●人生の変わり目
いい車は人生を変えると言うが、今の後藤はまさにその絶頂だった。
趣味である食巡りの足でしかなかった車。それを高級車に買い換えたとたんに羨望の視線が集まって、とても気分が良かった。集まるのは視線だけではない。これまで何度、助手席に若い娘を乗せて楽しんだことか。
「素敵な車ね」
そう言ってボンネットに指を這わせる黒髪の女は、美しかった。
立体駐車場の薄闇でもわかるきめ細やかな褐色の肌は、踊り子のような衣装のために、胸や腰周りを除いてほとんど露わになっている。肉感的な肢体を舐めるように品定めしつつ、後藤は運転席の窓を開けた。
「乗ってみるかい?」
「いいの? 今来たばかりよね?」
「ああ、この近くのフードフェスに行くつもりだったけど、気が変わった」
ジャケットの内ポケットから覗く、札束で厚くなった財布をさりげなくアピールしながら、後藤は女の手をとった。
「どんなごちそうも君の前では霞むよ……さあ、おいで」
「うれしいわ」
女は拒まなかった。後藤の手を両手でそっと握り返す。
「あなたは勇者に相応しいようね」
艶然とした微笑が、緑色に照らし出された。
光源は、一瞬にして全身を炎に包まれた後藤だ。叫ぶこともできずドアを押し開けて車外にまろび出るが、火勢は弱まらない。
やがて弾けるように緑炎が消えたとき、そこにあったのは焼死体――ではなかった。薄闇にもきらめく豪奢な全身甲冑を纏った、後藤よりも遥かに長身の巨漢が横たわっていたのだ。
「エインヘリアルはやっぱり豪華な武具が一番よね。ねえ、あなた」
女――『炎彩使い』緑のカッパーが、おもむろに立ち上がった巨漢に話しかけた。
「今の変化であなたのグラビティ・チェインがほとんどなくなっちゃったから、補給してきなさい。……私が迎えに来るまでに、その武具を使いこなせるようにしておきなさいよね」
「御意」
命令に恭しく頷くと、巨漢は立体駐車場の端へ向かって疾走した。速度を落とすことなく欄干を乗り越え、空中へ躍り出る。
地上へ落下する一瞬、その瞳は『粉もんフェスティバル』の横断幕を映していた。
ティトリート・コットン(ドワーフのヘリオライダー・en0245)が、ヘリオンの談話室に集まったケルベロスたちにソファを勧めた。
「よく来てくれたね。さっそくだけど、みんなにはエインヘリアルの撃破に向かってほしい」
死者の泉の力を操り、その炎で燃やし尽くした男性を即座にエインヘリアルにすることができるシャイターン『炎彩使い』。それによって出現したエインヘリアルが、開催中のフードフェスティバル会場を襲うのだ。
現場となる公園は運動場みたいに広く、屋台や訪問客で賑わっている。放っておけばどうなるかは想像に難くないだろう。急いでエインヘリアルを倒さねばならない。
「エインヘリアルは1体だけ。見た目はゴージャスだけど、特別強いってわけじゃないみたい。ただ周りに人がたくさんいるから、そこは気を付けないといけない」
「巻き込まないように、ですね」
囁くように言ったのは黒猫のウェアライダー、葛籠川・オルン(澆薄たる影月・e03127)だ。
「特にこういうエインヘリアルは乱雑で暴れたがる。鬱陶しいこと極まりない」
敵はグラビティ・チェインが枯渇しているらしく、オルンが懸念するように、補給するために暴れまくるだろう。
使用武器がバトルオーラで、比較的、大規模破壊向きでないことが救いか。
エインヘリアルは人が密集するところに乱入してくる。会場で待ち構えるのが手段としてはベターだ。
「キミたちならきっと虐殺を防ぐことができる。気をつけて行ってきてね」
参加者 | |
---|---|
葛籠川・オルン(澆薄たる影月・e03127) |
フィー・フリューア(赤い救急箱・e05301) |
