●人を見下すボンボン学生
学生といえば、まだまだ親の庇護を受けている者も多い。
多少アルバイトをしていたとしても、学生は自由になるお金がままならないことも珍しくは無い。
しかしながら、とある大学生、国木田・了はそうではないようで。
「いやあ、貧乏学生諸君。我が大学へとようこそ!」
神奈川県の某大学で往来を歩く学生へと、国木田は叫びかける。
自サークルの勧誘を行う彼だが、とてもじゃないが人を見下すような彼の元に新入生など集まるはずも無い。
ただ、国木田は自身に否があることなど全く気付くこともなく。
「あれえ、僕の装飾に目が眩んだのかな?」
その体の至るところに、金銀宝石のアクセサリーがつけられている。
それだけにトラブルを恐れてか、新入生だけではなく在校生ですらも彼を避けていた。それなりに悪名高い男なのだろう。
結局、誰一人勧誘できず、国木田は1人、サークルの部室へと戻ることになる。
「やれやれ、生まれ持った僕の気品はあまりに眩しすぎるようだね……」
そんな勘違いしたセリフを呟く彼の背後から、緑を基調とした踊り子の衣装を纏う女性が近づいてきて。
国木田の財力に目をつけた女性の正体は、シャイターン「炎彩使い」緑のカッパーだ。
口元を吊り上げたカッパーは緑色の炎を燃え上がらせ、国木田の体を燃え上がらせた。
「おあああああっ!?」
瞬く間に、国木田の体は燃え尽きてしまったかに見えたが、体が作り変えられて大きく膨れ上がる。
程なくして、彼は3mほどの巨体となり、その体には白銀の鎧と白金の剣を身につけていた。
「やっぱり豪華な武具が一番よね。私が迎えに来るまでに、その武具を使いこなせるようにしておきなさいよね」
そう告げたカッパーはタールの翼を羽ばたかせ、この場から飛び立ってしまう。
一方、エインヘリアルと成り果てた国木田は異様なまでの渇きを覚えて。
「乾く、乾く……おああああっ!」
叫ぶ彼はグラビティ・チェインを求め、再び往来の多い場所へと戻っていくのだった。
シャイターン『炎彩使い』。
その数は2体にまで減っているが、今なお活動は続いており、新たなエインヘリアルを生み出そうとしている。
「早いところ、炎彩使いの行方も捉えたいところだけれど……」
ヘリポートではリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が止まらない敵の活動に懸念も示すが、防ぐ事のできない予知がある為に対処したいと語る。
シャイターンの女性達は死者の泉の力を操り、その炎で燃やし尽くした男性をその場でエインヘリアルにすることができる。
「出現したエインヘリアルは、グラビティ・チェインが枯渇した状態のようだね。人間を殺してグラビティ・チェインを奪おうと暴れ出してしまうよ」
説明が終わり次第、リーゼリットはヘリオンを離陸させるとのこと。
できるならエインヘリアル撃破に向かって欲しいと、彼女はケルベロス達へと願う。
エインヘリアルは午前中、神奈川県の某大学構内に現れる。
新年度が始まった直後ということで、活気付いている構内には新入生を含めて学生が大勢いる。人払い対策はほぼ必須だろう。
「敵は1体。どうやらこの男性は富豪の息子らしくて、自らの財力をひけらかす様にして襲ってくるようだね」
エインヘリアルとさせられた男性は白銀の鎧を纏い、白金の剣を手にして周囲の人々を襲う。
裕福な家庭に生まれた自身は選ばれた人間だという考えを持っており、他人を見下す態度をとる男だ。
それはエインヘリアルとなった後も変わらず、自身の糧となるのは当然とばかりに殺人を厭わぬ彼を放置するわけにも行かないだろう。
「あと、倒した後は学生が往来する場所だから、ヒールを忘れないようにね」
学内にエインヘリアルが現われ、不安がる学生もいるはずだ。
だからこそ、学生達を元気付けるべく歌声や演奏などで癒すことができれば、新入生を含めた学生を安心させることができるだろう。
