●走れ! 解脱の果てまで!
先日、経営難から営業を停止したとある地方競馬場。
かつてはこの競馬場から中央へと躍進し、大レースを制した名馬たちもいたそうだが、そんなものは過去の栄光。
いまでは取り壊しの費用すらも工面できず、とりま施設を放置中。
そんな感じの場所で、
「さあ、各馬ゲートインだ!」
ハキハキとした声と共に、いの一番にゲートに乗り込んでゆくダチョウ。
勿論ただのダチョウではない。恐るべき力を持ったデウスエクス・ガンダーラ『ビルシャナ』である。
「ヒヒーン!」
そして、嘶き声をあげながらビルシャナに付き従う10人ばかりのおっさん達。
ウマ耳カチューシャと、付け尻尾をつけて、身も心を完全に『競走馬』へと昇華している。じつに眩暈のする光景である。
そして、もはや説明するのも野暮かもしれないが、とうぜん不法侵入である。
「でもね! そんなことはどうでもいいから!
人の法に縛られてちゃ解脱とか果たせねえから!
もう、そうゆう俗な発想が一番ダメだからね!
てか、はっきりいって人間自体がもう時代遅れだから!
競走馬こそ進化の到達点! 神聖にして至高の生き物なのは明白だからッ!
身も心も競走馬へと近づけることこそが光の国ガンダーラへと至る唯一無二の方法だからね!」
熱く語り始めるダチョウに信者達が喝采を送る!
「ヒヒーンッ!!」
テーッテテテーッテテテー! デデデデン!
どっかから謎ファンファーレが響いてくる。
「さぁいくぞオラぁ! 大レースのはじまりだァアア!」
カァン、と乾いた金属音が響き発進ゲートが開かれる!
栄光に向かって全力で走り出すおっさん達!
勝つのは一体どの馬なんだ――!?
●
とまあ、そんな感じの予知を語り終えたセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)がケルベロス達に向き直る。
「というわけで、皆さんにはこの『競走馬こそ至高!』という教義を唱えるビルシャナの討伐を依頼したいのです」
鎌倉奪還戦の際にビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で人間がビルシャナ化してしまう事件が多発している。今回の事例もその一つだ。
ビルシャナ化した人間は周囲の人間に自分の考えを布教して、配下を増やそうと目論んでいる。
「もしこの活動を野放しにすれば、ゆくゆくは空前の徒競走ブームが巻き起こり、日本が大ピンチになってしまうことは想像に難くありません……」
あ、徒競走って言っちゃったよ。
ともかく。ビルシャナの周囲にいる一般市民の男たちをそのままほうっておくと洗脳が完了しビルシャナの配下になってしまう。
もし戦いになれば身を挺してでも教祖を守ろうとしてくることになるはずだ。
「信者化した一般市民は戦闘能力は弱いものの、攻撃すると簡単に命を落としてしまうある意味で厄介な相手になってしまいます」
今回提示された作戦の成功条件はあくまでビルシャナの撃破のみであり、一般市民の生死はこれには含まれていないのだが――。
「可能であれば、彼等も助けてあげてください」
皆さんならきっとできます! と言わんばかりの瞳でセリカ。
「ええ……」
頭を抱えるケルベロスの面々。
セリカの話では、この場に集まっているのはビルシャナの教義に肯定的な人々であり「危険だから逃げろ!」のような説得では効果が無いとのことである。
つまり信者の説得を試みるのであれば、ビルシャナの教義を覆すようなパンチの利いたインパクトが必要になるだろう。
「あ、そういえば、このビルシャナの教義では教祖自身こそが最強不敗の競走馬であり特別に神聖視する存在のようです」
つまり、その不敗神話を覆すことが出来れば……。
予知によれば事件が起こるのは一週間後。
各自、決戦に向けて朝のジョギングをしてみるのもいいかもしれない。
「では皆さん、どうか宜しくお願いします」
そう説明を結び、セリカはケルベロス達に深く一礼するのだった。
参加者 | |
---|---|
蛇荷・カイリ(暗夜切り裂く雷光となりて・e00608) |
