料理とお菓子とお花見と~デュアルの誕生日~

作者:白鳥美鳥

●料理とお菓子とお花見と
「すっかり春の陽気だね、お花見日和だよね!」
 デュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)は、皆に楽しそうに話しかける。
「実は、今日は俺の誕生日なんだ。桜の下で花を愛でながら、みんなで楽しみたいなって思ってる。良かったら、来てくれないかな?」
 デュアルは一つ提案を加える。
「でもね、折角お花見をするんだから一捻りしない? まずは、お花見で食べるお弁当やお菓子を手作りするんだ。作れないって人も、誰かのお手伝いをするなりして欲しいな。そして、完成したお弁当やお菓子を持ってお花見に行こう! みんなで楽しい春のひと時を思いっきり楽しもうよ!」


■リプレイ

●料理とお菓子とお花見と~デュアルの誕生日~
 桜咲く春爛漫の日。今日はお花見日和だ。
「キッチンでお花見用の料理を作るって何か良いな? 広いキッチンだーい好き!」
 リーズレット・ヴィッセンシャフト(その呪いは私の鼓動を止める・e02234)は、用意されたキッチンを見渡して、ジャミラ・ロサ(癒し系ソルジャーメイド・e00725)、瑞澤・うずまき(ぐるぐるフールフール・e20031)に微笑んだ。
「よし、キャラ弁って奴に挑戦だよ!」
 うずまきはお弁当作りに挑戦する。実は彼女は一人で料理を作ると物体Xを錬成してしまうという腕の持ち主だ。
「本機も一介のメイドとして再現できるレシピのレパートリーは増やしておかねばなりません。うずまきさんはご自分で? むむ……腕を上げてきたという事でありますね。その意気やチョベリグであります」
「そそ、そうかな? 腕……上がってる……かな? なら嬉しいかも♪」
 ジャミラに褒められたうずまきは嬉しそうな顔をした。それを見て、ジャミラも更にやる気をだす。彼女も創作料理は謎の化学反応による恐ろしい物を作り上げる腕の持ち主。
「ここは本機も本気を見せるべき場面。我がオリジナリティをふんだんに込め、一捻りと言わず捻りに捻った『スパイラル負苦悩痴弁当』とデザートの『見たら死団子』を……」
「待って! ジャミラさん待って! 言葉は一緒だけど、文字にしたら明らかに物騒な言葉が入ってる!」
 余りにも恐ろしい物を作ろうとしているジャミラに気が付いたリーズレットは慌てて止めに入る。そして、うずまきの方も慌てて見た。そこはそこで恐ろしい光景が広がっていて……。
「うずまきさーん! 腕……一人で作ったら別の方に腕上がっちゃってるな!?」
 このまま二人がそれぞれの料理を作ると何が起こるか分からない。ここを乗り切るには一つしか無いだろう。
「皆で一緒に一つのお弁当作ろうか!」
「了解であります、ミス……いえ、ヴィッセンシャフト教官殿」
「皆で一緒に?! やったぁ!」
 リーズレットの提案に賛同する二人。改めて三人で楽しいお弁当作りに励むのだった。

「私はおにぎりを作るから、おかずは任せたぞ一十。覚悟した上で期待している」
「僕はおかずか、承知した。覚悟……じゃない、期待してくれ」
 あねごであるナディア・ノヴァ(わすれなぐさ・e00787)の言葉に、奏真・一十(背水・e03433)の言葉に苦笑した。
 一十は、卵焼き位なら……と取り掛かってみるのだが調味料の加減が早速分からなくなった。
「砂糖、塩、味噌、醤油、ラー油、コンソメ……?? 入れてみるか」
 様々な調味料が入った卵は、巻くのに苦戦しスクランブルエッグと化す。そこにハムを混ぜてパセリを添える。
(「……あっ美味そう! 見た目だけは」)
 そう思う一十の傍で、ナディアもおにぎり作りをしている。鮭、昆布、梅、おかか等……だけど、具を分けて握るのが面倒だ。
「何だっけな、爆弾おにぎり? そうあれだ、あれにしよう」
 さっそく爆弾おにぎりに取り掛かるナディアだった。

