
●人の影踏み躙り
東京都国立市にある、国営の大きな公園。
大規模な公園には、春の花が咲き乱れ、市民の方の他、子供を連れて遊びに来た方達等、多くの人が訪れている。
そんな休日の一時を楽しんで居る所に……。
『……ウ、ゥゥゥゥゥ……』
何かは分からないけれど、稼働音の様な物が聞こえてくる。
ただ、それを気にする人は殆どおらず、子供の声に掻き消されてしまう。
……そして、幾度かの稼働音の後。
『グゥゥォオオン……』
と、更に一際強い稼働音と共に……公園のど真ん中の土中から姿を現わす巨大ロボット型ダモクレス。
7mの巨躯と共に立ち上がったダモクレス。
周囲の人達が悲鳴を上げて逃げる中、ダモクレスはまるで蟻を脚で潰すが如く、歩を進め始めた。
「ケルベロスの皆さん、集まってくれたッスね! それじゃ、早速ッスけど説明させて貰うッスよ!」
と、黒瀬・ダンテは、集まったケルベロスへ力強く挨拶すると早速。
「東京の国立市に、大戦末期にオラトリオによって封印された巨大ロボ型ダモクレスが登場したんッス!」
と公園の案内パンフレットをその場に置きながら。
「この巨大ロボ型ダモクレスは復活するなり、すぐに暴れ出してしまう様なんッス。どうやら復活したばかりの巨大ロボ型ダモクレスは、グラビティ・チェインが枯渇している為に、戦闘力は大きく低下している様なんッス」
「でも、これを放っておけば周りの人達を次々と殺戮し、グラビティ・チェインを補給してしまいかねないッス。力を取り戻した巨大ロボ型ダモクレスは、更に多くのグラビティ・チェインを略奪した上で、体内に格納されたダモクレス工場で、ロボ型、アンドロイド型のダモクレスの量産を始めてしまうッス」
「そんな事、させる訳には行かないッスから、皆さんの力を借りたい、って事ッスよ!」
「ちなみにこのダモクレスは、稼働から7分経過すると自動的に魔空回廊に撤退する機能の様な物が組み込まれている様ッス。逃げ込まれると、魔空回廊が開く前に巨大ロボ型ダモクレスを撃破して欲しいんッス!!」
と、そう言うと共にダンテは、詳しく状況説明を始める。
「今回のダモクレスが現れるのは、国営の巨大な公園ッス。そのど真ん中にある原っぱの地中を割り裂いて姿を現わす模様ッス!」
「周りには高い建物とかもないッスけど、特に何処かが弱点、という事も無い様ッスね」
「グラビティ・チェインが枯渇しているから、巨大ロボ型ダモクレスは本来の攻撃力や防御力を発揮出来ず、半分以下に減っている様ッス。しかしながら、一度のみ、フルパワーで攻撃を行う事が出来る様ッスから、その攻撃だけは喰らわない様に注意が必要ッス!」
「ケルベロスの皆さんが到着して、2、3分後にはダモクレスが現れる様ッスから、余り時間的余裕は無いッスけど、周りの人達を避難誘導する位は可能ッスから、そこは手分けして、周りの人達を避難させて欲しいッス!」
そして、ダンテはもう一度皆を見渡して。
「何も悪い事をしてない一般人の方々を殺すデウスエクスは許す事は出来ないッスよ! ケルベロスの皆さん、どうか宜しく頼むッス!!」
と、拳を握りしめたダンテが、皆へ気合いを入れるのであった。
参加者 | |
---|---|
![]() 不知火・梓(酔虎・e00528) |
![]() 千歳緑・豊(喜懼・e09097) |
![]() 明空・護朗(二匹狼・e11656) |
![]() レヴィアタン・レクザット(守護海神龍・e20323) |
![]() 金元・樹壱(修行中魔導士・e34863) |
![]() 不入斗・葵(微風と黒兎・e41843) |
![]() 弘明寺・一郎(突撃取材リポーター・e44533) |
![]() 陽月・空(陽はまた昇る・e45009) |
●憩い妨げし
