「おっす! あちきっす! 今日は花見に来たっすよ! 桜がいっぱい咲いて綺麗っす!」
桜の花が鮮やかに咲き誇る神社では、桜祭りが催されていた。
この日、神社に足を運んだ鯖寅・五六七(猫耳搭載型二足歩行兵器・e20270)は、ウイングキャットのマネギをお供に連れて、多くの人で賑わう祭りを楽しんでいた。
桜を愛でつつ、屋台巡りに勤しむ彼女の両手には、綿菓子や林檎飴といった食べ物の類がいっぱい握られていて。今はどうやら花より団子の方に夢中のようである。
「お祭りと言ったらやっぱ屋台っす! マネギもどうっす、って……どこに行くっすか!」
相棒の翼猫に綿菓子を差し出そうとする五六七だったが、マネギは全く見向きもせずに、神社の奥の方へふらふら飛んで行く。
一体どうしたのかと不思議に思いつつ、五六七はマネギの後を追って神社の裏手側に回り込む。先に進むにつれて人の気配は遠ざかり、気付けば周囲には、彼女達以外は誰もいなくなっていた。
五六七達はふと足を止めて辺りを見回すと、そこは一面が桜の花に包まれた森の中。空から射し込む陽光は、西に傾き始めてオレンジ色を帯びていた。
黄昏色に染まる櫻の杜に、風が吹き抜け薄紅色の花弁がふわりと舞って。まるで夢と現の狭間にいるような、幻想的な世界に見惚れていると、桜吹雪の中から一つの影が顕れる。
それは自然が織り成す桜の景色とはかけ離れて不似合いな、機械的な戦闘スーツを纏った女性であった。
彼女は両手に物々しい重火器類を装備しており、五六七達を見つけると、無言で武器を構えて目の前の猫耳少女と翼猫に狙いを向ける。
「もしかしてこの状況……あちきってば、ピンチっす!? ……あれ? このおねーさん、どこかで見たような気が……」
我が身に迫る危険を感じた五六七は、同時に女性に対して、何故だか奇妙な違和感をも覚えるのであった。
体型も背の大きさも全く異なり、目元もゴーグルで隠れて素性すら分からない相手だが。ただ一点、銀色に輝く髪だけが、五六七とどこか似た雰囲気を醸し出していた――。
緊迫した様子でケルベロスを招集する玖堂・シュリ(紅鉄のヘリオライダー・en0079)。
ヘリポートに集った彼等に伝えられたのは、緊急事態と言える事件であった。
「五六七ちゃんが、宿敵のデウスエクスに襲撃されてしまう予知が視えたんだ。急いで彼女に連絡してみたんだけど、どうしても連絡が繋がらないみたいでね」
その宿敵が、五六七を狙う理由までは分からない。しかし何れにしても、彼女が命の危機に晒されている以上、一刻の猶予もない状況だ。
敵が現れる場所は特定できている。五六七がまだ無事でいる内に、今すぐ救援に向かってほしいとシュリは乞う。
現場は桜祭りで賑わう神社の裏手にある森だ。周辺はデウスエクスの力によって人避けされているようなので、到着したら戦闘だけに専念すれば良い。
今回戦う敵となるのは、正体不明の女性型ダモクレス。相手のコードネームは『L95』という名称で、これは機体の型番号から取ったものだろう。彼女は重火器類を武器として、光の弾やレーザービームや、高出力の砲撃を放ってきたりするらしい。
「それと……五六七ちゃんはその宿敵に見覚えがあるかのような様子だったんだ。どういう因果関係があるかは知らないけれど、その辺りのことも気に掛けてもらえたらと思うんだ」
宿敵と邂逅したことにより、五六七自身の心境面に変化が見られるかもしれない。しかしどんな時でも支え合うのが、ケルベロスだと。
「五六七ちゃんはあたし達の大切な仲間なんだしね! だから絶対に、みんなの力で五六七ちゃんを助けよう!」
シュリの言葉に頷いて、猫宮・ルーチェ(にゃんこ魔拳士・en0012)が拳を握って気炎を上げる。
この窮地も力を合わせれば、必ず乗り越えられると信じているから。
だからこの手で彼女を連れ戻す――そう心に強く誓い、戦いの地へと向かうのだった。
参加者 | |
---|---|
樫木・正彦(牡羊座の人間要塞・e00916) |
