白き巫女は危険な香り

作者:雷紋寺音弥

●危険な誘惑
 大阪、難波地区の繁華街。
 昼夜を問わず賑わう街中も、大通りを離れてしまえば、途端に喧騒から解放され静まり返る。
 今は使われなくなって久しい破れた赤提灯に、扉が壊れて人の出入りもなくなった中華飯店。ビルの谷間に位置する、再開発を逃れた街の面影を残す場所を、ふらふらと歩く男が一人。
「んぁ……? なんや、あの女は……?」
 最初は酒に酔って幻覚を見たのかと思い、男は思わず目を擦った。
 だが、彼の目に映っているのは、どうやら幻覚の類などではない。一糸纏わぬ姿に、際どい個所を蔓や花で隠しただけの少女が、こちらへ微笑みながら手招きしている。
「さあ、こっちに来てください。そして……私と一緒になりましょう?」
「ほぅ……御嬢はん、随分と際どい格好してまんなぁ……。春やからって、そないな格好しとると風邪引くでぇ……」
 台詞こそ紳士的な内容ながらも、男は自分の内から湧き上がる欲望を隠すことなく、少女の方へと近づいて行く。そして、誘われるがままに唇を重ねようとした瞬間……男の口の中に、青臭く固い何かが強引に入り込んできた。
「んぐぅっ!? あがっ……げふぉっ……!!」
 悶え苦しむ男の口から、瞬く間に溢れ出す無数の蔓。それは、やがて男の身体を完全に包み込んでしまうと、そのまま蠢く蔦の化け物へと変えてしまった。

●最恐ハニートラップ!
「召集に応じてくれ、感謝する。爆殖核爆砕戦の結果、新たな動きを見せていた大阪城周辺の攻性植物達だが……どうやら、凝りもせず色気を使って男を惑わす作戦も開始したようだな」
 今回の事件も、そんな危険な誘惑を仕掛けてくる女性型の攻性植物だ。そう言って、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達に、自らの垣間見た予知について語り始めた。
「敵の攻性植物は、大阪難波地区の繁華街にある、人気のない路地裏に潜んでいる。そこを通りかかる酔っ払いに声を掛けて誘惑し、種を植え付けて攻性植物化させようと企んでいるようだな」
 早々に被害者の身柄を確保したいところだが、それを行った場合、攻性植物は別の場所に現れてしまう。被害を防ぐことができなくなるため、安易な人払いは厳禁だ。
 もっとも、被害に遭う男性は女性の縁のないタイプ。今回の事件で犠牲となるのは、中小企業に勤める40代の独身係長。なお、お約束の如く、年齢=彼女いない歴。酒の勢いもあり、絵に描いたようなモテないエロ親父なので、それを短時間の間に利用できれば、誘惑を断るように仕向けることは可能だろう。
「戦闘になると、敵の攻性植物は特殊な花粉や芳香を使って、お前達を惑わせてくるぞ。その他にも、自分がピンチになると積極的に相手へ抱き着いて、そのまま生命力を吸収しようとするから注意してくれ」
 元より誘惑を主体とした技の使い手らしく、火力はそこまで高くはない。だが、花粉は麻痺、芳香は魅了の効果を持ち、おまけに得意な間合いは妨害特化。必然的に生命力の吸収効率も高くなっているので、大したダメージを食らっていないからといって油断していると、ミイラ取りがミイラにされ兼ねない。
 なお、男性の対処に失敗した場合、彼も攻性植物に寄生されて配下となってしまう。こうなってしまうと、もう男性を助け出すことは不可能な上、厄介な敵が増えることにも繋がるので、できれば避けたい事態である。
「被害者を助けるためには、誘惑に乗らないようにさせるしかないが……いくら深夜で路地裏とはいえ、すぐ近くは繁華街だからな。あまり人目に付く場所で、過激な行動に走るのはやめておけよ」
 くれぐれも、ドサクサに紛れて未成年の飲酒喫煙などしないように。そこだけ釘を刺し、クロートは改めて、ケルベロス達に依頼した。


