甘くてフワフワ☆ベリィマッチョ

作者:木乃

●ゆるふわガール with Berry(筋肉)
 開かれた魔空回廊。お散歩気分で現れた少女は、明るく陽気に、キュートな仕草で踏みだす。
「いつでも ふわふわ♪ いつでも あまあま♪」
 うさ耳アンブレラと姫袖が可愛らしく揺れる。
 しゃなりしゃなりステップを踏む姿は、アイドルのライブパフォーマンスを彷彿とさせる――が。
「恋と少女は 甘くて ちょっと酸っぱい♪ まるでストロベリーなフェアリーね♪」
 イチゴ畑のど真ん中でやるのはどうなんだ! 場違い過ぎるにも程がある。
 ――しかし誰も彼女を止められない。
 というか、両脇を固める筋骨隆々のイチゴ頭に喋る口がないのでツッコミようがない。
 どうしようもなくツッコミ不在なのである。是非もなし。
「……あらぁ? この甘酸っぱい初恋のような香り、イチゴの香りですぅ」
 可憐に微笑む少女は大粒のイチゴを摘んで口元に運ぶ。
「――このイチゴ、酸っぱすぎますぅ。失恋みたいな酸っぱさは私には似合わないのですぅ」
 ぷくぅと頬を膨らませ、不機嫌そうにしていると……運悪く農作業に戻ってきたイチゴ農家が目撃してしまう。
「な、なんだキミ達は!?」
「こぉんな酸っぱいイチゴを作る無能家さんはダメダメさんですぅ、めちゃくちゃにしちゃってくださぁい」
 屈強なストロベリー頭は少女の命令に従い、自慢のバルクを誇示すると畝や苗を踏み荒らし、農家の悲鳴が響き渡る。
 興が削がれたとばかりに、少女――甘菓子兎・フレジエは再び魔空回廊へ去っていくのだった。

「大阪周辺を調査されたケルベロスのおかげで、大阪城周辺に抑え込まれていた攻性植物達の動きを察知出来ましたわ。どうやらゲート付近を固める大阪市内への攻撃を重点的に行うようですわね……事件が多数発生すれば、一般市民は避難するために大阪市内を離れざるをえません」
 拠点拡大が最大の狙いだろう、オリヴィア・シャゼル(貞淑なヘリオライダー・en0098)は攻性植物達の動向について推測を述べる。
「大規模な侵攻ではありませんが、このまま放置すればゲート破壊成功率も『低下し続ける恐れ』がありましてよ。これまでの頑張りを無駄にしない為にも、攻性植物の計画を完全に防ぎ、隙をついて反攻に転じる機会を窺う必要がありましてよ」
 活動する攻性植物は数体確認されているが、オリヴィアが予知したのは『甘菓子兎・フレジエ』の動向だ。
「フレジエは配下であるストロングベリーを引き連れ、大阪市近郊のイチゴ農家の畑に現れるようですわ。フレジエはすぐに撤退してしまう為、戦うことはできませんが……ストロングベリーがイチゴ農家に襲い掛かる直前には駆けつけることが可能です」
 いちご農家の安全を確保し、ストロングベリーを撃破することが作戦目標だ。
「ストロングベリーは筋骨隆々な肉体を蔓で再現したような肉体、それとイチゴ頭が特徴ですわ……そうですわね」
 オリヴィアはチラと永喜多・エイジ(お気楽ガンスリンガー・en0105)を一瞥する。
「ちょうどエイジさんがイチゴの被り物を着けたようなイメージですわね」
「えっ」
「数は2体。知能はあまり高くないのか、フレジエの指示通りにイチゴ畑と農家を蹂躙しようと行動しますわよ」
 反応に困るエイジの声をスルーし、オリヴィアは事もなげに情報を伝えていく。
「戦闘能力は強敵というほどではありません。殴る、蹴るとシンプルな物理攻撃の他に、イチゴの香りで……えーと、萌え萌えキュンキュン☆な気分に……ええ、動きが鈍ると思って宜しいかと」
 照れるくらいなら無理すんなよ41歳。
 それはさておき。気を取り直して、オリヴィアはケルベロスに一点忠告する。
「『情報を聞き出したい』とお考えの方がいるかと思いますが、ストロングベリーは口に似た部位があっても、会話は出来ないようです。『対話は不可能』ですので、その点は頭に入れておいてくださいませ」
 この時期ならばイチゴは旬の時期。荒らされては農家にとっても死活問題だ。
「件のイチゴ畑ではイチゴ狩りも行っているようですわ、終わってからの楽しみになさると良いでしょう」
 それを聞いて混乱していたエイジも「いいね!」とヤル気を見せ始める。
「ストロングなベリーはズバッと倒してイチゴ狩り。丹精込めて作った作物だから、美味しく頂こうね!」


