笑声を叫喚に

作者:刑部

 東大阪市の花園中央公園。
 子供に大人気の大型コンビネーション遊具が有名なこの公園は、休日という事もあり沢山の親子連れで賑わっていた。
 はしゃぐ子供達の声を遮る様に、ドーン! と大きな音が響き砂煙が上がる。
 何が起こったか分からないままも、とっさに子供に覆いかぶさる母親達の姿の向こう。
「愚劣ナ人間ドモヨ、サァ……ワレらにグラビティ・チェインをヨコセ……」
「ワレらをオソれヨ、そしてキョゼツせよ。その全テガドラゴンサマのカテとナルのだ」
 砂煙の中から4体の竜牙兵が現れ、近くに居た親子連れに斬り掛る。
 先程まで公園に溢れていた子供達の笑い声は、たちまち阿鼻叫喚の悲鳴へと彩られたのだった。

「東大阪市の花園中央公園に竜牙兵らが現れて、親子連れを殺戮する予知が見えたで。ヘリオンかっ飛ばすから、この竜牙兵らがやる凶行を止めて欲しいんや」
 杠・千尋(浪速のヘリオライダー・en0044) が、集うケルベロス達を前に口を開く。
「奴っこさんらが出て来る前に避難勧告をすると、他の場所に出てしまいよるから、事件を阻止出来んようになって被害が拡大してしまいよる。
 竜牙兵が出て来て、みんながヘリオンから降りて戦場に到着した後やったら、警察による避難誘導を始められるさかい、一般人の避難はそっちに任せて、なるべく早う竜牙兵をぶちのめしたってや」
 と、到着後に警察による避難の準備が出来ている事を伝える千尋。

「現れる竜牙兵は4体。全員がハルバードで武装しとる。
 奴っこさんらは劣勢になって敗北濃厚になっても、戦意を失う事無く戦いを続けるみたいやから、最後まで気を抜かんと十分注意せなあかん」
 とケルベロス達の目を見て千尋が念を押し、
「攻撃を仕掛けて来る自分らを放置してまで、一般人の虐殺を優先するとは思えへんから、まず素早く近くの親子を庇いながら攻撃を仕掛ける事やな。大型コンビネーション遊具の近くに現れるから、もしかしたらそれが障害物になるかもしれへんから気をつけてや」
 と状況について説明を加える。
「休日の楽しい一時を過ごしている親子を狙うとは……許しておけませんね」
 彩咲・紫(ラベンダーの妖精術士・e13306) が、ラベンダーの花を咲かせた淡い紫の髪を揺らすと、
「その通りや。この虐殺を見過ごす訳にはいかへん。みんな頼んだで!」
 と千尋が発破を掛けるのだった。


参加者
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)
アッシュ・ホールデン(無音・e03495)
四方・千里(妖刀憑きの少女・e11129)
神野・雅(玲瓏たる雪華・e24167)
クラリス・レミントン(銀ノ弾丸・e35454)
イーシャ・ナオシアーノ(超実践派独学医療術師・e41404)
鹿島・信志(亢竜有悔・e44413)
鵤・道弘(チョークブレイカー・e45254)