参加者
赤堀・いちご(ないしょのお嬢様・e00103)
久遠・翔(銀の輪舞・e00222)
トルテ・プフィルズィッヒ(シェーネフラウ・e04289)
マイア・ヴェルナテッド(咲き乱れる結晶華・e14079)
マルコ・ネイス(赤猫・e23667)
ミミ・フリージア(ヴァルキュリアの鎧装騎兵・e34679)
ソルヴィン・フォルナー(ウィズジョーカー・e40080)
御廟羽・彼方(眩い光ほど闇は深く黒く・e44429)

■リプレイ

●誘惑、誘惑♪
 大阪、難波の歓楽街。ネオンに彩られた建物の立ち並ぶ大通りを脇道に抜ければ、そこは未だ下町風情の漂う、昔ながらの飲み屋街が広がっている。
 開発の手が伸びる中、当時の雰囲気を色濃く残す場所は、ある意味では貴重だ。しかし、中には再開発に失敗したまま寂れてしまい、過去の残滓を思わせるだけの、人気のなくなった道もある。
 そんな道を、男が一人、ふらふらと千鳥足で歩いていた。酔いが回って迷い込んだのか、それとも彼だけが知る秘密の近道なのか。
「んぁ……? なんや、あの女は……?」
 突然、目の前に現れた、殆ど裸に等しい少女。その姿を見て、一瞬だけ男が立ち止まった時だった。
「うおおおおお! こんなところに裸……に近いのおなごが! これは抱きつくしかあるまい!」
 男が何かを言うよりも早く、突如として物陰から飛び出して来たソルヴィン・フォルナー(ウィズジョーカー・e40080)が、男の頭上を飛び越えて、目の前の半裸少女……もとい、攻性植物にまっしぐら!
「一つの目的の為、1分間だけわしは鬼になる! 覚悟せよ!」
「えっ!? あ、あの……」
 あまりに急な展開に、これには攻性植物の少女も面喰って固まるだけだった。それを良いことに、ソルヴィンは少女を押し倒すが早いか、問答無用で両胸をわし掴み!
「やっべえ……。今回の敵は正直色々アウトだろ……」
「なんというか……。この周辺ってこういう攻性植物がたくさん生える環境でも整っているんっすかねー?」
 のっけから本能全開で突っ込むソルヴィンと、あまりに際どい攻性植物の姿から、マルコ・ネイス(赤猫・e23667)と久遠・翔(銀の輪舞・e00222)の二人は、早くも腰が引けていた。
「前のバナナイーターの時にも思ったのですけど、植物っていったい何なのでしょうね……?」
「なんというか、凄い格好の攻性植物もいるもんじゃのぅ。姿がなかなか攻めているのじゃが、植物じゃし見た目人っぽいだけじゃろうなぁ」
 赤堀・いちご(ないしょのお嬢様・e00103)の素朴な疑問に、ミミ・フリージア(ヴァルキュリアの鎧装騎兵・e34679)が大真面目に答えている。
 そう、あれは植物、人間ではない。恐らく、あの悩ましい姿も全て、擬態の一言で済ませられるような代物なのだろう……たぶん。
 もっとも、ここで眺めているだけでは始まらない。見れば、早くも何を勘違いしたのか、攻性植物の魔の手がソルヴィンに。
「ウーム、今回もナイスOPAIじゃ! ……人間でないのが悔やまれるのぅ」
「ひゃっ!? な、なにを……あぁ、そういうことですか。あなたも、私と一つになりたいんですね」
 正面から抱き着かれた上に胸まで揉まれているにも関わらず、攻性植物は何故か嬉しそう。このままでは、酔っ払い係長の代わりにソルヴィンが、新たな攻性植物の宿主にされてしまう。なんとか危ない目に遭う前に引き離したいが、そのためにはまず、係長を退避させねばならないわけで。
「おじさん! こっち来て来て! そんな女の人より、こっちはとーってもセクシーでダイナマイトボディなサキュバスお姉さんコンビがいるよ! いい気分にさせてくれるよ!」
 あわよくば自分もと攻性植物へ向かって行く係長を、御廟羽・彼方(眩い光ほど闇は深く黒く・e44429)が慌てて引き留めた。
「なんやてぇ……。お嬢ちゃん、それ、ホンマかいな?」
 案の定、スケベ根性丸出しで、オッサン係長は彼方の方へと顔を向けた。その瞬間、彼の視界に飛び込んできたのは、トルテ・プフィルズィッヒ(シェーネフラウ・e04289)とマイア・ヴェルナテッド(咲き乱れる結晶華・e14079)の二人組。
「素敵なおじさま♪ 私と良いことしませんか♪」
「……ふふふ。ここでお会いできたのも、何かのご縁。一緒に楽しみましょう?」
 サキュバスのフェロモン全開に迫る二人の前に、係長の視線は釘付けだ。酒の酔いによる勢いも相俟って、これは断るのが無理というもの!
「おぉぅっ! これはまた、えろう悩ましいスタイルの姉ちゃんやなぁ♪」
 もはや、攻性植物のことなど完全に頭の中から消え去って、オッサン係長はトルテとマイアの方へ、ふらふらと誘われるように歩いて行く。それを見た残りのケルベロス達は、これ幸いとばかりに、一斉に攻性植物へ攻撃を開始した。

