●大阪市内、イチゴ農園
「あめんぼあかいな、あ・い・う・え・お」
のどかな風景の中に、発声練習の声が響いた。
声の主は、ストロベリーケーキをモチーフにした、まるでアイドルのような服に身を包んだ少女だ。
「ら・ら・ら、すとろ・べりー♪ べりべりー♪」
声が整ったのか、彼女はメロディを口に。
ふわふわ、くるくる。
レースのあしらわれたスカートと傘が揺れる。
後ろをついて行くのは、イチゴの形をした怪物たち。
「あまくてぇ、すっぱい♪」
傘と頭のウサギ耳がぴょこぴょこ跳ね。
「こいのあじ♪」
ぴたりと足と歌を止めると、彼女はイチゴを一粒摘んだ。
イチゴを齧り、静かに咀嚼する。
「うーん……、酸味と甘さが薄ぼんやりしていますぅ、私にはふさわしくないですぅー」
彼女はそのまま踵を返すと、先だけ齧ったイチゴを投げ捨て。
振り返る事も無く、侍らせたイチゴの怪物――ストロングベリーに指示をした。
「こんなイチゴ必要ありませんー、めちゃくちゃにしちゃってくださぁい」
●すろとべりべり
「おう、集まったな。早速だが、ヘリオンに乗り込みながら聞いてくれよな」
レプス・リエヴルラパン(レプリカントのヘリオライダー・en0131)は皆に軽く頭を下げてから、ケルベロスの後ろに着いてヘリオンに乗り込み。
「爆殖核爆砕戦で大阪城周辺に抑え込まれていた攻性植物達が、大阪市内で活発に動き出したようだぞー」
掌の上に資料を展開したのは、大阪市の地図だ。
いくつか丸がつけられたソレを、空中でタップするように指を動かしてレプスは拡大する。
「大阪市で多発的に事件を起こす事で一般人を避難させて、自分たちの拠点を拡大しようとしているようだ。いますぐどうこうなるって程大規模な侵攻じゃねェが……、放置すりゃ奴らのゲート破壊成功率がじわじわ下がってしまうだろうな」
地図が拡大された事で一つになった丸は、イチゴ農園を示していた。
「ここに現れるのは、甘菓子兎・フレジエという名の攻性植物だ。ソイツは勝手にイチゴを喰った挙げ句、配下に農園を滅茶苦茶にするように指示を出して撤退しちまうんだ。……フレジエの撤退には間に合わねェんだが、今からかっ飛ばしゃ、イチゴ農家に配下――ストロングベリーが襲い掛かるまでには着く事ができる」
掌の上の資料をふわふわの少女と、ムキムキのイチゴ頭に切り替えたレプス。
「ストロングベリーは3体。力自慢のようだが……、ケルベロスクン達の実力ならば油断さえしなければ苦戦する事は無いだろう。っつっても、もちろん農家のおじさんやおばさんが敵う相手では無い。急いで向かうぞ」
資料を閉じると、レプスは前を向き。
「……あっ」
ヘリオンに乗り込んでいた、天目・なつみ(ドラゴニアンのガジェッティア・en0271)が声を上げた。
「ソコって……、確か併設されたレストランで摘みたてイチゴビュッフェをしている所よねっ?」
一瞬、瞼の裏で検索を掛けた様子のレプスが頷き。
「おー、ホントだな。有名なのはタルトか……、良いな。俺もお土産が欲しい。無事に事件を解決したら寄ってきても良いぞぅ。って事で、楽しむためにもバッチリ倒してきてくれよな」
「合点承知よっ!」
ぴかぴかに磨いたガジェットに手を添えて、なつみは力強く頷いた。
参加者 | |
---|---|
霧島・カイト(凍護機人と甘味な仔竜・e01725) |
小山内・真奈(おばちゃんドワーフ・e02080) |
ピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542) |
東雲・苺(ドワーフの自宅警備員・e03771) |
板餅・えにか(萌え群れの頭目・e07179) |
機理原・真理(フォートレスガール・e08508) |
セリア・ディヴィニティ(忘却の蒼・e24288) |
ララ・フリージア(ヴァルキュリアのゴッドペインター・e44578) |
●すとろ、べりべり、べりーべりーの音程です