セス・レフコクリソス(ライブコントローラー・e01822) |
シィ・ブラントネール(ウイングにゃんこ・e03575) |
フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983) |
鯖寅・五六七(猫耳搭載型二足歩行兵器・e20270) |
上里・藤(黎明の光を探せ・e27726) |
メイ・プロキオン(ゴメイサ・e38084) |
ユノー・ソスピタ(守護者・e44852) |
●ロスト・メモリー
櫻の杜にて巡り会う、一人と一体。
先ほどまで桜祭りを満喫していた鯖寅・五六七(猫耳搭載型二足歩行兵器・e20270)は、突然出現した謎の女性を目にした途端、彼女の心に大きな変化が訪れていた。
「……標的捕捉。データ照合、確認――対象を敵と認識し、これより排除を行ないます」
だが戦闘スーツの女性は任務に忠実に、相対するレプリカントの少女を抹殺せんと、問答無用で武器を向ける。
互いの戦闘力の差は歴然として、このままでは彼女の生命が危険に晒されてしまう――。そう思われた時、彼女を救出すべく駆け付ける者達がいた。
「見つけたわ! みんな、あそこよ!」
白い翼を羽搏かせながら飛行して、上空から周囲を俯瞰していたシィ・ブラントネール(ウイングにゃんこ・e03575)が声を張り上げる。
シィからの伝達が聞こえると、ケルベロス達は彼女が示した地点を目指して動き出す。
「物九郎に引き続き五六七もか。手間をかけさせてくれる」
竜派の姿を取りながら、シィと一緒に空から捜索していたセス・レフコクリソス(ライブコントローラー・e01822)が急降下して。地面に敷き詰められた薄紅色の絨毯が、着地と同時に舞い上がる。
セスは急いで少女の袖を引っ張り敵から引き離し、危害がまだ加えられていないことを確認すると、やれやれといった様子で安堵の溜め息を吐く。
そして彼等の後に続いて、残りの仲間も続々と到着して乗り込んできて、五六七を敵から遮るように陣を敷く。
「救出対象の生存を確認。これより援護します」
無事に合流を果たしたケルベロス達。メイ・プロキオン(ゴメイサ・e38084)はそれでも努めて冷静に、任務の遂行を優先させて、淡々と機械的に立ち振る舞う。
「ここから先はひとりじゃないぜ。ひとりでなんて、戦わせるものか」
帽子を被った少年、上里・藤(黎明の光を探せ・e27726)が颯爽と前に出ながら、決意を胸に抱いて力を込める。
「み、みんな……来てくれたんすね! ところであちき、大変なことを思い出したっす!」
五六七は自分の危機に仲間が駆け付けてくれたことに感動するものの、同時に失われていた過去の記憶を取り戻しつつあった。
徐にチョーカーを外した彼女の首には、『567』と書かれたデジタル数字の刻印が。これを反転させると『L95』、即ち敵対するダモクレスの機体番号と一致する。
「実はあちき……元ダモクレスだったっす! それと目の前にいるアレは、当時のあちきの姿と同じ機体っす!」
「「「な、なんだってーーー!!」」」
少女の口から語られる真実に、驚愕する一同。ただし驚いたのは、彼女が元ダモクレスであったというよりも、どう見ても正反対な敵の姿と同じだったという事実かもしれない。
「大丈夫だよ! 過去が何だって、あたし達はこれからもズッ友なんだから!」
そう言って、猫宮・ルーチェ(にゃんこ魔拳士・en0012)が励ますように言葉を掛ける。
「もしかして、五六七たんが大人になったら、あんな風にナイスバディな美少女に?」
片や樫木・正彦(牡羊座の人間要塞・e00916)は、レプリカントの猫耳少女とダモクレスを見比べながら、彼女の未来予想図を思い描いて脳内補完する。
「それはともかく、マチャヒコは信じてますお。因縁を断ち切って、一人の人間として生きるなら――僕はそのために、力を尽くそう」
