はっしん、にせリリウムロボだいさくせん!

作者:宮内ゆう

●ぜつぼうのいりぐち
 リリウム・オルトレイン(星見る仔犬・e01775)は危機的状況にあった。
「あ、ああ……あ……」
 顔は蒼白、足は震え、あほ毛は項垂れている。
 だが何度見返しても、お財布の中の小銭の数は変わらない。
「お……おかねがたりませんですッ!!」
 そう、足りないのだ。圧倒的に、10円が。
 今日はチョコファッションの気分だったのに、これではオールドファッションしか買えないではないか。
「あああああああ……あっ」
 壊れた機械のように、あを連呼しながらお財布をまさぐるもお金が増えることはない。
 それどころか、挙句にひっくり返してしまったせいで硬貨がこぼれ落ちてしまった。
 ころころころ。
「おかねさーん! おかねさーん!」
 路地裏へ入ってしまった硬貨を追いかけていく。この後しばらく路地裏を巡る手に汗握るハイパーアクションファンタジーがあったようななかったようなそんなことはさておき、リリウムはついに硬貨をキャッチした。
 だが、我に返って周りを見渡すと人の気配はなく、随分と路地の奥に迷い込んでしまったようだった。
「ああっ、かえりみちがわかりませんですっ!」
 ピンチは悪化した。
 お金の数は変わらず、迷子になった。
 そして、状況は加速する。
 途方に暮れるリリウムの前にひとつの人影が現れたのだ。
「あ、あなたは!」
「ど……なつ……」
 それは、自分とうりふたつの姿をしたダモクレスであった。

●きゅうえんさくせん
「リリウムさんがピンチです」
 ヘリオライダーの茶太は言った。
「いやもう、ピンチ過ぎてどうしたものやら……なにしろまずはデウスエクスですね。敵をなんとかしましょう」
 ダモクレスに襲われるところまで予見したはいいものの、今のところ彼女と連絡が取れない。
 どーなつかいにいくですー、とか浮かれすぎてたせいだと思う。その後の絶望などまだ知らずに。
 なお、迷子になった路地だが、人気はないもののべつにそう入り組んでるわけでもないし、なんか騒いでる子がいればすぐ見つかることだろう。捜索に気を回す必要はない。
「ということは、リリウムさんが敵に遭遇したところにすぐ駆けつける事はできそうですね」
 なるべく急いであげたいところ。
「それにしても、なんでリリウムさんなんでしょうか」
 何故彼女の姿をしているのか、何故彼女を狙うのか。
 パッと思いつくのは、ケルベロスから戦闘データを取り、解析し、模倣としてダモクレスを作ったということだが。
「いまいち、メリットを感じないんですよね」
 単純に強いダモクレスを作ればいいだけの話。
「まあ、はっきりしていることは、敵はリリウムさんそっくりで、しかも本人を狙っているということです」
 すなわち宿敵関係である。
「現場は路地で他に人はいません。みなさんが向かったあとも人が近くに行かないように手配します」
 リリウム見つけて敵を倒すことだけ考えてもらって大丈夫だ。
「で、肝心の敵の能力についてですが……」
 たった1体でやってきたのだ。いうなれば強敵、ここの情報は重要だ。
「リリウムさんと同じくドラゴニックハンマーのような物を持っていますが、武器としては一切使いません。飾りです」
 ケルベロスたちがざわついた。いったいどういうことなのか。
「攻撃はすべてあほ毛から行われます。以上です」
 なにもかもが分からなかった。
「さて、あまり時間もないことですし、急ぎ救援をお願いします!」
 詳しく聞いている暇もなかった。
 とはいえ出たとこ勝負も珍しくはない。そんな状況を切り抜けてこそのケルベロスである。集まった者たちは頼もしく頷いた。
「あ、いちおう注意しますけども……ほんものとにせもの、間違えないでくださいね」
 急になんかちょっと不安になった。