「皆さん、私達はケルベロスです。これより奥に近づかなければ安全です」
「攻性植物達はあいつらが倒す、なので今のうちに逃げてくれ!」
フローネと泰地が、キープアウトテープを張り巡らせた道の向こう側で呼びかける声が遠く響く。
交じる足跡と、ガラスの割れる音。
「最近は大人しかったと思っていれば……、案の定、機会を窺っていたという訳ね」
蒼く燃える炎を纏い、真っ直ぐに敵を睨めつけたセリア・ディヴィニティ(忘却の蒼・e24288)はバスターライフルに手を掛けて呟いた。
近づいた邪魔者の気配に、一斉に振り向いた3体。
蔦が絡み合って人の形を成した上に巨大なイチゴの乗せた化物――、ストロングベリーは今折ったばかりの支柱を手に地を蹴った。
「させないよっ」
妖精弓の弓幹で、その支柱を受け止めた東雲・苺(ドワーフの自宅警備員・e03771)の小さな体が勢いに引きずられ。足元にガリガリと轍を生む。
自らの名前と同じ作物、イチゴ。
その農家に縁を感じない訳も無く、苺は眼鏡の奥からキリと敵を睨めつけた。
「悪い事をする変なイチゴはここでお仕置きだよっ!」
交わした武器を支点に、削れた地を踏み込んで押し込むように。
苺は弓ごと身体を捻り込んで体当たりをかける。
眼の前に転がって来た大きなイチゴに、ボクスドラゴンのたいやきは大きな口を開き――。
「たいやき。それは喰い物ではありません。攻性植物です。もう一度言うけど攻性植物です」
霧島・カイト(凍護機人と甘味な仔竜・e01725)の優しい突っ込み。
迫る敵に瞳を細めたカイトは、バイザーを降ろして。同時に撃ち込んだミサイルがストロングベリーを弾き飛ばす。
「プライド・ワン、行って下さい」
弾け飛んだストロングベリーが、ライドキャリバーのプライド・ワンによってさらに撥ねられた。
キョトキョトと回りを見渡してから、はっと甘い香りを漂わせて機理原・真理(フォートレスガール・e08508)に鯛焼き属性をインストールするたいやき。
「でも、ああいうビジュアルだと、美味しいイチゴも台無しなのですね……」
「確かに。むきむきマッチョのイチゴってきもいな、さっさと倒そか」
細い溜息と共に、真理が自ら改造したチェーンソー剣が低い唸りを立て。
鎚を水平に薙いだ小山内・真奈(おばちゃんドワーフ・e02080)が、うんうんと頷いた。
真理が軽く跳ねると一気に肉迫した刃が、ストロングベリーの蔦を切り裂く。
想定していた予定とは多少グラビティが違ったが、悪くは無い。
「ほいほいっと!」
があ、と吼えるストロングベリー。
砲へと形を変えた鎚を真奈が叩き込むと、衝撃派がバチバチと弾け薙いだ。
爆風に打ち上げられた敵の影から、もう1体のストロングベリーが蔦を一直線に伸ばす。
「マカロン、お願いっ!」
苺の声掛けに、眼鏡をかけた白いボクスドラゴンがその蔦に体当たりをブチかまし、矛先をずらし――。
「飛んで火に入る夏の虫ってやつよ」
蔦がゆうらり揺らめく霧を裂くが、その先はただの地面だ。
板餅・えにか(萌え群れの頭目・e07179)が霧中より放つ炎は、敵の足を絡め取るが如く。
「しかし、イチゴ農園を襲うとはなんたる極悪デウスエクス」
折られ、曲がったまま天を向いた支柱の上を滑るエアシューズ。
「まったくじゃのぅ、許せないのじゃー」
ララ・フリージア(ヴァルキュリアのゴッドペインター・e44578)がえにかの言葉にウンウンと頷き、ローラーが火花をばちばちと散らした。
えにかの霧を裂くように飛んだララが、炎を纏った回し蹴りをイチゴ頭へと叩き込む。
「農家の苦労も知らないでめちゃくちゃにするなんて許せないな! ――さあ縫い止めろ、銀の針よ!」
銀色が空を縫う。
指揮をするかのように魔法の針を走らせた、ピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)の手の動きに合わせて。蹴りに倒れたストロングベリーの足元が、地に縫い付けられる。