今まで豚の獣人型の姿をしていた正彦だったが、一人の戦士として立ち向かうべく、凛々しい人型形態へと姿を変えて、意識を戦闘モードに切り替える。
「……元ダモクレスなのは、私も同じです。ですから大丈夫、返り討ちにして、一緒にお花見をしましょう!」
フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)は五六七の家に伺った時、彼女が家族として受け入れられていて、元気に笑顔を浮かべていた様子を思い出す。
元ダモクレスという同じ境遇であると知った以上、何とか自分も力になりたいと。守るべき少女の『ココロ』に共鳴するように、手にした光の盾が輝きを増す。
「これで役者は揃ったな。では始めよう――神々の女王よ、勇壮なる戦士たちに祝福を!」
フローネと並び立つようにして、ユノー・ソスピタ(守護者・e44852)が開戦を告げるが如く力を発現させる。
ユノーの意思に呼応して、天上から優しい光が降り注ぐ。射し込む光は仲間に聖なる力を付与させて、戦いの幕が開かれるのであった――。
●コードネーム『L95』
ケルベロス達はそれぞれ配置に就いて、宿敵たるダモクレスを迎え撃つ。
「とにかく、ゴロシチがオイル漏れしてないだけでも良かったわ。姉妹機かライバル機か知らないけど、ゴロシチはもうアナタとは住む世界も紡ぐ物語も違うのよ!」
全長2mもの巨大な槌を、シィが細身の身体で軽々持ち上げ取り回し。砲撃状に変形させた『爆ぜる鉄槌』が、激しく火を噴き着弾すると、爆発音が派手に轟き響く。
桜の花弁と共に土煙が巻き上がる。その中に映るダモクレスは微動だにせず佇んでいた。
「――新たな敵を認識しました。目標変更、反撃に切り替えます」
目元を隠すゴーグルの奥で狙いを定め、銃を構えてターゲットをロックオン。獣が猛るが如く銃声が鳴り響き、無数の光の弾がシィを狙って撃ち放たれる。
しかしシャーマンズゴーストのレトラが咄嗟に庇ってこの攻撃を受け止めて。主の方に振り返り、心配いらないと、紳士的にハットを取って従者としての務めを果たすのだった。
「外観に差異はありますが、装備や戦術の傾向から鯖寅どのと姉妹機……少なくとも同系列機の可能性が高いと推測します」
敵の攻撃方法を観察しながら、冷静に分析を行うメイ。まずは挨拶代わりにと、左腕の地獄の炎が秘めた闘争心を表すように燃え盛る。
「『ジャベリン』の生成を開始……完了。目標に対し投射します」
メイの炎が白い槍へと変化して、敵ダモクレスに照準を合わせて射出する。放たれた槍は空中分裂し、炎の雨となってダモクレスを灼き尽くさんと打ち付ける。
「所詮は量産機如きが、舐めた真似をしてくれるではないか」
山羊座の意匠が彫られた剣砲を強く握り締め、セスが地面を滑空するかのように斬りかかる。星座の重力宿して振り下ろされる一撃が、ダモクレスの鋼の身体に重く圧し掛かって斬撃痕を刻み込む。
「お前と五六七ちゃんにどういう関係があるかわからないが、彼女に怪我をさせるわけにはいかなくてな」
藤が帽子を目深に被り直して気合を入れて、闘気を滾らせながら巫術を使う。護符に力を注いで『御業』を降ろし、炎の弾を撃ち込みダモクレスを威圧する。
「あちきにケルベロスの力が宿ったのは、あちきが鎧装騎兵になったのは――『お前みたいな因縁とも戦えるように』っていう意味に違いないっす!」
仲間の奮闘する姿に鼓舞されたのか、五六七も宿縁たるダモクレスに気炎を上げて真っ向勝負の戦いを挑む。真っ赤な和風ゴスロリドレスを翻し、高く跳躍しながらくるりと回転、落下の加速で重力を乗せた蹴りを炸裂させる。
彼女に次いで、ウイングキャットのマネギが追撃し、鋭利な爪を伸ばして敵の戦闘スーツを斬り裂いた。
息の合った連携攻撃で、ダモクレスを圧倒するケルベロス達。しかし相手は精鋭として送り込まれた一体だ。番犬達の波状攻撃も、彼女は動じることなく見極めて、反撃の手段を最適化して応戦するのであった。