参加者
水守・蒼月(四ツ辻ノ黒猫・e00393)
綾小路・鼓太郎(見習い神官・e03749)
チェレスタ・ロスヴァイセ(白花の歌姫・e06614)
湯島・美緒(サキュバスのミュージックファイター・e06659)
ラグナシセロ・リズ(レストインピース・e28503)
輝夜・形兎(月下の刑人・e37149)
天王寺・未央(牡羊座・e43432)
刻杜・境(融けた龍血結晶・e44790)

■リプレイ

●(ただし香りはワキから出る)
 イチゴ農家にとってイチゴ畑は庭同然。
 デウスエクス相手に全力疾走で駆け抜けるが、相手は熟した果実の連なる畝ごと踏み潰し、今まさに掴みかかろうとしていた――!
「そこまでですよ、狼藉者の攻性植物!」
「人様の畑に無断で入って荒らし回るとは……天罰覿面です!」
 ラグナシセロ・リズ(レストインピース・e28503)と綾小路・鼓太郎(見習い神官・e03749)の一撃がストロングベリー達を突き飛ばす。
 その間合いに湯島・美緒(サキュバスのミュージックファイター・e06659)も立ちはだかり、腰を抜かした二人に視線を向ける。
「ここは私たちに任せて――ちょっと痺れますよ!」
 美緒がギターピックを指弾のようにはじくと、マーキングされた雷の如き雷光が音を立てて全身を巡る。サポーターも素早く戦場に駆けつけた。
「オレ達はケルベロスだ、今のうちに逃げてくれ!」
 泰地がアルティメットモードで奮い立たせると、呆然とする二人は慌てふためきながら再び走りだす。
 レクトも立ち塞がったことで苺ヘッド達は容易に突破出来なくなっていく。
(「なんだろう、色々な意味で怖い……いやいや!」)
「マッチョイチゴのひとつやふたつ、にゃんだむで押し返してみせる!」
 注目を引こうと水守・蒼月(四ツ辻ノ黒猫・e00393)の掛け声と同時に、猫耳つき巨大達磨ロボの幻影が大地に立つ。
 デンプシー猫パンチに対し、言葉も発さぬ筋肉モリモリマッチョな変態イチゴ(?)は、軌道の僅かな隙間を縫って飛び込んでくる。
 無言で迫るあまりに異様な光景に、チェレスタ・ロスヴァイセ(白花の歌姫・e06614)は気圧されそうになるが、ぐっと堪え、
「農家の皆さんが丹精込めて育てた畑を荒らすなんて……せっかくのイチゴが泣いています!」
 飛び出すストロングベリーに、カウンター気味のドロップキックで顔面を踏み抜く。
「農家の敵はウチの敵! エイジお兄さんもガンガン撃っちゃってねっ」
「OK! 弾幕全開でいくよ!」
 威勢良くバイオレンスギターを掻き鳴らす輝夜・形兎(月下の刑人・e37149)の姿に、ヒスイも小さく笑みを浮かべ、オウガ粒子を散布する。
 リューディガーと永喜多・エイジ(お気楽ガンスリンガー・en0105)が制圧射撃で動きを制限する隙に、悠乃がチェインネックレスを伸ばして護法の陣を組みあげていく。
 その間に襲われていた二人は、十数メートル先まで離脱している――突破されなければ追いつくことはないだろう。
「こない暴れとったら苺おばけも近づけへんな、ちゃっちゃとシメたろか!」
「望むところだよ。襲った理由も気分が悪くて仕方ない」
 安全圏に離れるまで天王寺・未央(牡羊座・e43432)と刻杜・境(融けた龍血結晶・e44790)が護衛しようと考えたが、苺おばけ達を食い止められている状況を見て、すぐに踵を返す。
 未央が光の戦輪をいくつも放ち、境は混沌たる血の沼を地べたに広げて引きずり込もうとする。
 ――――集中攻撃を浴びる一体だけでなく、狙いから外れていた『もう一体の注目』を境は引きつけていた。