集中攻撃をされた仲間を壁に。
イチゴを踏み潰しながらストロングベリーは更に前へと踏み出した。
「ソーダソーダ、いいぞもっとやれ」
えにかがオオッと、何故か歓声を挙げ。
ハサミを握ったテレビウムのマギーが訝しげに、テレビの中に『?』を表示した。
はっとしたえにかは、首を一度左右に振り。
「違った違った。ゼッタイニユルサナイゾー、おのれイチゴヤローただじゃすまさねぇ!」
続けて、カクカクと上下に首を振った。
イチゴは野菜界の裏切り者として、えにかには何か思う所がある様子だ。
「キープアウトテープも完璧だね、いこう、アロアロ!」
遠くに聴こえる、避難を完了したケルベロス達のこちらへと駆けてくる足音と声音。
「……イチゴは絶対、守るですからね」
力を持たない人々も、彼らが守りたい作物も。
ケルベロスである私達が必ず守ってみせる、と。真理はぎゅっと武器を握りしめ、ストロングベリーを睨めつけた。
●ぶちかませすとろべりー
剣撃は重ねられ、一体のストロングベリーが地に崩れ落ちる。
応援動画に合わせて踊るマギー。
「ねぇ、ピジョン。今回の敵ってなんだか前に見つけたイチゴ人間のドリームイーターに似てるよね」
「確かに似てるかも。……さて、チョロ、頼んだよ」
マヒナが紙の兵をばら撒き。ピジョンが相槌を打ってから、ファミリアロッドをヤモリの形へと開放する。
魔力の籠もったヤモリは、一直線に空を敵へと駆け走り。
「植物なら大人しく燃えてくれたらいいのにのう。やっぱり枯れ木じゃないと燃えにくいのかのう」
ボヤキを口に、ララはペイントブキを空中に走らせると光の線を引いた。
グラビティの宿ったその線は銀の騎士を描きだし、実体を伴って槍を携えた。
「さあ、今回のおしおきの時間じゃの!」
ララの掛け声と共に光の銀の騎士が殺到し、ストロングベリーを身体をぶっ飛ばす。
「皆、手伝うよ」
「その身を灼き尽くせ。神の雷に貫かれるまで」
駆け込んできたあかりの鎖が地に星を描き、皆に加護を与え。
陣内によって膨れ上がった、どこか地獄に似た慢心の炎は敵を嘗める。
燃えるストロングベリー。
ぐる、と身体を這う緑色の茎と葉が捻れ、体中に小さなイチゴが一斉に鈴なった。
「あれって……」
何か仕掛けてくる気配。苺が翔けるも、一歩足らず。
一斉に放たれた小さなイチゴはミサイルのように真奈を狙って一直線に駆けた。
「小山田さんっ!」
「――刃の錆は刃より出でて刃を腐らす!」
その攻撃を全て甘んじて受けた真奈は皮膚を焦がしながら、身体のバネをぐうと撓らせて跳ねた。
爆ぜる炎は熱く燃え。喰らったグラビティは熱量と化して、燃える拳が敵を貫く。マカロンが重ねて回復を重ね。
「よーし、ぶち転がしてやろうじゃないですか」
未だ歩みを止めようとしない敵に。白い狼耳をピョーンと跳ねたえにかが獣めいた動きで、割れた温室の壁を蹴った。
ラウレックの神槍の大きさがぐんと膨れ、ヌンチャク状になった得物をえにかはぐるぐると回して見せる。
「ホアチョーッ」
跳ねすれ違い様、無理やり制動を駆けたえにかはふざけた掛け声と共に。
蓄積した疲労にヘタった茎を一閃する。
ぼとん、と化物イチゴ頭が落ち。一瞬で砂になって溶けゆく敵。
「叩き潰せ、憎き苺ってね」
ありもしない銃口を吹く真似をして、えにかはくるんと振り向いた。
「この羽根は示す、踏み出すべき時を! ――今ですっ!」
悠乃の加護の羽根を得て。
ボクスブレスを吐いたたいやきの影から、カイトはガジェットを変形させる。
「苺、合わせられる?」
「もちろんっ!」
力を振り絞って、突撃してくるストロングベリー。
バトルオーラを身体に張り巡らせた苺は、そのまま片手をガードにあげてイチゴ頭へと突っ込んで行く。
「――勇敢なる戦士に戦う力を与えたまえ!」
ばちんと蠢く蔦とオーラが弾けて、力と力のぶつかり合いが衝撃を産み。
ストロングベリーの勢いを、無理やり食い止める。
「人生は舞台、ならばお前に『相応しくない役』を与えようか」