銃に備え付けられてる複数本の砲身に、エネルギーが蓄積されて番犬達に向けられる。そしてレーザービームが一斉発射され、拡散されたビームがケルベロス達に襲い掛かる。
「――アメジスト・シールド、最大展開!!」
そこへフローネが立ちはだかるように手を翳し、紫色に輝く光の盾を出力最大まで上げて張り巡らせて、仲間を覆うように防御する。
「回復はこっちで賄える、だから攻撃に専念を!」
フローネの防護壁でも防ぎ切れなかったダメージは、回復役に専念している正彦が、癒しの力を用いて治療する。
身体を包む黒い軍服靡かせて、正彦が地面に剣を突き刺すと。魔導金属片を含んだ蒸気が噴出し、仲間の傷を治して護りの力を上昇させる。
「了解した。ならば――いざ、参る」
攻撃した直後に生じる一瞬の隙を狙い、戦場を駆けるユノー。即座に敵との距離を詰め、無骨な剣を振り抜いて。放たれる研ぎ澄まされた一閃は、武器で払い除けようとする相手のレーザー砲を断ち斬った。
「状況はこちらが優勢みたいですね。このまま火力を集中させて攻めましょう」
メイが落ち着き払った態度で戦況報告し、司令塔の役割を担って指示を出す。彼女もまた元ダモクレスであり、感情を表に出さない性質ではあるが、同年齢である五六七のことは何かと気に掛けていた。
だからこの戦いは、彼女にとっても大事な一戦だ。少女は地獄を宿した左目で、敵を見据えながら構えたビーム砲で狙い撃つ。
「五六七ちゃん、仲間と一緒になれて楽しそうにしてるだろ。お前も因縁なんかに縛られないで、同じようなことをすれば良かったのにな」
藤が不意に思いを巡らせる。このダモクレスとやらも、因果の悪夢に囚われている存在なのだろう。そしてこの悪夢から救われるには、彼女を倒す以外に術はない。
藤の身体に組み込まれた魔術回路が発動すると、棍棒状の武器を抽象化して生成し、繰り出される打突は雷霆の如き威力でダモクレスの鋼の武装を打ち砕く。
大切なモノは自分達の手で必ず守り抜く。ケルベロス達の揺るがぬ強い信念が、敵に付け入る隙を与えることなく、精鋭たるダモクレスとここまで互角以上に渡り合っている。
手数で勝るケルベロス達が熾烈に攻め立てる。ダモクレスもその勢いを押し返そうと抵抗するものの、万全の態勢で臨んだ番犬達はそう簡単には崩されない。
一進一退の攻防を繰り広げる両者の戦いは、やがて佳境に突入していった――。
●リ・バースデー
幾度となく攻撃を浴びせ続けるケルベロスに対し、ダモクレスは纏めて撃ち落とそうとレーザービームを乱射する。
だが今度はシィがすかさず魔力を歌に込め、癒しを齎す聖歌を紡いで戦場中に響かせる。
淑やかな少女が奏でる歌声は厳かであり、時にはジャズのように軽快に、またデスメタルのような苛烈な旋律で、仲間の眠れる戦意を奮わせる。
「ソスピタの名に懸けて――五六七さんは絶対守ってみせる!」
ユノーが気持ちを昂らせて力を溜めて、西洋剣に全ての筋力を載せて振り被り、超高速の斬撃を渾身の力で叩き込む。
「まだ終わりじゃないよ! あたしだっているからね!」
ルーチェがユノーと入れ替わるように前に出て、身体を捻って遠心力を加え、撓る脚から刃のような鋭い蹴りを見舞わせる。
「本機も援護します」
更にはメイがガトリングガンを連射して、セスもアームドフォートで手を緩めることなく追い討ちを掛ける。
「撃ち合いではこちらに分があるぞ? 心しろ!」
ケルベロス達の猛攻に、ダモクレスは損傷著しく消耗している状態だ。それでも決して退かず、任務を全うせんと攻撃の手を止めない。
もう後がないダモクレスは全てのエネルギーを銃に装填し、収束された光の粒子がうねりを上げて、巨大なビームが撃ち込まれて番犬達に襲い掛かる。
目も眩むような光の奔流が、ケルベロス達を呑み込まんと迫り来る。ところがその時、一つの影が彼等の前に躍り出る。
「何度砕かれようと、この命ある限り――紫水晶の盾を、掲げ続けます!」
護り手のフローネが、こちらも光の盾を全力展開し、高火力の粒子砲を身を挺して受け止める。