●ザ・お楽しみバトル?
 トルテとマイアの二人がオッサンを引き付けている中、他の者達は諸悪の根源である攻性植物の少女と戦っていた。
「わらわには、お主の誘惑なんぞ通用せんぞ。小細工抜きで、本気でかかって来るがよい」
 ミミのハンマーが火を噴いて、その柄先から竜砲弾を発射する。続けて、爆風で足が止まったところを狙い、すかさずテレビウムの菜の花姫が、手にした杖のような物体で敵の頭をカチ割った。
「ぁんっ! 乱暴は駄目ですぅ!」
 だが、攻撃を食らってもなお、攻性植物は両腕で胸元を隠すような仕草をして、艶っぽい声を上げながら流し目をして来る。おまけに、そんな彼女の身体から甘い香りが漂い始め、正面に立って戦っている翔やマルコは、気が気でない。
「くっ……! こ、この香りは……!?」
「ヤ、ヤベェ……ゆ、誘惑されないよう気をつけねえと……」
 両手で武器を握り締めて耐える二人だったが、その間にも頭の中には、何故かピンク色な妄想ばかりが広がって行く。おまけに、後ろからはトルテとマイアが係長のオッサン相手に、あんなことやこんなことをしている声が聞こえてくるわけで。
「おじさま、あの娘は危ないからダメです! おっぱいなら私の方が大きいですから!」
 攻性植物の方を見ないように目隠しをしつつ、トルテが大胆にも自分の胸を、係長のオッサンに揉ませていた。オッサンの手が動く度にトルテが悩ましげな声を上げるため、なんとも目のやり場に困る光景になっていたが……そんな彼女と入れ替わるようにして、今度はマイアが手を引いて。
「うふふ……。本当に、それだけでいいのかしら? わたしなら、もっと……もっと楽しいこと、あなたにたくさんしてあげるわよ?」
「なっ……! ホ、ホンマでっか!? 後で金払えとか、そういうんとちゃいますか!?」
 あまりに都合良過ぎる展開に、さすがのオッサン係長も、しばし躊躇いはした。が、しかし、それでも目の前に自分を誘惑してくる美女がいれば、断る方が難しく。
「ほ、ほな、お言葉に甘えて……。据え膳食わぬは、男の恥や!!」
 もう、自分を止める者は誰もいないとばかりに、オッサンはマイアに襲いかかって行く。そんな彼の手を軽くいなしつつも、マイアは密かに人目の付かぬ路地裏の片隅に彼を誘導し。
「……ふふふ。ほら、どんな風にしてもいいのよ? そうねぇ……こんなことも、してあげようかしら?」
「あぁっ、そこは……! あ、あかん!! もう、我慢できまへんがな!!」
 完全に、お子様には見せられないような何かが行われている、悩ましげな声だけが戦場に響く。姿が見えずに声だけということが、ますます翔とマルコの頭の中に広がる妄想を促進させてしまっていた。
「誘惑? うーむ……。まぁ……際どいところ隠すというのもありなんじゃが……わしモロ派じゃし……。うん、微妙じゃな。わし、うぶな少年じゃないしのう」
 そんな中、敵の胸を十分に堪能して満足したのか、ソルヴィンは打って変わって冷静に、敵を火竜の幻影で焼いて行く。もっとも、誰もが彼のように免疫があるわけではなく、早くも翔とマルコは限界寸前だ。
(「うぅっ……! こ、これ以上は、鼻血が……」)
(「あ、あいつら、路地裏で何やってんだよ……!!」)
 さすがに、これ以上は限界だ。早くも赤面して、そのまま崩れ落ちそうになる二人だったが、そこへ間髪入れず、いちごが自らのエネルギーを歌に乗せて響かせた。
「私の力を貴方に。聞いてください、この歌を」
 ボクスドラゴンのアリカに援護をさせつつ、癒しの音色を届けて行く。その響きに脳内を揺さぶられ、なんとか翔とマルコも立ち上がり。
「二人とも、しっかりして! 今は、あの敵を倒さないと!」
 紅蓮の蹴りを繰り出す彼方の言葉に背中を押され、なんとか頭を振るって覚醒させた。
「こ、こうなったら、本気で行かせてもらうっすよ!」
「よ、よし……! お、俺がた、倒してやるっ!」
 自らの武器に翔が地獄の炎を注入して構えれば、マルコは雷の霊気を纏った刃で、一直線に敵を突く。そうこうしている内に、後ろでも色々と終わったのか、トルテとマイアの二人が戻ってきた。
「遅くなっちゃって、ごめんなさ~い!」
「でも、快楽エネルギーは、美味しくいただいたわ♪ これなら全力で戦っても、十分にお釣りが来るかしら?」
 何故か、二人の顔が艶やかに光っていたが、それはそれ。ちなみに、係長のオッサンは、主にマイアによって色々と搾り取られ、路地裏で爆睡したまま動かなくなっていた。

