ヴァニッシュ・イントゥ・ダークネス

作者:鹿崎シーカー

 暗黒の世界に、荒い息遣いと足音が響く。視界は実際タタミ一枚分先すら見えぬ闇に塗りつぶされてこそいるが、ケルベロス暗視力をお持ちの方であれば疾走する人物の判別程度はつくやもしれぬ。暗闇を走る彼女の名はソラネ・ハクアサウロ(暴竜突撃・e03737)。その足元には赤い機械の恐竜が共にある。察しの通り彼女はケルベロスであり、そして今現在はとあるニンジャのターゲットであった。
「グルルルルル!」
 左方向からうなり声! そちらへ方向転換したソラネは手にしたカタナ型チェーンソーを逆袈裟に振る!
「イヤーッ!」
「ピガーッ!」
 鉄をこするような金属音。飛び散る火花が一瞬割断された機械ヴェロキラプトルの輪郭を照らした。機械恐竜破壊!
「ガルルルルル!」
 背後の闇からうなり声! そちらへ方向転換したソラネは上段斬りを振り下ろす!
「イヤーッ!」
「ピガーッ!」
 鉄をこするような金属音。飛び散る火花が一瞬割断された機械ヴェロキラプトルの輪郭を照らした。機械恐竜破壊!
『グァルルルルルルルル!』
 四方を囲むうなり声! 刀を水平に構えたソラネは舞うようにその場で一回転! 弾けた火花が吹き飛ばされる機械ディノニクス四体の姿を映し出すと同時にギルティラがジャンプし、四体にそれぞれ光弾を吐き出した。機械ディノニクス全爆散、同時にソラネが突如感電!
「ンアアーッ!」
 電撃がすぐに静まり、ソラネはその場で膝をつく。右肩甲骨付近に刺さったものを引き抜いて目を凝らすと、それはバチバチと電気を放つ電磁クナイ・ダートであった。険しい表情でクナイを見下ろすソラネの耳を、嘲笑混じりの声がたたいた。
『フン。オモチャめいた機械の子竜でござるか。なるほど、これは実際因果なものよ……』
 顔を上げ、慎重に周囲を探るソラネとギルティラ。だが闇に響く女の声は反響し、居場所が測れぬ。
『だが、感傷も同情もせぬ。貴様は私の獲物であり、まな板に乗ったマグロに過ぎぬ。即ち、肉をさばかれ食われるが宿命でござる。……選ぶが良い。我が下僕たちに生きたまま食い殺されるか、私の手でカイシャクされるか!』
 片膝をついた姿勢で、ソラネは静かに目を閉じた。ここは敵地の真っただ中で、出てくるのは機械恐竜型の召喚獣。敵の姿は今だに見えず、こちらの姿は一方的に見られている。確かに不利な状況だ。しかし環境に文句を言う奴に晴れ舞台は一生来ないという言葉もある!
「ギルティラ、右をお願いします」
 ソラネは意を決して立ち上がり、カタナを構える!
「どちらもお断りします。負けたりしない……必ず勝って、ここを出ます!」
 ギルティラが力強く吠えて返した。姿見えぬ敵対者は二人を鼻で笑い、死刑宣告!