片白・芙蓉(兎頂天・e02798) |
シィ・ブラントネール(ウイングにゃんこ・e03575) |
久遠寺・眞白(豪腕戦鬼・e13208) |
シデル・ユーイング(セクハラ撲滅・e31157) |
カテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272) |
エドワード・リュデル(黒ヒゲ・e42136) |
ウィリアム・ライムリージス(月を渡る紅・e45305) |
●パドック
春一番が吹き抜けて、本日は気持ちの良い快晴。
暖かな風に誘われて、芝(ターフ)を駆け抜けるのは8頭の名馬たち――。
「皆さんこんにちは。国際混合ビルシャナカップ芝3200m。
実況は私ウィリアムと、解説にシィくんをお招きしています。本日は宜しくお願いします」
「よろしくお願いするわね!」
実況解説席に座るウィリアム・ライムリージス(月を渡る紅・e45305)とシィ・ブラントネール(ウイングにゃんこ・e03575)がペコリと一礼。
「さぁ、まずはパドックよ」
シィが視線をあげると上部モニターに中継が表示される。
「1番、セクハラボクメツメガネ」
まず入場するのはシデル・ユーイング(セクハラ撲滅・e31157)。
シデルの出で立ちは馬の被り物(赤縁眼鏡付き)にビジネススーツ&パンプスという馬OLスタイル。
「たとえ馬になろうとも、フォーマルさは決して崩さない。そんな鋼鉄の意志を感じさせます」
実況の言葉を受けてメガネの縁をツイっとあげるシデル。
フォーマル&メガネ。これぞ戦う女の勝負服。
「意志の強さは走りの粘り強さに直結する部分よ。これは要チェックね!」
不敵な大穴シデルを見て観客のおっさんたちが競馬新聞に赤丸チェックを入れてゆく。
ちなみにこの競馬新聞、発行人はウィリアム氏である。thank you。
「2番、ライトニングコブラ」
続いて蛇荷・カイリ(暗夜切り裂く雷光となりて・e00608)が入場。
髪はポニーテールに束ね、お尻の上で揺れるのは付け尻尾。
走りやすさ重視のショートパンツとトレーニングウェア。気合いも馬成分も十分である。
「押しも押されもせぬ堂々の対抗馬。ファンの期待に応えることが出来るかライトニングコブラ!」
観客の声援に応えてカイリが両手を振ると、トレーニングウェアが少し持ち上がって形の良いへそが露わになる。
「おお……」
なんと健康的な美しさ。
観客のおっさん達も、これには思わず鼻の下が伸びて馬面不可避。
続いて――。
「3番、クノイチウエスタンただいま参上でござるよ!」
元気いっぱいにパドックに入場してくるカテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272)。自称、永遠の3歳馬。
「さあ、はるばるテキサスからウワサのじゃじゃ馬がやってきました」
「現役ガチ忍者のクノイチウエスタン。その末脚が炸裂するか期待大ね!」
栗毛色のビキニに白ブーツ、白手袋に馬耳カチューシャ&付け尻尾。
尾花栗毛を再現したキュートスタイルのカテリーナ。
「皆の衆ー! 応援ヨロシクでござるよー! HAHAHA!」
可愛くウィンクしてファンサービスも欠かさない。
「ほう、この馬体で3歳馬……」
陽光を浴びて輝く、カテリーナの豊満なる肢体。さすがは海外……といったところか。
「へへ、こいつはとんでもねぇクロフネの登場だぜ……」
しかも、彼女はまだまだこれからの成長が期待できる3歳馬。
希望が溢れる圧倒的な未来へと想いを馳せるおっさん達。鼻の下伸びっぱなし。
そして続くのは可愛い枠からの新たなる刺客――。
「4番、モフリシャスラビット」
「可愛くってごめんなさい! 私よ!」
人参をもしゃつきながら、ぴょんこぴょんこと軽快に進み出るのは片白・芙蓉(兎頂天・e02798)。
ウサギ特有の純白の白毛がなんとも可愛らしい。
「へぇ、珍しいな白毛……って、ウサギさんじゃねぇかッ!?」
信者のおっさん達、思わずツッコむ。
「……ウサギって出走OKなのか?」
え、ダチョウはスルーするくせに、そこはちゃんと反応するのかよ!?