 ファルケ・ファイアストン(黒妖犬・e02079)が作るのは恋人のコンスタンツァ・キルシェ(ロリポップガンナー・e07326)の好物のハンバーガー。お肉は牛肉の赤身をがっつり半ポンド。冷めても美味しいように繋ぎを使いモッツラレラチーズを入れてチーズインハンバーグに。焼けたらアルミホイルで包む。生野菜とパンズを別々にして食べる直前に挟むのだ。ポテトとコーラも忘れずに。
 一方のコンスタンツァはオーソドックスにおにぎりとサンドウィッチを作る。シンプルだけど彼氏であるファルケへの愛情をたっぷり込めたもの。料理上手な彼氏をもつと女としてフクザツな心境だ。勿論嬉しいし美味しいのだけれど、将来的にお嫁さんになる身としては負けたくない。彼が喜んでくれると良いなと、精一杯の思いを込めて。

 イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)が作るのは三色花見団子。じっくり捏ねて其々桜・よもぎを練り込みシンプルに拵えた。

 ソロ・ドレンテ(胡蝶の夢・e01399)とラズリア・クレイン(天穹のミュルグレス・e19050)が作るのは桜餅。道明寺と長命寺の2種類だ。
「あ、えっと、桜餅は私も作るのは初めてなのですが……」
「え、ラズもないのか?」
 二人はレシピを睨めっこしながら試行錯誤を重ねて桜餅造りに励む。ちょっとアレンジして餡に苺を丸々入れたバージョンも。
(「うん、なかなか良い出来かも」)
 ラズリアは出来上がった桜餅2種を満足そうに見て微笑んだ。

「お誕生日おめでとう!」
「わあ、ありがとう! すっごく美味しそう!」
 ソロとラズリアから手作り桜餅を、ラウル・フェルディナンド(缺星・e01243)と九条・小町(糸繰り人形・e02022)から2人の手作り桜モンブランを貰ったデュアルは満面の笑みを浮かべる。
「えっと、俺も頑張って道明寺を作ったんだ。皆に配っている所なんだけど、みんなにも貰って欲しいな」
 デュアルは一つ一つ個装した道明寺を皆に渡す。
「みんなも素敵な一日を過ごしてね!」
 感謝の言葉と共に、デュアルは他の人達に道明寺を配る為に手を振りながら去って行った。

 桜の下、ラウルと小町は二人で作った小さな桜が咲いているようなモンブランを戴きながら桜や桜の花弁を愛でる。陽光に透けて輝く薄紅色のひらひら舞う花弁を目で追いながら、ラウルは柔く眦緩める。
「今年も君と桜を愛でることができて嬉しいよ」
「ええ、一年ぶりね」
 小町はそう言って、ラウルに微笑みかける。
「毎年、貴方が日本にいる間は一緒に桜を見に来たい。いつか貴方が故郷へ帰ってしまう日が来ても、この儚い薄紅色の花弁ひとひら見た時、私という友人が居た事を思い出してくれるように……」
 そう言ってから冗談っぽく笑った。
「あ、でも、モンブランを見た時、にした方が思い出す頻度上がるかな?」
 そんな小町の言葉に、ラウルは微笑んで頷く。
「たとえ遠く離れても、この彩の花とモンブランを見れば、きっと君を思い出すよ」
 柔らかな光の中、桜が二人に微笑みかけているような……そんな時間だった。

「桜が綺麗ですねぇ」
「改めて成人おめでとう、ラズ。これからは一杯一緒に飲むぞっ♪」
「ふふ、ソロ様とお酒が飲めるの、嬉しいです」
 ソロはラズリアの為に用意した少し高めの梅酒で満開の桜の下、乾杯する。
(「桜が綺麗で、桜餅は美味しくって、ご一緒にお酒が飲めるお姉さんがいて幸せだなぁ」)
 ラズリアは心からそう思う。
「綺麗な桜だね。また来年も一緒に来れたら良いな」
「来年も、桜、見に行きましょうね」
 そう微笑みあう二人だった。