『ならば…………惨たらしく食い殺され死ねい!』
 全方位からうなり声! 闇に紛れた機竜に向かって、ソラネは決断的に刃を振るった。


「むーん……こ、これは……」
 書類から顔を上げ、跳鹿・穫は頬を引きつらせた。
 事は発端は、ケルベロスの一人であるソラネ・ハクアサウロ(暴竜突撃・e03737)。いかなる理由によってか、彼女がとあるデウスエクスのアジトに誘いこまれ急襲を受けると予知されたのだ。
 敵地の真っただ中で、本来はケルベロス八人でかかるべき相手とのワン・オン・ワン。この状況かいかに危険なものであるか、賢明なるケルベロス諸君は既に理解していることだろう。急いで試みた連絡は不通。しかし場所の特定は出来たので、皆には今すぐ現場に向かい彼女を救出してほしい。
 ここで今一度、ソラネがどのような状況に置かれているか、詳しく説明せねばなるまい。彼女がいるのはとある工場の地下空間で、機械の樹木で構成されたジャングルのような場所となっている。
 この場所を占拠し根城としているのは『鬼竜抜刀・スバル』。グラビティ・チェインを編んで機械恐竜に変える力と透明化能力を持った恐るべきダモクレスニンジャである。暗殺・潜伏を専門分野とする彼女は、工場地下空間の入り組んだ地形から一切の光源を奪った上で召喚した機械恐竜をけしかけて敵を翻弄、隙あらば自分の手で決定打を与えるという狡猾な策士だ。
 幸い、機械恐竜はそれほど強力な存在ではなく、せいぜいケルベロスの召喚・降霊系能力で呼び出した手勢と同程度。ついでにスバル自身はソラネの殺害に執着心を見せており、絶対に勝てないと判断しない限り逃走することもないようだ。今回の戦いでは、ステルスを専門とするスバルを如何にして見つけ、捉えるか。それが勝利のカギを握っている。
「こんな状況でずっとは戦ってられないだろうし、急がないとホントにソラネさんが殺されちゃう! なんとかして助けてあげて!」


参加者
十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)
叢雲・蓮(無常迅速・e00144)
レクス・ウィーゼ(ライトニングバレット・e01346)
ソラネ・ハクアサウロ(暴竜突撃・e03737)
テレサ・コール(黒白の双輪・e04242)
カナメ・クレッセント(羅狼・e12065)
一津橋・茜(紅蒼ブラストバーン・e13537)
小鞠・景(冱てる霄・e15332)

■リプレイ

「イヤーッ!」
「ピガーッ!」
 ソラネ・ハクアサウロ(暴竜突撃・e03737)と交錯したラプトルが両断され闇の中に消える。辺りは暗闇。相手の居場所は今だつかめず、反響するしゃべり方故に探るのは困難。加えてけしかけてくる機械恐竜。このままではジリー・プアー(徐々に不利)だ!
「スバル……!」
 つぶやくソラネの足元で、ギルティラが一声鳴いた。同時にソラネは振り向き斬撃で急襲機械始祖鳥を一閃! 続いて前後反転し上から飛びかかるラプトル二体をV字斬り迎撃、さらに地を這うようにして迫る一体を縦に斬り裂いた直後、砕けたソラネの足元から大樹じみた影が噴き出した。ソラネをくわえて闇の空へ連れ去るそれは……ナムサン! 首長竜だ!
「ンアーッ!」
 拘束を脱せんと足掻くソラネ。しかし竜の口は一切開かぬ! 彼女の耳元で響く侮蔑の言葉。
「実際良いザマよな」
 ソラネの目と鼻の先に凶悪なフルフェイスメンポが出現! 『鬼竜抜刀』スバル。機竜の首を駆け上がって来たのだ!
「首は落とし、体は木偶の餌とする! ハイクを詠め!」
 そして読者の皆様は目撃している。スバルの両腕が透明化していることを! これでは太刀筋が見えぬ!
「セー・バイ! イヤーッ!」
 瞬間、ソラネの時間が鈍化した。世界は非常にゆっくり動くが、スバルの両腕は不可視。ソラネの視界にボードゲームの散乱した長机、小さな雑貨店の店内などの光景が次々重なり合っていく。ソーマト・リコール現象……死の風がソラネの髪を揺らした、その時である! 闇に激震が走った!
「何……!?」
 驚いたスバルが手を止め地下空間の天井を仰ぐ。爆炎と粉塵、崩落する瓦礫を貫いて飛び出した一津橋・茜(紅蒼ブラストバーン・e13537)は暗視スコープの視界にスバルを捉えた!
「はいそこ! 見ぃつけた! ですッ!」
 茜が大量のケミカルライトを軽くへし折りスバルに投擲。儚い光を嫌い、機械樹の森へ跳び下がるスバルに朝日じみたまばゆい光が降り注ぐ。粉塵から出た十夜・泉(地球人のミュージックファイター・e00031)は右手を振るい、手首につけた音も無く光る五色五個の鈴を揺らした。
「夜闇に竜の誘いを」
 爆煙から響く咆哮! 泉の背後から現れた星空色の竜は、全身のウロコを朝焼けめいて変色させアギトから出た閃光のビームを放射した。スバルの姿が消滅した光線は森の一部をなぎ払い白夜じみた光を爆発させる。竜の頭上から飛び出したテレサ・コール(黒白の双輪・e04242)は火の輪と化した円環バイクテレーゼをつかんでコマめいて回転し、テレーゼを投げた!