東京都国立市に立つ、国営公園。
春の花が咲き乱れており、市民の憩いの場……そんな休日の安らぎの一時を楽しむ中において、突如聞こえてくるは稼働音。
「デカ物め、また出たなぁ」
と不知火・梓(酔虎・e00528)が、咥えた長楊枝をプラプラさせながらぼやくと、弘明寺・一郎(突撃取材リポーター・e44533)も。
「ええ。平穏なこの公園からダモクレスが割れて出てくるとは……自分も何度か聞いた話ですが、にわかには信じられないであります」
と、ドローンカメラを二機背後に飛ばしながら、こくりと頷く。
二人の言う通り、ダンテから予知されたのは、この場に出てくるという……巨大なロボット型ダモクレス。
巨躯で以て、目の前のものを次々と拳で叩き潰す。
そして、7分という制限時間を越えたと共に、直ぐに其の場から消え去ってしまう……という厄介な行動パターン。
「それにしても、巨大ロボですか……ロボはカッコイイので憧れますけど、ね……」
「そうだね。でも、今回の相手は逃がしたらもっと被害が広がっちゃう相手……そんなの、させない。絶対にここで食い止めるんだから!」
「そうですね。これが人々の脅威になるなら放ってはおけません。必ず倒しましょう!」
金元・樹壱(修行中魔導士・e34863)と不入斗・葵(微風と黒兎・e41843)が拳をぐっと握りしめる。
と、そんな二人の言葉に、明空・護朗(二匹狼・e11656)が。
「……でも、倒すにしても体力が多いんだっけ? 中々体力が減らない相手なのに、7分の制限時間で倒さないと行けないだなんて、面倒だね」
肩を竦める護朗の傍らで、オルトロスのタマもこくっ、と頷く。
そして、一度空を見上げたレヴィアタン・レクザット(守護海神龍・e20323)が。
「だが、敵は力の枯渇ゆえ、攻撃力は高くは無い様だ。しかし、だからと言って手を抜いて良い相手、という訳でも無い。護朗の言う通り、厳しい時間制限もあるからな。逃げ切られてしまえば、後に大きな被害へと繋がってしまう事は間違い無いだろう。好きにやらせる訳にはいかない。ここで決めさせて貰おう」
そんなレヴィアタンの真剣な言葉に対し、陽月・空(陽はまた昇る・e45009)が。
「おふとんは気持ちいい……終わったら、ご飯を食べてお昼寝の時間。だから、頑張る……」
何処かふわふわっとした言葉を紡ぐ空に苦笑しつつ、梓が。
「はは。まぁ何にせよ俺はでかいのとやれるのは楽しめるから良いんだがなぁ。いつも通り、スクラップにしてやるとするかねぇ」
とニヤッと笑うと、それに千歳緑・豊(喜懼・e09097)も。
「ああ、そうだね。聞いた話によると、見た目は及第点といった所だろうが、実際の所は視てみないと何とも言えないか。という訳で早々に仕留めるとしよう」
と頷き合い、ケルベロス達は急ぎ、その場へと向かうのであった。
●風を傷付け
そして、公園に到着したケルベロス達は、辺りを見渡す。
芝生の上にごろんとなっていたり、ピクニック気分でお弁当を広げていたり……のんびりとした時が流れている。
「ふむ……まぁこれこそが、一般人にとっての幸せ、という事なのかな?」
と、何処か余裕を漂わせた豊の言葉に、護朗が。
「ん……多分、だね。この平和を、どうにかして護らないと……」
平和な時間を過ごす一般人を、守りたい……その確固たる意志と拳に込める護朗が、早速。
「皆、のんびりしている最中にごめん! ここに、巨大なロボット型ダモクレスがやってくるんだ! 急いで、公園の外から避難して!」
護朗の突然の声掛けに、キョウフに陥り、慌てふためく人達。
でも、そんな一般人を落ち着かせるように葵や樹壱が。
「ここはこれから戦闘になるの。でも、葵たちが絶対にみんなの憩いの場を守るから、だから公園外に避難してね!」