■リプレイ


 東大阪市の花園中央公園。
 子供達の笑い声が響く大型遊具付近に、突如4本の巨大な牙が突き立った。
 笑い声が悲鳴に変わり、何が起こったか解らないまま子供に覆い被さる母親の姿。
「愚劣ナ人間ドモヨ……ワレらにグラビティ・チェインをヨコセ……」
 砂煙の中、巨大な牙が竜牙兵に変じ咆哮すると、状況を理解した母親達の悲鳴と子供達の泣き声が響く。
 そこに次々と何かが落ち来て新たな砂埃が巻き起こる。
 その一つから飛び出した男が素早く眼鏡を外し、そのまま流れる様な動作でナイフを構えると、得物を振り上げた竜牙兵と、その先で子供を抱いて蹲る母親の間に割って入る。
「邪魔ヲするナ!」
「……逃げろ」
 今為さねばならぬ事だけを端的に伝えた男……鹿島・信志(亢竜有悔・e44413)は、咆哮と共に振り下ろされるハルバードをナイフで受けてその刃を逸らす。
「愚劣なのは、そっちでしょ。家族で過ごす楽しい思い出に、恐怖や憎悪は要らないの」
 親子連れの位置が近かった為、降下中の攻撃を諦めたクラリス・レミントン(銀ノ弾丸・e35454)の声がガスマスクから漏れ、避難を呼び掛けながら、信志を攻撃しようと駆け寄るもう1体の竜牙兵目掛けて弾丸をばら撒き牽制する間に、
「さぁ……竜の下僕供。彼らは忙しいんでな、代わりに私達と遊んで貰おうか」
 竜翼を広げた神野・雅(玲瓏たる雪華・e24167)が、その竜牙兵の眼前に降り立ち、オーラを纏った拳を繰り出す。
 竜牙兵のそばに遊具がある為、一般人を庇いつつ三方から竜牙兵達を包囲する様に攻撃を仕掛けるケルベロス達。その動きに反応し、薙がれたハルバードの刃を止めたのは妖刀”千鬼”。
 其を握る四方・千里(妖刀憑きの少女・e11129)が、堪える様に噛んだ奥歯がギリッと鳴る。
「退けィ、コムスメッ!」
「生憎と君の魂をコイツに吸わせるまで退けないな……」
 言の葉で圧を掛ける竜牙兵に緋色の瞳を向け、千里を睨み返す竜牙兵は横合いから飛び込んで来た影に身を捩ると、その隙に千里はハルバードを押し返す。
「なかなかいい反応するじゃないか。さぁ、千里の嬢ちゃんだけじゃなく、おっさんも相手してくれよ」
 と2本のナイフをくるくると回し、逆手に構えたアッシュ・ホールデン(無音・e03495)が静かに腰を落とすと、その後ろから飛んで来たナパームミサイルに対し、風車の如くハルバードを回して防ぐ竜牙兵に肉薄するも、別の竜牙兵が起こした衝撃波に当てられ後退する。
「まったく、子供が安心して遊べないとは世知辛い事だ。無邪気な子供達を殺戮させてたまるかよ、とっととくたばりやがれ!」
 先程放ったナパームミサイルに続き、鵤・道弘(チョークブレイカー・e45254)が放った竜砲弾が大型遊具を震わせる。
「ひっ……」
 その大型遊具の影、ケルベロス達から死角になった所に男の子が一人うずくまっていた。
「もう大丈夫。私達ケルベロスが、必ず貴方を守ります」
 頭上からの声に男の子が顔を上げると、灰色の逆立てた髪に青白く痩けた頬、三白眼にレンズの小さな丸眼鏡の男が、歯を見せて笑っていた。
「……こ、ころさないで……」
 大きく目を見開き再びうずくまる男の子。
「……予想された反応なので気にしてはいません。えぇ気にしていませんとも……」
 虚空に向かってそう語り掛けたイーシャ・ナオシアーノ(超実践派独学医療術師・e41404)は、殺されると騒ぐ男の子を抱えて離脱を図る。
「ではーイーシャさんの連れている子で最後ですねー。では、後は宜しくお願いしますー」
 避難誘導を担当する警察の隊長の報告を受けたフラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)が、くるっと背を向け仲間達と矛を交える竜牙兵に向き直ると、銃で撃たれたかの様に上体が仰け反り、展開したサークレットから地獄が迸った。
「亞ア亞ぁ唖ア、域の中ハ屠るの未。疾クトく跳ネん、白兎ノ如ク!」
 金色瞳を開眼させ、狂嗤を上げたフラッタリーは仰け反った上体を前のめりにし、獣の如く竜牙兵達目掛けて駆け出した。