「まずは、美緒さんの射貫いた敵から仕留めましょうか」
 豪快なストレートで美緒を殴りつけたストロングベリーを、ラグナシセロがサマーソルト気味に蹴り上げる。
 顎下から仕掛けた痛烈な一撃、蒼月と鼓太郎も続けざまに畳みかけていく。
「農家さんが頑張って作った苺も、農家さん自身もやらせるわけにはいかないんだからね!」
 殺戮機械と氷の螺旋弾を放つ蒼月の射線を巧みにくぐり、鼓太郎が虚蒼月・銅貉の二振りからグラビティを斬り込む。
 筋組織状に形成される植物体からプシュッと液体が吹きだした。
 しかし、黙って斬られるだけでは終わらない。いや、声は出せないが。
 おもむろに両腕を後頭部に回し、脇のラインを強調するように腰の辺りを艶めかしくくねらせる――あえて副音声をつけるなら、
 『……Oh、Yes……☆』
 ポーズをとっている間、あまーい苺の香りが一面にふわぁっと広がっていく。
 どこから出てるかはお察しください。
「ふあ……あまくてふあふあー……」
「アウトだよね!! 色んな意味でアウトだよね!?」
 苺の香りはまぁいいとして、視覚的暴力が酷いのなんのって!!
 どこから出てるかはお察しください。(二度目)
 甘い香りに動きが鈍る鼓太郎を正気に戻そうと、形兎のオウガメタルが粒子を限界領域まで散布する。
 人数が多い分、治癒効果も最低限になってしまうが、優先すべきは動きを鈍らせる香りから復帰させること。
「……ッハ!?」
 大丈夫、誰もきみを責めたりしない。そういう感じだってヘリオライダーが言ってたもん!

 それはそれとして、冗談どころではないのが境だ。
 各個撃破の方針において、広域に注目を集めようとしたことで手隙のストロングベリーが重点的に狙いを定めていた。
 レクトと泰地も援護に回るが、隙を見て放たれる一撃は境の五臓六腑に響くほど重いもの。
「ぅ、ぐ……っ」
 こんな相手に膝をつくのは屈辱以外の何者でもない。
 未央が割り込みついでに牡羊座の守護星座を放ち、二体同時攻撃を図るものの、グラビティで興奮させられていては、引きつけることすら難しい。
 半壊するストロングベリーの攻撃を受け止めながらも、チェレスタは境に練気を飛ばす。
「これで少しは痛みが治まるでしょう、無理は禁物ですよ!」
 防衛役だからこそ倒れてしまえば本末転倒だ。『注意を引くことのデメリット』も考慮しなければならない。
 すでに膝が笑いそうな境だが、それでもまだ動けると気力で震えを抑えこむ。
「なら、早く片付けないと、ね――あなたは、どんな味なのかな……!?」
 砲撃を放った美緒が手隙のイチゴ頭から庇いに走る間に、境が飛びかかる。
 裂傷だらけの四肢に絡みつき、鋭い牙を以て果肉を食いちぎって見せた。
(「――――っ、ぷ、……マズっ!!」)
 真綿に酢味噌とチョコレート、レモンとハッカを歯磨き粉をミキサーしたような、酸味と爽快感の劇物的テイストが口中に広がり、顔面が真っ青に染まっていくせいで余計に痛々しい。
 精神的にも悶絶ものだが、ダメージはないので安心されたし。ひたすら不味いだけである。
「さっきは何しくさりやがりますかこの野郎! 問答無用の打ち首ですよ!!」
 フレーヴァーに惑わされた己の雪辱を注がんと鼓太郎、渾身の一刀が囓られたてのストロベリーヘッドを両断する。
 溢れるイチゴに似たスウィート♪な芳香に、今回ばかりは『血生臭いほうがマシだった』と少年は思う。
 どこから出ていたかは、お察しください。(三度目)

