自ら開いた純潔

作者:質種剰

●誘惑
 深夜の繁華街。
 高級店から激安店まで、連なる建物がこぞってネオンを瞬かせ、行き交う男女の財布の紐へ視覚で訴えかけてくる。
 気分良く酔わせる酒は要らんかね、可愛い娘の接客は要らんかね——と。
「ごっそさん」
 今し方、一杯飲み屋からおぼつかない足取りで外へ出てきたサラリーマンもまた、まるで夜がいつまでも続くような心地で、気持ち良く酔っ払っている1人だ。
「いやー飲んだ飲んだ、あれで千円は安い安い」
 サラリーマンは、膨れてなくても立派なお腹を満足そうに摩り摩り、反りくり返って歩いている。
「ねぇ、付き合ってくれない?」
 だから、目の前に突然裸の女が現れて声をかけてきた時、驚いて後ろへひっくり返りそうになった。
「お姉ちゃん、悪いけどおじさんお金無いの。どこのお店?」
 サラリーマンは女の弾力がありそうな胸とお臍の下を無遠慮に眺める。
 女は、素肌にカモミールの花が咲き連なる蔓だけを纏った——否、大事な部分がギリギリ隠れる程度に引っ掛けただけの、実に蠱惑的な外見をしていた。
 サラリーマンも酔っ払った頭ながら、女の露出の異常さは水商売のそれとも思えずに不審を抱いていた。
「こっちよ」
 だが、女に手を握られ、そっと路地裏へ導かれるまで何の抵抗もしなかったのは、やはり女の色香に惑わされていたからだ。
 サラリーマン自身、生の女の裸を間近で見る機会に決して恵まれているとは言えない、寂しい独り身生活が長かった。
「私と一緒になりましょう?」
「う、うん」
 だから、立ち止まった女がしなだれかかって唇を奪ってきた時、サラリーマンは久方ぶりに女性と触れ合えるならどんな詐欺でも構わないと、彼女の誘惑を、舌を、素直に受け入れていた。
 まさか口移しで攻性植物の種を植えつけられるなど、思いもよらなかったに違いない。


「爆殖核爆砕戦の結果、大阪城周辺で抑え込まれていた攻性植物たちが、とうとう動き出したようであります」
 小檻・かけら(麺ヘリオライダー・en0031)が真面目な面持ちで説明を始めた。
「攻性植物たちは、大阪市内への攻撃を重点的に行おうとしてるのでありましょう」
 恐らくは、大阪市内で事件を多数発生させて一般人を避難させ、制圧し易くした土地を中心に拠点を拡大させようという計画なのだろう。
「大規模な侵攻ではありませんが、このまま放置すればゲート破壊成功率も『じわじわと下がって』いってしまうであります」
 それを防ぐ為にも、敵の侵攻を完全に防ぎ、尚且つ、隙を見つけて反攻へ転じなければならない。
「今回皆さんに倒して頂きたいのは、殆ど全裸に近い女性型の攻性植物であります」
 女攻性植物は、深夜の大阪の繁華街に現れると酔っぱらった男性を誘惑し、攻性植物化させようと目論んでいる。
「被害者の男性は……何と申しますか、女性に縁の無いタイプである為か、あからさまに怪しい姿の攻性植物であっても魅了されてしまうのであります」
 この被害者を予め避難させてしまうと、女攻性植物は別の場所に現れてしまうため、被害を防ぐ事ができなくなる。
「ですが、直前に少しだけ接触して、女攻性植物の誘惑を断るべく仕向ける事ができれば、被害男性が女攻性植物から離れていくので、安全を確保できます」
 誘惑に乗ってしまう理由は、やはり女性と縁遠い事が大きいので、そこを短時間の内にフォローできれば有利に戦えるだろう。
「女攻性植物は、その身から剥がしたカモミールの蔓を鞭のように操って攻撃してくるであります」
 『隷属の芽吹き』なる鞭攻撃は、頑健性に優れた破壊力や伸縮自在な射程もさる事ながら、強い打撃によって敵を魅了——つまり催眠状態にしてくるのが厄介である。
「また、右手に巻きつけた色鮮やかなアイビーの葉から、えもいわれぬ薫りを振り撒いて、官能へ訴えかけてくるようであります」