「せっかくだから皆それぞれお弁当作って、お花見でおかず交換しようよ!」
 マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)の提案で、お花見に来たマヒナ、栗山・理弥(見た目は子供中身はお年頃・e35298)、朱桜院・梢子(葉桜・e56552)の三名。
「え? お弁当作ってくれるんじゃないの?」
 そう言っていた梢子は渋々ながら初めてのお弁当作りをしてきた。
「せっかく作ったんだから私の卵焼きも食べてよ! ……どっからどう見ても卵焼きでしょ? ちょっと焦げたけど」
 その卵焼きは、ほぼ炭で……。
「ショーコのお弁当は……うん、ほとんど、黒いね……」
「え、この黒いの卵焼きだったの? 俺には炭にしか見えねぇ」
 散々な評価である。
 理弥の酷評はマヒナにも及ぶ。
「うっ、この卵焼き甘っ!!」
「え~レシピ通りに作ったけどなぁ……タマゴ焼きって甘いものじゃないの?」
 甘いタマゴ焼き、美味しいと思うんだけどな~とマヒナは思うのだけれど。
「だいたいねぇ理弥、あなた色々言ってるけどそういうあなたのお弁当は何なの? その、手抜き感満載の日の丸弁当は! お弁当作ったことないのは私もよ、日の丸弁当でいいなら私だって作れるわ。ご飯さえ炊いてもらえれば!」
「……俺、弁当なんて作ったことねぇし……いや待て、俺だって飯炊くぐらいはできるぞ。梢子姉いい年して飯も炊けないのかよ……」
 だんだん言い争いに発展していきそうな二人を慌ててマヒナが止める。
「……っと、まあまあ二人とも、勉強から始めよ? ワタシもニホンに来たばかりの頃は料理全然できなかったし、今も勉強中だし」
「そうね、料理の話はこれくらいにして。お花見と言ったらお酒よお酒! さー飲むわよー!」
 直ぐに機嫌を取り直した梢子は、早速お酒を呑み始める。
「ショーコ、飲み過ぎないでね?」
 そうマヒナに釘を刺される梢子だった。

 桜を見ながら、ファルケとコンスタンツァは、作りたてのお弁当を広げる。お弁当を分けっこするのだ。
 ファルケはその場で具材を挟んでハンバーガーを作り、コンスタンツァはおにぎりとサンドウィッチを広げた。
「はい、スタン。どうぞ」
「ハンバーガー! 美味しそうっす!」
 手渡されたハンバーガーにコンスタンツァは、一口食べる。肉汁にチーズが溶けだすパティ。それが野菜とパンズにマッチしていて……悔しい思いはあるけれど、それ以上に美味しくて。
「やっぱおいしいっす……。箸がとまんねっす!」
 ファルケもコンスタンツァのおにぎりとサンドウィッチに口をつける。
「どっすか、感想はファルケのためにがんばって作ったんす!」
「スタンの手作りだと思うとなおさら美味しいね」
 微笑みながら答えるファルケに、コンスタンツァはとても嬉しい。
 ご飯もだけど、一緒に料理を作って、一緒に食べてるっていうのが、幸せだなぁ。そう思うファルケだった。

 花弁舞い散る桜を一十は写真に収める。お土産代わりの写真だ。見事な桜の写真、喜んでくれると良いと思う。それと桜の花弁も。
「さあ、爆弾おにぎり召し上がれ。形は悪いが味は問題ないはずだ」
 ナディアから手渡された大きな爆弾おにぎりを一十は受け取る。爆弾という言葉に何事かと思った一十だったが……。
「なるほど豪快でよいな! 美味しい!」
 何種も食べたようで得だし、大きすぎて具が零れがちなのも良く、美味しく戴いた。美味いと言われてナディアも上機嫌になる。
「あねごもどうぞ、召し上がれ」
 一十もスクランブルエッグを勧める。お茶も添えて。
「どれどれ……」
 ナディアは箸を伸ばして、スクランブルエッグを戴く。
 もぐ……もぐもぐ……。無言のまま味わうと静かに箸を置き、お茶を飲んだ。
「……。何ていうか、あれだ。味の方向性が迷子」
(「……方向性か……。一度に色々という面では爆弾むすびと同じ筈なのになあ」)
 ナディアの感想に、そう思う一十だった。

「お誕生日おめでとうございますー」
「デュアルさん、お誕生日おめでとうございます!」
「ありがとう。凄く嬉しいよ。俺からも道明寺をどうぞ」
 ミリア・シェルテッド(ドリアッドのウィッチドクター・e00892)は、用意していたヒトとネコ用2種類のうちヒト用のお弁当とマタタビ茶の入った水筒を、イッパイアッテナは三色花見団子をデュアルに贈る。お返しという訳では無いのだが、皆に用意していた道明寺を手渡した。
「え! いただけるのですか? ありがとうございます!」
「俺も、三色団子、楽しみだよ」
 にこにこ言葉を交わすイッパイアッテナとデュアルの傍で周囲を見渡しているミリア。
「どうしたの?」
「いえ、デュアルさん以外の猫さんが居るかな……と」
 猫好きのミリアは、ネコ用のお弁当にブラシを用意して猫を探している様だ。そして、日向ぼっこをしている猫を見つけて膝に乗せ、丁寧にブラッシングを始めた。ブラッシングを終えると、ミリアはデュアルを見上げる。
「……デュアルさんもブラッシングしましょうか? ……それとも、ヒトのまま膝枕したほうがいいでしょうか……?」
「……!?」
 ……何だか誘惑しようと頑張っている感じだ。
「……え、えっと……俺、猫、探してくるから……!」
 ダッシュで走り去っていくデュアルにミリアは少し残念そうにするが、彼が連れて来るであろう猫を楽しみに待つのだった。