「警察の方々、警備の方々も、お手数ですが避難誘導をお願いします。公園の中に立ち入らせない様に封鎖もお願いします」
と、割り込みヴォイスや隣人力をフル活用。
その一方で、逃げ遅れ気味の老人や、足腰の弱い人達等に対しては、レヴィアタンが手を差し出して。
「大丈夫か? 余り時間が無いのは確かだが、取りあえずこの原っぱから離れてくれ。近づかせない様にはするさ」
と声を掛け、草原地帯からの避難を促し、それに豊も。
「そうだね。十分時間はある様だから、前の人に続いて避難しなさい。取りあえず、玉川上水の方に向かえばいいと思う」
と声掛けて避難をさせる。
……そして一般人が避難していく後ろ姿を映しながら、一郎が。
「さて……中継、繋がっていますでしょうか? はい。では、早速……皆さん、弘明寺です。本日も、現場から生中継でお届けさせて頂いております!」
とマイクを手に握りしめ、実況中継を始める。
勿論、ただ実況している訳では無く、一応……逃げ遅れた一般人がいないかを確認しながらの生中継である。
そして、ケルベロス達が避難誘導を開始して2分後。
『……グ、グゥゥゥ……オオオオ!』
響き渡る稼働音と共に、地を割り裂いて姿を現わす巨大ロボット型ダモクレス。
遥かに空高い体躯は、凄い威圧感を醸し出している……一歩、二歩、自然と足が後ろに寄ってしまうものの、すぐに気を取り直し。
「引き下がる訳には、いきません……必ずやここで、討ち倒してみせます!」
拳を握りしめた樹壱、後方を一度見渡し……ほぼ一般人の避難も終えてることを確認すると。
「始めます。この一撃で、貴方を凍らせてあげますよ!」
と、樹壱が初撃の達人の一撃で、その脚部めがけて一撃。
無論、巨躯を誇るダモクレスは、その攻撃が効いた様には見えないのだが……それにも負けず、更に一郎が。
「それでは、これからケルベロスの仕事の始まりですよ! みなさん、お見逃し無くっ!」
とカメラ越しの視聴者をもり立てつつ、バスタービームを放ち、プレッシャー効果を付与する。
そして……更にジャマーの葵が。
「いくよっ!」
と気合いと共に、禁縄禁縛呪を放ち、捕縛効果で縛り上げる。
中衛、後衛の行動に対し、巨大ロボットダモクレスは。
『……ウウォオオ……!!』
と、唸り声を上げながら、その腕を振り落して攻撃。
勢いのある攻撃を、ギリギリの所で回避するレヴィアタン。
そして、地面に拳がめり込んだ所へ、入れ替わる様にレヴィアタンが旋刃脚で蹴り掛かり、更に護朗とタマはライトニングボルトとソードスラッシュで攻撃。
更に、クラッシャーが。
「……さて、どんなもんかねぇ?」
と長楊枝を吐き捨てながら梓が接敵し、雷刃突の一撃を叩き込むと、連続して豊が。
「手早くいこう」
と短く呟き、クイックドロウ。そして空も。
「相手は格上だしね。プレッシャーで弱体、は大切」
と言いつつのスカルブレイカー。
確実にバッドステータを付与し、その動きを鈍らせていくが……巨躯から繰り出される攻撃に変化は見られない。
ただただ、目の前に立ち塞がるケルベロスを殺す事を目的として、拳を振り降ろし続ける。
ケルベロスに当たらなければ、その一撃、一撃が地面を抉る事となり、ボコボコに。
「出来れば、余り荒れ放題にはさせたくは無いんだけど……仕方ないか」
と、護朗がぼやく。
勿論ぼやこうにも、それをダモクレスが聞き届ける訳などあり得ないのだが……。
そして、ケルベロス達は決して手を抜く事無く、猛攻。
「ドラゴンの幻影よ、敵を焼き払いなさい!」
と樹壱のドラゴニックミラージュに、一郎のフロストレーザー、葵の『暴走する殺戮機械』で、バッドステータスを付与する一方、梓の絶空斬、豊のクイックドロウ、空のスターゲイザーが高い攻撃力で一気にダメージを追加。
