廻天ホロスコープ

作者:つじ

●ミスフォーチュン
 不法投棄されたゴミの山に、拳程度の大きさの石が落ちてくる。透き通った光はまるで宝石のよう。だが実際のところそれは力尽きたデウスエクスの結晶、所謂『コギトエルゴスム』である。
 機械仕掛けの足を生やしたそれは、ゴミの山を行ったり来たりした後、やがてその姿を消した。

 代わりに現れた、ものは。
 機械的なヒール効果によるものだろう、辺りのゴミが組み合わさり、球体を形作る。描かれているのは12の星座、そして球体の上部……透明なドームの内側には、ルーレットらしきものが見え、本体が転がるのに合わせてガラガラと音を立てている。
 ――星座の位置にコインを入れると、おみくじが出てきてルーレットが回る。元の役割は、きっとその程度のものだったのだろう。
 直径3mを超える巨体を手に入れたダモクレスは、占う相手を探すように、人里に向けて転がり始めた。
 
●星占い?
「えーと、9月6日はおとめ座でしたっけ。ちゃりーん」
 白鳥沢・慧斗(オラトリオのヘリオライダー・en0250)がおみくじ器にコインを投入する。この手のものの流行りはとっくの昔に過ぎているが、喫茶店やらレストランやらでたまに見かけることもあるだろう。
 ルーレットが回ると同時に排出された紙を広げる。
「お、大吉だそうですよ!」
「ふふん、そうだろうとも」
 出てきた結果に、五条坂・キララ(地球人のブラックウィザード・en0275)が胸を張ってみせた。
「ルーレットの数字は15ですね。15番のあなたは、『この依頼に参加すべし』だそうですよ!」
「……うん?」
「というわけでダモクレスの出現が予知されました! 皆さんには現場の山間部に向かって、このダモクレスが人里で暴れ回る前に撃破してきていただきたいのです!!」
 ものすごく強引な勧誘をかましつつ、ヘリオライダーは集まったケルベロス達にそう告げた。
「敵ダモクレスはこのおみくじ器が巨大化したような形状となっています。球状をしているので、転がって移動する感じですね!」
 攻撃方法は移動を兼ねた転がっての体当たりが主軸になっている。また、描かれた星座の加護を得ての回復と、おみくじらしきものを射出しての攻撃を行ってくるらしい。
「おみくじを、射出……?」
「射撃武器みたいなものですね。内容もちゃんと書いてあるようですから読んでみても良いですよ!」
「当たるのか、それは?」
「その辺は試してみてください! それから、射出されたおみくじには何か付随効果があるようですね。ただ、何が起きるかは一定でないようなので……」
「なるほど。そんなところまで運試しになる、ということか」
 微妙に納得がいかない様子のキララの言葉に、慧斗が頷いて返した。
「敵の予想進路上に、木々の少ない丘があります。そこに降下し、迎え撃つ形を推奨します。近隣住民への避難手配はこちらで行いますので、存分に戦ってください!」
 最後にそう付け足して、少年はケルベロス達を送り出した。
「ご武運をお祈りします! 皆さんよろしくお願いいたしますよー!!」


参加者
草火部・あぽろ(超太陽砲・e01028)
サイファ・クロード(零・e06460)
天喰・雨生(雨渡り・e36450)
天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)
名雪・玲衣亜(不屈のテンプレギャル・e44394)
リンクス・リンクス(山猫・e44555)
ベルローズ・ボールドウィン(惨劇を視る魔女・e44755)
終夜・帷(忍天狗・e46162)