「イヤーッ!」
 飛翔したテレーゼが首長竜の頭を斬り落とす。落下する頭部に雪じみた粒子を散らして着地した小鞠・景(冱てる霄・e15332)は牙と牙の間にヤリに似た銀杖を差し込み、機竜の口を押し開く。竜頭が地面にぶつかる前にソラネの手を取って跳躍した景は穏やかに問う。
「お待たせしました。ご無事ですか?」
「ええ、なんとか。……ありがとうございます。助かりました」
 ソラネにうなずき、肩越しに機械樹の森を見下ろす景。すると森に無数の赤黒い剣閃が走り多量の機械樹を一度に細切れに変えた。積もった鉄クズを跳ね飛ばして顔を出した叢雲・蓮(無常迅速・e00144)がカタナを振りながら叫ぶ。
「ソラネ姉! 景姉! こっちこっち!」
 その時、蓮の背後から飛び出す三匹のラプトル! 空中から蓮に疾駆するそれらを見咎めたソラネは金属の山に手の平を向け緋色の閃光を放った!
「ギルティラ、受け取って!」
 緋色の光は金属山から飛び出したギルティラに命中。勢いつけて着地した機竜の足元から緋色の波紋が広がっていき、積もる金属片を発光させる。蓮が振り向くと同時に光った金属片達が跳躍したラプトル三体に飛翔し真っ向から跳ね返した。弾けた緋の光から現れたのは、貝を背負ったミニチュア騎士団! 吹き飛ばされ地面をバウンドするラプトル達に銃を乱射して爆散させたレクス・ウィーゼ(ライトニングバレット・e01346)は反対の手に持つ羊皮紙を横目で見やる。スバルの顔写真が描かれた紙はひとりでに折りたたまれ方位磁石の形に変化。レクスはコートをひるがえし、針が示した十時の方向に銃を撃つ!
「向こうだ、カナメ嬢ちゃん!」
「ハイ!」
 床を蹴ったカナメ・クレッセント(羅狼・e12065)が赤青二本の剣を抜き、踏み込みからハサミじみて振り抜き斬撃を飛ばす。赤青二条のカマイタチが軌道上の機械樹を一息に貫通し大規模伐採! 亡霊ソフィアのヘッドライトが開拓された森を照らすもそこにスバルの姿無し。代わりに伐採を逃れた左右の木々から新たに二体のラプトルが飛び出しカナメとソフィアに襲いかかった。鋭い爪を振り上げる二機! だが割り込んだアンモナイト騎士団がタックルで押し返し、駆け込んだ蓮とテレサが左右それぞれにイアイ斬撃と跳び膝蹴りを繰り出した!
『イヤーッ!』
『ピガーッ!』
 ラプトル寸断&粉砕殺! 爆炎を見た泉は薄暗くなってきた周囲を見回し、首に下げたライトを点けた。
「皆さん、塗料の準備を。ブレスの明かりは限界です」
「相手さんならまだその道にいる。ありったけぶちまけてやれ!」
「ヨロコンデー! 明るくなぁれ! ですっ!」
 茜が叫び、救援に入った面々がそれぞれペイントボールを伐採道に投げ込んでいく! 破裂し飛び散る蛍光塗料。カラフルに染まる森林道に注意しつつ景がインクボールを周りにばらまいた所でドラゴンの光が消失。ソラネとギルティラを中央に円環陣形を組んだ七人と二体を、ヒカリゴケめいた幻想的な光が照らす。伐採道から見て円陣奥に立った泉は奥ゆかしく頭を下げた。円陣の六人が続く。
「ドーモ皆さん。デイブレイクです。ヨロシクお願いしますね?」
「ドーモ、イノセントです!」
「ライトニングバレットです」
「モノクロームトーラスです」
「ノーブルステラです」
「マーナガルムです!」
「ストレイスノウです」
 仲間達の真ん中で、ソラネが森の道をじっと見つめる。距離にしてタタミ約八枚分離れた地点、辛うじて残ったペイントされていない足場に立ったスバルに対し、両手を合わせた。スバルもまた不服そうに応じる。
「ドーモ、アイアンディノです」
「……ドーモ、アイアンディノ=サン。ウルターサウルスです」
 初めてこの光景を目にした貴方は違和感を感じるかもしれない。この後続くのは凄惨な殺し合いだ。しかしアイサツは決して欠かせぬイクサの礼儀であり、されれば必ず返さねばならない。そして顔を上げたスバルは地に両手を打ちつけた!
「かかれ!」
 スバル目前の地面が内側から爆ぜ六輪トリケラ戦車が出現! 迎撃に入るアンモナイト騎士団を蹴散らして最高速度で円陣に突っ込んでくるそれに向かってテレサは白黒円環の砲口を向け砲撃を放つ。二発の砲弾は戦車の前輪を破壊し思い切りつんのめらせた。跳躍した茜がトリケラヘッドめがけて鉄クズを組み合わせたような戦槌を振り下ろす!