参加者
ラトゥーニ・ベルフロー(至福の夢・e00214)
リリウム・オルトレイン(星見る仔犬・e01775)
山之内・涼子(おにぎり拳士・e02918)
ピリカ・コルテット(くれいじーおれんじ・e08106)
ウォリア・トゥバーン(獄界の双焔竜・e12736)
ドミニク・ジェナー(激情サウダージ・e14679)
アーニャ・クロエ(ルネッタ・e24974)
金剛・小唄(ごく普通の女子大学生・e40197)

■リプレイ

●トゥルーオアライ
 ケルベロスたちは急いでいた。
 現場を目指し全力で駆け抜ける。
 それはもちろん、仲間の危機だから。一刻を争う状況にあるのだ。だが何故だろう、命が危うい感じがまるでしないのは。
「なあ、聞きたいのだが……」
「どうしましたっ、あほ毛がほしいですかっ!?」
 走りながらウォリア・トゥバーン(獄界の双焔竜・e12736)が言いかけたところ、ピリカ・コルテット(くれいじーおれんじ・e08106)が即座に返した。
「いらんわ。そーじゃなくて、いきなり一人足りないんだガ……」
 辺りを見回す。
 たしかにラトゥーニ・ベルフロー(至福の夢・e00214)の姿が見えない。
「あっ、ドーナツ買いに行くって言ってましたっ」
「おィ」
「お目付役もつけているから大丈夫ですっ。なお私はこんなこともあろうかとドーナツを装備し(もちあるい)ていましたっ!」
「そ、そうカ」
 無意味に高いテンションにのピリカについて行けない感じのウォリア。とりあえずチョコファッションがないことは指摘しないでおいた。あとなんか話しながらあほ毛をつけられていたのでそっと外しておいた。
 一方その頃、近所のドーナツ屋でショーケースにぴったりくっついてドーナツをながめているラトゥーニとボクスドラゴンのプリムさん、およびそれを少し離れたところで仕方なさそうに身守るミミックのリリさんが目撃されていたとかなんとか。
 場は戻って路地裏。奥まで入ってきたが、どちらへ向かえばいいかと二の足を踏んでいた。
「どうしたもンかのォ……」
 ドミニク・ジェナー(激情サウダージ・e14679)がくしゃりと自分の髪をかきむしった。
「現場までに行くのに苦労はないということでしたが……」
 焦る様子がありありとあったので落ち着かせたいアーニャ・クロエ(ルネッタ・e24974)だったが、何も情報がない。
「くそっ、こうしてる間にもアイツぁ……!」
「どーなつ! どーなつです!!」
「ドーナツ! ドーナツナノデス!!」
 なんか言い争う声が聞こえてきた。
「……ええと、その」
「ああ、あっちじゃな、うん」
 なんか気まずそうなドミニクとアーニャ。
 そこからはひたすらドーナツという単語の連呼。
「どーなつどーなつどーにゃつどーなつ……」
「ドーナツドーナチュドーナツドーナツ……」
「おいどっちも噛んでンぞ!」
「いったい何をしているのでしょう……」
 かくて声のする方に向かい、すぐにその場へ到達することが出来た。
 向かい合うふたりのリリウム・オルトレイン(星見る仔犬・e01775)。その片方ががくりと膝をついた。
「わ、わたしのまけです……あなたのほうがどーなつ100回いうのはやかったです……!」
「イエ、アナタモスゴカッタデス! ツギハ100段ぱんけーきメザスデスヨ!」
「こ、こんどはまけませんよ~!」
 いったい何の勝負をしているのか。
「えっと、どっちが本物……?」
「私にまかせて! よりリリウムちゃんらしい方がリリウムちゃんよ!」
 困惑した山之内・涼子(おにぎり拳士・e02918)に金剛・小唄(ごく普通の女子大学生・e40197)が自信ありげに名乗り出た。
「ふたりとも! 78×164は?」
 これに答えられることを期待などしていない。わからなかったほうが……。
「わかりませんです!」
「ワカリマセンデス!」
 回答は一字一句違わずほぼ同時。小唄は頭を抱えて項垂れた。マルとバツのプラカード掲げる準備してたウイングキャットのティナさんと点心さんが所在なさげ。
「まさか、知能までリリウムちゃんレベルとは……!」
「あ、そっか。もう少しわかりやすくすればいいんだ。よーし」
 ここで涼子が閃いた様子。
「にせリリウムちゃーん?」
「いやさすがにそれは」
「はーい!」
「ハーイ!」
 両方返事した。