手早く説明を終えたリーゼリットは、参加を決めたケルベロス達の表情を見つめて。
「それでは行こう。学生達を護る為に。そして、人外と成り果てた男性を止める為に」
依頼を託したメンバー達を、彼女は自身のヘリオンへと迎え入れるのである。
参加者 | |
---|---|
シルク・アディエスト(巡る命・e00636) |
秋芳・結乃(栗色ハナミズキ・e01357) |
エンデ・シェーネヴェルト(フェイタルブルー・e02668) |
リュセフィー・オルソン(オラトリオのウィッチドクター・e08996) |
ジュリアス・カールスバーグ(山葵の心の牧羊剣士・e15205) |
アデレード・ヴェルンシュタイン(愛と正義の告死天使・e24828) |
藍川・夏音(死塗れの悪逆・e44239) |
御廟羽・彼方(眩い光ほど闇は深く黒く・e44429) |
●歪んだ選定で選ばれし男
神奈川県の某大学構内。
学生の行き交うキャンパス内に、ケルベロス達の姿があった。
黒青グラデの猫の尾の様な髪のエンデ・シェーネヴェルト(フェイタルブルー・e02668)は、初めて訪れた大学構内を見回す。
通学の経験がない彼は鮮やかなコーンフラワーブルーの瞳で、所々に見える緑にほっこりしていたようだ。
「大学……大学ね」
赤茶の髪、褐色の肌を持つ16歳の藍川・夏音(死塗れの悪逆・e44239)にとっては、まだ遠い未来のようにすら思えてしまう言葉ではあるが。
「なんていうか、拭いきれない自業自得感もあるんだけど」
赤茶色の髪をポニーテールにした、秋芳・結乃(栗色ハナミズキ・e01357)もまた16歳である。
こちらも同い年、普通の高校に通う御廟羽・彼方(眩い光ほど闇は深く黒く・e44429)。
「自分がお金持ちであることをエインヘリアルになってもひけらかすなんて、どうしようもないね……」
今回の討伐対象には、さすがに彼方も呆れを隠せない。
「まあ、ありますよね。他人との距離がわからない事って。これはやりすぎな気もしますが」
牧羊犬のウェアライダー、ジュリアス・カールスバーグ(山葵の心の牧羊剣士・e15205)もまた、相手に冷静な指摘を行う。
「さすがに、エインヘリアルにされちゃうっていうのはないよね」
結乃がそこで仲間に同意を求めると、最近定命化したヴァルキュリアであるが、こちらも16歳のアデレード・ヴェルンシュタイン(愛と正義の告死天使・e24828)が小さく唸る。
「ぬぅ、シャイターンは此奴の財力に目をつけたのか……?」
ヴァルハラと地球とでは、財の価値異なるのではないかと考えるアデレード。シャイターンの考えは理解に苦しむ。
「いくら性格が悪くても、国木田君を燃やしてエインヘリアルにする緑のカッパーは許せませんね!」
おっとりとした印象を抱かせるリュセフィー・オルソン(オラトリオのウィッチドクター・e08996)だが、シャイターン炎彩使いに対する思いをぶちまけていた。
シャイターンに対して思うこともあるメンバー達だが、まずは。
「ここの人たちはここの人たちで、未来がある……。なら助けないと、よね」
夏音が言うように無関係の学生達は、助けなければならない。
穏やかな様子のシルク・アディエスト(巡る命・e00636)も、その意見に相違ないようだ。
「一般学生さんに被害は出すわけにはいかないから、国木田さんはしっかり止めないと、だよねっ」
同意を見せる結乃に、彼方も明るく努めて頷いてみせた。
「人として散ってしまった命なら、せめてこの手で斬って、救ってあげる」
そうして、彼女は黒い呪詛に包まれた喰霊刀を手にするのである。
程なく、キャンパスの校門前広場に姿を現したのは、眩い白銀の鎧を身につけたエインヘリアルだった。
「おああっ……」
時折、乾きに顔をしかめるエインヘリアル、国木田・了。
しかしながら、彼はできる限り優雅に振る舞おうとしていて。