玉榮・陣内(双頭の豹・e05753) |
鷹野・慶(蝙蝠・e08354) |
月杜・イサギ(蘭奢待・e13792) |
フェイト・テトラ(黒き魔術の使い手・e17946) |
カッツェ・スフィル(しにがみどらごん・e19121) |
イ・ド(リヴォルター・e33381) |
●補給するもの
鉄板の上で弾ける油の音が空腹を刺激する。
お好み焼き、たこ焼き、焼きそば――立ち並ぶ屋台から食欲をそそってくるのは、フードフェスのテーマである粉物料理の数々だ。ただよう肉の芳香や踊るかつおぶしが食い意地の張った群衆を吸い寄せている。
その中には、ふりふりひらひらな赤ずきんドレス姿のフィー・フリューア(赤い救急箱・e05301)も。
「いやぁ、すごい人ですね! あとたこ焼きおいしいですもぐもぐ」
違った。今回にあたってドレスを借り受けたフェイト・テトラ(黒き魔術の使い手・e17946)だった。もちろん少年なのだが、中性的な面立ちといい着こなしといい違和感が全然なくてやばい。あまりの可愛さに屋台のおっちゃんがたこ焼きオマケしてくれたくらいやばい。ちなみにフィーはその様子をスマホで連写していた。
「こいつは避難も骨が折れそうだ」
絶え間ないシャッター音から杖をついて離れつつ、鷹野・慶(蝙蝠・e08354)は公園の外を見上げた。
「ここに乱入されたら、被害も相当だ」
「ああ、タイミングが大事だな」
お好み焼きの屋台の前では、カッツェ・スフィル(しにがみどらごん・e19121)が葛籠川・オルン(澆薄たる影月・e03127)の腕を引っ張っている。何やら揉めているようだが、喧騒のせいでよく聞こえない。まあ楽しそうで何よりだ――そう思いながら玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)が、視線を慶と同じ方へ向ける。その先にあるのは内部にたくさんの乗用車を収める建物――立体駐車場だ。
予知にあった立体駐車場は公園に隣接してはいなかった。とはいえ事前に調べた結果、周辺にあるのは一つだけだったから、出現ポイントは絞り込める。
ケルベロスたちの予想を裏付けるように、立体駐車場の欄干から人型の輝きが生まれ落ちたのはそのときだった。
数秒と経たぬうちに公園のフェンスを跳び越えてきたのは、燦然と輝く、重厚な星霊甲冑を鎧ったエインヘリアルだ。巨漢が、眼下の通りを埋め尽くす群衆に舌舐めずりする――その顔面を、ゼログラビトンの閃光が白く染めた。跳躍中のエインヘリアルに、陣内が出会い頭の砲撃を浴びせたのだ。
「オルンさんの警戒とティトリートさんの予知で事前に見つけたからには、被害者なんて出させないよ!」
さっきまでスマホがあったフィーの手には、今は球状に集う可憐な星形の花が、淡い光とともに浮かびあがっている。『誘光彩香(オビキノコウ)』――特殊な誘引の香をたきしめたシラーの花が、青紫の軌跡を残してエインヘリアルへと飛翔する。
同時に慶のペイントブキが『怪物』を描いた。デフォルメされた暗色の異形が空を泳ぎ、巨漢へ爪を振りかざす。
間断ない迎撃を前に、巨漢の唇が嘲るように緩んだ。
顔の前で両腕を交差して砲撃を凌ぎきるや、巨漢はほどいた腕を手刀のように振るった。シラーが叩き落とされ、『怪物』は貫かれて消滅する。障害を駆逐した巨漢が地響きをあげて通りに着地した。ときならぬ乱入者に群衆から悲鳴があがる。
「ケルベロスか。ずいぶんと他愛ない攻撃だな!」
エインヘリアルが嗤い、呼応するように虹色のバトルオーラが膨れ上がった。
「俺は選ばれし勇者! この輝きを纏う俺は不可侵と知れ! 邪魔だてするなら、まとめてぶち殺すぞ!」
「ぶち殺す、か。面白い」
