空華乱墜

作者:黒塚婁

●無情なる破壊
 呆れるほどの人でごった返す大阪市は道頓堀の上空。
 有名な観光地であるこの川に平行する通りでは、多数の人々が集っていた。
 初夏の快晴、眩しいほどの日差しが突如遮られ――人々は何事かと顔をあげた。
 忽然と現れたそれは、肉厚の花弁――その内部には胎児のような影が浮かんでいる――を数多重ねた植物だった。足元にだらりと伸びた根の先は刃のように鋭い。
 ――サキュレント・エンブリオは現れるや否や、その根を振り回し、進路に憚るビル群を薙ぎ払った。
 足元で悲鳴をあげた数多の民衆。彼らはその姿勢のまま――鞭のように撓った根に一掃される。
 空をゆうゆうと進むサキュレント・エンブリオの圧倒的な暴虐を、誰も阻むことは敵わず。街路は夥しい朱に染まる儘。
 それはより多くの命を求め、駅を目指し南下を開始したのだった。

●救援指令
 爆殖核爆砕戦の結果、大阪城周辺に抑え込まれていた攻性植物達が動き出した――雁金・辰砂(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0077)はそう切り出した。
 攻性植物たちは大阪市内への攻撃を重点的に行おうとしており、恐らくはそれによって自分たちの支配域を拡大しようとしているのだろう。
「大規模な侵攻ではないが、このまま放置すればゲート破壊成功率も『じわじわと下がっていく』だろう。無論、如何なる侵攻を看過するつもりはない――何より市街地、及び一般人に被害が出るならば」
 辰砂は目を細め、低く告げた。
 今回現れるのは、サキュレント・エンブリオと呼ばれる七メートルほどの巨大な攻性植物だ。魔空回廊を通じて道頓堀上空に出現する。
 数は一体のみ。
 出現後の市民の避難などは、警察・消防が行うのでケルベロスが気にする必要は無い――ただし、街への影響は避けられぬ。
「ゆえに、時間をかけずに撃破できることが望ましい。周囲の地形も利用し、巧く戦って貰いたい」
 それが現れるのは丁度戎橋の近く――周囲は川を挟んで建物が並んでいるので、仕掛けやすいのではないか、と辰砂は言う。
 戦闘能力だが、基本的に根を振るう攻撃が主体だ。シンプルではあるが――小細工が無い分、その力は凶悪だ。
「気を抜けば、多数の被害が出るであろう相手だ。気を引き締めて挑め」
 最後に彼はそう告げて、説明を終えるのだった。


参加者
繰空・千歳(すずあめ・e00639)
ハンナ・カレン(トランスポーター・e16754)
ルルド・コルホル(恩人殺し・e20511)
君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801)
篠村・鈴音(焔剣・e28705)
尾方・広喜(量産型イロハ式ヲ型・e36130)
天羽・蛍(突撃戦闘機・e39796)
錆・ルーヒェン(青錆・e44396)

■リプレイ

●跳
「高いトコ気持ちいー」
「おい、落ちるぞ」
 煙草を消し、ハンナ・カレン(トランスポーター・e16754)が呆れたように錆・ルーヒェン(青錆・e44396)に忠告する。
 ビルの端に身を乗り出したまま、大丈夫だと応える彼だが、錆びた両足の――その機能はちっとも心配していないのだが――踵は細く高い形状をしており、無造作に段差に登っては、時折ぐらりと揺れる様を見やると、本当に大丈夫かと問いたくなる。
 勿論、ルーヒェンはケルベロスゆえ、万が一落ちたところで大事には至らないのだが。
「そろそろ頃合いかね」
 風に躍る鮮やかな金髪を掻き上げ、ハンナは戎橋を見下ろす。言葉を向けた先は、ルーヒェンとは対照的に、じっと躯を低く沈め、その時を静かに待っている君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801)――彼が返答を発するより先、キリノが忽然と姿を現す。
「ああ……来たよウだ」
 そして、すっと右目を閉じる。

