロスカードを渡し、壊れた物品、ビニールハウスの補修等を依頼。
 一方、他のケルベロス達は、壊してしまったビニールハウスや、イチゴの木をヒールグラビティで直せる部分と、応急処置で直せる部分で直していく。
「しかし……大阪では他にもこんな事件が同時多発で起きてるし、しばらくの間はイチゴが高騰するのは確定しそうだな……」
 と真琴は遠い目をしてぽつりと呟くと、グラハが。
「んだな。ま、ちょっと潰れたイチゴとかなら、勝手に摘んでも良いだろう、っと」
 と幾つかひょいひょいっと口に運んでいくグラハ、それを真似してシュネーが。
「それじゃ、シュネーも……っ!?」
 つまみ食いしようとしたシュネーだが……ファータフェッセルが首輪を投げつけ、四つん這いにさせる。
「うう、お父様、痛いですわっ」
 と囚われてぐすんと泣くシュネー。
 ……まぁ、何にせよ、攻性植物をどうにか倒し、修理も一通り終えた所で。
「んじゃ、帰るか。何かこう、いちごたっぷりの洋菓子か飲み物、行ってみたくなるぜ!」
 とパトリックの提案にパトリシアがくすっと笑いながら。
「そうネ。折角だし、美味しい物を食べていきまショ♪」
 と、連れ立ち繁華街へと向かうのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年5月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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