●武術を求め続けて……
高知県のとある山にて。
そこに、新学期となってから、毎日欠かさず夕方に訪れる少年の姿がある。
この春から中学2年生の前田・元樹は、級友に言えぬ秘密があった。
「やっ! はっ!」
放課後に人知れず離れた山で行う剣術修行。その剣術はケルベロスが使うものと似ている。
ケルベロスの戦いを見て覚えたのか、刀剣士が使う剣技のようにも思える。様々な映像や実際の戦いを見て、研究していたのかもしれない。
そんな彼を木陰から見つめていたのは、青髪ポニーテールの少女。ドリームイーター、幻武極だ。
少女に見つめられ、元樹は虚ろな表情で少女に対して構えを取る。
「お前の、最高の『武術』を見せてみな!」
「やああっ!!」
操られるかのように元樹は刃を振りかざし、幻武極へと切りかかっていく。
想像以上に鋭い斬撃。数々の武術家を相手にしてきた幻武極でも、「へぇ」と唸ってみせる。
ただ、敵もデウスエクスだ。通常の斬撃では傷すらつかない。
しばらく、その剣技を見定めていた幻武極は、どこからか巨大な鍵を取り出して。
「僕のモザイクは晴れなかったけど、お前の武術はそれなりに素晴らしかったよ」
その鍵で元樹の胸を貫いた。
目から光を失い、元樹はその場に崩れ落ちる。
鍵に貫かれたはずの体には外傷は全く残されていない。
しかしながら、そのそばには元樹と同じ背格好をした少年が具現化していた。幻武極が元樹の武術を元に作り出した武術家ドリームイーターだ。
「どれほどの腕か試してみようか」
早速、幻武極はドリームイーターの少年と交戦を開始する。
互いが発するグラビティはモザイクが掛かっており、外見では確認が難しい。
ただ、実際に交戦することで幻武極は何かを見定めたのか、口元を吊り上げて構えを解いた。
「お前の武術を、皆に見せ付けてきなよ」
それに応じて頷いた武術家ドリームイーターは刀を収め、山を降り始めたのだった。
きっかけは、上野・零(焼却・e05125)のこの一言だった。
「……幻武極本人を、直接倒しに行けたりしないかな?」
ゆっくりと告げた彼の言葉は、幾多の事件を起こしたドリームイーターの討伐を目指すには十分だった。
たくさんのケルベロスが神出鬼没な夢喰いの行方を探り、予想し続けた。
それでも、なかなか捕まらぬドリームイーターの捕捉に至ったのは、きっかけとなる言葉を発した零自身の行動によるものだった。
「捉えたよ。ドリームイーター、幻武極……」
リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)はヘリポートに集まるケルベロス達へと話す。
自らに合う武術を求める幻武極。
その最中、自らに相応しくないとした武術を奪い取り、武術家ドリームイーターを造り続けている。
今回の事件もまた、そうした一連の事件と変わらない。
「ただ、今回は幻武極が現場に出現したタイミングで仕掛けることができる」
この機は逃したくはない。ここで、幻武極の引き起こす事件を終結させたい。
現場は、高知県のとある山。
新学期を迎えた少年は放課後、山に向かって剣術の修行を行う。
どうやら、ケルベロスに触発されたらしく、その剣技を真似するようにして剣術を極めようとしているようだ。
「真似事なのに、少年に相当センスがあったんだろうね」
剣技の腕を見て、幻武極がやってくるところを見てもそれは明らか。
夕方の山で1人、修行をしている彼を幻武極が狙うタイミングで接触ができるはずだ。
「少年をこの場から逃がしつつ、幻武極と戦えるようにしたいね」
幻部極が少年にキーブレイドを突き出し、奪った武術で新たなドリームイーターが生まれると、幻武極の討伐が困難になってしまう。
それを防ぎながら、幻武極をこの場から逃がさぬよう、撃破してしまいたい。
もちろん、敵も手にするキーブレイドをメインで使用し、応戦してくる。
モザイク交じりにグラビティを飛ばし、多彩な技を使ってくるようだ。