「皆殺シニして屍ヲ晒シテくれるゾ、ケルベロス供メ!」
 4体の竜牙兵が一斉にハルバードを薙ぎ、横撃と生じた衝撃波が大型遊具の一部を破壊しルベロス達を押し返す。
「ヒィィーッハァ! この私が居る限り、誰一人怪我など負わせなァァァイ! 誰一人としてだァァアァ!」
 哄笑したイーシャが、直ぐにオウガ粒子を放出して味方の回復を図り、
「屍を晒すには貴様らの方だ。私達ケルベロスが立つ限り、人々は護られる故に」
 斬撃に肩口を裂かれるも雅は退く事なく、その刃に呪詛を乗せて斬り掛る。
「同じ事を繰り返す根性だけは褒めてあげる……無駄だけど……あ、それともドラゴンが何も考えず、君達を捨て駒にしているのか……?」
 小馬鹿にした調子で竜牙兵を煽った千里が、今雅が裂いた竜牙兵に空の魔力を帯びた刃を振るいその傷を広げると、アッシュが続いて飛び蹴りを見舞い、
「我らガ主ヲ馬鹿にするのは許サンぞ!」
 反撃に出ようとする竜牙兵達目掛け、向けられたのはフラッタリーの『蝶之掌』。
「只爆ゼ、唯gaぜ、塊ヲ散ラシ慟哭ヲワタシの耳朶ニ!」
 その掌に膨らんだ光弾が、斬り結ぶ信志と千里の間を抜ける様にして、竜牙兵に爆ぜると、タイミングを合わせたクラリスの放った弾丸が続け様に竜牙兵の頭上で爆ぜ、フラッタリーの光弾を受けなかった竜牙兵に、雷鳴の如き轟音と共に降り注いだ。
「フラッタリー殿の光弾に灼かれたのが前衛だ、畳み掛けるぞ!」
 その閃光に雅が気勢を上げると、道弘が跳躍し鋭い蹴りを見舞い竜牙兵の顔を蹴って跳び退くその下、
「隙あり」
 道弘に意識が向いた竜牙兵の隙を狙い、千尋が放ったエネルギー光弾が流れ星の如き軌跡を描いて竜牙兵に炸裂する。その爆ぜたエネルギーが晴れやらぬ内に肉薄し、
「恨ミ辛三妬mI無苦。唯々渇キ、飢ヱ、欲ス。アァ……ョ! ……ヨ! 焚ベヨ! クbEヨ! 焔ニ擲テェ――!!」
 奇声を上げたフラッタリーが、具現化させた黒い地獄の爪で竜牙兵の胸元を大きく裂いた。
 その一撃に片膝をついた竜牙兵を庇う様に、後ろの2体が得物を振り回して衝撃波を飛ばし、前衛のもう1体がフラッタリーに鋭い突きを繰り出す。
「ドゥーッツストォーープ! 怪我はここでお仕舞いィッ! 治療の時間だァァァッ!」
 複数のメスを手に愉悦の笑みを浮かべたイーシャが、むしろ殺すのでは? という勢いで、直ぐ様フラッタリーに強引な緊急手術を施した。
 剣戟の音が響く度に遊具の部品は折れ飛び、大地は双方の血を吸い赤く染まってゆく。