死力を込めた敵の攻撃も、フローネの守りによって何とか耐え凌ぐ。その彼女自身の傷も浅くはないが、倒れるような真似はしないと痛みを堪えて踏み止まってみせる。
「今すぐ治す! コーラを飲んで、癒しの効果もパワーアップだ!」
コーラを一気飲みした正彦が、『ハイに自由な気分』になって治癒の力を行使する。全身から溢れる癒しのオーラを振り撒くと、爽快感に満ちた空気がフローネを包み込み、瞬く間に彼女の傷を回復させていく。
その一方で、最大火力の攻撃を防がれてしまったダモクレスには、もはや打つ手は残っていない。切り裂かれた肌の部分からは火花が弾け飛び、深手を負って覚束ない足取りで、抗うだけの力も殆どないだろう。
ケルベロス達はこの戦いに決着を付けるべく、最後に総攻撃を仕掛けて畳み掛けていく。
「――時を超えるほどのエネルギー、味わってみる?」
時空の調停者たるオラトリオのシィが、往時の力を限定的に再現・応用した奥の手である技を発動させる。
時を捻じ曲げる程の膨大な力を、雷へと変換させて放出し、大きく渦巻く球体状の雷が、ダモクレスの生命の刻を歪めて駆動回路を破壊する。
「俺がアイツを引き付けるから、止めは任せた」
藤は五六七とセスにそう伝えると、二人に最後を託して突撃を掛ける。
「――畏れろ」
藤の闘気が陽炎のように立ち上り、空から射し込む黄昏色の光と混ざり合い、太陽の化身と言われる八咫烏が形を成して顕れる。
光輪と長い光の尾羽が特徴的な幻の鳥を背に、藤は生み出される膨大な熱を全身に纏い、自ら光の矢となりダモクレス目掛けて体当たりする。
「組の者達が継いだ意志。最後は自らの手で、きっちりケジメをつけてもらいやしょうか」
黒斑一家の家長として支援に来た三毛乃が、愛銃を抜いて五六七に向けて発射する。弾丸に籠められたのは、闘志を増幅させるエネルギー。
三毛乃から気力と勇気を受け取って、因縁に終止符を打つ為に、五六七がセスと一緒に力を合わせて勝負を賭ける。
レプリカントとして、ケルベロスとしてココロを得た今だからこそ使える彼女の真の力。
リミッターを解除して、『狩猟の魔眼(ザミエルシステム)』をフル稼働させて滑腔砲を構える五六七に。セスがビームキャノンを重ねるように隣り合う。
「地球重力下弾道演算の極、ブチかましてやるっす!」
「照準は任せる。――塵と消えろ!」
二人の魂が共振するかのように、質量弾とビームの二種のキャノンによる砲撃が、螺旋を描きながら敵を一直線に貫いて。直撃を受けたダモクレスは遂に力尽き――動かなくなった機体は薄紅色の花筵に埋まるように崩れ落ち、光の塵となって消滅していった。
過去の因果に決着を付けた五六七は、桜の花と共に散り逝く相手のことを見届けていて。その様子をメイが心配そうに見守っていた。
そしてふと二人の目が合うと、明るく燥ぐ五六七とは反対に、表情一つ変えないメイではあるが。何故だか心の奥が擽ったくなるような感覚を覚えるのであった。
「……1人でもケルベロスを喪うのは、人類にとって大きな損失ですから」
少女も年相応の感情を抱く年頃ではあるのだが、彼女自身は頑なに認めようとせず。
それでも何はともあれ、無事で良かったと。
素直になれないまでも、この一言が彼女なりの精一杯の気持ちを表していた。
――風がふわりと吹いて、桜の花が色鮮やかに舞う。
一人の少女が地球の住人として新たな生を受けた日が、奇しくも今日と同じ日であった。
この世界の美しさに惹かれて心芽生えた少女の笑顔は、瞳に映る桜のように綻んでいた。
今度はみんなで一緒に、花見の続きを、と――。
作者:朱乃天 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年5月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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