大方の説明を済ませ、リーゼリットは参加を決めたメンバーをヘリオンに誘う。
「数え切れないほどの武術家を危険に追いやった相手を、許してはならないよ」
この事件に終止符を。リーゼリットは改めて、幻武極の打倒をケルベロス達へと託すのである。
参加者 | |
---|---|
上野・零(焼却・e05125) |
ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426) |
クライス・ミフネ(黒龍の花嫁・e07034) |
クオン・ライアート(緋の巨獣・e24469) |
金元・樹壱(修行中魔導士・e34863) |
氷岬・美音(小さな幸せ・e35020) |
夢幻・天々奈(封印されし禁忌の少女・e36912) |
ドロッセル・パルフェ(黄泉比良坂の探偵少女・e44117) |
●武術家を襲う夢喰い
高知県某所の山に降り立ったケルベロス達は、山道を駆け上がっていく。
「武の極み、か」
赤を基調とした衣装のクオン・ライアート(緋の巨獣・e24469)が何気なく呟くと、ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)がつけヒゲを触りつつ感慨深げに語った。
「……ついに、この時が来たのじゃな」
「様々な場所で暗躍していたみたいですけど、ついに足取りがつかめたのですね」
女の子にも見紛う容姿をした金元・樹壱(修行中魔導士・e34863)は子供らしい笑顔を浮かべ、事態の進展を喜ぶ。
「……まさか、本当に見つけられるとは思わなかった」
今なお、自身の手で相手の動向がつかめたことに、長い白髪の上野・零(焼却・e05125)は戸惑いすら抱いていた。
一行がこれから戦いを挑むのは、数多くの武術家を襲ってきたドリームイーターだ。
「自分を鍛える為に、訓練に励んでいる少年を狙うなんて許さないね」
紫の髪をツインテールにした人型、猫のウェアライダー、氷岬・美音(小さな幸せ・e35020)も気合を入れてこの決戦に臨む。
「此の身も武術を極めんとする身として……、見逃すわけにはいかぬのう」
銀の長い長髪を後ろで纏めた剣士、クライス・ミフネ(黒龍の花嫁・e07034)は、自身の武……森羅流を持って自らを贄とし、相手を喰らって糧にするのだと考えている。
「これまで数え切れないほどのドリームイーターを生み出してきた強敵、幻武極。ここで確実に仕留めます」
そこで、白髪ポニーテールのドロッセル・パルフェ(黄泉比良坂の探偵少女・e44117)が自らの胸の内を語ると、皆も討伐にかける意気込みを見せる。
「必ずここで仕留めたいですね」
「……いい機会だ。この機に倒し切るとしよう」
樹壱の呼びかけに応じ、零は地獄化した右目を勢いよく燃え上がらせるのである。
その山の中腹では、1人の少年が剣術修行に励む。
中学2年生の少年、前田・元樹は刃を振るって汗を流し、鍛錬に勤しんでいた。
見よう見まねで、ケルベロスの使う剣術を修める少年。
「へぇ……」
並々ならぬセンスに、青髪ポニーテールの少女が口元を吊り上げる。
彼女こそ、幾多の武術家ドリームイーター事件を引き起こした、幻武極本人だ。
今回もまた自らに合う武術を求め、武術家を襲う。それが少年であろうと、彼女にとっては関係ない。
「見せてもらおうか、お前の武術」
木陰から姿を現し、幻武極は少年へと歩み寄る。
突然、側面の木々が仰け反っていく。
開けた小路からケルベロス達が素早く駆け寄ってきて。
「残念ですが、これ以上あなたに好き勝手はさせませんよ!」
先んじて、悪霊と一体化したドロッセルがその身を雷の龍へと姿を変え、相手のキーブレイド目掛けて突撃していく。
「……っ!」
ただ、敵も奇襲はしっかりと対処し、大きく跳躍して避けてみせる。
美音が開いた森の小路を通り、次々に幻武極と少年の間に割り込んでくるケルベロス達。