●はこの直撃
 前章のあらすじ。どっちがほんものかわかんない。
「って、なンで両方返事しとンじゃあああああ!!!」
「あ、ドミニクさんですー」
「ノボルデスー」
 ぴょこぴょこ揺れるあほ毛2匹に言われて、叫んだばかりのドミニクはかがんだ。
「ダブルリリウムー!」
「ばすたーデスー!」
 どしーんばたーん、ぎぇー。
 やった、ドミニクをたおしたぞ!
 しばし呆然とする一同。最初に我に返ったのは涼子である。
「って、倒しちゃダメでしょ!? さすがリリウムちゃん同士連携抜群……じゃなくて救護班!」
「はーい本日メディック、ヒール専のピリカちゃんでーっす。怪我したあの子にてーれってれー!」
 自分で効果音出して光り出した。
 青と赤、交互に点滅する激しい光が倒れたドミニクの神経を刺激し傷を癒やしていく。顔面蒼白になってビクビク痙攣を始めたけど、癒やされてる。
「それで、どうしよう。まだどっちが本物かわからないよ」
 涼子の言葉に一同頭を抱える。
 今度はリリウムふたり、互いにほっぺをつねってた。よくのびる。
「言わせてもらっていいか……?」
 そろそろ耐えかねんといわんばかりにウォリアが手を揚げた。
「いや偽も何も……確かに耳がやたら金属質だったりよく注視すると顔にロボ的な目下ラインがあったり関節に筋が……」
「確かに、よく見るとどことなく違いますねー……えっ、あれ。それリリウムさんの特徴でしたっけ? ああっ、どっちが本物かやっぱりわかりませんっ!」
「ぅおい」
 本気で頭を抱えるアーニャにため息しか出ない。
 だがここで点心さんが飛び出した。ぱたぱた飛びながらふたりのあほ毛を指さす。それをみて小唄が声を上げた。
「あっ、そうかあほ毛が違うんだ!」
「あれはリリウムちゃんのあほ毛で間違いないです! 偽物は似ても似つきません!!」
 アーニャも納得、ティナさんも納得。でもウォリアは納得いかない様子。
「いやなんで、あほ毛だと区別がつくのだ……」
「てーれってれー! てーれってれー!」
「む、真面目に突っ込んだら負け、か」
 なんかまだ光ってやかましいピリカをみてそう納得することにした。
「ふ、みわけつなくて、困って、るみたぃね……」
 ここでラトゥーニが追いついてきた。もぐもぐしながらプリムさんからドーナツの箱を受け取った。そしておもむろにふたつのドーナツ、チョコファッションとチョコリングを中空に投げた。
 即座に反応するあほ毛。ほぼ同時にそれぞれインターセプト、いや僅かに偽物が早いか。
「ぁなたが、偽物……」
 次の瞬間、チョコリングを取ったリリウムにすっ飛んできたリリさんが直撃した。
「リリウム、はチョコファッションの気分、だった……だから、とらなかった、ほうがにせもの……」
「いまぶちかました方が本物よ?」
「ぁれ……?」
 小唄に言われてラトゥーニは間違ったことに気付いた。
 リリウムなんだからとりあえずなんでもドーナツ掴むに決まってた。