「残るはあなただけよ、覚悟してもらうからっ」
 竜鎚による砲撃と御業の束縛で美緒が妨害にかかった。
 精神を研ぎ澄まされ、感覚が鋭くなっている未央も天に向かい星辰の剣を振り上げる。
「お星様も押せ押せでいったるでー!」
 星霜の煌めきを放つ刀身が流星のように鋭い滅多刺しを繰り返し、じわじわと外皮を削り、境も樹液を引き出すように引き裂いていく。
 また奇妙なポージングをしようとする気配に、チェレスタも軽い頭痛を覚えながら「ルーディ!」と呼び寄せ、
「共に踊りましょう――夢は現、現は夢。幼き日の心を携え、とこしえに穢れることなき夢の都へと貴方を誘いましょう」
 手を取り合い、幻想を歌う美声で邪なフルーツに鉄槌を加える。
 エイジも手足を撃ち抜こうと銃口を向け、弾道に気を取られているところを形兎が簒奪者の鎌を持ち直す。
「ウチもいくよ――蝕め!」
 三日月を描く衝撃波が深々と肩口に刺さる。
 集中攻撃を受けてはマッシヴボディでも為す術はなく。凍えた植物のように茶ばみ始める手先や足先から、消耗具合も窺えた。
 追い打ちをかけようと蒼月の惨殺ナイフが閃くと、ストロングベリーは見えない敵に注意が逸れる。
「どのようなトラウマが生じたかは存じませんが、育ちの悪い植物は間引きいたします!」
 ラグナシセロの放つ虚無の球体が、腐り落ちた植物を刮ぎ落とす。
 ボロボロと崩れ落ちる激痛にも、イチゴ頭に悲鳴をあげる口はない。振り下ろされたラグナシセロの刃は鮮やかな剣閃でもって決着をつける。

●ストロベリー・ハント
 ケルベロス達が来る前から踏み荒らしていたこともあり、土を保護するビニールシートも、イチゴが連なる畝そのものも無残な状況だった。
「遍く日影降り注ぎ、かくも美し御国を護らんが為、吾等が命を守り給え、吾等が力を寿ぎ給え――」
 神職に携わる身として、奉書紙に綴った心照御霊ノ祝詞を読み上げながら、鼓太郎は荒れた畑に癒やしの力を施す。
 被害が出ないように気をつけてはいたものの、相手のお構いなしな立ち回りの痕跡がそこかしこに残っている。
「迷惑な攻性植物だよね、勝手に入って暴れるなんて!」
「ほんまやで。摘まみ食いして、ケチつけるとか何様やっちゅうねん」
 これでは商売あがったりだと、形兎の憤慨に未央も頷きながら畑を元に戻していく。
 修復作業を終えると、エイジが避難していた農家の二人を呼んできた。
 申し訳なさそうに縮こまる様子に「まあまあ」とチェレスタも顔を上げるよう促す。
「あの! ここって、イチゴ狩りが出来るって聞いたんだけど……!」
「勿論かまいません、練乳も必要でしたらご用意していますので」
 緊張気味に尋ねる蒼月に笑顔で返す。
 持ち帰りについては「問題ありませんが、あまり大量に持って帰るとなると……」と苦笑交じりに答えた。
 彼らにとって大切な作物であると同時に『収入源』でもある。
 厚意で摘める分より多くなるなら、相応のものが必要になるだろう。

「レクト、大きい苺があったよ! 苺ってこんな風に実るんだね」
 大粒の苺を指さし、満面の笑みを見せるラグナシセロにレクトも笑みを浮かべる。
「こうやって、茎の繋ぎ目を指で挟んで直角に持ち上げる感じにすると取りやすいよ……ほら」
 これはあなたが見つけたものだから。
 つい、と口元に差し出された赤い実をラグナシセロはパクリと頬張る。
「甘い! もしかして、フレジエはハズレを引いたのかな」
「俺には解らないけど、ラグナが美味しそうに食べているなら、そうなのかもしれないね……はい、もう一つ」
 雛鳥に餌付けする親鳥のように、採った傍からレクトは手ずから食べさせる。
 それに気付いてラグナシセロも、真っ赤に熟した苺を見よう見まねで摘んで見せた。
「レクトも食べて。採れたて、凄く美味しいよ」
 無邪気に差し出された苺を、レクトも頬張り、にじみ出す甘酸っぱい果汁を堪能する。
「お土産は売ってるのかなぁ、苺ジャムとかロールケーキとか」
「聞いてませんでしたね……無ければ持ち帰った分で作ってくれるかな?」
 料理の腕前に信があるからこその一言。その後も苺を摘みながら、どんなお菓子にしようかわいわいと楽しむ。