■リプレイ

●遭遇
 太陽が沈んでしばし、日中の陽気が薄まった頃に、ケルベロス達は所定の場所に降り立った。
「――避難誘導は任せて良さそうだな。しばし待機か」
 飛び去っていくヘリオンを見送り、天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)が呟く。
 そこは小高い丘の上。周りより木々がまばらな分、空からの明かりも届いていた。
「わたしの星座はカニ座、だったかしら」
 見上げた先の月と星、それらから連想するように、リンクス・リンクス(山猫・e44555)が小さく口を開く。
「ほほう、興味ありかなリンクス君」
「……占いが気になってる訳ではないのよ、本当よ」
 耳聡くそれを捕まえた五条坂・キララ(地球人のブラックウィザード・en0275)に、リンクスは気まずげに返した。
「え、せっかくだし占って欲しくない?」
 こういったものに親和性の高い女子高生、名雪・玲衣亜(不屈のテンプレギャル・e44394)が同意を求めてはみるが……。
「生憎と占いは信じない質なんだ、僕。自分のことは自分で決める」
「オレも、医者を志す身としてはちょっとね」
 天喰・雨生(雨渡り・e36450)とサイファ・クロード(零・e06460)からはすげない返事が。終夜・帷(忍天狗・e46162)もまた、内心はともかく流れ上そっと目を逸らした。
 一方の草火部・あぽろ(超太陽砲・e01028)も、神社で太陽の巫女を務めるという立場上懐疑的。
「俺からすれば、機械から出るミクジはイマイチ信用ならねーな」
「ゴメン、占いとおみくじの違いがよく分かんないんだけど……」
「クロードなのに」
「玄人なのに?」
「今それ関係ないよね!?」
 同意を得られず口を尖らせた玲衣亜と何故かドヤ顔のキララは置いておいて。
「今回はルーレット式のおみくじ器ですからね。神事とも占星術とも言い難いのは確かです」
 とりなすように、ベルローズ・ボールドウィン(惨劇を視る魔女・e44755)が言う。
「アタシそれ見たことないんだケド、流行りとかあんのかなー」
「以前はレストランや喫茶店なんかに、よく置いてあったとは聞きました。時代の流れなのか、今では置いてあるお店も随分減ったとか」
 かつては人々を一喜一憂させ、会話に花を添えてきたのだろう。そんなベルローズの言葉に、玲衣亜は頷いて、『そちら』に視線を移した。
「それってあんな――」
「いえ元のサイズは違いますよ、さすがに」
 木々をへし折りながら迫りくるのは、巨大な球体。

●コイン投入
 ダモクレス、『オラクル』。巨大なおみくじ器の形をしたそれは、待ち受けるケルベロス達を認識したか、その侵攻を止める。
 透明なドームの内側で、周りを探るようにルーレットがカラカラと回った。
「一風変わったダモクレスだね」
「……確かに、奇妙な者もいるものだな」
 雨生の言葉に水凪が頷く。
「とはいえ放置できることでもない。これ以上害をなさぬよう、ここで終わらせねば」
 展開されたエクトプラズムにより、前衛の状態異常を『予防』。それに合わせてサイファがオウガメタルの金属粒子を後衛に散布する。
「不離一体の影――捉えた」
 夜闇を彩るそれらを切り裂き、浮かび上がった敵の影を帷の手裏剣が縫い留める。ぎしり、と敵の動きが停滞したそこに、踏み込んだのは高下駄の一歩。浮かび上がった半身の魔術回路を伴い、雨生が喰霊刀を突き立てた。
「!!」
 攻撃を受けたダモクレスはそれに反応して前進を開始。目前の雨生を弾き飛ばしつつ、勢いをつけてケルベロス達に襲い掛かる。
「なっ、速い――!?」
「へーきだって、コレそっちまでいかないから!」
 のけぞるキララの前方で、ディフェンダーを務める玲衣亜がそれを妨害。身を以ってコースを逸らし、その後ろ姿にバスターライフルを撃ち込む。
「おーい、動くようになったついでに、アタシを占ってよ!」
 ゼログラビトンの効果で敵の勢いを削ぎつつ、ついでにアピールの方も欠かさない。
「逞しいな……」
 それに対し、若干腰の引けているキララの様子を見て取り、同列に並んだリンクスと帷が声をかける。
「今度は、あなたの番」
「ああ、得意の魔法を見せて欲しい」
「いや、でも……」
 煮え切らない様子のそこに、あぽろもまた発破をかけるように。
「出発前にミクジも引いたんだろ?」
 持ち出したのは、この作戦の説明時の一幕。キララの引いたそれには『この依頼に参加すべし』と書かれていた、はず。
「つまりアンタが必要ってワケだ、頼りにしてるぜ!」
「一緒に戦えて、とても心強いわ」
 さらなるリンクスの言葉もあり、うぐ、とキララが言葉に詰まる。そして、「気を遣わせて申し訳ない」とか、「また助けられてしまった」とか、その辺りの言葉に替えて、吼えた。
「ああ、勿論だとも! 任せてくれたまえ!」
「それでは先導します。合わせてくださいね?」
 同じく禁呪の使い手であるベルローズの手で、ネクロオーブに昏い火が灯る。ディスインテグレート、不可視の球体が敵を抉るのに続き、水晶の炎がその周囲を切り裂いていく。
「上出来!」
 そして装甲の削れたそこに、あぽろの刃が大きく三日月を描いた。