又、敵の攻撃は護朗、タマ、レヴィアタンのディフェンダー陣が立ち回り、受け止める事で、どうにか戦線を維持し続ける。
三分、四分……確実に時計の針は進み、6分経過したその瞬間。
『……!!』
動きに大きく変わりはないが……軽く蒸気を噴出したダモクレスは、一気に動きが機敏になる。
「危ないですよ!」
と、咄嗟に一郎が皆に声を掛け、一端退避。
地面に深々と突き刺さる拳……どうにか、直撃は避けられた様である。
と、フルパワー攻撃を躱されたダモクレスは、攻撃の後、一気に動きが鈍っていく。
そして……。
「今迄眠っていたのなら、そのまま眠っていたら良かったのに……夢の世界は心地よいよ」
空の言葉……その言葉と同時に放つ『呪言霊斬』。
その一閃がダモクレスの脚部を一刀両断に撃ち砕くと、更に梓が。
「当たりゃぁでかいんかんなぁ」
と梓の『試製・桜霞一閃』、豊のフレイムグリードがダモクレスを燃やし尽くす。
そして、七分目。
僅かに開きつつある、魔空回廊。
「逃がさない……!」
唇を噛みしめ、至近距離からの獣撃拳を叩きつけた護朗、そしてレヴィアタンのファナティックレインボウ。
さらに樹壱が。
「トゲトゲのバールです、これは痛いですよー!」
と撲殺釘打法のを叩きつけていく。
そして……梓が。
「そら、終わりにしてやろうか!」
と梓が宣言すると共に、渾身の雷刃突を叩きつけると……ダモクレスの身体は、閃光に真っ二つに裂かれるのであった。
●風の薫り
そして、無事にダモクレスを討ち倒したケルベロス。
ギリギリ7分という制限時間以内に倒した事に、一先ずは安堵。
「斬り結ぶ、太刀の下こそ地獄なれ。踏み込みゆかば、後は極楽、ってなぁ」
と鎌を振り払いながら、呼吸を整える梓。
そして、改めて周りを見渡し、状況の確認……当然のことながら、暴れたダモクレスのせいで、地面の芝生は剥げてしまい、隆起している所も多数。
……その様な状態に、一度溜息を吐くと。
「日本国外で封印されたものはどうなっているのだろうね。復活の心配もないから良いんだが」
と豊の言葉に、一郎が。
「そうですね。と……私達は無事ダモクレスを倒しました。この様に自然豊かな土地を破壊するダモクレスを、私達ケルベロスは決して許す事は出来ません」
と、ドローンカメラに向けてマイクを通し、戦後のリポートをする一郎。
スーツも所々着崩れてはいるが、それだけ激しい戦いであった、という記でもある。
そして、レポートしている中、葵、樹壱らも。
「さて、と……桜の綺麗な公園だから、ちゃんと治しておかなきゃね!」
「そうですね。色々とダモクレスが壊してしまいましたから、一つずつしっかりと回復しないといけませんね」
と立ち上がり、回りのダモクレスによって刻まれた被害を一つ一つ修復していく。
そして、一通りの修復と、レポートが終わる頃には……少しファンシーになってしまったが、再びの憩いの時が広がる公園の姿。
「……」
そんな、憩う人達の姿に視線を配せながら、レヴィアタンはこくり、と頷く。
そして、護朗も、タマと一緒に。
「お疲れ様、タマ」
その言葉にタマもこくっ、と頷いて……戦闘後の、憩いの一時を楽しむのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
|
種類:
![]() 公開:2018年5月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
|
||
![]() あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
![]() シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|