●インフェルノブレイズ
 前章のあらすじ。リリさんクリティカルヒット。
「リリウムちゃんをこんな目に遭わせて……絶対に許さないわ!!」
 そう叫ぶと、小唄はにせもののあほ毛をむんずと掴んで振り回し始めた。その様子はさながらキングなゴリラや緑色の超人を彷彿とさせる。
「うおおおおおおおらやああああ」
 まぁ、こんな目に遭わせたのは味方なのだが、そこはそれ。余計なことは記憶の彼方に追いやるのが女子大生というものである。
「ワシもお礼参りせンとのォ……」
 ドミニクも復活。無限大の記号な軌道で振り回されるにせものに照準を合わせる。
「そォら、どてッぱらに風穴空けたるけェ!!」
 にせもの狙って放たれた弾は、確かにその四肢を捉えていた。しかし。
 すぽーん!
「あほ毛抜けたァ!?」
 にょきーん!
「生えたァ!?!?」
 身動き取れなかったはずのにせものは、あほ毛を生え替わらせて脱出。加えてほとんどの弾をあほ毛で弾いた。
「ちぃッ、ガチでハンマー飾りなンか……なンじゃあのアホ毛、どンな仕組みしとンじゃ!」
 さらに空中から落下中、あほ毛がこちらを向いた。真っ直ぐ光が放たれた、そう思った瞬間ティナさんが割り込んで光から庇ってくれた。
 プリムさんがブレスで偽物を牽制しつつ、点心さんがもふもふ癒やし。ちょっと石化してる。ほっとくとまずい。
 いったん仕切り直し。とはいえ、にせリリウムの多彩なあほ毛殺法はケルベロスたちを圧倒し追い詰めていくのだ。おもにリリさんピンチ。
 しかし攻撃があほ毛から行われることを思えばまだやりようはある。
「ごめんだけど、これもダモクレスとの戦いだからね!」
 にせものの攻撃に合わせて、涼子がグラビティ・チェインを乗せた蹴りであほ毛を叩き折る。あたりにはもういくつともしれぬ大量のあほ毛が転がり落ちていた。
「うぅん、やっぱりちょっと戦いにくいなぁ……」
 罪悪感半端ない。
「ならば、オレがやろう」
 左目の炎を滾らせ、ウォリアが前に出る。
「天に輝く七の星を見よ……オマエのアホ毛に死を告げる赫赫たる星こそが我……アホ毛ロスの苦しみが織り成す地獄に堕ちる覚悟はできているな?」
 右目の炎も滾り、顔全体がひとつの炎に包まれる。
「オレ/我がオマエのアホ毛を此処で断つ……終焉の時は、来たれり」
 現れる竜の影法師、そのすべてが眼前のあほ毛を殲滅せんと一気呵成に襲いかかる。無情なる総攻撃後、影法師たちは灰となって散った。
「なんかこー、いまいち締まりが悪いんだガ……やったカ?」
 だが、灰が散ったあとに現れたのは、全身ボロボロになりながらもあほ毛だけは無傷で守りきったにせものの姿だった。
「なん……だト……」
「ドーナツ……ドーナツ、ヨコスデスヨー!」
 にせもののあほ毛に黒い光が集約していく。同時に振動があたりの建物や地面を揺らし始めた。いったい何が起きているか分からないがとにかくヤバイことだけは分かる。
「ま、まさかこれはっ!」
「知っているんですか!?」
 気付いたように叫ぶピリカにアーニャが問い返す。
「惑星アホゲ・ドーナツを照らすという絶望の暗黒リングを精製しているに違いありませんっ! 暗黒リングから放たれる黒光はすべてを飲み込み消滅させてしまうんですっ!」
「そ、そんないったいどうすればっ!」
「ゴメンなさい、いま全部適当に考えました!」
「ほぇ」
 一気に緊張感が抜けた。
 だが強力なあほ毛攻撃が放たれようとしているのは間違いない。一体どうすればいいのか。
「う、うぅ~ん、もう朝ですかぁ~?」
 気を失ってたリリウムが起きた。このタイミングで。
「やった、あほ毛にはあほ毛! これで勝てますっ! アーニャちゃんも一緒に!」
「わかりましたピリカちゃん! あほ毛にパワーを! いっけぇー、リリウムちゃん!!」
「なんかよくわかんないけどいきますですー!」
 あほ毛にダブルでエレキブーストしてもらってリリウムが駆けだした。ズゴゴゴしてるにせもの向かって。
 かたや一帯を揺るがす衝撃、かたやぽかぽかぱんち。
 あ、だめそう。
 誰もがそう思い、ふたつのあほ毛が交差した瞬間。
「ほぃ」
 ラトゥーニがフレンチクルーラーを投げた。
「どーなつ!」
「ドーナツ!」
 ごちーん!
 同時に振り向いた二人はおでこをぶつけあった。そのせいか、にせものあほ毛から黒光が消滅し、前のめりにたおれたほんものあほ毛のランドセルが全開。
「鍵開いてるー!!!」
 見てたみんなが叫んだ。
 ランドセルから飛び出たあれやこれやがにせもののあほ毛に突き刺さり、よろよろと後ずさる。
「あ……ア……ドーナツ、タベタカッ」
 かくして、言い終えることさえ叶わず、にせリリウムロボは爆発した。