ご意見ごもっともだが、今さらその件を持ち出してくる面倒くさいおっさん達。
「フフフ……まったくやれやれ、ね」
おっさん達に対して「まるで解っていないわ」と肩を竦める芙蓉。
「兎のおめめは外にあるわね。馬も一緒ね」
「え、うん」
頷きを返すおっさん達。
「兎はにんじんを良く食べるわ。馬も一緒ね」
「まぁ……確かに」
互いの顔を見合わせながら、頷きを返すおっさん達。
「そう馬も実質兎、兎は実質馬なのよ!」
「な、なんだってーッ!?」
ウサギ=ウマの新説が発表されて驚愕するおっさん達。
さらにテレビウムの梓紗が、
『兎は馬、馬は兎』
と、動画を流して芙蓉を援護射撃。サブリミナル効果もばつぐんだ!
「そっか! 馬なら大丈夫だね!」
洗脳がキマッているのかおっさん達の判定は甘々だった。こうして芙蓉の出走は華麗に認可を得たのだった。
次!
「5番、ケイヴクノイチ」
続いて入場、久遠寺・眞白(豪腕戦鬼・e13208)。
「私は馬、私は馬……」
なんかメッチャ呟いている――。
「ほう、これは……」
玄人っぽいおっさんが眞白を見て感嘆の声をあげる。
馬の着ぐるみを全身に着込み、馬のぬいぐるみを入念に触れて馬の気持ちの理解に努めている眞白。
どこか強キャラ感を漂わす馬具(ガントレット)も心憎い。
「だがそれだけではないな……この馬が放つ、この香り立つかのような覇気は一体……?」
そう、眞白はこの一週間、桜肉とニンジンを食べ続けて体内のUMA濃度の増強に努めたのだ。
「なんという馬オーラ……こいつはいい走りをしそうだぜ」
完璧な仕上がり具合でレースに臨む眞白の姿を見て、玄人のおっさんがニヤリと微笑む。
「続きまして6番、レトラ。馬主はなんと解説のシィくんであります」
執事服を着たシャーマンズゴーストがパドックに入場すると、シィが黄色い声援を送る。
「そう! 銀河系一の紳士!
最近、ピアノ演奏、紅茶淹れ、フォークリフト運転、たこ焼き作り等の技能も習得!
万能無敵の究極執事・シャーマンズゴーストのレトラよ!」
主からの紹介を受けて優雅に一礼するレトラ。
彼のスーパーな活躍を知りたくば、過去の報告書を参照されたし!
(フォークリフトとたこ焼きって――)
それも執事の業務なのだろうか、と悩むウィリアム。
まさに謎に包まれたダークホースのレトラ号。
そして続くは――。
「7番、ビアードクライシス」
おおっと、入場してきたエドワード・リュデル(黒ヒゲ・e42136)は、なにやら本を持ってるぞ?
「ちょっとカメラをズームアップお願いします」
本の表紙を目撃したウィリアムが思わず目をカッと見開く。
「ああッ! あれは伝説の競馬マンガです!」
それは、笑いあり、涙ありの物語。
心優しき珍獣と、それを取り巻くライバルたち。そして競馬を支える人々との絆が描かれた超・名作漫画ッ!
「親分……。拙者、頑張るから……!」
どうか見守っていてほしいでござる、と青空に向かって語り掛けるエドワード。
その頬を一筋の涙が伝う。
「泣いてるわ……」
「泣いてますね……」
実際、涙なしでは語れない作品である。やむなし。
青空に誓う約束。いきなり強烈な勝利フラグをおっ建てるエドワード。
そしてトリを飾るのは――。
「8番、サトリガンダーラ」
単勝倍率1.1倍。圧倒的な一番人気でビルシャナ登場。
「さすが神馬サトリガンダーラ! 王者の風格すら漂わせてます!」
その実力は最強無敗。まさに生きる神話と言って過言ではない。
「うおおお! 教祖様ァアア!」
「かーみ! かーみッ! かーみッ!」
熱狂の歓声を響かせるおっさん達!