 すなわち、この敏捷に優れた複数人対象の遠距離攻撃『星が飛ぶ芳香』も、催眠にかかる危険性があるという。
「更に更に、女攻性植物がガバッと抱きつき、身体をギリギリ締めつけてダメージを与えてきますが……例に漏れず骨抜き……催眠状態にされる可能性もありますので、お気をつけくださいまし」
 『巫女の慈悲垂れ』、理力に優れた魔法攻撃である。
「なお、被害男性への対処に失敗した場合、男性は攻性植物に寄生され、配下として戦闘に加わってしまいますのでご注意を」
 そこまで説明を終えると、かけらは彼女なりに皆を激励した。
「被害男性をお助けするには、誘惑に乗らないようにさせるしかないでありますが、難しい場合は、攻性植物の撃破を優先してくださいましね」


参加者
日柳・蒼眞(無謀剣士・e00793)
デジル・スカイフリート(欲望の解放者・e01203)
日向・向日葵(向日葵のオラトリオ・e01744)
除・神月(猛拳・e16846)
獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)
ケイティ・ラスト(蠱惑の仔猫・e44146)
トート・アメン(神王・e44510)
エレオノーラ・エルヴァスティ(へたれ勇者見習い・e56447)

■リプレイ


 夜の大阪。
(「美しき者に惹かれるのは男子の摂理。故に彼の男を攻めるのは厳しかろう」)
 トート・アメン(神王・e44510)は被害者へ同情の念を抱きつつも、繁華街の程良いひと気と明るさに物慣れた様子で歩いていた。
 この日の彼は、珍しくピシッとスーツを着こなしてサラリーマンに変装している。
 内面が老成し大人びているトートだけに、美女から骨抜きにされる若者として——元々が十代後半に差し掛かった実年齢もあってか——外見の違和感は少ない。
「ねぇ、付き合わない?」
 だから、ふっと目の前に現れたデジル・スカイフリート(欲望の解放者・e01203)が、色っぽい流し目でトートを見るや、その肩へしなだれかかってきた時も、
「つ、付き合うってどこへ?」
 と、ドギマギする反面デジルの肢体へ目線が吸い寄せられるというリアクションを、いとも自然にこなしてみせた。
 ちらっと辺りへ目を向ければ、例の被害者がぼうっと立ち止まってデジルへ遠慮の無い視線を注いでいる。
 もっとも、それは突如現れた全裸に近い美女に対して極自然な反応であり、被害者の好色を責められるものではない。
「一緒になりましょう……」
 デジルはデジルで、流れるような銀髪をサラリと掻き上げつつ、濡れた赤い瞳でトートを熱っぽく見つめて誘惑する。
 元々、他者の我慢や抑圧された欲望を誘惑して解き放つ事に喜びを感じるデジルなればこそ、仲間との演技だろうとやる気満々。
 衣装も白い純潔の巫女に合わせて華奢な花と蔓だけを引っ掛け、露出度を張り合う徹底ぶりである。
「……ほら、もっと」
 健康的に焼けた若い肌が、優しく囁く唇が、きめ細やかさと弾力をもってトートへ迫った。
「わーい、一緒になろうー♪」
 トートは無邪気に笑ってデジルを抱き締めると、自分から彼女の唇を奪って、胸や尻をゆったり撫で撫で濃厚なキスを交わす。
 すると。
「あらぁ、そこのお嬢さん、抜け駆けはダメよ? そんな可愛い子を独り占めして愉しもうだなんて……」
 獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)が、こちらも白い純潔の巫女に迫るぐらいに肌を惜しげもなく外気へ晒して、健康的な色気を振り撒いた。
「ほう、そなたも此方に負けじと色香のある美女ではないか♪」
 すぐにトートが銀子のたわわな胸を見やって、デレデレと鼻の下を伸ばす。