「イヤーッ!」
「ピガーッ!」
 トリケラ頭部が潰された直後、空から現れた機械ティラノサウルスが茜をトリケラもろとも踏み潰し地面をすり鉢状に叩き潰した! ナムアミダブツ! 咆哮と共に回転して振り回されるティラノの尻尾にジャンプしたテレーゼがタックルして攻撃を相殺。そのシートからティラノ頭部に跳躍したテレサは二門のリングで恐竜の後頭部に砲撃! 前のめりによろめくティラノの胴体にレクスと泉のトビゲリが刺さった。
「ピガーッ!」
 大きく傾くメカティラノ。蹴り足を当てた体勢のレクスは手中の方位磁石が上を指すのを確認し、泉を見やる。
「上か。頼むぞ」
「了解です」
 泉の背後に現れたソフィアが彼の腹を抱え込んで一回転、彼を斜めに投げ飛ばした。宙を跳ぶ泉はネックライトが流星群めいて飛来する機械プテラノドンの群れを照らすのと同時に朝焼け色の鞘から刃を引き抜く!
「イヤーッ!」
 交錯! 泉とすれ違うプテラノドンの群れが剣閃を浴びてことごとく細切れになって降り注いでいく。最後の一体を一刀両断した彼は目を見開いた。スバルがいない! 他方、森から飛び出したラプトルの群れと交戦していたカナメの背中に電磁クナイ・ダートが五本突き刺さり放電!
「ンアーッ!」
 動きを止めたカナメの胴をラプトルの爪が無慈悲に裂いた。景はクナイが飛んできた空中に銀杖を突き出し、純白の光線を連続で発射するが手応え無し! 『沢山撃つと実際当たりやすい』とは江戸時代の有名なレベリオン・ハイクであるが、現実のイクサにおいてはそうもいかない。傷から血を噴き出しながら膝を突くカナメの左右から二体のラプトルが爪を振り上げ飛びかかる。アブナイ!
「イヤッ! イヤーッ!」
『ピガーッ!』
 ソラネのダブルキックに砕かれ二機のラプトル頭部破損! 勢いを乗せた回転かかと落としでカナメの胴を斬った一体を破壊したソラネは叫んだ。
「スバル! もうやめてください!」
 木々を跳ね飛ばして現れたトリケラ戦車が景を吹き飛ばし、森から新たに飛翔したプテラノドンの群れが自由落下する泉とレクスに殺到! ソラネの前に立ちふさがる機械樹の奥からは二体目のティラノサウルスが雄叫びを上げる。機械樹を蹴飛ばし噛みかかるティラノアイに複数の鉛弾がヒット! のけ反り咆哮するティラノの足元に疾駆した蓮が丸太めいた足にイアイ斬撃を繰り出した。
「ソラネ姉!」
 片足が斬られたティラノが横転! 跳ねる蛍光塗料を顔に浴びたソラネは振り向きざまに短銃でトリケラ戦車の眉間を撃ち抜く。一瞬動きを止めたトリケラに対しカナメは渾身の力で二刀を振り下ろして三枚下ろしに変える。爆散するトリケラ戦車を余所に、ソラネは声を張り上げた。
「確かに私はケルベロスとなりました! しかし決してあなたたちを見捨てたわけじゃありません! 私は人を知り、仲間を得ました。貴女だって人を知れば、きっと共に戦えるはずです! 共に戦いましょう、スバル!」
「ほう。斬新な命乞いでござるな」
 目を見開いて振り返ったソラネの腹に大穴が開いた。既に零距離、スバルの宣告が響く!
「ならばその仲間とやらと仲良くネンゴロでもせよ。ジゴクでな! イヤーッ!」
 ナムアミダブツ! たたらを踏むソラネを狙って突き出される不可視の両腕! これが決まればソラネは間違いなく爆発四散するだろう! 両目をギラリと瞬かせたスバルの大クナイが命中した。割って入ったカナメの胴に!
「必ず来ると、思っていました。貴方は……手練れの暗殺者のようでしたからね!」
「なんだと……」
 スバルの見えざる腕をガントレットの右手がつかむ。とっさに腕を引き全身を透明化させんとするスバルに飛びかかる影! 蛍光塗料したたる拳で殴りかかる茜だ!
「ライティング・ペイント・パンチ! イヤーッ!」
「グワーッ!」
 グローブから赤色蛍光塗料が飛び散り透明化したスバルの顔を染め上げた。ステルス・ジツ破れたり! のけ反る透明な影めがけ叩きこまれる追撃のペイントパンチラッシュ!