堂々たる様子で首を廻し、パドックに居並ぶライバルたちを睥睨するダチョウ。
「クッフッフ……なかなか活きの良い馬が揃ったようだな」
ダチョウが、ついてこい、とばかりに本馬場へ続く地下道を歩み始める。
「さぁ、レースを始めようか……!」
世紀の一戦が今、始まる。
●ビルシャナカップ
テーッテテテーッテテテー! デデデデン!
どっかから謎ファンファーレが響く。
緊張の面持ちでゲートインしてゆく各馬。
「封印……解放」
眞白が小さく呟くと、身に着けていた馬具(ガントレット)が、プシュー! と蒸気を吐いて外れてゆく。
地に落ちると同時に、ズウンと地響き立て、芝生へとめり込むガントレット。
「あ、あの馬具は一体!? ものすごく重そうな音がしましたよ!?」
「どうやらあれは枷だったみたいね! ケイヴクノイチ。まだ実力を隠していたなんて……!」
バトル漫画でよくあるやつだコレ!
恐るべきサプライズを見せつつ眞白もゲートイン。
「……」
固唾を飲んで見守る観客達。一時の静寂、自分の鼓動だけが妙にうるさい。そして――。
カァン! という金属音と共にゲートが開かれる!
「さぁ、各馬ほぼ揃ったスタート。熾烈な先頭争いを繰り広げるのはモフリシャスラビットとライトニングコブラ!」
「風になるわ! ついてこれるかしらッ!?」
出し惜しみなど不要とばかりに、スタートから全力の芙蓉!
跳ねる、跳ねる! ウサギが跳ねる! 背中に乗っけたぬいぐるみ(騎手)も荒ぶっている!
「モフリシャスラビット、まさに脱兎の如し!」
同じく、初っ端からトップギアで駆けてゆくカイリ!
「やるからにゃあ、最速を目指すのが私ってもんだわさ!」
その闘争本能に呼応するように、バチッと紫電がカイリの周囲で爆ぜる。
「こ、これは! ライトニングコブラが雷光を纏う! その姿はまさに芝を駆け抜ける雷神!」
剣道で鍛え抜いた足腰による、武御怒槌(タケミカヅチ)走法。
「軽快に逃げる2頭! そこから6馬身ほど離れてレトラ」
紳士的クラウチングスタートを決めて好ポジションについたレトラ。
「レトラはサーヴァント、つまり重しになる防具もアクセサリもない!
その上で完全装備のケルベロスに匹敵する能力を持つワタシのレトラに負けはないわ!」
シィの応援にも熱が入ってゆくぞ。
「続いて4番手にケイヴクノイチ」
「私は馬、私は馬……」
まだ呟いていらっしゃる……。
戦言葉なみの自己暗示だ。
「そこから更に3馬身。中央からレース展開を窺うヒカリガンダーラ。一番人気はここにいた。不気味な位置ですね。どう思われますかシィさん」
「長い3200m。焦る必要はない、といったところかしら……?」
「さて、このヒカリガンダーラのすぐ後ろ。ピッタリとマークするのはビアードクライシス」
老練なる差し馬型のエドワードは一番人気に狙いを定めて追走。
「百戦錬磨のビルシャナといえど、これは意識せざるを負えないはずよ! これはグッジョブね!」
執拗に追われることで、一番実力のある馬でも自分の走りを見失ってしまう展開は珍しくない。焦りとはスタミナを奪うものだ。
「明日は筋肉痛でござろうなぁ……」
苦笑しながらエドワード。彼がどこまでビルシャナに喰らいついて行けるかが攻略の鍵か。
「やや離れてセクハラボクメツメガネ」
正統派なフォームで駆け抜けるシデル。ウマの被り物のクオリティが妙に高いが、前がちゃんと見えているのか不安が残る。
「そしてクノイチウエスタンが最後方。脚を温存する作戦か。もう一度先頭を見ていきましょう。
先頭はライトニングコブラ、2番手にモフリシャスラビット。
ここまでは大逃げ二人旅です」
だがー―。
「さぁ、コーナーへと差し掛かかります。
と、おおっと、ライトニングコブラ。そのスピードゆえかコーナーを曲がり切れず大外へと逸れてゆく!」
「外ラチにぶつかるわ!?」
観客たちも息を飲んだ瞬間!