 普段は明るく優しいお姉さんタイプで、艶のある赤髪と美脚が自慢の警察官な銀子。
 だが、巫女に扮装する時は一旦羞恥心をかなぐり捨て、とことんやると覚悟を決める豪気さも持ち合わせている。
「んん、見えちゃってない、よね……」
 それ故、最小限の草花が貼り付いただけの裸体をデジルと互いに確認して、見えそうで見えないギリギリを攻めるべくヘリオンから降下してきたのだ。
「どう? 坊や、お姉さんとも一緒になってみない……?」
 銀子はおもむろにトートの手を取り、密かに自信あるお尻やお腹へ引き寄せては、こちらもデジルへ負けず劣らず積極的に触らせる。
「うふふ、私は構わないわよ、なんならどちらがこの子をより愉しませられるか試してみる?」
 デジルが快感に潤んだ眼を銀子へ向けて、如何にも嬉しそうに嘯く。
「うむうむ。2人ともたっぷり可愛がってくれよう♪」
 トートも彼女の提案に頷いて満面の笑みを浮かべたが。
「それも面白そうだけど……あ。あなたもなかなかイイ男ね?」
 銀子は、不意に擦れ違いかけた草臥・衣(神棚・en0234)へ目をつけるフリをして、やはり過激なスキンシップを仕掛けた。
「どう? お姉さんと一緒になる……?」
「……俺で良いのなら、喜んで」
 トートに合わせてスーツを着てきた衣がいささか緊張した面持ちで頷く。
 衣の両手は銀子が促すのへ任せて形の良い尻を撫で回していた。
「嬉しいわ。それじゃ、一緒になりましょう」
 そして、銀子は衣の後頭部を抱くように手を添え、自ら口づけんとした。
 2人の唇が重なるまさに寸前。
「お客様、お時間でございます」
 日柳・蒼眞(無謀剣士・e00793)の声が、男達を甘く淫靡な空気から一気に奈落へと突き落とす。
 サングラスをかけ、黒スーツを着込んだ姿は、まさにぼったくり店の黒服の風情である。
「お客様、お支払いをお願いします……」
「はい??」
「おや、あれだけお楽しみになったのに支払う金が無いと……では内臓での清算となりますので此方へ……」
 蛇に睨まれた蛙の如くビクビクと怯えてみせるトートの肩を掴み、ずるずると引き摺っていく蒼眞。
「えっ……ちょ……助けっ……!」
「あーあ、おにいさんこれ人生終わりね。もしかして詐欺でもいいから、なんて思っちゃった?」
 バタバタともがいて助けを求めるトートの耳へ、デジルが冷めた声を吹き込む。
「甘い甘い。一度かかってくれたらもうお終い。何もかも全部絞りきってあげるから♪」
「うああああっ!!」
 夜の繁華街に悲愴な絶叫が響いた。
「テメエ俺様の女房に手ぇ出しやがって、ぶっ殺されたくなければ慰謝料払いやがれ慰謝料!」
 一方、衣に対しては、こちらもサングラスとスーツでキメた泰地が、胸倉を掴み上げ凄んでいる。
「そうよ。遠慮は要らないからお尻の毛まで目一杯毟っちゃって! そいつ、私に無理やりキスしようとしたんだから!」
 銀子は泰地へ、いかにも衣の方から破廉恥な振る舞いをしたかの如く、ヒステリックに訴えてみせた。
「なっ……誘ってきたのはあの女の方で……うっ!」
 衣も怒りを露わに言い返すが、泰地に腹パンされて気を失った。勿論演技である。
「うわぁ……」
 例の被害者男性は、引き摺られていくトートと衣を哀れみの目で眺めていた為、美人局の恐ろしさを幾許か理解したと思われる。
 大通りから裏路地へ入り、蒼眞は手を離して苦笑した。
「やれやれ……なかなかの重労働だな」
「上で英気を養ってきたのだろう?」
 そう言ってからかうトート。いつも通り蒼眞がヘリオン内で小檻へおっぱいダイブしたのを知っているからだ。
「それはそれで体力浪費しそうだけど」
 衣も隠れていた御衣櫃を抱き上げて笑った。


 美人局組が去ってから程なくして、再び歩き始める被害者男性の肩を叩く者がいた。