 転がる敵をいなしつつ、ケルベロス達はダモクレスへと爪を突き立てていく。その質量と、体当たりという単純な攻撃方法から、近づくのもまた危険が伴うわけだが。
「『無貌の従属』、蝕みなさい」
 ベルローズの白い指が魔導書を繰るのに伴い、現れた粘菌が絡みつく。さらに上方から、まばらな木々を足場にした帷が舞い降り、日本刀を一閃。両断には遠い手応えにも表情を変えず、味方の動きを察知した彼は敵の身体を蹴りつけて再度距離を取る。
 入れ替わりで着地したリンクスは、足元――先の斬撃の傷跡に、鉤爪を突き立てて雷撃を流し込んだ。
「固い……」
「あれじゃ効いてんだかさっぱり……ん?」
 続く回転に巻き込まれないよう離脱したリンクスを背に庇い、玲衣亜がサイコフォースを仕掛けるべく敵に集中したところで、それを発見する。
 ガチャン、という音と共に、敵の身体に描かれたおうし座の図形が輝く。
「――そこか!」
 続けて射出された巻物――スクロールを、サイファがその身を以って受け止めた。グラビティの重い衝撃が彼を襲い、弾みで開かれたスクロールが炎を発する。
「熱っつぅ!?」
「……なるほど」
 そういうシステムか、と納得する帷の横で、水凪が回復のために大自然の力をサイファへと接続する。
「妙な攻撃だったが、無事だろうか?」
「ああ、玄人のオレはこの程度じゃ動じない……この中でおうし座って居る?」
「あ、多分私のです」
 他に該当者がいなそうなのを見て取り、ベルローズが小さく手を挙げる。開かれた紙の一番上にはでかでかと『吉』と書いてあり、ダモクレスの上半分のドームの中では、回ったルーレットが出目を示していた。
「何でしょう、変なことが書いてないと良いんですけど……」
 ――ベルローズ。吉、あなたのセンスや才能、人柄が高く評価されるでしょう。おごらず、期待に応える言動を心がけましょう。『3:複数の人に思いを寄せられることがありそう』。
「ええ……?」
「お、やったじゃんベルローズ」
「攻撃ついでに占いか、律儀なモンだぜ」
 戸惑う本人を他所に、一部周りが盛り上がりはじめる。
「今度はこっち! アタシの番っしょ!」
「へへ、大吉だったら何してくれるんだ? ちょっとワクワクしてきたじゃねえか」
 そんな様子に溜息を吐きつつ、雨生は敵に追撃をかけるべく地を蹴った。