涼しくも残酷な笑声は真上から降ってきた。
エインヘリアルが視線を上に向けたときには、天から急降下した大上段の斬撃は巨漢を間合いに捉えている。重力加速度のたっぷり乗った、全身を断ち割らんとする一刀に、巨漢はとっさに腕をあげた。刃と籠手が甲高い音をたてて衝突する。巨漢の足下でアスファルトにひびが走り、陥没した。
「傲慢と貪欲のなれの果てにしては、煌びやかな装いだね」
虹色の光と白刃の向こうで冷笑したのは天使と見紛う美貌だ。隠密気流を解除し、高所から滑空の要領で舞い降りた月杜・イサギ(蘭奢待・e13792)が、倒立の姿勢のまま刀を押し込む。
「さあ、存分に愉しませてもらおうか」
「――はい皆さん、あちらです! 僕たちを信じて逃げて下さい!」
黒翼の狂剣士のぞっとする声音に続いて巨漢の耳を打ったのは、フェイトが群衆を誘導する呼び声だった。ふりふりドレスはこのときのためである。ラブフェロモンからの防具特徴割り込みヴォイスで、余すことなく声を届ける。
「大丈夫です、怖くないのです。僕たちがいますから!」
「この場は我々ケルベロスが請け負い、必ず倒す。避難指示に従い、落ち着いて避難するように!」
鉄塊が降ってきたような轟音は、上空から重武装モードのイ・ド(リヴォルター・e33381)が着地したことによるものだ。元はマフラーであったマントを騎士のごとくはためかせ、フェイトが導くのとは反対側にいる人々をデウスエクスから遠ざける。
「逃がすかっ、どけ!」
巨漢の空いた方の拳に光が灯った。
直後放たれた至近距離からのオーラの弾丸を、イサギはわずかに頭を傾けて回避した。重圧が減じたその一瞬にエインヘリアルが刀を弾き、拳を繰り出す。刹那のうちに二度打ち合って、イサギが羽ばたきながら距離をとった。空中で一回転してから、陣内の隣にふわりと降り立つ。
「いよう堕天使。見事な一刀、惚れ惚れするねェ」
「玉さんを夢中にできたなら、私も捨てたものではないね」
軽口を交わす二人の間を、赤髪の小妖精――キジムナーが跳ねた。そっと、ほどよく傾けた陣内の指先から、イサギの肩へ。
その間にも、エインヘリアルは人々を追うべく地面を蹴っていた。だがその道を慶とフィー、二匹のウイングキャットが塞ぐ。
「成金臭さがプンプンしてんな。食欲が失せるったらねえや」
慶の煽りに舌打ちして、巨漢が反対方向へと踵を返せば、そちらにはイ・ド、カッツェ、そしてオルンが立ちはだかっていた。
「ここでエインヘリアルとして討たねばならないことは、悲しく思います」
金にあかせて女性を誘ってはひどく扱う……褒められた生き方ではなかったかもしれない。だがそれは、死した後にシャイターンの走狗として扱われねばならぬほどの罪だったのだろうか。
オルンの杖の先端で雷光が瞬いた。
「あなたを憐れに思う。だが容赦はしない……後藤さん。あなたに人を殺させるわけにはいかないんだ」
●輝くもの
複雑な軌道で迸った雷撃を、エインヘリアルは避けなかった。甲冑とオーラの防御力に自信があるのか、被弾箇所のスパークで全身をいっそう輝かせながら疾走する。
道を譲るわけにはいかない――突進してくる相手に、オルンは表情を変えぬまま周辺気温を低下させた。煌めく拳撃が、無音の凍結領域に触れたとたん霜に覆われる。だがそれが融解するのもまた一瞬だった。拳が音速を超えてオルンに迫る。
「ぐっ……!」
鈍い響きの直後、呻いたのは巨漢の方だった。その拳はオルンを砕く寸前に、割り込んだ『Schwarze Katze』――カッツェの篭手ががっちりと阻んでいる。同時に低い姿勢から跳ね上がったカッツェの靴先は巨漢の顎をかち上げていた。のけぞる巨漢の拳をぱっと放し、カッツェが軽く地を蹴って跳び上がる。長い黒髪が背に張り付き、拡がった。旋回したブーツが巨漢の側頭部に突き刺さる。