「そこのオジサマ、猫と気持ちいい事しないかにゃー? 今ならお安くしておくにゃー」
 金の猫目を細めて意味深に微笑むケイティ・ラスト(蠱惑の仔猫・e44146)である。
 彼女は被害者男性を夜の街で見失わないよう、ヘリオン降下後も動物変身したままずっと尾行を続けていたのだ。
(「全裸なだけのめしべに負けたら猫が廃るにゃ!」)
 白い純潔の巫女へ対抗心を燃やすケイティは、なるほど、他の女性陣に比べると黒と紫のラップスカートのお陰で露出度は控えめ、大人っぽいコケティッシュな雰囲気を漂わせている。
「お、オジサマ? ていうかお嬢ちゃん、幾つ??」
 被害者男性は、ずいっと背伸びして顔を近づけてくる美少女へたじろぐも、その低過ぎる身長や薄い胸では隠しきれない年齢が気になるようだ。当然の反応である。
 ヒールの高い靴を履いたり、大人の顔立ちに見えるような化粧を施したりと、本気で一般人の大人を落としたいならば、実年齢の低さをカバーして籠絡する為の下準備は幾らでも思いつきそうなものだが。
 流石に警察を呼ばれても困るので偽造した身分証こそ見せなかったものの、どうもケイティの誘惑は、年齢一桁の飾らぬ外見のままロリコンかすら判らない一般人へ迫る時点で詰めが甘い。
「んむっ!?」
 けれども彼女とて決して無策ではなく、不意打ちで男性の唇を奪い、貪るようなディープキスを仕掛ける。
「子どもにこんなテクは無いにゃぁ?」
 にんまりとケイティが笑った、その時。
「今日は客が来なくてヨー? ホ別3万、満足させたらイチゴで良いゼ?」
 いつの間にか被害者男性の肩に肘を乗せていた除・神月(猛拳・e16846)が、耳元で吐息混じりに囁いた。
 功夫を修めた力量を下地に我流の喧嘩殺法を使う、降魔拳士の神月。
 大きく開いた胸元、深く入れたスリットが大胆なチャイナドレスが黒く丸い耳によく似合う、パンダのウェアライダーである。
 ちなみにホ別とは『ホテル代は別途で頂く』なる意味。その上で神月は被害者男性の『頑張り』に応じて半額まで値下げも辞さないと言っているのだ。
「さ、3万はちょっと……」
 被害者男性は言い澱みながらも、間近に拝める神月の胸の谷間や、捲れたスリットから覗く白く滑らかな太股へすっかり目を奪われていた。
「だからァ、それはおっさん次第だって言ってんじゃン?」
 神月は挑発的な眼差しで彼を見返し、そっと掴んだ手をスリットから中へと導いて舌舐めずりする。
「う、うん……」
 白く柔らかい内股へ触れて、理性をトバしかけた被害者男性だが、
「でもなぁ、さっき恐ろしい場面に遭遇してんか。お姉ちゃんみたいな美人、警戒してまうわ」
 ギリギリ踏み留まったのか、素直な逡巡を口にした。
 少しでも警戒心を持ってくれたなら願ってもない事だ、と密かに微笑み合う神月とケイティ。
 そこへ。
「ねーおじさま。暇していない?」
 3人目の刺客、日向・向日葵(向日葵のオラトリオ・e01744)が現れた。ケイティや神月同様、被害者男性の誘惑、籠絡、陥落を狙う役回りだ。
「ひ、暇……まぁ、どうせ家帰って寝るだけやし、暇やな」
 被害者男性がケイティとのキスや神月への愛撫の合間に応じる。どうやら美人局の顛末を見届けた事によって、お酒の酔いはすっかり醒めた模様。
「だったら、ボクとイイコトしない?」
 向日葵は、被害者男性へ敢えて自分からは触らず、薄手のセクシークロスの奥に見え隠れする肌の量感を間近で揺らす事で、彼の官能を刺激した。
 何せ、セクシークロス自体が向日葵より僅かに白っぽい程度しか差のない肌色で、遠目にはボディーペイントにしか見えないぐらい露出度が高い。
「後でぼったくられるよりそれなりの出費をして、楽しんだ方が良いと思うんだけどなぁ……」