 遠巻きに囲むパトカーが、近づかない様に拡声器で呼び掛ける声が、
「ここは堪えどころだろ、気合い入れていけ――押忍!」
 道弘による叱咤の一喝に掻き消される。
 イーシャが千里の回復を図ったタイミングで、連続攻撃を受けた雅を叱咤したのだ。
 その叱咤に持ち直し竜牙兵に振るう雅の刃が、ハルバードに止められ重い金属の衝突音が響く。
「……どう? かな?」
 その雅の大鎌とハルバードの刃がぶつかる下に滑り込む様に体を入れたクラリスが、『猫の手』から伸ばした爪の如き刃を竜牙兵の脇に叩き込み、フードから覗くピンク色の瞳で竜牙兵の表情を伺う。
「小娘ガ!」
 ギロリと睨み返した竜牙兵が、ハルバードを回転させ石突側をクラリスに突き入れるが、先程の一撃で刻まれた各種バッドステータスが勢いを増した影響か、その一撃は精彩を欠きクラリスは余裕で跳び退さる。
 その退くクラリスと入れ代る様に灰色の髪が棚引き、
「いい一撃だクラリスの嬢ちゃん。ま、後は任せな」
「先輩ケルベロスとして、頼りにしてる」
 交差する一瞬、短い言葉と視線が交わされ、アッシュは雅に続いて信志を相手取る形になった竜牙兵の死角に一気に踏み込み、右脇の下に刃を突き立てた。
「グガァ……卑怯者メ!」
「卑怯? 笑わせんじゃねぇ……此処は戦場、綺麗事で生き残れるほど甘かねぇよ」
 ぐるりと顔を向けた竜牙兵の言葉を鼻で笑うアッシュは、そのままイーシャの援護を受けながら別の竜牙兵を押ええる千里とフラッタリーに加勢すべく駆け出す。
 竜牙兵にアッシュを追う余裕は無い。
「邪道もまた道也。纏うが邪であってもその刃に宿し道が正道なれば……」
 紡ぐ言の葉と共に信志の右腕にグラビティ・チェインが流れ込み、溢れ出た血潮がその刃を赤黒く染め上げる。
「切裂き抉るは我が化身。その魂を持って贖え!」
 そして振るわれる一閃。竜牙兵はハルバードの柄でそれを防ごうとするが、脇と右脇の下から奔る激痛に顔を顰め、その手からハルバードがこぼれ落ちる。
 次の瞬間、信志の放った惨爪剔抉の一閃が苛虐な血龍となって竜牙兵の魂を引裂き、竜牙兵が大きく口を開けたまま、落ちたハルバードの後を追う様に地面に崩れ落ちた。
「よーし、これで均衡は崩れた。後は押して押し捲るだけだな」
 歯を見せて笑った道弘が、残る竜牙兵目掛け竜砲弾を放って信志の肩をバンバンと叩き、
「ああ、一気に畳み掛けよう」
 竜牙兵の返り血を浴びた顔で笑顔を返した信志は、そう応じると味方の士気を鼓舞する様に、スイッチを押してカラフルな爆煙を起こした。