「貧乏学生諸君は、この僕の糧となるべきなのだよ!」
学生達を見下ろす国木田は、すらりと抜いた白金の剣を高く振り上げる。
ただ、普段よりもこの場の学生の数が少ない。
彼の出現までの僅かな間、エンデ、シルクが大学や警察に一報入れたことで、僅かではあるものの人払いが進んでいたのだろう。
そして、メンバー達はその国木田の前へと飛び出していく。
「ん、何だい?」
驚く彼に対してシルクは菫をモチーフとした武装を展開し、ドラゴンの能力を参考に作成された武具『適者生存』から主砲を発射して弾幕を張る。
「こんなに暴れ散らさないと自分の偉さを誇示できないなんて、哀れだね?」
その弾幕から数歩引いたエインヘリアルを、彼方が挑発する。
ヒーローであり、ケルベロスが相手だと彼方は名乗りも合わせて告げて。
「自分の存在を魅せつけたいなら、来なよ。勝てば、エインヘリアルとして君はとても目立てるよ?」
「ケルベロス……僕の相手にふさわしい」
にやりと笑う国木田の周囲では、避難誘導に当たるメンバーが周囲へと叫ぶ。
リュセフィーは割り込みヴォイスを使い、学生達の避難に当たっていた。
「皆さん! 早く安全な場所へ避難して下さい!!」
「只今、構内にデウスエクスが出現しました! 皆さんは誘導に従って退避して下さい」
重武装モードとなり、人々を励ますようにジュリアスが合わせて叫ぶ。
歌や楽器は余り得意でない結乃だが、被害を出さぬようにと彼女もタンバリンを手にしてテンション高く呼びかける。
「みんなこっちだよっ。慌てなくてだいじょぶだから、落ち着いて、ねっ」
音とリズムと自身の声で、この場の学生達を励ます。
アデレードも避難を呼びかけていたが、交戦を優先させてエインヘリアルへと近づいていく。
「こ、こらー!? 無駄にきらびやかな衣装で、悪役が正義の味方より目立ってどうするのじゃ!」
叫ぶアデレードに続き、ジュリアスもまた敵の気を引くべく駆け寄ってくる。
「前期覇権は、キャンプに将棋となんかアレでしたでしょうに。そんな派手な装備は時勢に合ってませんね」
国木田がサブカル系のサークル所属ということで、彼はアニメの話題を振っていく。『なんかアレ』は、半濁音多めなクソアニメだろうか。
「骨もベビーシッターも面白かったですけどね。前期は本当に豊作でしたよ!」
なお、アニメの覇権の感じ方には個人差があると、ジュリアスは捕捉する。
「む、僕と語るのは……、お、おああっ!」
ただ、渇きには抗えず、国木田はえずくような仕草をする。
「グラビティチェインが欲しいんだろ? だったら、俺達を殺して奪い取ってみせろよ。……出来るもんならな」
「この僕に挑むとは……」
エンデが煽ると、相手はエインヘリアルとして剣を突きつけてきた。
「あ、悪役はこ、こう……暗くて無駄にゴツゴツした衣装のほうが強そうでよいのではないかのぅ……?」
敵の態度と格好がマッチしていないと指摘するアデレードは、思いっきり首を振って。
「と、兎に角、我に目をつけられたからにはそなたの悪行もここまでじゃ! 神妙に覚悟せい!」
「生まれたばかりのてめぇが強いかどうか、せいぜい腕試しでもしてみりゃ良いさ。負けた方が死ぬ、シンプルだろ?」
「いいだろう。後悔するなよ」
煽られた敵は渇きを堪え、剣をかざして襲い掛かってきた。
「望む望まざるに関わらず、変容したその身。それを貴方が不幸と捉えるか、幸福と捉えるかは知りません」
エンデが殺界を形成する横で、相手を迎え撃つシルク。
そうなった以上はやるべきことは1つと、彼女は再度アームドフォートを構えて。
「……命の巡りに還しましょう」
●勘違い勇者の討伐を
交戦が始まる大学のキャンパス内。
まばらになって来ている周囲へとリュセフィーの声が響き渡り、結乃がキープアウトテープを張り巡らす。
一方、エインヘリアルとぶつかるケルベロスへ、夏音は抑えていた狂気を解き放つ。
(「私は――負けられない。負けない。だって、私の次はあっちゃいけない。私は――人として生きてやる」)