奇襲の一手こそ避けられたが、クオンが相手へと肉薄し、聖鉄十字剣を手にした零が相手目掛けて刀身を叩き込もうとした。
その一撃を、幻武極は巨大なキーブレイドで受け止める。
「ふうん……」
いきなり攻撃を仕掛けるケルベロスの武術に、幻武極は注目して。
「それじゃ、お前達の武術を見せてもらおうかな」
小さく笑みを浮かべたままキーブレイドを構えた敵は、モザイクを伴いながら突撃してきた。
すると、その場にクライスが割り込む。
「我が、武! 味わうと良い! 森羅流、クライス・ミフネ! 推して参るッ!」
名乗りを上げながら、彼女は拳と脚に重力を込めていく。
「森羅万象の理を以ち、天に轟し、地に堕ちよ……、天龍の嘶きよ……、疾れ!」
――森羅流奥伝・響天導地。
強く踏み込んだクライスは、正面から幻武極に掌底を叩き込む。
そうして、前に立つメンバー達が幻武極の斬撃を受け止めて注意を引き付けるうちに、ウィゼが少年を保護して身を引く。
「ウィゼさん、その子のことは任せました!」
「うむ、極おねえを頼んだのじゃ」
すでに、ドロッセルは麓に警察を呼んでいるとのこと。
目まぐるしい展開に対応できぬ少年をそちらに任せるべく、ウィゼも隠された森の小路を使い、少年と共にこの場を離脱する。
これで、敵の対処に集中できそうだと美音は一息つく。
少年が連れて行かれる様子は、幻武極の視界にも入ってはいた。
だが、樹壱が如意棒『奇跡の萌芽』を手に相手を牽制し、隣のゴスロリ風の衣装を纏った少女、夢幻・天々奈(封印されし禁忌の少女・e36912)が大きく胸を張って叫ぶ。
「お義兄様直伝! 異世界で百の道場破りを成し遂げたという『夢幻極限絶対無敵怒涛滅殺棒術』を見せてあげるわ!
天々奈は厨二病全開の振る舞いで、相手に叫びかける。
「…………」
品定めするように、ケルベロス1人1人を見回す幻武極。
相手の隙と見たクオンは、光の翼を暴走させながら言い放つ。
「さあ、行くぞ! 貴様の武を、我に見せよ!!」
それに合わせ、仕掛けるケルベロス。そして、迎え撃つ幻武極。
――武術を巡る決戦がここに始まる。
●ドリームイーター、幻武極
少年をこの場から避難させたことで、新たな武術家ドリームイーターの誕生は阻止できた。
だが、幻武極を倒さねば、それはなお続くこととなる。
「星の力が宿った、この弾丸を受けなさい!」
だからこそ、此処で。
星の加護を受けたリボルバー銃『スターライト・シューター』を、美音は素早く発砲する。
それをキーブレイドで防ぐ幻武極だが、美音が撃ち込んだ弾丸からかすかにヒビが入るのを見過ごさない。
敵はただ1人。跳び上がったドロッセルは今度こそ外さないと、流星の蹴りで攻め立てる。
多数のケルベロスに囲まれれば、正確な狙いをつけた彼女の一蹴から逃れるのは難しい。
その頬を蹴り付けられた幻武極は、宙返りして態勢を整える。
そこへ、巨獣の如き威圧感を放つクオンが全身を光の粒子と化し、突撃してきた。
身構えて粒子を防ぐ敵へ、跳び上がった零が重力を宿す一撃を見舞う。
続いて繰り出されるケルベロスの攻撃にも、幻武極はさほど動揺する様子はない。
「折角だから、僕を楽しませてくれよ。ケルベロス」
虚空を見た幻武極は、キーブレイドを真横に振るう。
すると、現れるモザイクが前線メンバーへと様々な武術を象り、襲い掛かってきた。
人型を取るモザイクはケルベロス達へと殴りかかり、斬りかかり、発砲し、魔術を発する。
それらの攻撃を受けるクライスは同じくモザイクに襲われる仲間達へとドローンを展開しつつ、この場を耐え凌ぐ。
「さあ、行くのよ。聖天使猫姫!」
堂々とした態度を崩さない天々奈は、自身のウイングキャットに指示を出す。
翼猫、聖天使猫姫は果敢にモザイクへと立ち向かい、翼を羽ばたかせてケルベロスと共に戦線を支えてくれていた。
ただ、相手は並々ならぬ力を持つドリームイーター。