 橋の中心に、浮かび上がるサキュレント・エンブリオ。
 その名の通り、多肉植物のような肉厚の花弁はうっすらと透き通り――内部に覗く胎児のような陰が、この上なく不気味であった。
 突如と姿を現したそれはどこからでも視認できるほどに大きく、道頓堀を挟んだ通りの賑わいは一転、混乱と恐慌に陥る。予知と異なるのは、既に準備を整えていた警察の誘導が始まったことだろう。
 しかし、人々の表情から不安と恐怖が消えることはない。大阪城を攻性植物に呑まれ、以降苦難を舐めている大阪に、更なる苦難が降りかかるというのか。
 ――そんな心中など、歯牙にも掛けず。
 根が、躍る。七メートルもの巨大な植物の根は更にその倍もの距離を、全方位一気に破壊する。
「人の多い所にいきなり現れるし、倒されると胞子撒き散らすらしいし……人々の生活圏を奪って勢力広げるには有効手段だね」
 暴虐な一撃を、北東より見下ろした天羽・蛍(突撃戦闘機・e39796)の瞳に、強い光が宿る。
「しかもこれで一般人を狙うだけじゃなく町も破壊していくっていうんだから腹が立つよ――どれだけ一般人の生活に被害を与えると思っているの」
 それは純粋な怒り。破壊の余波か、大気が揺れ、彼女の髪を乱していく。
 振動はケルベロス達が構えるそれぞれの建物にも伝わっていく。苛烈な一撃を前に、尾方・広喜(量産型イロハ式ヲ型・e36130)は、笑みを深くした。
「壊すのが任務の個体か。俺と同じだな」
 その表情の儘、砲撃形態に変じたドラゴニックハンマーを無造作に掲げ、
「ただし俺が壊すのは、てめえだ」
 言い放ち、解き放った。
 空を走る竜砲弾の軌跡は見えぬ――ただ、凄まじい音が轟き渡った。遅れ、空気が戦慄く。しかし相手の全貌からすれば小さな爆炎であった。
 衝撃にゆらり揺れるそれの両側で、光る魔法陣がふたつ浮かび上がる。
 ひとつは、ビルの壁面に描かれたもの。
「随分と大胆な動きをするものね」
 繰空・千歳(すずあめ・e00639)の声音には、これの出現を知りながら、止められぬことへの苦渋があった。
 しかしこれ以上は許さない、戦意に満ちた金の瞳は敵をしかと見つめ、強く言い放つ。
「あなたが好き勝手するのを見逃せるほど、寛容じゃあないのよ」
 そんな彼女の貌を照らす、蛍火の魔法陣は空中に展開している。よく見れば、眸がビルの合間に巡らせたワイヤーがあった。
 何らかの通信を終えた彼の傍で、キリノが瓦礫に念を籠めて弾けば、根が素早く対応し、叩き落としていく。
「鬼さんコチラ!」
 不規則にくねる根をかいくぐり、その意識を地上では無くケルベロス達に向けるべく、ルーヒェンが手を叩く。
 いくつかの根を自身へと誘導し、壁を蹴って、振り切る。カンッ、と金属が強くビルを打つ音を背に、自らの胸に指を突き立てる。
 痛みに貌を歪めるでもなくずるりと引き抜いた先は、朱。
「―――……"お食べ"」
 些末な飛沫であれど、噎せ返るような毒。畏れも知らず飛び込んだ花弁の中へ、鉤爪を振り下ろす。
 遅れながら、邪魔者を弾き飛ばそうと根が追いかけてくる――それを突き破ったのは、オーラの弾丸。根を破ったまま突き進み、花弁に深い穴を穿つ。
「姐さん、カッコイー」
 囃すルーヒェンに、ビルの上でハンナは困ったように肩を竦める。
 しかし根はまだまだある。のんびりしていると、制空権はあっという間に奪われてしまうだろう。
 迫り出した看板を蹴りつけ、篠村・鈴音(焔剣・e28705)が高く跳ぶ。軽やかな足取りからは想像がつかぬ跳躍で、根の追跡を振り切り、敵の頭上まで一気に到達する。
 そして、流星の輝きを纏い、重力を載せ真っ直ぐに落下する。重い蹴撃は、半透明の花弁の一部を叩き潰す。
 無惨に潰れた場所を容赦なく更に踏みつけ、彼女は離脱する――追って、鞭のように撓った根が、ビルの壁面を削り取っていく。
 それが足元に及んでも焦ること無く。黒いククリナイフを片手に、ひらりと柵を飛び越えるようにルルド・コルホル(恩人殺し・e20511)は宙に身を躍らせる。
「こういう形で大阪にまた来る事になるのはちとアレだったが……」
 淡淡とそう零したところで、口を閉ざす。
 ――観光地に戻す為にも、これ以上好き勝手はさせらんねぇよ。
 鋭く目標を睨め付けると、彼は一度空を蹴って、伸身の宙返りでそれらを飛び越える。緩やかな孤はサキュレント・エンブリオすら飛び越える――その、一瞬の交差。
「燃えろ、その根が尽きるまで」
 低く言い放つと同時、ルルドはナイフを半透明な花弁へ滑らせた。すっと入って抜ける――手応えは無いに等しい。それは彼の技倆が優れていることもあるが、表皮までしか届かなかった、という意味でもある。
 だが関係ない――例え薄傷であろうと、刃に纏わり付いていたブラックスライムが、そこから体内を燃やし駆け巡るのだ。
 対角の建物へ軽やかに着地した彼が振り返る――濃紺色の焔は上部で小さく灯っているが、痛みの走狗とするにはまだ浅い。
 敵は移動速度は速くもないが、遅くも無い。厄介なのは防禦に回っている根達だ。
 狙撃の隙を与えぬように蠢いている――とはいっても、こんなに的が大きくちゃね、蛍はガトリングガンを構えて苦笑する。
「その動きは見逃さないよ。」
 根の不規則な揺らぎも計算に入れ、掃射する。
 リズミカルな轟音を支える彼女の背から、ひょいと無造作に鈴が跳ぶ。その根に齧り付くと、離れず食らいつく。
「嫌なリフォームをされないように、できる限り瞬殺しよう」
 決意を改めて声に載せ、腕に更なる力を籠めるのだった。