祖父母から受け継ぐように、土蔵籠りとして目覚めた夏音。
内なる狂気に抗いながら、夏音は仲間達に力を与えていく。
「ケルベロスだろうと、今の僕に勝てるはずないのさ!」
乾きこそあれ、有り余る力を漲らせたエインヘリアル国木田がプラチナの剣を振り回す。
先んじて牽制射撃をしていたシルクは、本格的な戦闘に入ると仲間の為の盾となる。
「繋がれてきた命の輝き。その灯が消えぬように」
その上で、シルクはアンプのように変化させたアームドフォートで、魔力を込めた歌声を増幅、放出していった。
周囲へと響き渡る歌声は、攻め行く仲間の活力となっていく。
さらに、アデレードも失われた面影を悼む歌を響かせることで、仲間を支援する。
そうした支援を行うメンバー達の背後から、彼方、夏音が仕掛けていく。
妖刀を手に飛び出す彼方だが、この場は相手の体力を削ぐ為に炎を纏わせた一蹴を見舞う。
「悪いわね、先輩。あなたはただ、品性が悪いだけで罪はないでしょうけど」
近寄る夏音は距離を取りつつ精神を集中し、相手の腕を爆発させる。
「うおっ」
滅茶苦茶に剣を振っていた国木田を怯ませるには十分。さらに、剣も刃こぼれさせていた。
「ソレを犯させるわけにはいかないから、ここで眠ってもらうわよ」
夏音はそうして、次なる一手の為に身を引く。
代わりに迫ってきたのは、エンデだ。
気配を消して相手に近寄るのは、暗殺者として造作もないこと。
彼は大柄な相手の懐へと易々と潜り込み、電光石火の蹴りを浴びせかけた。
「お帰りなさい皆様。もう始まっちゃってますよ」
そして、弧を描くように相手へとジュリアスが切りかかっていたところに、避難誘導に当たっていたメンバーが参戦してくる。
50口径のAMRにも似たバスターライフルを構え、結乃は極限まで集中し、瞳孔を収縮させて。
「とっておきを……あげるっ」
発射された密度を高めた特殊グラビティ弾は、彼女の狙い通りに相手の胸部を撃ち抜く。
「ぐっ……」
白銀の鎧ごと射抜かれた国木田が呻く。
さらに、やってきたミミックが偽者の財宝をバラ撒いたのに、敵は目を輝かせて。
「これは僕の、僕のものだ……!」
「…………」
そんなエインヘリアルをリュセフィーは冷静に見ながら、広げた小さな翼からオーロラの光を発して仲間を癒すのである。
エインヘリアルとなった国木田は、ケルベロスによって翻弄されてしまっている。
「ゆけ、僕を護るんだ!」
黄金に輝くドローンでそいつは自身を固めようとするが、ケルベロスの猛攻は止まらない。
如意棒を握るアデレードが、ヌンチャクのように叩きつける白金の剣に亀裂を入れていくと、彼方が悲しげな表情を見せながら刃を一閃させた相手に問いかける。
「寒い? 冷たい?」
手にしていたのは、呪詛を持つ喰霊刀だ。
極低音も魔力を帯びた一太刀は、瞬く間に国木田の体温を奪い去っていく。
「温まりたいなんて願いは叶うことなく。あなたはここで絶たれる運命なの、受け入れてね」
「ふむ、ここまでは順調って感じですか?」
戦況は圧倒的にこちらが有利。ジュリアスも攻めの手を止めず、大声で吼える。
「武装混剛!!」
すると、武装が変形して巨大な刀剣となり、彼は相手へと縦一文字に切りつけていく。
「ヨーツイブレードおぉぉ くぁらたけわりいぃぃ!!」
相手の鎧ごとジュリアスは叩き割ろうとするが、敵の武装はただ煌びやかなだけでなく、強度も備えている。
うまく立ち回ろうともがくエインヘリアルの動きが、結乃には逃げ道を探しているようにも見えたようで。
「ここからはいかせないっ」
小回りの効くリボルバー銃「KAL-M13『MillwallBrick』」に持ち替え、彼女は弾幕を張って相手を牽制する。
敵も全身からダイヤの如き煌きを発して反撃するも、リュセフィーはすぐにオーロラの光を発し、さらにバスターライフルを構えて攻撃のタイミングをはかる。