「ていやっと!」
さながら水泳のターンの如く、外ラチを蹴って方向転換をキメるカイリ。
「こ、これは驚きました、ライトニングコブラ復帰」
距離損はあるものの最高速度は維持。再び先頭争いに喰い込んでゆくカイリ。
「フフフ、そうこなくっちゃね」
再び迫ってきたカイリの姿に芙蓉が微笑む。
この2頭がレースを引っ張りながらレースは中盤へと差し掛かってゆく。
「モフリシャスラビットが向正面を通過。これは速い。手許の時計ではコースレコードに迫りそうなペースです」
そして、ここでレースが大きく動く。
「流石はケルベロス。なかなかやる……だが、ここまでよ! 神の末脚の前にひれ伏すがいい!」
前方へ倒れ込むかのように、極度の前傾姿勢を取るビルシャナ。
その蹄鉄が大地を穿ち、芝と土が跳ねあがる!
「こ、これはァ――! ヒカリガンダーラ、早くもスパート開始か! なんというスピードだ!」
エドワードの追走を嫌ったか、ビルシャナがここで引き剥がしにかかる!
「うぬぬ! こしゃくな!」
黒鉄の暴走機関車ビアードクライシスが負けじとこれを追う!
「最後に寝首を掻きに……いえ、逆転を狙いに行きます」
キラーンとシデルのメガネが輝く。
ドドドドッ! とさながらミシンの如き高速の蹴足で、地面にパンプスを打ち込み加速してゆくシデル!
「第4コーナー侵入……そろそろでござるな!」
荒れた内ラチ際のインコースを避け、これまで後方でスタミナを温存してきたカテリーナも仕掛ける。
「もの凄い末脚だ! クノイチウエスタン! まさに炸裂!」
その荒ぶる胸元に観客も総立ちである。
「来た! ヒカリガンダーラ! ビアードクライシス! セクハラボクメツメガネ! 大外からはクノイチウエスタン!」
「うおおお!!」
馬券を握りしめながら、観客達が割れんばかりの歓声を送る!
「さあ最後の直線! 各馬、差が縮まってきました!
粘れるかモフリシャスラビット!
大外から迫るライトニングコブラとクノイチウエスタン!
レトラが突っ込んでくる! 主のために勝利を捧げられるか!
馬群を割って強引に道を作ろうとするヒカリガンダーラだがビアードクライシスがこれを阻む!」
残り50ⅿ!
「ハァ、ハァ! ……そ、そんなバカな! こ、この私が一杯だとッ!?」
ビルシャナが目を見開く。
どの馬も生まれた時代さえ異なっていれば、それぞれがG1を獲る実力を備えていたに違いない。
その群雄割拠の中で、僅かに前へ抜け出たのは――。
「負けない、私の前は、もう走らせない――!」
この一週間を肉体改造と自己暗示に費やし、身も心も馬へと昇華させた眞白。
競走馬の魂をその身に宿して、ゴールラインへとその鼻先を叩きつける!
「ゴールイン! 一着はケイヴクノイチ! 二着にはビアードクライシス! 見事に差し切りました!」
「うおおおおおッ!!!」
紙くずになった馬券が、まるで桜吹雪のように春風を舞う。
ケルベロス達はビルシャナの不敗神話を打ち崩すことに成功したのだ!
信者は正気を取り戻した!
「ま、まだだ! ここでお前たちが死ねば、最強馬の称号は私のままだァ!」
ダチョウが最後の悪足掻きで「うおお!」と突っ込んでくる。
「……そもそもですね」
迫りくるビルシャナに臆することなく、メガネを持ち上げるシデル。
「あなた馬じゃなくて鳥類でしょうが!」
馬の脚力を思い知れ、とシデルの蹄鉄(パンプス)が廻し蹴りでビルシャナに突き刺さる。
「ぎゃああッ!!」
吹っ飛んで星になるダチョウ。
競走馬ビルシャナ撃破完了だ。
作者:河流まお |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年4月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 12/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 3
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