 ましてや向日葵当人は、夕焼けみたいな鮮やかさの髪とそこに咲いた向日葵の花、円らな漆黒の瞳を誇る、やや童顔で幼く見える面差しにすっかり成長しきって熟れた身体のギャップが魅力的な美女である。
「おじさまならボクたち3人の内、誰を選ぶ?」
 にぃっと笑って見上げられ、被害者男性が魂を抜かれたふうになるのも無理からぬ事だった。
「待つにゃ! このおっさんは猫が頂くにゃ!」
 すると、2人へ対抗心を燃やしたケイティが、被害者男性の股間へ自慢のイカ腹をすりすりと擦りつけ、空いた手を微乳へ誘導して触らせる。
「これはサービスにゃん。にゃははー。もっとスゴいコト、するにゃー?」
「ううぅっ」
 人生に三度あるモテ期でもまず味わえない直截的な夜のお誘いの連続に加えて、美女達による自分の奪い合い。だがこれらもさっきの美人局のような恐怖の前触れかもしれない。
 被害者男性は悩みに悩んだ挙句、
「ほな、今日はチャイナ服のお姉ちゃんに……ホンマに3万とホテル代だけで、値上がりせんやろな?」
 神月の手を無遠慮に握り締めてニタニタと脂下がった。
 美人局の恐ろしさを理解して尚、ケルベロス女子の色仕掛けに負けた訳だが、完全に忘れている訳では無い辺り及第点だろうか。
「当たりめーだゼ。それじゃーホテル探してくっかラ、その辺ブラついてナ。浮気すんじゃねーゾー?」
 神月達はひらひらと被害者男性へ手を振り、その場から散り散りに去っていく。
 被害者男性をこのまま囮にして、いよいよ白い純潔の巫女を誘き出す為だ。


「ねぇ、付き合ってくれない?」
 白い純潔の巫女がそのしどけない姿を現した時、被害者男性はやはり面食らっていた。
「またかいな? 今日は過激な格好のお姉ちゃんが多いなぁ」
 至極尤もな感想であろう。
「こっちよ」
 白い純潔の巫女は被害者の手を引いて歩き出そうとするも、
「あ、いやいや、悪いけど先約があんねん」
 被害者男性は慌てて蔓塗れの手を振り払い、そそくさとその場から逃げ出した。
「もし今のも美人局やったら悲惨やし……それに、若い娘にモテた事無いからかもしれんけど、この歳で何人も相手すんのは疲れる!」
 そう思わせただけ、美人局作戦だけでなく神月や向日葵、ケイティの誘惑も充分功を奏したと言える。
「野生の痴女が出るなんて……、これが日本……」
 エレオノーラ・エルヴァスティ(へたれ勇者見習い・e56447)は、被害者男性が無事に逃げ果せたのを見届けて胸を撫で下ろすも、内心では羞らいを知らない白い純潔の巫女の外見にいささか食傷気味であった。
 と言うのも、エレオノーラ自身は誘惑したり他人を脅すような演技に自信を持てず、今まで只管、他の仲間達が美人局や獲物の奪い合いを演じる様を近くて気配を殺し見守ってきたからだ。
 芝居の最中に白い純潔の巫女が現れないよう見張りを徹底し、もし現れたら身を呈して被害者男性を守ると共に、仲間の先陣切って戦いに臨む……。
 これがエレオノーラの本来の役割である為、自然と女性陣による濃密な誘惑の一部始終が目に入ってしまうのである。
 そんな彼女は、恵まれた容姿と体格を有し、黙っていれば迫力があり威風堂々たる風格をしたドラゴニアンの甲冑騎士。
 だが、内面は産まれたての子犬にすらビビり、虫すら殺せないチキンハートな性格で極度のヘタレという有り様。
 そのせいか、今この時にしても、
(「もう帰りたい……」)
 人知れず胸の内で嘆いていたりする。
 ちなみに、誘惑対決組もエレオノーラも、最初は被害者へ攻性植物が接触してから誘惑対決に持ち込むつもりだった。
 しかし、それでは味方が被害者をオトすより先に無理やり攻性植物の種を植えつけられる危険性が高い為、敵が接触する前に誘惑する事となった。
「あら……」
 白い純潔の巫女は、人混みに紛れて見えなくなった被害者を追いかけようとするも、