常人なら失神している跳び回し蹴りに、巨漢はよろめきながらも踏みとどまった。背後からのイ・ドの組み付きにも、引き倒されぬよう素早く身を捌く。
その回避が織り込み済みだったかのようにオルンのスライムがぞわりと立ち上がった。イ・ドとの一瞬のアイコンタクト。見事な連携でスライムが巨漢をすっぽりと呑み込む。
「ありがとうございます、カッツェさん」
早くもスライムの黒い表面に光の亀裂が走るのを目にしながら、オルンは先ほど自分を庇った少女に礼を言った。
「助かりました。お怪我はないですか?」
「ないことはないけど、これもディフェンダーの仕事だからね。しっかり守ってあげるからその分仕事よろしく。もしくは……」
ずずずいと身を乗り出すように顔を近づけてくるカッツェに合わせてオルンがやや身を引く。
「な、なんですか」
「奢って」
「……はい?」
思わぬ要求に固まるオルンの前でカッツェがパチンッと指を鳴らした。
「はい決まり! 仕事するか屋台で奢ってくれるかどっちかね!」
「な、なぜ僕があなたに奢らないといけないんですか」
「さっきもそう言ってお好み焼き買ってくれなかったね。ほら、嫌なら働く働く!」
一方的に約束を取り付けると、死神忍者は竜の尾を翻して跳躍した。回転させながら振りかぶった大鎌の下にいるのは、スライムを突き破って出てきたエインヘリアルだ。
輝くオーラを伴った拳が大鎌の刃と衝突し、大鎌をカッツェごと吹き飛ばす。いくつかの不幸な屋台がクッションとなって薙ぎ倒されていく中、その轟音に紛れるようにフィーの急降下蹴りが背後から巨漢の肩を襲った。衝撃に巨漢がたたらを踏むが、振り向きざまに放ったオーラがフィーの胸元に直撃。うずくまる赤ずきんへと、巨漢が容赦なく迫る。
追い打ちを防いだのは天から逆しまに振るわれた刃だ。だが羽そのもののように舞うイサギに庇った覚えはあるまい。目に映るは友と、斬っていいモノのみ――日本刀『ゆくし丸』と拳の交錯が火花を散らす。凶剣士の美貌がふと憂いを帯びた。
「剣戟の音は至高の音楽――せっかくの鎧、刀が無いのは残念だ。拳ではなく切り結べたなら、さぞかし愉しい遊戯となっただろうに」
「勇者の拳に不服とは、身の程知らずが!」
風に混じった血は、頬を幾重にも裂かれた巨漢のものだ。同時に巨漢の拳はイサギの肩にめり込んでいる。反発するように両者が離れ、その隙を埋めるように二匹のウイングキャットがリングを飛ばした。リングはあっけなく裏拳にはたき落とされて巨漢の足下に転がる。そのすぐそばで、砕けたアスファルトの欠片がネズミへと変じたのはそのときだ。
「何が勇者だ。お前には華々しい攻撃は勿体ねえ。そいつで充分だ……それでも中身のない奴よりは、よほど綺麗だろうさ」
『使役術師の黒書より抜粋(メタモルフォーシス) 』――慶の古代語魔法により生まれたネズミの群れは巨漢の足下から這い上がり、鎧に前歯をたてて齧りだした。首元まで上って来たネズミを、エインヘリアルが憤怒の形相で掴み、握り潰す。アスファルトの粉がこぼれた。
「コケにしやがって……背骨へし折られて同じことが言えるか、試してやる!」
虹色のオーラが集束した。巨漢の頬の傷が消え、鎧からネズミが吹き飛んで元のアスファルトに戻る。それでも最初に付加した怒りまでは消し飛ばせなかったか、拳を眩く輝かせ、巨漢が慶へと疾走する。不自由な左脚にオウガメタルを纏わせて慶が地を蹴るが、彼我の距離は縮まる一方だ。慶の眼前で、巨漢が大きく右腕を振りかぶる――。
がら空きとなった脇腹に、横合いからライドキャリバーが激突した。
「お待たせしましたのです!」