●破
『天羽、敵が南下すル。移動ヲ』
「了解――鈴も任せて」
 ヘッドセット越しの声に頷き、蛍は炎の翼を広げた。ぴょんと跳ねた鈴を拾い、滑空する。
 周囲をぐるりと取り囲まれたサキュレント・エンブリオは、ケルベロス達を捕らえようと根を伸ばす。
 それは先程まで自身に纏わり付く者達を追い払っていた時より増え、進路も退路も奪うように。そこに含まれる明確な殺意。
 進路を見抜き、眸が何かを投擲する。別の建物へケルベロスチェインを伸ばすと、反動をつけて跳び――ルーヒェンと根の合間へと滑り込む。
 黒い鉤爪を一閃し、彼からも迎撃するが、四方八方から襲い掛かる根を全て避けることはできぬ。
 腕を取られ、身体を締め上げられる――眸は苦痛など意にも介さぬが、ただどう潜り抜けるか。思考の狭間に広喜の咆哮が聞こえた。
 彼は地獄の炎を纏いながら、上半身を捻り、拳を振り下ろす。
 傍から見れば無駄の多い大振りな一撃であったが、力任せに根を燃やし――解き放たれた眸が、そのままであれば地へと落下していくところを――広喜が支えて空を蹴る。
「助かっタ――が、未ダ無理を打つ場面ではなイな」
 元より全ての攻撃を受け止める覚悟で挑んでいる――眸は薄く笑んで注文をつけると、広喜は屈託無く笑った。
「眸を受け止められんのは、俺くらいだからな」
 満更でも無さそうな表情の儘、眸は右目を閉じた。
 敵の攻撃は終わっていない。
「――天羽、後方ダ」
 忠告を発した彼の眼前で焔の翼が羽ばたき、急上昇する。
「躱せるかなっ」
 飛行に自信のある蛍は己へと向かってくる根を躱そうと挑む――が、その前に鈴が腕から飛び出した。
 零れるように消えた感覚に、あっと彼女は小さく声をあげたが、鈴が落下することはなかった――その前に、根に縛り上げられていた。
 鈴は主の命令を守り、身を挺して蛍を庇ったのだ。
「今、助けます」
 ビルを蹴り上げ駆けつけた鈴音が、短く言い、剣を振るう。
 ひゅん、緋色の剣閃が風を斬る。
 空の霊気を纏わせた斬撃で根を寸断し、残骸を足場に蹴りながら向かいまで跳躍した。今度こそ落下していく鈴を、蛍が回収する。
 良い子ね、千歳はそっと囁くと、手を広げる――まるで天より、雨が降ってきたかのように。
「傘をおひとつ、お入りくださいな」
 中天に、飴色の華が鮮やかに咲く。その幻想的な輝きの更に上で、黒い風が渦巻いた。
 上へと跳んで根を置き去りにし、本体の肉を抉り取るようにルルドはククリを振るう。その動きは軽快で、仕掛けたと思った次には、別のビルに降り立っている。
 ――だが、その一刀は重い。浅い傷であっても、彼が、仲間が刻んだ呪いを染み渡らせる。
 証左とばかり、ケルベロス達を追い払おうとする根の動きが遅くなりつつある――逆手に構えた如意棒をくるりと返し、ハンナは己の拳を振るうように突き出した。
 間の距離を一気に繋いだ強烈な打突で花弁を貫くと、そのまま空で飛び退き、離脱する。
 入れ替わり、飛び込んだルーヒェンが声を上げる。
「アッハハ気持ちいー! サイコー!」
 ぎゅっと根を握って伝い、空を滑り。遊ぶように辿り着いた花弁を素手で引き裂く。
「ほーら、とっとと墜ちなってェ!」
 重力から解き放たれたかのような感覚に、彼の瞳は楽しそうに輝いていた。