一度攻勢に出れば、ケルベロス達を蹴散らすようにモザイク交じりの武術を披露してみせる。
『夢幻なんたらかんたら棒術』を披露したいのは山々だが、天々奈は事前に回復役として仲間を支援すると明言している。
「女神の転生体たるこのアテナ様が手厚く癒してあげるわ!」
彼女は無駄に格好つけたポージングをしてみせ、マインドリングを煌かせた。
宙に浮かび上がった光の盾が前列メンバーの前に現われ、仲間達を守るように浮遊していく。
冷静にそれを後方から見つめていた樹壱はその間にも、相手の動きをしっかりと見定めていて。
「卓越した技術の一撃を、受けてみなさい!」
狙い澄ました如意棒捌きで、樹壱は連打を浴びせかける。
グラビティのこもった打撃は幻武極の体表面を僅かに凍らせていくが、さほど効いているようにも見えない。
とはいえ、敵は敢えて攻撃を受けている素振りも感じさせる。
ケルベロス達のグラビティすら見極めるべき武術と、幻武極は位置づけているのかもしれない。
「極おねえ……、なんとも不憫なのじゃ」
そんな宿敵の姿を、少年の避難から戻ってきたウィゼが参戦しながらも見つめる。
舞うモザイクは、彼女の武術が欠損している影響だ。
モザイクを晴らす為、自分に合った武術を求め、幻武極は戦う。
彼女を止めない限り、武術家は襲われ続け、武術家ドリームイーターは生み出され続けるのは間違いない。
――だったら、せめて。
「あたし達の武術で極おねえのモザイクが払われて、極おねえの武術が見つかることを願っておるのじゃ」
ウィゼはハンマーの形にしたガジェットを大きく振り上げ、地面ごと粉砕して幻武極の足止めを図っていくのである。
戦場で飛び交うグラビティ。
それらのほとんどは、ケルベロス達が幻武極を倒すべく繰り出したもの。
「…………」
それらを食らいながらも、幻武極は一つたりとも見逃さぬように注視する。
そいつ目掛け、ドロッセルは再度、その身に取り付いた悪霊と一体化していく。
「霊魂完全開放! 木行・終式 雷霆ノ如ッ!」
雷の龍へと姿を変えたドロッセルは爆音を響かせ、敵目掛けて一直線に突撃していった。
相手を噛み砕こうとする彼女の最終奥義『木行・終式 雷霆ノ如』ですらも、幻武極にとっては武術の一つでしかない。
「お前にとって、最大の一撃だろうと……」
キーブレイドで抑え付けようとする幻武極。凌いだ彼女だったが、その身に走る痺れは隠せない。
相手の僅かな怯みを見逃さず、樹壱が後方から飛び込む。
「トゲトゲのバールですよ。その傷口を広げてあげます!」
手にするエクスカリバールからグラビティによって釘を生やし、樹壱は相手に殴りかかっていく。
幻武極の体には徐々に、メンバー達のつけた傷が増えてきている。
しかしながら、怪我を負ってなお敵は余裕の態度を崩そうとしない。
「これを試してみようかな」
彼女は独特な身のこなしで、格闘術を繰り出してみせる。
どの武術とも特定できぬ身のこなしは、様々な武術を見てきたからこそ。
されど、モザイクに包まれたそれらの技は、未だ完成を見ないということなのだろう。
未完成なれども、威力は絶大。前線を支えるメンバー達は重い連撃をなんとか耐えようと武器を構え、態勢を整える。
仲間の傷は、それでも深いと察する天々奈。実際、前に出た翼猫の聖天使猫姫の表情も引きつっていた。
「アテナ様の踊り、その目で、耳で、肌で、とくと感じるがいいわ!」
戦場で天々奈はくるりと回転し、ステップを踏んで踊り始める。
彼女の周囲に花びらのオーラが舞い始め、それらが前列メンバー達の体に触れることで傷口を癒す。
回復グラビティもまた、幻武極の関心を引く。
ウィゼは目ざとくそこでガジェットガンを叩き込み、相手の動きを封じようとする。
とはいえ、これまで尻尾すらつかませなかった幻武極。
やすやすと動きを止めることなく、キーブレイドからモザイクの弾丸を発射してきた。
その攻撃は、相手の怒りを買っていた零、クライスに集中する。