 前衛の一角が崩れた事で、戦況は一気に動く事になった。
 残る1体となった前衛に攻撃が集中する上に、ケルベロス側に次々とエンチャントが付き、回復手段を持たずバッドステータスを重ね塗られた竜牙兵側は、防戦一方の様相を呈していた。
「おのれ……オノレおのれケルベロス供ッ!」
 殺意を漲らせた前衛の竜牙兵が、満身創痍ながらも渾身の力を込めハルバードを繰り出すも、麻痺の影響もあってその矛先は鈍り、ぎりぎりで躱した信志はその柄を脇に挟む形で押え込む。
「行けっ!」
 手繰り寄せようとする力に抗し、踏ん張りながら信志が声を上げると、
「私は人を傷つける奴は大嫌いだがァー、人を傷つける奴を傷つける事に関しては、一切の躊躇はないのだァーッ!」
 口角を上げ高笑いしたイーシャが両腕を広げると、その腕の起動に沿う様に飛び出た光の戦輪が、弧を描いてハルバードを手繰る竜牙兵に突き刺さり、
「汝、断罪者にして罪人。その身は全てを凍てつかせ、その顎は全ての罪を噛み砕く。汝が名は――」
 雅の詠唱が現れ出でた絶対零度の蒼き氷竜の咆哮に掻き消され、駆けた氷竜が竜牙兵に食らい付くと、霜の空気が晴れた跡には、ぐしゃぐしゃに噛み砕かれた竜牙兵の骸だけが残される。
 その間に中衛の竜牙兵と斬り結んでいた千里。
 『千鬼』とハルバートの刃がぶつかると、体を回転させて逆側から斬り掛り、竜牙兵も千里と反対側に体を回転させ、もう一度刃と刃がぶつかり金属音を響かせる。
「死の恐怖を前にしても揺るがない戦意は見上げたものだね……その魂……糧にさせてもらう……」
「ホザケ! ……ムゥ」
 千里の言葉にそう返した竜牙兵だったが、千里の肩越しに1体を屠った雅や信志が向かって来るのを見て眉を顰めた。その頭上から、猛禽類の如く強襲するはフラッタリー。
「呵呵、隙多シ怯防勇戦非ズ!」
「奇襲スルなら黙して行うノダな!」
 その笑い声に反応し、声を出しては奇襲にならないと、竜牙兵は空中で身動きの取れないフラッタリーに得物を振るうも、フラッタリーはそこに足場があるかの如く、虚空を踏み更に跳躍する。
「何処ヲ御覧二? 刎ネル兎ハ此方手゛スワ」
 思いがけず空振ったハルバードの動きに体勢を崩した竜牙兵を見て、ニタリと笑ったフラッタリーが振るう黒い手刀。
 着地した彼女の後ろに、驚愕に目を見開いた竜牙兵の首が転がった。
 最後の1体は、アッシュとクラリスによる連携のとれた動きにより完全に抑え込まれ、仲間を助ける事すら出来ないでいた。
「もう諦めらたどうだ? それともケルベロスには勝てない、怖いよドラゴン様助けて~、って親玉に縋るか?」
「貴様ッ!」
 2本のナイフを操り鍔迫り合いを演じるアッシュが、小馬鹿にした調子で竜牙兵を挑発し、激昂し踏み込んだ竜牙兵が槍を繰り出すより速く、
「バカの一つ覚えだね」
 クラリスのガトリングガンが火を噴き、竜牙兵に銃弾を浴びせる。
 先程からアッシュが挑発し竜牙兵が突っ掛ったところに、クラリスが横撃を見舞うというこの動作の繰り返しで、竜牙兵に出血を強いていた。
 その竜牙兵の周りをケルベロス達がどんどん包囲し、次々と放たれる攻撃にその身を削られてゆく。
「オノレ……」
 ハルバードを杖代わりにし肩で息をする竜牙兵が、恨めしげな瞳でケルベロス達を睥睨する。
「終わりにしましょう。貴方という存在は、あの子たちの健康に悪い」
 真面目な顔をしたイーシャが、ゆっくりと首を左右に振り諭す様に語るが、
「小賢シイ口ヲ聞くナケルベロス供!」
 竜牙兵は咆哮し、ハルバードを振り上げ踏み出した。その眉間目掛けチョークの如き真直ぐに体を延ばした白蛇が吸い込まれてゆくと、後頭部から突き出て赤い舌を出す。
「ド……ドラゴン様、二……栄光……あれ……」
 かすれた声でそう呟いた竜牙兵が膝から崩れ落ち、そのまま前のめりに大地に体を投げ出し、動かなくなったのである。
「お前らの襲撃に怯え、今時こんなでけぇ公園も貴重なんだよ。そのささやかな平和を壊すんじゃねぇ」
 戻って来た白蛇を腕に収めた道弘が、既に動かなくなった竜牙兵の背中に語り掛けたのだった。

「掃滅完了だ。あぁ、規制を解除してもらって構わない」
 アッシュから竜牙兵の討伐完了を伝えられた警察が規制線を解く中、
「今日は流石にもう無理だろうけど、また子供達が遊べる様にしておかないとな」
 雅が言う様に、ケルベロス達は派手に壊れた大型遊具のヒールに掛っていた。
「冒頭は有名ですがー、その後は中々出ないですわねぇー」
「なんかチューリップが生えてきました……」
 いつものおっとりとした調子に戻ったフラッタリーも、鼻歌を歌いながらヒールを施し、ヒールした場所から金属のチューリップが生えて来たのを見た千里が、かわいらしく小首を傾げる。
「別にいいんじゃない。子供達にまた沢山遊んで貰ってね」
 目を細めたクラリスがそのチューリップを撫でる中。
「ヒールで治るのはいいんだが、この折れ飛んだ部品は粗大ごみでいいのか?」
「適当にヒールすればくっつくんじゃないか?」
 信志と道弘が、周囲に折れ飛んだ金属パイプを拾い集めていた。
「死者も無く大きな怪我も無く。こうして遊具も元通りと、素晴らしいですね」
 最初より若干ファンタジックになった遊具を見上げ、イーシャが満足そうに頷く。
 子供達の笑い声が聞けないのは残念だったが、遠くない未来にこの公園が子供達の笑顔と笑い声に溢れる事を思いながら、ケルベロス達は花園中央公園を後にしたのだった。

作者:刑部 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年5月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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