「見た目が痴女な以外は普通の人っぽいしやりづらいなぁ……」
 そう零すエレオノーラに行く手を阻まれ、気づいた時にはケルベロス達から包囲されていた。
「はぁ……、仕方ない、やるしかないわよね」
 エレオノーラは獣みたいに体勢を低くして、白い純潔の巫女へガバッと組みつく。
 そのまま巫女を道路へ押し倒し、下半身を膝蹴りで割り入ったりとあられもない格好をさせながら、まさに組んず解れつ激しい格闘戦を繰り広げた。
「……」
 巫女は緑鮮やかなアイビーを振り翳し、官能的な芳香を振り撒く。
「植物の癖にどうして……」
 運悪く魅了もとい催眠にかかったのか、巫女の肢体へ己が豊満な胸を合わせて寄り添い、ねっとりと絡み合うのは銀子だ。
「覚悟は出来たカ? 楽しんでやろーゼ!」
 神月は縛霊手の祭壇から紙兵を景気良く散布、前衛陣を守護したが。
「スリット深め、胸元開けたチャイナドレス……飛び込まない理由が、あるのか……?」
 本人曰く常時セルフ催眠発動中な蒼眞に巨乳目掛けてダイブされ、更には反動でまろび出た双丘を鷲掴みされ、容赦なく揉みしだかれている。
「正気に戻すには昔から手刀って決まってるよナー」
 当然、背中に神月の反撃が炸裂したのは言うまでもない。
「何アレー、痴女? 引くわー。あんなので客が取れると思ってるの?」
 巫女を冷ややかな目でディスるのはケイティ。
「ちょっとだけ手伝ってとっとと片付けて……にゃぁぁ! 絡まったにゃぁ!」
 だが、当人はカモミールの鞭にぶっ叩かれた挙句、蔓に自ら絡まって拘束される始末。
「うむ、なかなか良い眺めよの」
 何とも蠱惑的かつ煽情的な緊縛姿で、トートの注目を集めた。
「にしても日本とは恐ろしい国だな全く。悲しみはそなたで癒して貰おうか」
 トート自身もにっと笑って巫女の胸を弄ったり吸いついたり、弾力を存分に堪能している。
「んっ」
 加えて、巫女が回復すべく抱きついてきたら口を塞いで舌を差し入れる貪欲ぶりを見せつけた。
「味方のおっぱいへ飛び込むのは勿論吝かでないけど、流石に戦闘中の行動を阻害するのはな……」
 負けじと巫女へ向けて半透明の『御業』を嗾けるのは蒼眞。
 御業は巫女の腹と両足をギュッと鷲掴み、殆ど『見えない相手からの拘束』という何かのシチュエーションが如き淫蕩な光景を作り上げた。
「きゃ、な、何をしっ」
 それでいて蒼眞は蒼眞で銀子の胸へ顔を埋め、赤面した彼女からハイキックを食らっている。
 大胆に脚を振り上げたのを目の当たりにして、紙兵散布中の衣が無言で親指を立てた。
「この巫女の服って焼いたらどうなるんだろう? やっぱり、全裸になるのかな?」
 向日葵は二丁拳銃を手に、舞うような動きで全方位射撃を繰り出す。
 普通なら単体の敵へ選ぶ手段では無いが、今回ばかりは服が焼けた巫女の裸をじっくり鑑賞すべく、敢えて威力控えめな列グラビティにしたのかもしれない。
「欲望は否定しないけど死へ導くのはダメねー」
 避けられる前提の一打でフェイントを仕掛けるのはデジル。
 目論見通り回避した巫女へ、すぐさま疑似ビハインドなる幻影と共に手痛い挟撃を喰らわせた。
「そなたは無意識だろうが良き奉仕であった。せめて我が腕の中眠るが良い」
 声もなく倒れ臥した巫女をトートが抱き起こす。
「死は終焉ではない、新しき門出よ」
 そして、彼女の額にそっと口づけて最期を看取った。

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年5月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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