「イイイイヤヤヤヤヤヤヤヤヤッ!」
「ヌウウウウーッ!」
 塗料にまみれたスバルの腕に筋肉の筋が浮き上がり、カナメの胴から引っこ抜かれた。景がカナメの傷に手を当て吹雪と電光を流し込み緊急治療。一方連続バク転で森へ向かう彼女の背後に回り込んだ蓮がその足めがけ刃を振り抜く!
「イアイ!」
「イヤーッ!」
 斬撃回転跳躍回避! 着地したスバルのクナイと蓮のカタナが素早く打ち合い火花を散らす。剣戟の応酬の中、蓮の目が挑発的に細められた。
「まだやるの? アンブッシュ特化型でしょ?」
「調子に乗るな! イヤーッ!」
 回転斬撃を弾いたスバルは蓮の膝を蹴り砕き、頭に肘を振り下ろす。そして振り向きざまに電磁クナイをテレサの砲門に投げ暴発せしめた。テレサは無表情で背後から来たテレーゼに乗って突進し、側転で避けたスバルにトビゲリ! スバルはテレサの蹴りをサイドキック迎撃し、腹をおさえてうずくまるソラネにクナイ・ダートを投擲。彼女とカナメを治療する景の瞳が白く瞬き、局所的な吹雪を作ってクナイを防御! 同時にソフィアに照射され怯んだスバルの左足にレクスの銃弾が叩きこまれる!
「グワーッ!」
「お前さんが何でソラネ嬢ちゃんを狙うのかは知らん。だが、ソラネ嬢ちゃんの方はお前さんに話があるようなんでな」
 踏ん張ったスバルが顔を上げ、眼光でレクスを射抜く。
「こちらには無い!」
 クナイ・ダート連投! それらを銃で撃ち落としたレクスがハンドサインを飛ばすと茜と泉が一気に距離を詰めていく。茜の腕を真紅の爪状オーラが覆い、体勢を低くした泉が剣を抜く。
「まーまー。少しぐらい聞く耳持ってもいいんじゃないですかねえ!」
「同感です。ちゃんとお話、聞いてくれないとだめですよ?」
「黙れ! 貴様らに用は無い!」
 二体のラプトルを生み出し共に迎撃に走る。前に出た泉の素早い剣技がラプトルの首を一瞬にして斬り落とし上段斬撃! クナイ二本を合わせてカタナを防いだスバルの懐に潜った茜は交叉した両の爪を十字に振り抜いた。派手に体を裂かれ吹き飛ばされつつも、スバルは電磁クナイを投げ反撃する。辛うじて防御体勢を取る二人に電磁クナイが突き刺さり青い稲妻を流し込む。同時に景の吹雪から傷をふさいだソラネが飛び出し炎のトビゲリ! スバルはこれをクロスガードだ!
「スバル! あなたが私の敵で、私を殺すと言っても! それでもスバル・ハクアサウロは、我儘で無鉄砲で、外の影響をすぐに受ける、私の大好きな妹です!」
「くどい!」
 交叉した腕でソラネを押し返すスバル。振りかぶった拳に無数の機械恐竜の爪を生やした彼女に対し、ソラネは腕にティラノヘッド型オーラをまとわせて迎え撃つ!
「好きだなんだと言おうとも、仲間の首も差し出せぬ! 汚らわしき偽善者が! 消え去るが良い! イヤーッ!」
「イヤーッ!」
 二人のカラテが正面衝突! まき散らされた衝撃波が周囲の地面に亀裂を作り暴風域を作り出す。至近距離でスバルを見つめ、ソラネは血を吐くように訴えた。
「殺させません。たとえ貴女でも、それだけは……!」
「フン」
 スバルが侮蔑的に鼻を鳴らした。
「結局それが、貴様の答えでござろう? 裏切者」
「……っ!」
 目を見開いたソラネは唇を噛んでうつむき、肩を震わす。次に顔を上げたソラネは大粒の涙がこぼしながら、沈痛な面持ちでつぶやく。
「……ごめんなさい。でも、私は…………!」
 直後、ティラノオーラが膨張し、二人を巻き込んで竜巻と化した。激しく猛る緋色の嵐に混じって、スバルの断末魔が響く。
「サヨナラ!」
 爆発四散の音と共に竜巻が消滅。竜巻の中央、ソラネは取り残されたクナイの前で、うつむいたまま両膝を突いた。

作者:鹿崎シーカー 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年6月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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