カイトがガジェットの照準を合わせる。
がちん、と氷の歯車が吐き出されてストロングベリーの身を挟み捻る。
彼に与えられたのは『身の丈に合わぬ役』。
ギッ、と軋むような声を零したイチゴ頭を――。
「こんなイチゴこそ、美味しくなさそうですよね……」
「いつまでも戯れてはいられないわ。この氷華を以って、葬送の花としましょう」
……さようなら。
真理のアームドフォートの中で、弾が装填される音が響き。
セリアより凍てつくような冷気が吹き荒ぶ。
ゲシュタルトグレイブに宿った冷気がイチゴの身体を貫くと同時に幾つもの弾が、ストロングベリーの身を凍らせ、一瞬で軋み割る。
ざら、と風に溶けるように消えゆくストロングベリーの身体。
「彼らはカンギの配下か、ロキの配下か……それとも……、何れにしても聞いて答えてくれる相手では無かったわね」
小さな事件であれ、何れは大きな流れへと辿り着くはずだ。
「一つずつ。……確実に潰すわ」
小さく呟いたセリアは、細く細く息を吐いた。
「しかし、筋肉の有るイチゴは変じゃったのう。しばらくイチゴを見る度に思い出しそうじゃ……」
「これからビュッフェやのに?」
「ああー、並ぶイチゴを見る度にそれはちょっと嫌じゃー」
ララは真奈の言葉に、頭をふるふると振った。
●荒れたイチゴ農園
皆が既に移動を開始した後も、残ったえにかは丁寧に丁寧に農園にヒールを重ねていた。
潰されたイチゴは戻る事は無い。
それでも、荒らされた土くらいは丁寧に、丁寧に。
「……しっかし、あのフレジエちゃんもすっかり立派になりましたね」
――だからといって、うちらのシマで商売していいわけじゃないですがね。
目的は分からずとも、ヘリオライダーへ事後に相談すれば何かでてきたりするのだろうか?
「うーん」
分からぬ事を今考えても無駄だと、えにかはヒールを終えた畑を後にする。
●びゅっふぇびゅっふぇこんにちは
「私たちもごちそうになって良いのですか?」
「もちろん。今日はケルベロスの皆さんのおかげで助かったものね、沢山食べて行ってね」
フローネの問いかけに農家兼カフェのオーナーの女性がニコニコと答える。
みずみずしいイチゴの甘い匂い。
積み上げられた鮮やかな赤に覗く緑のヘタ。
タルトの上にかっちりと並んだ赤は胸を張って並ぶ兵隊めいて。
資料を片手に難しい顔をした悠乃と、明るく笑ってケーキを積み上げる甘党の泰地が並んでテーブルにつき。
「わぁ、可愛い! 美味しそう!」
「本当にイチゴづくしだね、見た目も綺麗だし、香りもいいなぁ!」
ふるふると震えるアロアロを抱きしめたマヒナが、ピジョンの横でへにゃっと笑った。
「誘ってくれてありがとうね。わ、イチゴのパンケーキ! イチゴの酢豚も気になるし……、タルトもいいなぁ」
「マヒナ、イチゴ好きそうだったから、ぜひ連れて来たいと思ったんだ。……そんなに食べられるかい?」
きらきらと瞳を輝かせるマヒナに、ピジョンが首を傾ぎ。
「えへへ、選んだもの分けっこしようか?」
「いいアイディアだ」
二人は揃って並び、気になるメニューの物色を始めた。
「どれもこれも綺麗で美味しそうだよね」
桜色のリップは秘密のおめかし。
たっぷりと皿にスイーツを盛り付けたあかりが、手帳にスイーツのスケッチに夢中な陣内の皿の上にスイーツをおすそ分け。
「ああ。服やメイクで違う表情を見せてくれる、可愛い女の子そのものだね」
「絵に残しておきたいって言うのも分か……、え?」
「……ふふ、なんでもないよ」
彼女の桜色の唇を見つめて、一粒摘んだイチゴに口づけする陣内。
「……もう、ズルいなあ」
彼は、いつだってずるい。
あかりの長い耳がぴこぴこ揺れる。ああ。染まった頬はイチゴみたいになっちゃってるかもしれない。
「たいやき、たいやきや、ちょっと落ち着いて」
皿を前に興奮したたいやきが、ぴょんぴょんと跳ねまくっている。
カイトがいちごの挟まった鯛焼きを皿に盛り付けている時なんて、興奮しすぎて鼻からアンコとか吹き出さないかと心配しないばかりのテンションだった。