●鮮血に染まる大峡谷!
 係長のオッサンを引き離し、後は攻性植物を倒すのみ。配下もおらず、元より誘惑に特化した攻性植物など、数の揃ったケルベロス達の敵ではない。
 もっとも、そうは言っても敵の攻撃は、色々な意味で……主に初心な男性陣にとっては、強烈過ぎる代物だった。おまけに、攻撃を食らう度に色っぽい仕草や反応を見せるものだから、どうしても刃や拳が鈍ってしまうわけでして。
「くっ……! へ、平常心! 平常心っす!」
「お、お前なんか……その……ぜ、全然、見ても平気なんだからな!」
 気力を奮い立たせながら翔やマルコが刃を振るうが、どうにも打ち込みが浅く、決定打に至らない。それでも、元の技の威力が高かったのか、さすがの攻性植物も押され始め。
「あぁ……。あなたの生命……私に下さい……」
 両手を広げ、そのまま生気を吸収しようと、翔の方へ襲い掛かって来たのだから、堪らない。
「させませんっ!」
 間髪入れず、トルテが間に割って入ろうとしたものの、赤面して硬直した翔は動けなかった。その結果、彼の頭はトルテと攻性植物の胸と胸が、正面からぶつかり合う谷間に挟まれてしまい。
「……っ! ぁ……ち、力が……抜けて……」
「はぁ……もっと……もっと、ちょうだい……」
 腕の蔦を絡ませ、敵がトルテから生気を吸収する度に、柔らかい何かの感触が翔の両側から伝わってくる。懸命に頭を引っこ抜こうともがくが、時既に遅し。
「なっ……! ちょっ……こ、これは、さすがに無理……っ!?」
 とうとう、我慢の限界を迎え、翔は豪快に鼻血を吹き出して力尽きた。巨乳と爆乳の美少女サンドイッチの破壊力に抗うには、彼はあまりに女性への免疫が無さ過ぎた。
「あぁっ! アリカさん、早く彼を!」
 慌てていちごが相棒のアリカを向かわせ、翔に属性を付与する形でフォローさせる。が、肉体的な傷は治っても精神的な刺激の方が強過ぎたのか、彼は未だ鼻血の海に沈んだまま浮かんでこない。同じく、ミミの相棒である菜の花姫も彼の援護に回っていたが、応援するための動画の内容が、そもそも見えているかさえ不明のままだ。
「こうなったら、一刻も早く、あの攻性植物を倒さないと……!」
 奇蹟を請願する外典の禁歌を紬ぎ、いちごが敵をトルテから引き剥がす。威力の程は大して高くなかったものの、牽制としては十分だ。
「うふふ……。あなたの身体、どうなってるのかしらね? ちょっと、調べさせてもらうわよ」
 目には目を、歯には歯を、そして植物には植物を。続けてマイアが自らの駆る攻性植物を蔓状に変化させ、敵の身体を胸元を強調した形に縛り上げた。そのまま捕縛し、直接触れて感触を確かめようとまでしていたが、しかしそれよりも先に、彼方が不可視の虚無球体を発射して。
「性欲とか色欲に付け込んで食べちゃうなんて、食虫植物ならぬ、食人植物だね。欠片も残さず、削り取っちゃうよ!」
 どうせなら、後腐れなく消滅させてやれ。そう思いつつ彼女の放った虚無球体は、あろうことか少女の姿をした攻性植物の、豊かな胸元に直撃した。
「あぅっ! そ、そんな……」
 文字通り、胸を削られてしまい、攻性植物が力無く崩れ落ちる。こんな姿では、もう色仕掛けのハニートラップは使えない。
 なんというか、あまりに哀れな展開だった。しかし、相手は危険なデウスエクス。ここで同情してやる義理など、ケルベロス達には微塵もないわけで。
「はぁ……。体が熱い……」
 まずは一撃。トルテが自らの快楽エネルギーを螺旋状の炎に変えて解き放ったところで、ソルヴィンとミミもまた互いに頷いて。
「見た目が人っぽいので、一瞬で消えるように燃やし尽くすかの」
「そうじゃな。下手に死体でも残って、面倒な騒ぎになるのはごめんじゃ」
 炎を乗せたブラックスライムで絡め取り、灼熱の蹴りで焼き尽くす。身体の芯まで焼かれ、灰と化した攻性植物の悲鳴は、しかし大通りから聞こえてくる、人々の喧騒によって掻き消された。