●墜
 ケルベロス達の猛攻に、数分と経たず、サキュレント・エンブリオは半壊していた。無数に並んだ花弁は殆どが潰れ、呪縛で根の動きも随分鈍くなった。
 それでも侮れぬのは、敵にはまだ相手の生命力を喰らって回復するという手が残されているということだ。
 正面から襲い掛かってきた根を無造作に斬ると、鈴音は後方を振り返ることなく、声をかける。
「上へ。補助します」
 言うなり、彼女が突き上げるような蹴りを放つ。その足裏を足場に、ルルドの跳躍を助ける。
 彼らの動きを見るように緩やかに左右に展開した根が、突如、ぎくりと動きを止める。キリノの金縛りが入ったか――好機を逃さず、ルルドは空の霊力を帯びた刃で、根から本体まで一気に断つ。
 深手の分、獲物を求めて伸びる根を、左腕のガトリングガンを盾に受け流しながら、
「残念、そんなのじゃあ当てさせてあげられないわね」
 笑みさえ浮かべ、千歳は謳う。
 その言葉に触発されたかどうか――多方向に散らばっていた根が突如束になり、ぐんと伸びた。
 大きく撓ると、反動を使って一気に加速する。風を切り裂きながら、根は千歳の身体を横薙ぎに打った。
 無論、彼女はガトリングガンを構えて衝撃に備えた。更に衝突の瞬間に合わせ、力の方向を逃そうと試みたものの――その破壊力は守りを突き抜けた。
 盾の加護を重ねた機械の腕が軋んで、内から毀れる音がした――直後、強く輝く金色の光が視界に入る。
「バイタル測定……波長ヲ合わせる。Refined/gold-heal…承認」
 すかさず眸がエネルギーを回し、彼女の腕は瞬く間に完治した。しかし、単純に力負けした悔しさは残る。
 千歳はバランスを崩した状態で、放り投げられた石のように落下していく――だが、心配はしていなかった。
 ビルの合間を蹴って、駆けつけたハンナが彼女を横抱きに受け止めた。
 お姫様抱っこ、ね――苦笑した千歳に、彼女は意地の悪い笑みを浮かべる。
「あたしでも十分抱えられる。もうちょい重くなってからブツクサ言うと良い」
「……その話は今じゃなくてもいいでしょう」
 追いすがる根は、ハンナの拳が振り払い。
 応酬の嚆矢は、鈴音が放った。
 電柱を蹴り上げ、高く舞い上がった彼女は、その頂点でオウガメタル「ラギッド・タスク」をグラビティ・チェインを注ぎ込み超重量の弾丸と化すと、
「でやああああああッ!!」
 気合いを籠めて、蹴り飛ばす。唸りを上げて飛来する弾丸を、それは回避する術はない――着弾の衝撃で、敵の高度がかなり下がった。
 だが、そこで終わりではない。鈴音自身の追撃、火炎を纏った跳び蹴りが炸裂する。
 更に黒刃が音も無く、斜めに走る。一陣の風の如く、ルルドが完全にそれの守りを剥ぎ取ると、
「やれ」
 短く、促す。
 完全に暴かれた中核へ、蛍は既に狙いを定めている。
 ガトリングガンが轟く――無軌道な乱射に見えて、それを崩壊させるポイントへ、的確に撃ち込んでいく。
 全身が枯れ色にくすんで、サキュレント・エンブリオは萎んでいく。
 最早、死に体と言える状態だが、何とか根を伸ばそうとするそれへ、青い炎の軌跡が迫る。
「壊れるまで、逃さねえ」
 演算速度を強制的に上昇させた広喜にとって、それは止まって見えただろう。守る事も逃げる事もできぬ核を全力の拳で打ち抜き、砕いた。