礫き倒された巨漢がライドキャリバーともつれながら転がる中、響き渡ったのは人々の避難を終えた赤ずきん――フェイトの声だ。
「遅いぞ赤ずきん」
マインドシールドでフィーを癒している陣内が苦笑して迎えた。
「いやほんとに遅かったな……どこで遊んでたんだ」
「あ、たまにゃんひどいのです。行かないでと引き止める紳士諸兄を振り切って、おっとり刀で駆けつけたのに! これもフィーさんから借りたドレスのせいですね。僕かわいいからなんでも似合って困っちゃう」
「そういうとこだぞお前」
フェイトが陣内にデコピンされて涙目になる。そこでフィーがむくりと起き上がった。
「ふぁんしーきゅーとなフェイトさん見て元気でた」
「俺が回復したからだろ」
「ここからは僕がメインでヒールします! 作戦は臨機応変です! さあ行きますよライデルさん!」
傷ついた仲間をエレキブーストで次々と癒していたフェイトが、転じた視線の先で目の当たりにしたのは、巨漢にボディをへし折られて消滅する愛機の姿だった。
「ふええええええライデルさぁぁぁん! よくもなのです!」
臨機応変。αδελ(アデル)の銃口から撃ち出したウイルスカプセルが巨漢の鎧で弾けた。間髪容れずにフィーもカプセルを投擲し、殺神ウイルスをぶちまける。重なる禁癒効果に虹色の輝きが翳った瞬間を逃さず、慶がハンマーを振るった。自らの代わりにへし折られたライデルさんの恨みを晴らすかのように、凍結の重撃を叩き込む。鎧が軋み、一部がひび割れた。
「バカな、輝き、が……!」
地面を無様に転がる巨漢に竜鱗が刺さった。カッツェの『死竜術―呪化粧―』に状態異常を増幅されて巨漢が苦悶する。息切れしながらも立ち上がり、オルンが突き出したスライムの槍を手刀で砕き散らす。
「輝きが消え……まだだ、まだ俺は……!」
「ぬるい――レッドデッドブロウ!」
飛び散るスライムは隠れ蓑に過ぎない。『紅手空拳』――イ・ドの真紅のオーラを纏う怪腕が、色褪せる鎧をアッパー気味に抉る。
血を吐いて巨漢がよろめいた先ではイサギが翼を拡げていた。振り上げた刀身には、陣内によって破壊力増加の加護が宿っている。
「見栄えだけ飾り立てた、只の虚ろに用は無いよ」
お仕舞いだ――無慈悲なまでに重く鋭い一刀が、生前は後藤と名乗っていたエインヘリアルに終わりを告げた。
●堪能するもの
「食いたいのか?」
修復が終わり、フードフェスが再開された。自分の肩からじっと屋台を見つめてる猫に陣内がぽつっと訊ねる。イサギがふっと口元を綻ばせた。
「たこ焼きかな、玉さん。買ってこようか?」
「タマって言うな。買うのは、頼む」
「三人前、追加いいか?」
屋台に向かいかけたイサギに、慶が指を三本立てた。
「俺とユキと、イ・ドのを」
「支払いは合理的に、各自の分をだな」
話が丸くまとまりそうな彼らの横を、フェイトが早足で通過した。そのあとを今回新たにファンになったらしい男性陣が追いかけていく。さらにそのあとをフィーがたこ焼きを食べながらのんびりあとを追っていた。
その集団とすれ違ったカッツェは大量のパック皿を抱えていた。焼きうどん、ねぎ焼き、ラジオ焼き……いったいいくつ屋台を巡ったのだろう。
ほくほくとお好み焼きを頬張るカッツェのあとを歩きながら、オルンがため息をついて、口が開いたままの財布をひっくり返す。
小銭一枚落ちなかった。
作者:吉北遥人 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年4月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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