●本当のお楽しみ?
 戦いの終わった路地裏にて。
 敵を倒したケルベロス達は、改めて今回の被害者である、係長のオッサンを介抱していた。
「あまりお酒も過ぎると体に毒ですよ。お体労わって下さいね」
 そっと手を握り、笑顔で伝えるいちごだったが、果たして彼はこの場合、本当に被害者だったのだろうか? むしろ、トルテとマイアによって楽しい時間を過ごさせてもらった彼は、ある意味では勝ち組のような気も。
「簡単に誘惑にのったらダメですよ♪」
 そんな中、トルテもまたオッサンに優しく苦言を呈しているが、先の行動があるためか、殆ど効果はなさそうだ。そして、そんな状況を察してか、マイアは妖艶な笑みを浮かべつつ、オッサンの手を優しく取って。
「ふふっ……良かったら、さっきの続きをしてあげるわよ? それとも……わたしじゃ、嫌かしら?」
「なっ……!? そんなん、喜んでお願いさせてもらうに決まっとりますがな!」
 途端に完全復活し、元気100倍になる係長。しかし、彼とは異なり女性慣れしていない者達は、完全に虚脱して動けなかった。
「はぁ……。い、色々と、恐ろしい敵だった……」
 溜息交じりにマルコが横を見れば、そこには未だ鼻血の海から回復していない翔の姿が。ケルベロスだから生きているが、一般人なら既に出血多量で死んでいてもおかしくない。
「やれやれ、青いのぅ」
「この事件を解決しても、攻性植物が滅びたわけではない。気合を入れるのじゃ」
 半ば呆れ顔でミミとソルヴィンが告げるが、それでも起き上がってくる気配はなかった。
「……本当に、大丈夫なのかな?」
 血溜りの中、造血薬を片手に痙攣している翔を見て、最後に彼方が呟いた。
 色気で男性を惑わす女性型の攻性植物。これは色々な意味で強敵であると、改めて思い知らされたケルベロス達だった。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年5月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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