●癒
 そして、サキュレント・エンブリオは完全に崩壊する前に、胞子を放出した。
「これ以上、好きにはさせないよ!」
 胞子に向け、蛍が炎を纏うガトリングガンを叩きつけたが、それは燃えることも潰れることもなく、ゆっくりと空を漂う。
 更に、投げ込まれた火球が爆発しようと、炎纏う如意棒で振り払おうと、それは素知らぬ顔で広がっていく。
 どーかな、というルーヒェンの言葉に、蛍は首を振る。
「余所の報告で聴いてた通り、打つ手無しだね」
「やれやれ。後でメンドクセェ事になりそうだ」
 煙草に火をつけながらハンナが柳眉を顰める。
「何度でもぶちのめしてやるぜ」
 広喜は好戦的に笑ってから、瓦礫を担ぐ。
 表情は変わらぬ笑顔であるが――今のそれは、直せる喜びから生まれたもの。眸は瞑目し、微笑した。
「登場から迷惑なヤツだったな」
 破壊の跡を見下ろし、ルルドは嘆息する。尤もいくつかの疵は、自分達がつけたものかもしれないと鈴音は内心思いつつ。
「橋が落ちなくて良かったわね」
 ケルベロスチェインを手繰りながら、千歳が微笑む。その通りと言っているかのように、傍らで鈴が小さな瓦礫を持ってぴょんと跳ねた。
 カン、ルーヒェンは踵を軽く打ち付けてみる。地上の感覚が随分と久しぶりに感じられ、軽く震えて、天を仰いだ。
 様々な色を持つビルに切り取られた――否、もっと上の、上の空を想う。
 大気と雲の檻だけの世界。これが一番良い、ルーヒェンは無意識に美しい笑みを浮かべて頷いた。
「ウン、あそこには何もないのがいーな」

作者:黒塚婁 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年5月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 11/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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