●当たるも八卦、当たらぬも八卦
 なおも戦闘は続く。しかし先程までと大きく違うのは、合間に占い攻撃が混ざり始めたことだろうか。若干浮足立ってきたメンバーに釘を刺しつつ、水凪が癒しの風を展開する。
「皆、油断はしないように」
「当然だね」
「心配には及ばないよ、水凪君!」
 傷を癒しながら転がる敵に先回りし、雨生が手にした鎌を振るう。透き通った刃が乱れ舞うのに続けて、キララが虚無の球体を押し付けた。
「人の前に、まずはテメェ自身を占うのはどうだ? 今日を生き残れるかってな!」
 不敵なセリフと共に、あぽろのお守りから生じた御業が球体の動きを制限するように包み込む。とはいえ自己診断機能はないのか、ダモクレスは抵抗するように別の者を狙い、攻撃を放った。
「来た来た、今の星座なんだっけー?」
 待ってましたとばかりに庇いに入った玲衣亜が、身体を張ってそれをキャッチ。描き出されたのはふたご座だったが、該当者は玲衣亜を含めて四人居た。
「なんか多くない? まー狙われてたのは雨生だと思うけどさ」
「僕か。……占いとか興味ないんだけど」
「でもほら、敵の攻撃手段ですから?」
「まあ、そうだね。精査は必要だ」
 あっさりとベルローズの言葉に頷いて、解析の名目で雨生が結果を確認にかかる。
 ――雨生。吉、ようやく認められたと実感できるような出来事がありそう。一方、あなたが後輩の成長を確認することもあるでしょう。『5:悪知恵が働きがち。裏目に出る可能性があります』。
「……ほう」
 何となく該当事項を探してしまうのも、無理からぬことか。
 その後も散発的に、時には連続して、スクロールが射出される。
「あー、トバリ。うお座で合ってる?」
 飛んできたそれを受け止め、凍傷気味になりながらのサイファが問う。見上げたそこ、樹上には、敵に螺旋掌を打ち込んだ後の帷が着地していた。
「もらおうか」
 ――帷。中吉、「もっと頑張ろう、レベルを上げたい」という気持ちが湧いてきます。それなりにプレッシャーはありますが、思い切って前に進んでみてください。『32:旅立いたってよし』。
 ふむ、と。特に動じた様子もなく、帷はそれを受け入れるように瞑目した。
 静かなそれを後ろにおいて、特注のでかいコインを持参したソルヴィンが駆け抜ける。
「そこなおなご。わしが戦い方の手本を見せてしんぜよう!
 いくぞいダモクレス! わしの! 今年の! 恋愛運はどうなんじゃあああああ!?」
 ふたご座の投入口に見事ダンクシュートを決めたソルヴィンは、反撃のスクロール射出を受けて転がっていった。
「戦いにはこれくらいの勢いが必要なのか……」
 感心しているキララはともかく。
 ――ソルヴィン。小吉、恋愛運は盛り上がりを見せるでしょう。ただし、心配なのはあなたの浮気心。いろいろな異性に目移りしないこと。『33:とがったおしゃれが好評』。
「なるほどなあ……そんな感じでオレの春がいつ来るか、とかも分かっちゃうわけ?」
「サイファのはこれじゃない? 凶だって!」
 ――サイファ。凶、肝心の一歩を踏み出すのに迷いそう。できるだけ自分のカラに閉じこもらず、心配してくれている人に胸の内を聞いてもらいましょう。
「そ、そっかぁ……」
 あちゃー、といった感じで玲衣亜の読み上げた結果に、あからさまな反応が返る。その続きの文面は、横から覗き込んだキララが継いだ。
「ああ、けれど……恋愛については、『春遠からず、考えすぎないこと』だそうだ」
 彼女は不自然なくらいにっこりと笑って、『18:恋愛運は荒れ模様。考えすぎないこと』という文面を握り潰した。

 こちらも、ディフェンダーが受け止め損ねたスクロールを捕まえ、ダメージを受けつつも封を解く。
 ――リンクス。末吉、物事を悪いほうへと考えてしまがち。鏡に向かって笑顔をつくってみてください。笑顔が最高の武器になります。『12:情報交換で金運アップ』。
「笑顔……ね」
「ほら、お前も占ってもらえー!」
 再度飛んできたスクロールを、じたばたしているハリネズミ型のファミリアを盾に迎え撃つ。展開された紙が何だかすごい勢いで絡みついたりもしたが。
 ――玲衣亜。大吉、腰を低くすることを心がけて過ごすと幸運。強力なサポートを得られます。周囲に積極的に声をかけてみましょう。食事やお茶に誘ってみるのもおすすめです。『29:一見、通らないと思われる提案ほどうまくいく』。
「マジで!?」
 そんなこんなで一喜一憂。反応の大きさは人にもよるが。
「良い結果だったらやっぱり嬉しいし、悪いのが出てたら落ち込んでしまうものよね」
「いや、勝手に占われても迷惑なだけだ」
「リンクス、玄人のオレはこの程度で惑わされたりしないよ?」
「……そうね」
 とりあえず、そういうことにしておこう。雨生とサイファの言葉に頷いて、リンクスはフェアリーブーツで星を描き、反撃にかかった。
「水凪さん、どうかしましたか?」
「いや……」
 ベルローズの問いに、占いの様子を見ていた水凪が言葉を濁す。占い結果を見る者達の反応は様々だが、彼女の場合は少し事情が違う。
 過去の記憶の関係もあり、実際の誕生日が明確ではない。ゆえに、こういうものは一歩引いた目で捉えてしまう。
「ああやって、素直に受け止められるのは羨ましく思う」
「そうですか、でも――」
 ――あぽろ。凶、自分のお気に入りにダメ出しをされたりして、悲しくなるかもしれません。でも、そうしたことをする相手に腹を立てるよりも、「そういう人もいるもの」と、スルーしてしまいましょう。『17:八つ当たりに注意。冷静に』。
「……オイ、これ絶対私情入ってるだろ」
 占いと御神籤、言うなれば商売敵からのそれに、あぽろが睨みを効かせる。直後、スクロールが追撃の大爆発を起こした。
「――気休め程度に見ておくのが正しい気もします」
 そうかも知れない。複雑な心境を抱えつつ、水凪はメディックとしての役割を果たすために動き始めた。