「僕が……、選ばれた僕が、この程度で!」
劣勢の中、自尊心を失わないのはさすがだが、裏返すと往生際が悪いとも言えた。
相手の刃をシルクは冷静に捌きつつ、星座の光で自身を含めた傷つく仲間を癒していく。
足止めは十分と考えた彼方は虚無魔法を発動させ、不可視の虚無球体で敵を飲み込もうとする。
身体を削られながらも、耐え切ったエインヘリアル。
そいつを見据える夏音だが、彼女は朋喰丸で自らを傷つけ、その血を喰らわせた。
「嬲り、穿ち、喰らい、奪う。極限の一を捨て、私は人として彼方に至る」
犠牲者達の恩讐をその身に受けながら、神速の一刀を繰り出す。
「……だからこそ、忌まわしき『彼方の』君よ」
「お、おのれぇ……」
だが、トドメには僅かに浅く、国木田は忌々しげに睨み付けてくる。
すかさず徒手空拳のまま、エンデが飛び出す。
ただ、彼は地面を駆けながら鋭い仕込み爪を左右の腕から出現させ、その凶刃を相手に浴びせかけていく。
「ぐああっ!!」
煌びやかな鎧を、剣を砕かれ、エインヘリアルは血を飛び散らせる。
「――さようなら、美しい世界にお別れを」
果て行く命に、エンデはそう一言だけ餞の言葉を放った。
事切れた敵は、すでにデウスエクスになっていたこともあり、その姿を塵のように散らしてしまう。
その跡に歩み寄るジュリアスは、自尊心が全くないのも困り者としながらも。
「自分が凄いと思わせる事でしか誰かと話ができなくなってしまったら、相手が楽しめないんですよ」
頭上を見上げた彼は諭すように、舞い散る塵へと呼びかけたのだった。
●皆を元気付ける為に
エインヘリアル討伐後、メンバー達は構内の修復の為にヒールグラビティを使用し始める。
結乃が戦場跡に癒しの雨を降らせていく間に、ジュリアスは大学の関係者に事情を説明する。
「はい。こちらは当該事件担当のケルベロスですが。脅威を取り除くことに成功いたしました」
だが、説明をする彼の表情は浮かない。
「はー。この後親御さんにも連絡ですかねえ……」
その事後説明には、ヒールグラビティを用意していないエンデも当たっていたが、致し方なしといった表情。
「……子の死に嘆くのも、腫れ物が落ちたような反応でも気が重いですよねえ」
誰か終わらせていないかと考えるジュリアスだったが、結局は彼が連絡を取ることにしたようだった。
その間も、修復作業は進む。
「大学のキャンパスを壊してしまってすみません……」
往来を行く学生にリュセフィーが謝りつつ、緊急手術によって破壊箇所に力を与える。
「でも、もうエインヘリアルを倒したので、大丈夫ですよ」
リュセフィーの言葉で、学生達の表情も幾分か安らぐ。
そこに流れるのは、アデレードが響かせる『寂寞の調べ』。
ヴァルキュリアの故郷の歌は周囲を幻想に包むだけでなく、学生達に希望を与えてくれる。
続き、シルクもまた少しでも皆の不安などを払拭できるならと、魔力を込めた歌声で明日への希望を歌う。
しばらく彼女達の歌を聞いていた夏音だったが、学生が集まるのを見て、何かした方がと悩む。
(「でも、よく考えたら私、そういうの全然わかんないわ……」)
しかし、こうして悩んでいても仕方ないと思い至った夏音は、仲間に合わせて歌うことにしたようだ。
仲間達が歌ってくれるタイミングで、シルクは地面に描く守護星座をバックライト代わりにして歌う。
「……少しでも、人々の安寧に繋がると良いのですが」
集まるたくさんの学生達が笑顔を浮かべているのを見て、彼女もまた嬉しそうに微笑んで見せたのだった。
作者:なちゅい |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年4月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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