「桜だわ! お写真では存じ上げていたけれど実際見ると感慨深いものがあるのよ」
「めろ、お花見するの初めてなんだ。一番の楽しみはね、皆のお弁当!」
 桜の美しさに感激するシュネー・グリュクトート(ヴァイスケッツァー・e42582)に、初めてのお花見に心躍らせる歌枕・めろ(夢見る羊飼い・e28166)。
「今日はみんなでお花見! 集まってくれて、ありがとっ」
 咲宮・春乃(星芒・e22063)の音頭で、淡い桜に心が踊るお花見が始まる。
 ロゼ・アウランジェ(アンジェローゼの時謳い・e00275)が用意したのは桜マカロンや桜のケーキ。鹿骨・曄(トルソー・e02705)は、大蒜生姜を染みこませた唐揚げに冷めても美味しいチーズ入りミニハンバーグ、ハーブたっぷりの鶏ハムだ。八咫烏・那智(月陽炎・e18689)は、細かく刻んだ桜の塩漬けを混ぜてほんわり桜色のおにぎり。春乃はめろ希望の甘い卵焼き。めろは桜の形にくりぬいたハムと卵のサンドウィッチ。シュネーは、プロ並みになれたパンケーキを小さく沢山焼いて、トッピングも沢山用意して。ソルヴィン・フォルナー(ウィズジョーカー・e40080)は総重量17Kgに及ぶ大量の瓶の容器に入ったココアを運び、その姿を皆からの羨望と尊敬を集めている。月岡・ユア(孤月抱影・e33389)は、料理は作れないけれど、荷物持ちをしたり、ジュース類を持って来た。
 めろは、春乃にリクエストした大好物の卵焼きを戴く。
「甘くて優しい春乃ちゃんみたいだわ」
「ええ。春乃ちゃんみたいに優しい味。やっぱりシュネーの天使様なのよ」
 めろの言葉に合わせる様に、シェネーも同意する。
「甘くて優しい味って言われると照れちゃうね」
 春乃は褒められて頬を染める。
「味まで可愛いよ」
 そう那智に言われて、春乃は更に照れてしまった。
 曄の唐揚げも好評だ。曄は、春乃とめろの唐揚げを取り上げてしばらくぶらぶらさせて意地悪した後、食べさせてあげる。
 那智のおにぎりも桜入りで春を食べているみたいに感じられた。
 シェネーのパンケーキも彼女の腕に感心しつつ、めろとシェネーは互いの料理とお菓子を交換してみたり。
 綺麗なロゼの桜のお菓子。
「どれも可愛くて美味しそう。レシピを教えてもらえないかなぁ」
「彼女の言葉にぜひ今度一緒にお料理しましょ」
 めろの言葉に、ロゼはそうウインクしながら返す。
「ユアさんも、ほら、一緒に食べよ! ロゼさんの桜尽くしのデザートおいしいんだよ。桜のプチケーキがおすすめかな」
「わ、ホント? ロゼさんの桜デザート! ……ほわぁっ、美味しい~♪」
 春乃に誘われてロゼの桜のデザートを食べたユアは幸せな顔をする。
「飲みたい者はどんどん飲むんじゃよ、さぁ飲め飲め」
 ソルヴィンは持って来た桜のハーブティとリキュールを勧める。
 曄、那智、ユア、ソルヴィンは桜のお酒で乾杯する。桜の下で桜のお酒を呑む。実に風流だ。
「皆で記念写真撮ろう!」
「記念撮影いいね!」
 皆で集まって記念写真を撮る。今日という日の大切な宝物に、と。
 桜色の世界に弾む声と笑顔が溢れる。いつまでも心に残る時間。今日の想い出はきっと何時までも残りそうだ。
 この桜花のごとく、皆に幸せが降り注ぎますように――。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年4月17日
難度:易しい
参加:24人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 4
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