「はい、もー、じゃあ手をあわせて……あっ、もう喰ってるコイツ!」
「♪」
幸せそうなたいやきの笑顔、プライスレス。
「イチゴ……ビュッフェ……」
和菓子に続き、イチゴスイーツ。
図らずとも、再び甘い物に引き寄せられる。
それもまた、セリアの運命なのかもしれない。
「ふふ」
甘酸っぱいイチゴに、バターの風味がしっかりとしたタルト生地。
甘すぎないカスタードクリームが三位一体となり、薫り高いイチゴの紅茶がタルトの味を引き立てる。
とびきり甘いタルトに、美味しいお茶。この二つが揃えば善き一日だった、……そう思えるのだ。
表情を緩めたセリアは、戦闘時の緊張した表情とは違い年相応の少女に見える。
「あら、セリア。横に座っても良いかしら?」
「セリアどの! なつみどのに勧められたのじゃが、このリゾットもイチゴらしいのじゃー。わらわイチゴのリゾットも初めてじゃのう」
「……どんな味なのです?」
ララと真理と一緒に、歩いてきたなつみが手をふりふり。
「どうぞ。……イチゴリゾット……?」
「ふっふっふっ、アリガト! 何を隠そう取りすぎちゃったのよね。それに人数が多いと沢山食べられるわシェアしましょ、シェア! 真理、真理、先に食べていいわよ!」
セリアは首を傾げ、タルトをもう一口。
その横にかけたなつみは、勝手にスイーツを切り分けはじめ。真理の唇の前に。
「ん、美味しいです」
なつみに半ば無理やりクロテッドクリームたっぷりのイチゴマフィンを一口与えられた真理は、こくんと飲み込み意見を呟き。
「……イチゴの酸味がトマトみたいなのじゃ!」
「えっイチゴなのに?」
「えっ?」
無言でリゾットを口に運んでいたララが長い耳をぴょん、と立て。皆が首を傾げた。
「マカロン、あーん」
敵の事を忘れよう、とマカロンにイチゴマカロンを苺はあーん、してあげる。
「苺、苺、イチゴたべさせてあげるわ、はい、あーん」
その横で真奈が楽しげに笑いながら、更に苺に練乳をかけたイチゴ食べ比べセットをあーんしてやる。
「しっかしあれやな、苺にイチゴってイチゴイチゴでゲシュタルト崩壊しそうやな」
「何か縁を感じちゃうよねー」
もぐもぐ。
咀嚼しながら頷く苺。
「でも、イチゴ農家さんの所に現れるなら次の予想もできそうだよね」
「せやなあ、……暫くは警戒が必要かもしらへんなあ」
「でもでもっ、今日はたっくさん色々なものを食べちゃうもんねっ!」
「おばちゃんはほどほどにしとくなぁ」
皿を持って立ち上がった苺の後ろをついて行くマカロン。
真奈は元気やなあと微笑み、その背を眺める。
「ああーっ、たいやき待て、ステイ! ステイ! 食べ過ぎ! 詰め込みすぎ!」
詰め込みすぎて泡をふくたいやきに慌ててヒールをするカイト。
「う~ん、どれもオノ!」
美味しい、と微笑むマヒナの横で、ピジョンは怪訝な顔。
「……これが、苺の酢豚?」
「意外な組み合わせだけどけっこう美味しいよ?」
難しい顔をしながら酢豚を口に運ぶピジョンをじっと眺めるマギー。
「……うん! 悪くないけど僕はタルトの方がいいや!」
無駄な満面の笑みを浮かべたピジョンに、そーう? とマヒナが首を傾いだその瞬間。
ババーン!
「たのもーーッ!」
満を持して開く扉。
「酢豚はおにくたっぷりだろうな! お野菜ごろごろだろうな! 苺は熱が通ってるだろうな!?」
生のイチゴ絶対に許さない明王こと、えにかが元気に現れてビュッフェの皿を構えた。
許さない理由は――ただの好き嫌いだ!
作者:絲上ゆいこ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年5月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 3
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