同じく盾役となる美音が彼らを庇いながら緊急手術を施し、癒していく。
「……なぁ」
幾分か傷を塞いだ零は地獄の炎弾を作り出しながら、相手に問いかける。
「……お前の理想の武術ってのは何なんだい? ……教えてくれよ」
炎弾を浴びてなお、涼しい顔をしているこのドリームイーターの胸のうちに、一体どれだけの苦悶があるのだろうか。
零にはそれを、推し量ることができない。
「さあね」
自らの高みを目指す為の手段すら、幻武極はわからないと言う。
「だが、見事な『武』だ……。ならば見せよう」
相手の力を賞賛さえするクオンは攻撃が途切れぬよう、仲間に続く形で畳み掛ける。
「その武を破壊し蹂躙する、我が『暴力』を!」
クオンは己の身に、凶暴な獣性を引き出す暗示をかけていく。
「我は巨獣! 敵を、戦場を、全てを蹂躙せし『緋の巨獣』なり!!」
手にした装備を投げ捨てたクオンは闘気を拳に宿し、相手を完膚なきまでに叩き潰さんと振るい続ける。
「武術を追い求めているドリームイーターといっても、千の武術を極めたというお義兄様に比べれば大したことないわね!」
逆に、天々奈はドヤ顔で叫びかけ、仲間と共に一気に攻め立てる。
ここぞと語法如意棒『討神演武』を握りしめた天々奈は、先ほど告げた『夢幻極限絶対無敵怒涛滅殺棒術』を叩き込む。
堪える幻武極のキーブレイドも、徐々に傷ついてきている。
モザイク交じりでそれを振るうも、彼女は満足のいく形でモザイクを発することができなくなっていたようだ。
「あたしのアヒル真拳を見せてやるのじゃ」
そこで、ウィゼがアヒル型のミサイルを発射し、ドリルのようなクチバシで相手の体を攻め立てていく。
「美音の中に眠りし力よ、爪に宿りて全てを引き裂け!」
続く美音が猫としての本能を発揮し、瞬発力をもって霊力を込めた爪で相手に襲い掛かる。
さらに、頭上からドロッセルが大鎌でその首を狙うが、幻武極は反転して致命傷を避けてみせた。
「なるほど……」
何かを得心した幻武極は再度キーブレイドを振るい、無数のモザイクを現して数々の武術でケルベロス達を攻め立てる。
だが、敵の猛攻もそこまで。
クライスが居合いの構えから、日本刀『龍殺大刀・星列刀皇』を抜いて。
「我が名はクライス、主を斬った者を土産として逝くが良い」
同じ、武を極めんとした相手へ、彼女は渾身の一撃を見舞う。
胸部から腹部を大きく切り裂かれ、幻武極の体が淡くモザイクがかかり始める。
「残念だよ。気付くのが少し……遅かっ……」
粗いモザイクと成り果てて、その身体は消え去っていく。
数々の事件を引き起こしたドリームイーター、幻武極の最後だった。
●武の道に終わりなし
難敵を撃破したメンバー達は心地よい脱力感を覚えてしまうが、すぐに移動してウィゼが避難させた少年、前田・元樹の無事を確認する。
「お怪我はありませんか?」
美音は彼の体を気遣いつつ、事情を説明していく。
ケルベロスが駆けつけたタイミングが早かったこともあり、少年は事なきを得たようだった。
「……求める武術は分からなかったけれど」
少年の無事を確認した零は、幻武極の武術を思い返す。
モザイクに包まれてはいたが、彼女の武術が今度に活かせないかと零は考えていたのだ。
また、幻武極が消えた後、残されたキーブレイドをクライスは拾い上げていた。
同じく武を極めんとした者へ、引き継ぐ為に。
「武の道はまだまだ半ば……、精進あるのみ」
また一つ大きな事件を解決したものの、クライスはこの勝利に邁進することなく気を引き締めるのだった。
作者:なちゅい |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年4月17日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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