 結果も一通り出た頃だろうか、回復で敵の手番を使わせる作戦の分、長くかかった戦いも、ようやく佳境を迎える。
「――そっちに行ったよ」
 リンクスの地裂撃によって軌道の変わった、そこに。
「……ここに」
「怨嗟に縛られし嘆きの御霊達よ。ここに集いて、我が敵を貪るがいい!」
 水凪とベルローズの手により展開される死霊魔法。無数の槍と腕が、ダモクレスを縫い付け、絡め取る。そうして動きの鈍った体当たりを、サイファが両手で押しとどめて。
「占いってのも楽しいもんだね。じゃあ、今度はオレがアンタの未来を占ってみようか。誕生日は?」
 サイファの目前で、ドームの中のルーレットが回る。玉は『4』と『6』に順に止まった。
「あ、今日じゃないわけ?」
「製造年月日ってやつだろう」
「なるほど! まぁでも……変わらないか。どっちにしても、お先真っ暗ってやつみたい」
 残念でした、と告げる後ろから、クラッシャー二人が仕留めにかかる。
「おミクジは神社の領分だ! 商売敵め、消し飛すッ!」
 バチバチと力が爆ぜ、あぽろの右手と髪が黄金色に輝く。そして、雨生の飛翔に伴い、大きめのローブが尾を引いて。
「お別れだ。もう一度静かに朽ちていけ」
「外れりゃ大凶、当たりゃ大吉だ! 『超太陽砲』!!」
 渇きをもたらす雨呪の一撃と夜闇を切り裂く眩い光。続くそれらを身に受けて、ダモクレスはその機能を停止した。

●未来の星図
 敵を打ち破り、雨生をはじめ、一同は戦闘痕にヒールを加え始める。そんな中、ベルローズは問題無く使えた『禁呪』に思いを馳せていた。
「それにしても、こんな山中でも……これだけの「惨劇の記憶」が」
 その謎は未だ残ってはいるが、ともかく。
「やっぱり機械じゃ当てにならねえな、あのダモクレスも分かったハズだぜ」
「とりま、そっちもお疲れー」
 胸を張るあぽろの横で、玲衣亜が残骸の中の『おみくじ器』を拾い上げた。
「コレ電源無しでも動くんだ。中身残ってるかなー?」
「キララ、やってみる?」
「いや、草火部神社の方が当たるようだし私は……そうだ水凪君、そっちはどうかな?」
 リンクスの問いから、水凪に話が行く。せっかくの機会だから、と彼女はそれに承諾した。5月30日、ふたご座。それは確かに、今の彼女の誕生日。

 そんな光景から、帷は空へと視線を移した。
 引き当てたのは予言か、運命か、それともただの気休めか。
 人が星の並びから、星座を描き出したように、それも結局の所、受け手の心掛け次第なのかも知れない。
 一時の喧騒は、ケルベロス達の手で鎮められ、夜は静かに更けていく。

 ――水凪。大吉、絶好調。複雑で面倒な用事を頼まれそうな気配はありますが、その先には楽しみがたくさん待ち受けていそうです。『28:ギャンブルや懸賞にツキがある』。

作者:つじ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年5月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 4
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