●良い日にファッション
 前章のあらすじ。あほ毛大爆発、降り注ぐあほ毛。
「つらく、くるしいたたかいでした……でも、わたしはまけません、あほ毛あるかぎり!」
 ぱらぱらと落下してく大量のあほ毛を見上げながらリリウムが呟いた。なんかいつの間にかリリさんに乗っかってる。
 あと、今回戦闘中ほぼ寝てたのであほ毛アピール全くしてないことに気付いてない。だがここで、ドミニクがちょっと不満そう。
「って、乗るのワシじゃねェの?」
「リリリリリウムですー」
 要約、こっちの方が楽しい。
「なんじゃとォ……気分はライディングなデュエルがアクセラレーションじゃというのに……ッ!」
「何言ってんだろこの人」
 辛辣ゴリラ。
「だぃじょーぶ、どーなつ代金はトリとドミニクの人、から回収してぉぃた」
 なんか突然とんでもないこと言い出すラトゥーニ。
「え、ちょ、何が大丈夫なんじゃ!? あっ、財布がねェ!」
「これでかぇるだけ、ってゎたしてきた」
「なにさらしとンじゃワレええええ!」
 財布全額、ドーナツと化す。まさに錬金術。
「でもま、おかげでドーナツ買いに行く手間は省けたかな」
「そうね。でもいくらなんでもこんなところで食べたりは……」
「どーなつ、どーなつ……」
 話してる涼子と小唄のうしろのほうから獣の息づかいが聞こえてくる気がする。そろそろドーナツに餓えてやばいのかもしれない。
「早めに場所変えよっか」
「近くに公園とかあるかなー。あったらそこでドーナツ食べよう」
「どーなつたべますですー!」
 プリムさんがドーナツの箱抱える横で、ぴょーんとあほ毛が跳ねた。ティナさんと点心さんも跳ねた。
「かくして無事にダモクレスを撃破したケルベロスたちはその場を後にした……だがこれですべてが終わったのだろうか。この世にあほ毛のある限り、またいずれ第二第三のあほ毛が生まれることを……」
「何をしていル? みんなもう、行ったゾ」
「あっひゃあ! はいはーい、いますぐいきまーす!」
 こっぱずかしいナレーションをしてたピリカが、ウォリアから声をかけられてびくついた。ごまかすとばかりに一目散。
「やれやれ……さ、こやつにもドーナツを供えてやるとしよう」
 一人になって、ウォリアは粉々に砕けたあほ毛に、ドーナツを添えてやった。
「総菜的な物なら良いが、生憎甘い物は好まぬ故……なんてな」
 結局、何故このダモクレスが生まれたのか、現れたのか、皆目見当はつかない。それでもきっと、彼女もリリウムだったのならばきっと、ドーナツが好きであることは疑いようのない事実なのだと思う。
「そう思いたいだけ、かもしれんがな」
 思いは誰ぞ露知らず。路地の奥へと消えていった。
 そんなことはさておき、近所の公園へ向かうるんるん気分の一行(約一名財布の絶望に打ちひしがれ中)はようやく路地から出るところ。
 最初に大通りに出たアーニャが大きく伸びをした。
「うーん、お日様が気持ちいいですねぇ。こんな日は公園でお茶会日和です。私はチョコポンデの気分なんですけどリリウムさんは?」
「それはもちろん!」
 おもむろに箱から1個ドーナツを取り出し、高く掲げてリリウムは言った。
「チョコファッションです!」
 でも掲げたそれ、オールドファッション。

作者:宮内ゆう 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年4月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 10/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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