 形兎もやっと落ち着いたところで、ヒスイと手を繋ぎながらイチゴ畑を散策する。
「ヒスイ兄ぃ、これ甘そうだよ!」
「よく解るなぁ」
 赤みが強いと思うが、一目でわかるものかと感心するヒスイ。形兎はひょいと摘むと、
「はい、あーん、して?」
 一瞬、きょとんとするヒスイだが、照れくさそうに一口で納める。
 苺みたいに赤くなる様子に形兎はご満悦――だが、それだけで終わらなかった。
「……ホラ」
 ヒスイも同じように差し出してきたのだ。
「お互いやっといた方が恋人…っぽいんじゃねーの?」
 ゴニョゴニョと言い淀むが手を下げる様子はなく、形兎も遠慮無くぱくっと一口。
「んふふ。ヒスイ兄ぃ、苺の甘酸っぱさは初恋の味なんだって」
「そうかよ」
 ぶっきらぼうな言葉に反し、ヒスイはおかしそうに表情を柔らかくしている。
 ご機嫌な形兎はうさ耳をパタパタさせながら、ぴたっと寄り添うのだった。

「採れたての新鮮なイチゴ、ジャムにしても美味しそうね。ルーディ」
 今は夫婦水入らず。
 苺を美味しそうに堪能するチェレスタの言葉に、リューディガーも先ほどの勇ましさも影を潜め、優しげな顔をみせる。
「ジャムもいいが、エルトベアザーネトルテも捨てがたい」
 土台のビスケット生地にジャムを塗り、スポンジとザーネクレメ、生クリームで重ねていく。
 もちろん、イチゴをたっぷり挟んだ可愛いトルテにしよう。
「帰ったら二人で作ってみようか?」
「それは楽しそうですね、ルーディと一緒なら美味しいケーキが出来ます」
 一緒に作ればもっと美味しくなるに違いない、イチゴよりも甘いひとときの中、夫婦の語らいは続いていく。

「イチゴ~イチゴ~~♪ 甘くて美味しいイチゴ狩り~~♪」
「さっき聞いてみたんやけど、これめっちゃ高級なやつやで!? そんまま食べても美味いはずやのに、フレジエもわかっとらへんなー」
 初めてのイチゴ狩りに上機嫌な蒼月はプチッと摘んでは、そのまま食べたり、もらった練乳をつけてみたり。
 未央は噂で聞いたことのあるイチゴと発覚して、有り難そうに一粒を摘んでいく。
 この甘酸っぱさと大きさ。大阪ブランドのイチゴにケチをつけるとはイイ度胸だと頬を膨らます。
「……そんなに高いの?」
「ブランドものは品種改良とか試行錯誤してるからね! 完成させるまでお金もすごくかかるんだよ」
「じゃあ、美味しく頂かないとだね」
 摘んだイチゴをまじまじ眺める境に、大きい身体を丸めるエイジがモグモグしながら答える。
 『努力の結晶』ならばこそ、踏みにじることは許されない――改めてイチゴを口に含むと、特有の甘みと酸っぱさが境の口に広がっていく。
 美緒も持ち帰る分のイチゴを収穫して満足していると、近くを通りがかる農家の二人に鼓太郎が駆け寄る。
「苺、とっても美味しいですよ! 持って帰ったら俺の友達も喜んでくれると思いますし、お菓子にしても美味しいでしょうし、それから――」
 あんな失礼な連中の言葉なんか気にしないで、励ますように力いっぱい主張を続ける。
「是非とも美味しい苺を毎年作って頂いて、彼奴の鼻をあかしてやって下さいませっ」
 息つく間も忘れる鼓太郎に目を丸くしていたが、すぐにはにかみ笑顔が返される。
 生産者にとって、これ以上嬉しい言葉はないだろう。
「永喜多のおっちゃん、ようけ持ってくれや! あ。余した分は持って帰るから堪忍な」
「僕にも食べさせてよぉー!?」
 ――イチゴ畑の賑わいはもう少しだけ続きそうだ。

作者:木乃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年5月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 3
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